2014 年 12月号 VOL.107 糖尿病看護認定看護師 尾近望都 糖尿病とは、インスリン作用不足により血糖値の高い状態が続き、進行すると神経や目、腎臓に重篤な合併症 を引き起こすことのある病気のことです。糖尿病には色々なタイプがありますが、ここでは一般的である2型 糖尿病についてお話したいと思います。まず、インスリン作用不足には大きく分けて2つの原因があります。 ①膵臓からのインスリンの分泌が悪くなること ②インスリンの効きが悪くなることです。このインスリン作 用不足をきたす遺伝因子に過食や運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わって 2 型糖尿病 は発症すると言われています。 さて、それでは糖尿病を予防するためにはどうすればいいのでしょう か。まずは食事です。食べる量は多くないけれど血糖値が高めと言わ れる方の中には炭水化物、つまりご飯やパン、麺類中心の食事に偏っ ている場合があります。炭水化物は大事な栄養素のひとつですが偏る とよくありません。「糖尿病食なんて嫌だ」とよく耳にすることがあ ります。しかし最近ではタニタ食堂に代表されるヘルシーメニューは、 病気の人だけの食事ではなく、健康な人もより健康になるための食事 として見直されてきています。そして食べ方も昔とは変わってきたこ とがあります。主食→主菜→副菜をバランスよく食べ進める、いわゆ る三角食べといわれる食べ方をマナーとして教えられてきた方も多 図 1 一般的な食べ方 いのではないでしょうか。 しかし、最近では糖尿病のある方には副菜から順番に食べるようにお 勧めしています。それは、野菜に多く含まれる食物繊維が炭水化物の吸収速度を緩やかにして食後の高血糖を 抑えることができると言われているからです。また、歯ごたえのある根菜類は噛むことで少量でも満足感が得 られ、野菜であらかじめお腹を満たす ことで少量の食事でも満腹感が得られ ます。もちろん野菜から食べるように しても間食や食べ過ぎはよくありませ んが、これなら手軽に実践できるので はないでしょうか。 まずは食事を少しだけ見直して、健康 図 2 血糖値が上がりにくくするために、順番を意識する食べ方 な体を手に入れましょう。 食物繊維→タンパク質→炭水化物 第 7 回六甲星の会の集い 開催いたしました ……………………………… 11 月 8 日(土)13:30 より、6 階大会議室にて、第 7 回目となる六甲星の会を開催しました。 今回は 14 名の方が参加して下さいました。 ☆ところで、六甲星の会のこと、ご存知ですか……? 糖尿病の予防や改善には、運動療法と食事療法が大切ですが、自分の生活スタイルや食習慣を自 分一人だけでは改善することはなかなか難しいことです。そこで、少しでも生活改善のサポート をしようという目的で立ち上がったのが『六甲星の会』です。 同じ立場の患者様同士、意見交流できる場を設け、またそれぞれ専門スタッフによるサポートも させて頂いています。このような活動は日本糖尿病協会が中心となり『友の会』と称し全国でも 行われています。 ☆活動内容☆ 医師、看護師、理学療法士、薬剤師、検査技師、事務員、栄養士の他職種のスタッフにより、 年 2 回、春と秋に実施しています。主に運動、食事、検査等、会を重ねることに内容も充実して おり、参加者も少しずつ増えてきています。 第 7 回星の会の様子を少しだけご紹介 理学療法士による ストレッチ教室☆ ★糖尿病チーム活動委員会メンバーです★ カロリーなどを考慮した お菓子のご紹介♪ 何かご質問などございましたら、 糖尿病センタースタッフまで、お問い合わせください。 ★興味のある方は是非、お気軽にご参加ください。チーム一同、お待ちしております★ 渡航ワクチンについて …………………………………………………………… (第2回) 国際内科 山本厚太 当院ではさまざまな種類のワクチンを取り扱っています。渡航の際に必要なワクチンを中心に、ワクチンの種類 とその必要性・重要性を解説いたします。今回は全4回シリーズの、第2回。狂犬病、風疹・麻疹、ポリオについ て解説いたします。 4)狂犬病 わが国では昭和 25 年(1950)の狂犬病予防法制定以降、患者数は激減し、昭和 31 年(1956)のヒトとイヌ、昭和 32 年(1957)のネコを最後に狂犬病の発生はなくなりました(1949 年は 74 名ヒト狂犬病がピーク)。その後は、 昭和 45 年(1970)にネパールから帰国して国内で発症した輸入例が 1 名、平成 18 年(2006)11 月に、フィリピン 滞在中にイヌに咬まれ、2名が死亡しています。いずれも、ワクチンの曝露後治療を受けていません。 狂犬病ワクチンには暴露前接種と暴露後接種があります。暴露前接種は渡航前に3回接種を受けます。欧 米では、通常1ヶ月に3回接種します(但し犬など動物咬傷が起れば、2回のワクチンの追加接種が必要とな ります)。対象者は、獣医師や、流行地や医療アクセスの悪い地域への渡航者が対象となります。1年に約6 万人が死亡する狂犬病ですが、患者発生の 1/3 はインドです。 暴露後接種は、動物咬傷後治療のためのワクチンです。動物は犬が多くみられますが、あらゆる哺乳類に狂 犬病のリスクがあります。ワクチン接種の既往がなければ、抗狂犬病ヒト免疫グロブリン(HRIG)とワクチン接 種を始めます(Essen 法や Zagreb 法など様々な方法があります)。暴露後のワクチン接種回数は、Essen 法で は5回、米国では4回接種しますが、HRIG など常備のない日本では6回となっています。WHO の統計によれ ば、世界中で毎年、2000 万人が暴露後接種の治療を受けています。また、昨年は、動物モニタリングの始ま った台湾で、イタチアナグマに狂犬病が認められ、大騒ぎになりました(台湾は日本同様、狂犬病の危険のな い国と認定されていました)。狂犬病は、一部の例外(米国でのミルウォーキプロトコル)を除き、致死率は 100%です。 ワクチン治療はパスツールにより、すでに 1885 年に始められました。1980 年頃以降は、安全な組織培養細胞 を用いた精製不活化ワクチンが先進国で流通してするようになり、暴露前接種も安全に施行できるようになり ました。海外では、依然古いタイプのワクチンが使用されている地域があります。動物咬傷の場合、外国で治 療を開始される場合が多いですが、必ずワクチンのパッケージなどを入手しておいてください。旧タイプのワク チンでは、脱髄性脳炎などの重大な神経系副反応が発生し、頻度も 600-8000 例に1例と報告されています。 アフリカへ駐在している会社員は、近在に信頼できる医療機関がない場合、赴任前に暴露前接種を済ませ、 暴露後は欧州へ行って治療を受けるよう指導しているようです。海外で処方薬を受けた場合は、常に、カウン ターフィット薬(偽造医薬品)の問題があります。カウンターフィット薬の存在は、先進国ではインターネットなど でのバイアグラなどの医薬品に限られ、1%未満ですが、アジア・南米の一部、アフリカの多くの国では 10-30%、旧ソ連邦諸国では 20%と言われています。これらカウンターフィット薬は、偽物という問題だけでな く、ワクチンの保存の状態(期限)もよくわかりません。海外で医療を受けるのはなかなか勇気がいるものなの です。 5)麻疹・風疹 現在25歳以下の男女は麻疹・風疹接種の2回接種群となります。渡航ワクチンとしても基本であり、抗体価な どをチェックして適宜追加接種しています。2007 年はカナダへの 131 名の高校生修学旅行で1名麻疹患者が発 生し、地元保険当局の指示で抗体検査を受けました。検査で抗体のなかった41人は予防接種を受けましたが、 帰国の際への搭乗を一時拒否されました。このように、先進国の赴任や旅行で麻疹が発症すると、マスコミ報 道の対象にされ、思わぬ加害者になることを銘記しなければなりません。米国への留学では、種々のワクチン が要求されます(州、学校、年度によって異なる、よく制度が変更になるのも一要因)が、なかでも麻疹と風疹ワ クチンの2回接種完了が優先されます。日本では、2005 年から 2011 年まで、5 例 CRS(先天性風疹症候群患 者)の発生がありましたが、うち、3 例は海外での感染でした。 裏面へ続きます⇒ 渡航ワクチンについて【第 2 回】 6)ポリオ 2013 年まで、野生株ポリオ(1型と3型。2型は 1999 年に駆逐されました)の常在国は、パキスタン、アフガニス タン、(2011 年にインドからポリオが排除?:CDC 2012)、ナイジェリアの3ヶ国 となっていました(但し、2011 年、中国に 21 例報告があります。これはパキスタンからの野生株と一致しました)。但し、2014 年は様相が一 変、WHO も5月に緊急宣言を行い、状況は厳しいものとなっています。つまり、10 か国(アフガニスタン、カメル ーン、シリア、赤道ギニア、エチオピア、イラク、イスラエル、ナイジェリア、パキスタン、ソマリア)にポリオ患者の 発生があったのです。 2012 年からポリオワクチンは、従来の経口の生ワクチンである OPV から不活化ワクチンへ移行しています。但 し、成人の場合 OPV2回のみの人が多くいます(1960 年の 5606 名の患者発生を受け、翌年より、Salk(不活 化)と Sabin(生)株と2種類でワクチンが始まりました。1964 年より、経口生ワクチンである Sabin による2回法 になりました)。諸外国に比べ回数が少なく、抗体の保有率は 80-90%と報告されています(昭和 50-52 年に接 種された者は抗体保有率が低く、昭和 51 年では 37%)。これら常在国や周辺国では、基礎免疫を終了してい ても、最低1回の IPV(不活化ポリオワクチン)の追加が必要です。 ………………………………………次回は日本脳炎、インフルエンザ、肝炎、腸チフスを掲載予定です 乳がん市民公開講座を開催いたしました 日時 : 場所 : 総合司会 講演司会 第1部 : 第2部 : 第3部 : ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 2014 年 10 月 4 日(土) 14:00~16:00 ANA クラウンプラザホテル : 河野 範男 先生 神戸海星病院 病院長 : 窪田 智行 先生 総合上飯田第一病院 乳腺外科部長 高尾 信太郎 先生 兵庫県立がんセンター「乳癌と遺伝」 石川 孝 先生 東京医科大学病院「乳がん治療」 個別医療相談会開催・質疑応答など 2014 年 10 月 4 日(土)、ANA クラウンプラザホテルで乳がん市民公開講座が開催されました。 当日は、200 名程の受講者がお越しになられ、講座を満喫されました。講座終了後の医療個別相談も盛況でした。 院内行事のお知らせ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 神戸海星病院では、年間を通して様々なイベントを行っております。 とくに 7月 七夕コンサート 総合受付の特設ステージにて、海星職員、他皆様による楽器演奏や舞踏などを披露! 12月 キャンドルサービス 聖なる夜に、各病棟へ、聖歌隊と天使たちがプレゼントを運びます 上記行事は、当院恒例行事となっています。 また、いきいき健康教室、市民公開講座、ブラックジャックセミナーなど、様々なイベントを企画・運営しております。 開催時は院内掲示板やモニターなどで告知させていただいておりますので、ぜひご参加ください。 医療法人財団 神戸海星病院 …………………………………………………………… 〒657-0068 神戸市灘区篠原北町 3-11-15 TEL 078 (871) 5201(代表) ◆http://www.kobe-kaisei.org/ 神戸海星病院ニュース 12月号 2014 年 12 月発行 ◆ 編集責任者 矢政 健一
© Copyright 2025 ExpyDoc