球形光束計における指向性ランプ全光束測定法の検討

群馬県立産業技術センター研究報告(201 4)
球形光束計における指向性ランプ全光束測定法の検討
高田
徹
Study on total luminous flux measurement directional lamp of using a sphere
photometer
Toru TAKADA
照明の電力消費を節約することにより、大きな省エネ効果が得られることから、LED 照明に
代表される高効率な照明機器の普及が進んでいる。照明機器の明るさを表す単位の一つに、
lm(ルーメン)があり、「全光束」と呼ばれ、光源からすべての方向に発せられる光の量を表して
いる。近年、様々な配光特性を持った LED 照明が普及している。本研究では、球形光束計を
使用し、配光特性の異なる照明器具について、測定条件が全光束値に与える影響について検討
した。
キーワード:球形光束計、LED 照明、全光束、配光
The use of LED light with high energy efficiency has been spreading because of the
large energy-saving effect obtained by saving power consumption of illumination. The
amount of light emitted from lighting equipment in all directions is denominated in lm
(lumens), which is called total luminous flux. In recent years, LED light with various
light distribution have been widespread. In this study, the influence of measurement
conditions on total luminous flux values a sphere photometer for LED lights with
different light distribution was investigated and discussed.
Keywords: sphere photometer, LED light, total luminous flux, light distribution
1
はじめに
角)を持った LED 照明器具が普及しており、
図 1 に当センター所有の標準光源とある被測
LED 照明は、明るさ、色合いなどの設定
定物の配光特性を示すが、明らかに配光特性
が容易であり、また省エネ・節電効果が見
が異なり球形光束計での全光束測定の測定精
込まれることから急速に普及が進んでいる。
度に疑問が残る。
照明器具の明るさは全光束値で表し、一般
そこで、本研究では全光束測定システムを
的に球形光束計により標準光源と被測定光
使用し、5 種類の配光特性の異なる光源(LED
源との比較にて測定を行うが、JIS_C_7801
電球)について、球形光束計内部での設置方
「一般照明用光源の測光方法」では、「標準
向(照射方向)を変化させたときに全光束値
光源の配光特性は、被測定光源の特性に近
へ与える影響をについて検討したので報告す
いものを使用することが望ましい」と記載
る。
されており、配光角が異なる場合について
は、不確かさの要因となり、測定結果に影
響を及ぼす。
近年様々な目的(明るさ、色合い、配光
電磁・光計測係
あるそれぞれの LED 電球は 60 分間予備点灯
を行い、十分安定をさせた後、積分球内部で
水平方向および垂直方向に設置方向(照射方
向)を変化させ、全光束測定を行った。照射
標準光源
被測定物
図1
2
2.1
方向のイメージ図を図 4 に示す。
配光特性
実施内容
全光束測定システムの概要
全 光 束 を 測 定 す る シ ス テ ム 、 Solid
図4
照射方向イメージ図
Lambda CCD LED Monitor Plus(株式会
社スペクトラ・コープ社製) のシステム構
2.3
成を図 2 に、測定手順を図 3 に示す。測定
2.3.1設置方法(水平方向)による全
は、はじめに NIST トレーサビリティ校正
測定結果および考察
光束値への影響
光源にて、球形光束計(内径 2m)、光ファ
積分球内部に LED 電球を設置し、水平方
イバー及び分光器(Carl Zeiss 社製)の校
向に 30 度ピッチで照射方向を回転させ、設
正を行い、次に、付属の自己吸収測定用光
置角度による全光束値測定を行い、測定結果
源にて試験品自身の自己吸収補正を行い、
を図 5 に示す。
最後に試験品を点灯させ実測定を行う。全
光束値は、分光データより算出する。
設置角度による全光束値への影響を見ると、
配光特性が全方位の LED 電球については、
平均値に対して±1%の範囲、ビーム角が 60
度の LED 電球については、±3%の範囲で収
まることが分かった。ビーム角 12 度および
ビーム角 18 度の LED 電球については、±5%
以上の幅があることがわかった。また、ビー
ム角 12 度およびビーム角 18 度の LED 電球
については、設置角度 90 度の位置で全光束
値が減少しており、この位置は、受光器手前
図2
システム構成
のバッフル位置であり、このことが影響をし
ていると考えられる。
角度
図3
測定手順
図5
2.2
測定方法
今回使用した LED 電球は、ビーム角 12
度、ビーム角 18 度、ビーム角 60 度、全方
位(電球色)、全方位(昼白色)の 5 種で
全光束値測定結果(水平方向)
2.3.2設置方法(垂直方向)による
3
まとめ
全光束値への影響
積分球内部に LED 電球を設置し、垂直
本研究では、球形光束計を使用して、異な
方向に 30 度ピッチで照射方向を移動させ、
る配光角の LED 電球に対して、設置方向が
設置角度による全光束値測定を行い、測定
全光束値および色温度に与える影響について
結果を図 6 に示す。
検討し、下記の点についてわかった。
設置角度による全光束値への影響を見る
(1) 配光角が 60 度以上の照明器具は、全光束
と、5 種類の異なる配光角の LED 電球すべ
値および色温度は設置方向の影響は少な
てが 3%以内に入り、垂直方向での照射方
く、全光束値について は±3%以内、色温
向の違いは、全光束値に影響を与えないこ
度 に つ い て は ±1% 以 内 で あ る こ と が 分
とが分かった。
かった。
(2) 配光角が 20 度以下の照明器具については、
垂直方向については影響を受けないが、
水平方向での設置が誤差要因となり、最
も大きいところでは、全光束値に 5%以上
の影響を与えることがわかった。
(3) 水 平 方 向 で の 測 定 結 果 か ら 、 全 光 束 値 は
設置方向の影響を受けるが、色温度につ
角度
いては、ほとんど設置方向の影響は受け
ないことが分かった。
図6 全光束値測定結果(垂直方向)
4
今後の展望
2.3.3設置方法(水平方向)による
色温度への影響
球形光束計での全光束測定は、照明器具の
積分球内部に LED 電球を設置し、水平
大きさが不確かさの要因となるため試験品に
方向に 30 度ピッチで照射方向を回転させ、
対して、球形光束計の直径が大きいほど、測
設置角度による色温度測定を行い、測定結
定精度が改善される。
果を図 7 に示す。
現在、当センター所有の 2m 球形光束計で、
設置角度による色温度への影響を見ると、
照明器具を測定する際の不確かさの要因とな
5 種類の異なる配光角の LED 電球すべて
る大型照明器具の自己吸収データと全光束値
が 1%以内に入り、水平方向での照射方向
との関係についても検証が必要であると考え
の違いは、色温度に影響を与えないことが
る。
分かった。
角度
図7
色温度測定結果(水平方向)