熊本総合病院

薬剤部・薬局訪問 第
100
回 独立行政法人 地域医療機能推進機構 熊本総合病院
病院内外で﹁かけがえのない存在﹂となるために
学び合いで専門性を高め、情報を発信する
熊本総合病院は、前身である健康保険八代総合病院の時代から、八代地域で最
も歴史のある公的病院として地域医療を牽引してきました。薬剤部は、病院の
方針である「医師を中心としたチーム医療」を実践する一員として、的確で多面
的な情報を提供するとともに、薬剤部員が互いに学び合い専門性を高めていま
す。その取組みについて、薬剤科長の藤井憲一郎先生、医薬品情報管理係長の
市川康子先生、緩和薬物療法認定薬剤師の濵田政司先生に伺いました。
他のスタッフから頼られる
「かけがえのない存在」を目指す
薬 剤 部 の 方 針をお聞かせくだ
13 0 0 ほどの 当 院採用薬の情報を
『 医薬品集 』として掲載しています。
『医薬品集』は、PMDA(医薬品医療
機器総合機構)や製薬メーカーの最
さい。
新情報をもとに作成しており、各医薬
藤井 「自分自身がかかりたい医療」
品の添付文書やインタビューフォー
「医師を中心としたチー
ム、患 者さん へ の 説 明
ム医療」という病院の行
用文書などを一覧する
動 指 針に基 づき、医 師
ことができます。また、
や看護師を情報面でサ
腎障害時の薬剤投与量
ポートしながら、適正・安
簡易懸濁法の適応可否
全な薬物療法に貢献す
肝機能検査が必要な薬剤一覧
べく努めています。
血管外漏出対策
毎日の入院患者情報
など、様々な情報を掲載
のチェック、処 方 確 認 、
レジメン管理などの「地
道 な 業 務 」を確 実に行
することで、医師や看護
薬剤科長
藤井 憲一郎 先生
師からは「病棟薬剤師不
在時にも確認できて便
って業務実績を積み、その上で専門
利」と高い評価をいただいています。
性や人間味を加えることで、他のス
情報提供において、
どのような点
タッフから頼られる「かけがえのない
を心がけられていますか。
存在」となるべく活動しています。
濵田 私は外科病棟を担当すると同
ホームページなどを活用し
豊富な情報を院内外に提供
薬剤部からの情報発信は、どの
ような方法で行われていますか。
藤井 院内ネット
ワークに、薬剤部
写真 1
時に、緩和薬物療法認定薬剤師かつ
緩和ケアチームの一員として活動し
ています。緩和ケアに関しては、病棟
の医師から、麻薬の開始や増量のタ
イミング、腎障害時の薬剤投与量な
医薬品集
が管理する独自の
ホームページ(以
下、薬剤管理セン
タ ー H P )を 構 築
し、医師や看護師
[独立行政法人 地域医療機能推進機構 熊本総合病院]
熊本県八代市通町10-10
● 病 院 長:島田
信也
● 病 床 数:344床
● 外来患者数:1日平均約518人
● 外来患者への処方箋発行枚数:1カ月平均約5400枚
院外処方箋発行率:95.5%
● 薬 剤 師 数:14名
〈2015年4月現在〉
の業務を支援する
様々な情報を適
宜提供しています
(写真1)。
市川 薬剤管理セ
ンタ ー H P では 、
薬剤管理センターHPには、採用薬の情報を載せた
『医薬品集』
をはじめ、
がん
関連の情報や各種マニュアル、文書フォーマットなどを掲載し、多職種の業務
提供:熊本総合病院薬剤部
をサポートしている。
写真 2
どの質問をよく受けます。WHO方式
うにしています。
の三段階除痛ラダー*に準じつつ、患
「学び合い」の成果は、幅広い分野
者さんをみて、その状態に応じた回
での専門・認定資格取得という形で表
答を心がけています。
れています。熊本県での緩和薬物療
*WHO方式 三段階除痛ラダー:痛みの強さに応じて鎮痛薬の
選択ならびに鎮痛薬の段階的な使用法を示した基準
法認定薬剤師第一号となった濵田主
市川 医薬品情報管理室では医師か
任を筆頭に、薬剤部員14名の資格取
ら直接相談を受けること
得 数 は6 0 件を超えま
もありますが、回答はで
す。取得した認定証は掲
きるだけ病棟薬剤師が
示して、部内外にアピー
行うようにしています。な
ルしています(写真2)
。
ぜなら、病棟薬剤師と医
これは、
「ハイレベルな
他職種の人材育成にも、より積極的
師のコミュニケーション
活動をしている」という
に関わりたいと考えています。
が増えることで信頼関係
自覚を促し、向上心をよ
市川 ニーズに合った資料を作成・提
が醸成され、
また薬剤師
り高める意味でも効果
供し、院内スタッフだけでなく、保険
的だと思います。
薬局や患者さんとの
“情報中継地点”
当人の勉強にもなるから
です。
藤井 知識が豊富な相
医薬品情報管理係長
市川 康子 先生
緩和薬物療法認定
薬剤部内に掲示した各種認定証
(一部)
の役割を強化したいと考えています。
薬剤師として、教育面で
また、治験や臨床研究の事務局とし
手に対して、人は丁寧に話を聴いてく
はどのように関わられていますか。
(治験施設支援
ての活動では、
SMO**
れるものだと思います。薬剤部全体
濵田 緩和ケアに興味を示す若手薬
機関)
と連携し、申請書や資料作成で
を、薬剤だけでなく様々な医療情報、
剤師に声をかけ、一緒に学会に参加し
医師の業務をサポートしています。こ
できれば雑学にも通じた、人間味あふ
ています。当薬剤部では本年3月に2
のような、医師の負担軽減に寄与する
れる「博識家」の集団にしたいと考え
名が同資格を取得し、更にもう1名が
取組みにも力を入れたいと思います。
ています。
資格取得に向け励んでいます。
**SMO:Site Management Organization
資格取得に際し、
「 緩和ケア領域薬
藤井 これまで、日本薬剤師会の委
病院スタッフ以外への情報提供
はいかがですか。
剤管理指導の実績を
員や熊本県薬剤師会副
市川 患者さんへの服薬指導などは
30症例以上提示」とい
会長などを務め、講演や
当然ですが、医薬品副作用被害救済
う条件は、初めて臨む人
執筆など多くの機会を
制度の給付手続き補助なども行って
にはハードルが高 いも
いただくことで活 動 の
います。
のです。経験者として、
幅を広げてきました。こ
更に、近隣の保険薬局にも積極的
症 例サマリー のまとめ
れら様々な活動を薬剤
に情報を提供しています。当院の医
方などを、院内外問わず
部全体で推進するため
薬品の採用・削除や名称変更などは
アドバイスしています。
にも、各 薬 剤 部 員 の 成
ニュースレターで通知し、また、病院
緩和ケアチーム内で
ホームページでも情報を公開して共
のリンクナースの 教 育
有できるようにしています。
にも注力しています。レ
日常業務の中で学習・研鑽し
専門性を高める
院内スタッフへの教育で重視さ
れている事柄をお教えください。
藤井 私が大切にしているのは「学
び合い」です。日常業務の中で相互に
主任
濵田 政司 先生
(緩和薬物療法認定薬剤師)
長を後 押ししたいと考
えています。
多くのスタッフが輝け
ベルアップを図るために、オピオイド
る舞台を提供することが私の役割で
の概要や麻薬の取扱い方などをテー
す。熊本県を牽引する薬剤師を育て、
マに毎月勉強会を実施しています。
地域にとっても「かけがえのない薬剤
地域を牽引する薬剤部となるよう
情報発信と人材育成に努める
部」を目指していきたいと思います。
今後の抱負をお聞かせください。
学習・研鑽できるよう、環境づくりを
濵田 緩和ケアでは、栄養や褥瘡な
行っています。一例として、
電子カルテ
どの知識も必要とされます。NSTや
端末を数台一組で配置し、隣り合った
褥瘡チームなどと連携し、見識を広げ
薬剤部員同士が業務で生じた疑問点
て更に成長していきたいと思います。
などを気軽に相談でき、学び合えるよ
また、認定・専門資格の取得を目指す
熊本総合病院薬剤部の皆さん