中小企業とe-ラーニング

情 報 新 時 代
2001. DECEMBER No.197
C O N T E N T S
ペリスコープ
中小企業とe-ラーニング
小川英次
おがわえいじ
名古屋大学名誉教授、中京
大学学長。1931 年名古屋市
生まれ。名古屋大学工学部、
経済学部を卒業後、64 年経
済学部助教授、同教授、同
大学院国際開発研究科長を経て、94年中京大学経営学部
教授に就任。2000 年 4 月から現職。生産管理、中小企業
経営論などの著書多数。
ペリスコープ ………………………………1
小川英次
特集
情報洪水を泳ぐ
西沢信正
………………………………………2
小さな情報の持つ意味
―ジャーナリズムの視点から
中村欽明
………………………………………6
インターネットのオープン情報を活用する
ISBCに出席して
リアルタイムでの関与がそれです。
本年 9 月 17、18、19 日の 3 日間、第
これを聞いて私は驚きました。これ
28 回 ISBC(国際中小企業協議会)
らの条件は中小企業の優れた特徴に
行政の窓……………………………………10
がスエーデン、ストックホルム市で
符合しているからです。
景気動向……………………………………11
開催され、出席しました。年1回の中
したがってインターネットの世界
翔
小企業に関する世界的規模の研究交
は、中小企業以上に大企業に利益を
流会議であります。そこには産学官
もたらす可能性があります。不透
の代表が数十カ国、800 人ほど集ま
明、共有されない文化、分断されたプ
りました。全体会議の中で「e-ラ
ロセス、調整困難、時間のかかる伝達
ーニングからc-ラーニング」とい
に悩む大企業にとってインターネッ
魅力ある愛知の中小企業 (8) ……………12
山八歯材工業(株)
科学技術は今(4) ………………………14
分子を自在に構築するナノテクノロジー
産業労働部便り……………………………16
う題目のエンゲルン教授(INSEAD
ト活用は福音といってよいでしょ
海外駐在員便り……………………………17
所属)の講演は注目すべきものでし
う。中小企業の場合、本来持ってい
INFORMATION …………………………18
た。電子手段(e)を用いた教育体
る風通しのよい体質を生かしつつ、
あいちの花めぐり…………………………20
系(e-ラーニング)よりネット上
その上でIT化を積極導入しなけれ
での協同的(c= collaborating)な
ばならぬでしょう。
次号予告……………………………………20
学習(c-ラーニング)こそ知識経
表紙
営時代の学習法であり、開発手法で
電照菊(赤羽根町)
あるというものでした。
cを協調するe-ラーニングの
すすめ
講演のなかでは、企業の製品開発
e-ラーニングは、インターネッ
ASJ Investigative Report
あいち産業情報
の事例をあげ、新製品のプロトタイ
ト、イントラネットを活用した学習
プをインターネット上に公開し、潜
法、開発法です。およそ知識を集め、
調査レポート
在顧客からのコメント、改良提案を
学び、創造するにはその学習の方法
受けます。改良したものをある程度
に優れる必要があります。e-ラー
まとめて造れば、開発費は少なく、
ニングはこれに応える画期的な手段
開発期間も著しく短縮されます。し
です。中小企業の変革には、やはり
たがって価格も安くできます。この
これが強力な手段となるでしょう。
ような事例は日本のパソコン・メー
この場合e-ラーニングにネット上
カーが実践したことがあります。
での協調性を導入するのがよいとい
……………はさみ込み
うのが、c-ラーニングの意味する
インターネットの世界と中小企業
ところです。
エンゲルン教授はネット学習で単
“
“
なる e”から c”への移行を主
むすび
張しましたが、加えてインターネッ
1
e-ラーニングは知識の経営時代
ト文化の特徴を5つあげました。(1)
の学習プロセスにおける革新手段で
透明性(2)文化の共有(3)プロセ
す。その意義を正しく理解すること
スの統合(4)プールされた調整(5)
がいまとても必要となっています。