タキソテールとマグネタイトを同時包埋したリポソームによる

タキソテールとマグネタイトを同時包埋し
たリポソームによる温熱化学療法の有用性
1,3、平澤
佐藤 充則11、吉田 素平22、山本 祐司22、前原 常弘1,3
英
1,5、渡部
1,2、青野
1,5、河内
之44、猶原 隆1,5
祐司1,2
宏通1,5
寛治22
11(株)アドメテック、22愛媛大学医学部臓器再生外科、33愛媛大学理
学部、44新居浜工業高等専門学校環境材料工学科、55愛媛大学工学部
温熱療法
・・・ 既に肝ガンでは欠かせない治療法となっている(RFA)
<利点>
・ 免疫の賦活作用 → 腫瘍局所のみならず、全身療法としての効果
・ 副作用が少ない
・先行研究:マグネタイトをリポソームに包埋 し、ウサギの舌ガンリンパ節
転移モデルに投与
(Hamaguchi et al. Cancer Sci. 2003)
これらを応用し、局所および転移リンパ節を同時に治療可能な方法を開発できないか?
<欠点>
・
・
・
43 ℃以上では正常細胞まで不可逆的に障害
低温では効果低減(cooling effect)
深部臓器では十分な温度上昇が得にくい → 装置の大型化が必要
消化管などの腫瘍へ応用するためには工夫が必要
磁性体(マグネタイト)と抗癌剤(タキソテール)を同時包埋したリポソーム(MTL)を用いた誘導加熱療法
温熱療法において現在までに行われている工夫を応用
・ ある種の抗癌剤は温熱療法を併用することで効果が増強
・ 磁性体自体が発熱 = 腫瘍を選択的に加熱
<特徴>
① 温熱療法と化学療法の相乗効果 ・・・ どちらも微小管がターゲットの一つ
温熱療法 → 微小管傷害
タキソテ−ル → 微小管脱重合阻害
② 相乗効果によりお互いの欠点が補われる
・ タキソテールの投与量が減量可能 → 副作用の軽減
・ 低い温度でも抗腫瘍効果が得られる → 正常周囲組織への影響↓
・ 磁場強度を弱く設定可能 → 装置の小型化、簡略化
③ 簡便、低侵襲
・ 内視鏡下で投与可能(凝集せず、細径針(27G)でも通過)
・ 誘導加熱 → RFAのようにアプリケーターをずっと把持しておく必要がない
方法
・ マウス: BALB/c -nu/nu, nude mouse(4週齢)
・ 細胞: MKN45(ヒト低分化胃癌細胞株)、1×107個を大腿皮下に移植
・ 約3週間後に4群に分配
group Ⅰ : コントロール (生食 0.1 mlを投与し、35分間、1kWで磁場を印加)
group Ⅱ : MTL 0.1 ml を投与、磁場印加(ー)。タキソテールの効果のみ。
group Ⅲ : マグネタイトのみを包埋したリポソーム(ML)を0.1 ml投与、磁場印加(+)。
温熱効果のみ
group Ⅳ : MTL 0.1 mlを投与、磁場を印加(+)。温熱・タキソテールの効果。
・ 腫瘍表面温を42〜43 ℃にコントロール(サーモグラフィーで監視)
・ 磁場印加時間は42 ℃を超えた時点から30分間
MTLの電顕写真像
MTLの電顕写真像 (TEM, x 30000)
磁場発生装置
磁場発生装置
整合機
整合機
コイル
コイル
100×130
100×130 mm
mm
高周波電源
高周波電源
結果
1、包埋するタキソテール濃度の違いによる腫瘍体積変化の違い
1、包埋するタキソテール濃度の違いによる腫瘍体積変化の違い
n = 3, each
mean ± S.E.
TXT
g/ml
TXT 18.8
18.8 µµg/ml
control
MTL, heating(-)
MTL, heating(+)
TXT
g/ml
TXT 191.2
191.2 µµg/ml
TXT 56.4 µg/ml
TXT
g/ml
TXT 428.0
428.0 µµg/ml
結果
2−1、
MTLを用いた誘導加熱の抗腫瘍効果(従来の誘導加熱による温熱療法との比較)
2−1、MTLを用いた誘導加熱の抗腫瘍効果(従来の誘導加熱による温熱療法との比較)
MTL印加中のサーモグラフィー写真
MTL印加中のサーモグラフィー写真
ML,
印加中の温度,出力の変化
ML, MTL
MTL印加中の温度,出力の変化
コイル
mouse
n = 6, each, Mean ± S.D.
結果
2−1、
MTLを用いた誘導加熱の抗腫瘍効果 ((従来の誘導加熱による温熱療法との比較)
従来の誘導加熱による温熱療法との比較)
2−1、MTLを用いた誘導加熱の抗腫瘍効果
治療後の腫瘍体積変化
治療後の腫瘍体積変化
MTL
印加後の腫瘍の肉眼的変化
MTL印加後の腫瘍の肉眼的変化
印加直後
印加直後
印加14日後
印加14日後
治療後のマウスの生存率
治療後のマウスの生存率
印加4週間後
印加4週間後
結果
2−2、
MTL誘導加熱後のドセタキセルの体内濃度変化
2−2、MTL誘導加熱後のドセタキセルの体内濃度変化
結語
・ 磁性体(マグネタイト)と抗癌剤(タキソテール)を同時包埋したリポソー
ムを用いて、腫瘍局所における温熱化学療法を行った
・ 温熱療法と化学療法の相乗効果により、
1 少ないタキソテール投与量で有効な抗腫瘍効果が得られた
2 温熱療法のみでは十分な効果が得られなかった低い温度帯で
有効な抗腫瘍効果が得られた
3 マウスでは有意な生存期間延長を確認した
・ リポソームに包埋されたタキソテールは、腫瘍の縮小とともに腫瘍内
から消失し、肝臓で濃度上昇を認め、徐々に消失していた
・ 新しいガン局所療法としての可能性が示唆され、今後は転移リンパ節
を有するモデルに投与して抗腫瘍効果を検討していく予定である