電弱相転移起源の残存重力波の検証可能性 松井 俊憲 共同研究者:柿崎 充, 兼村 晋哉 富山大学 (論文準備中) 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 1 内容 1.イントロダクション -‐ 研究動機 -‐ 電弱バリオン数生成のシナリオ -‐ 相転移起源の残存重力波に関する先行研究 2.模型 -‐ 熱的に強い一次相転移を実現する模型 3.ヒッグス三点結合 4.電弱相転移起源の残存重力波 5.結論 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 2 1.イントロダクション 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 3 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 研究動機 • 重力波の直接検出実験が始まっている. - 地上実験…KAGRA[日], LIGO[米], VIRGO[伊],… →中性子連星の衝突により発生する重力波を探索している. - 宇宙実験(将来計画)…eLISA[欧], DECIGO[日],… →初期宇宙起源の重力波を探索する. • 宇宙背景放射よりさらに初期の宇宙の情報 が得られる可能性がある →重力波天文学 加速器実験に加えて, BSMを探る新たな手法 として期待できる! 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 4 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 宇宙のバリオン非対称性 • 観測されたバリオン数 • サハロフの三条件…バリオン数生成の必要条件 1. バリオン数非保存過程, 2. CPの破れ, 3. 非平衡状態 • 標準理論で説明できない(mh=125GeV) • バリオン数生成を説明するシナリオ レプトジェネシス, アフレック・ダイン機構 , 電弱バリオン数生成(EWBG),… • EWBGは, 拡張されたヒッグスセクターの物理で説 明されるため加速器実験で検証できる. 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 5 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 電弱相転移の物理に焦点を当てる. 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 c T "T Tc T# T ! 1. バリオン数非保存過程 スファレロン過程 2. CPの破れ 拡張されたヒッグスセクターのCP位相 3. 非平衡状態 Veff !$, T" 電弱相転移が「強い」一次 Tc 電弱バリオン数生成 $c $ 6 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 電弱相転移とヒッグス三点結合 • 強い一次相転移( )が実現するために, 付加的ボソンのループによるノンデカップリング効果で説明できる. 数値計算 [2HDM] S.Kanemura, Y.Okada, E.Senaha, PLB606 (2005) 361 高温展開 Contour plot of ∆λhhh/λhhh and ϕc/Tc in the mΦ-M plane 450 100 % 400 mΦ (GeV) [ヒッグス二重項場2個 (2HDM)の場合] 350 50 % 300 30 % 20 % 250 10 % 200 ϕc/Tc = 1 150 ∆λhhh/λhhh = 5% 100 sin(α-β) = -1, tanβ = 1 mh = 120 GeV mΦ = mH = mA = mH +- 50 0 0 20 40 60 80 100 120 140 M (GeV) ILC(~13%@√s=1TeV)で, Δλhhh2HDM/λhhhSM >O(10%)を検証 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 7 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 先行研究と我々の研究 • 電弱相転移起源の残存重力波の先行研究 -‐ 模型に依存しない解析[1], 高次演算子[2] -‐ 輻射補正のノンデカップリング効果…MSSM[3]では, 強い一次相転移が実現できない. -‐ ツリーレベルでのノンサーマル効果(NMSSM[3], 実シングレット模型[4]) [1] C. Grojean and G. Servant, PRD75, 043507 (2007); K. Kohri et al., arXiv:1405.4166. [2] C. Delaunay et al., JHEP0804, 029 (2008). [3] R. Apreda et al., NPB631, 342 (2002). [4] A. Ashoorioon and T. Konstandin, JCAP0809, 022 (2008). • 我々はくりこみ可能な拡張スカラー模型で, 熱的な電弱相転移の検証可能性を研究する. 重力波干渉計を使って, 電弱相転移および その背後の物理を探る. 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 8 2.模型 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 9 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT O(N)模型 • 熱的に強い一次相転移を実現する模型を一般 的に取り扱いたい • O(N)対称性を持つN個のスカラー場 • O(N)→縮退したスカラー質量: • 付加的ボソンのループによるノンデカップリング効果 ヒッグス三点結合と重力波を研究する 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 10 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 理論的制限① • 真空安定性: • 摂動ユニタリティー …s波振幅の散乱行列t0を対角化 →固有値に制限: 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 11 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 理論的制限① Vacuum stability !ΛS >0) 25 20 c 15 10 5 Pe rt urb a tiv nit a rit y: N =1 N= 1 0 0 10 N= 0 "5 eu Vacuum sta bility (c> 2 Λ ΛS ) "2 0 2 4 6 8 10 12 ΛS 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 12 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 理論的制限② Tc " 0 • 強い一次相転移 (cf. SM: mh<48GeV) →mSに下限を与える • インプット値のmSを大きくするとゼロ温度での 破れた相が対称相より大きくなり, mS大 強い一次相転移が実現 Veff !!, 0" しない領域が存在する →mSに上限を与える ! 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 13 3.ヒッグス三点結合 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 14 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT ヒッグス三点結合 ΛS " 0, ΜS " 0 600 400 Per 1 st turb ord 300 500 Perturbative unitarity ativ e un 500 % itar i er P 500 $ T 100 $ 200 100 0 0 400 ty mS "GeV# mS "GeV# 500 ΛS " 0, ΜS " 0 600 300 100 % 200 25 % 25 $ 5$ 1 st order PT %c ! Tc " 1.0 $c ! Tc 5% 100 ility b a t s uum Vac 0 10 20 30 40 50 60 0 N 2015年9月15日 " 1.0 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 50 ΜS "GeV# 100 150 15 4.電弱相転移起源の残存重力波 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 16 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 電弱相転移起源の残存重力波 Numerical calculation ``Overshoo:ng-‐undershoo:ng method’’ Veff (φ, T) α, β/Ht (Ht : 相転移温度Ttでの ハッブルパラメーター) - αは, 潜熱εを輻射のエネルギー密度ρradで規格化して定義される. - β/Htは, 泡の核形成率 の変化 をハッブルパラメーターHtで規格化した量 (S3: 3次元ユークリッド作用). 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 17 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 電弱相転移起源の残存重力波 Numerical calculation Model-independent analysis ``Overshoo:ng-‐undershoo:ng method’’ C. Grojean and G. Servant, PRD75, 043507 (2007) Veff (φ, T) α, β/Ht ΩGW h2 (f) • 泡衝突とプラズマ乱流が重力波の源となる. 残存重力波: , 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 @peak frequency 18 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 重力波スペクトル !N!1(Planck) 10"6 eLISA CI GO DECIGO 10"12 -D E ate (N, m @=(6 S [GeV]) 0, 20 1)! Ul tim #GWh2 10"9 (24, 2 "15 (8, 3 56)! 41)! 10 (4, 4 08 (1, 5 )" 82)" 10"18 ΜS $ 0, ΛS $ 0 10"21 "7 10 2015年9月15日 10"5 0.001 Frequency !Hz" 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 0.1 10 19 Introduc:on | Model | Higgs triple coupling | GW from EWPT 模型のパラメーターと実験感度 Β!H 105 ΜS ! 0, ΛS ! 0 mS !90 Ultimate-DECIGO 190 130 N=6 0 N 250 =24 4 410 10 N= N= N=4 8 160 1 DECIGO 300 210 180 360 320 230 540 1000 560 380 250 400 200 340 256 580 201 100 341 eLISA 582 408 0.01 0.05 0.10 0.50 1.00 5.00 10.00 Α 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 20 結論 • 熱的に電弱相転移を実現するくりこみ可能な 模型としてO(N)模型を研究し, 重力波干渉計で 電弱相転移起源の残存重力波が捕らえられる ことを示した. • 重力波観測は, 模型の区別が可能であり, 加速器実験に加えて, BSMを探る新たな手法 として期待できる! 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 21 Back Up 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 22 重力波とは • 一般相対性理論で予言されていた波動方程 式の解(未検証) • 重力波の影響は間接的には観測されている -‐ 連星パルサーの軌道収縮が重力波の放射の予言 と一致 [Hulse and Taylor (1974)] 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 23 連星パルサーの軌道収縮の観測 実線: 重力波の放射の予言 (一般相対性理論) 点: 観測値 →1%の精度で一致 ↑ 1975年 2015年9月15日 ↑ 2005年 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 24 λhhh can be measured 13% accuracy -‐1 @ILC-‐1TeV (2500x ) ``ILC Higgs White Paper,'' arXiv:1310.0763 [hep-‐ph] 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 25 真空安定性・摂動ユニタリティー 1000 a N #1 $ " Λ#0 1 2 mS !GeV" 800 600 a N #100 200 a N #100 0 1 $ 2 u cu Va 0 $ 2 2 m 2015年9月15日 1 1 400 0 $ a N # 10 b sta y ilit c% & " Λ Λ 2 aN#100 $ 200 1 aN#10 $ 2 400 ΜS !GeV" 1 aN#1 $ 2 600 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 800 1 2 1000 26 結果のまとめ 2015年9月15日 基研研究会 素粒子物理学の進展2015 27
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