Draft

千鳥状に配置されたヒレ型推進機の 推力 特性
Flow Characteristics of the Staggered Arranged Oscillating Fin Propulsors
Kazunori HOSOTANI, Yoichi OGATA, Takayuki ISHII, Syota ANDOH and Souta MATSUBARA
ABSTRACT
Fish tail like propulsors with two oscillating fins connected in parallel and staggered
was investigated to aim an environment friendly and energy saving propulsor. In this
study, thrust characteristics and dominant flow patterns of the palm-sized fin propulsor
were investigated by particle image velocimetry (PIV) and principle component analysis
(PCA). As the result of PCA, the staggered arranged fin setting which makes relatively
big thrust showed a strip-like branch flow pattern extending along the two fins.
Keywords: Oscillating fin, Biomimetic propulsion, PIV, PCA
1.序
論
魚のヒレのような弾性振動翼を持つヒレ型推進機は安全でゴミ等の巻き込みの心配が少ないなどの特徴を有し,極浅
海域用の推進機としての活用が期待できる.しかしながらヒレ型推進機の推進効率はスクリュープロペラよりも小さく,
特に小型のロボット魚のヒレ推進は1%にも満たないようである 1).
本研究ではヒレ型推進機を二台接続し,流れの制御による推力向上を試みた.複数魚の遊泳時の配置について,Marras
2)は魚とロボット魚を水路内で遊泳させ,魚が千鳥配置を維持するように遊泳することを報告している.Dong
ら
ら
3)
は数体の魚体を並列に固定した数値シミュレーションを行っており,条件によって推力は向上する場合と減少する場合
とがあることを示している.また田中ら 4)は数値シミュレーションにより千鳥配置の魚体周りの流れと推力・抗力係数
を推算し,魚体間隔 S を体長 L で割った無次元数 S/L が 1 で取り付け幅 B を体長 L で割った無次元数 B/L が 0.3 であ
る条件で,単独のケースに比べ運動効率が向上することや並列では逆に推力が低下する結果を示している.このように
千鳥配置は推力向上に効果があると期待できるが実機を使った水理実験は殆ど行われていない.筆者らは長さ 8cm 玩具
の魚ロボットや Fig.1 に示す 8cm 角のヒレを持つ推進機を二台接続し,同期したヒレの動きを与えた場合の速度や推力
を調べた 5).この結果,二つのヒレが同期した往復運動を行う場合,千鳥配置の玩具ロボットの遊泳速度は最大で 10%
向上した他,Fig.1 の推進機の平均推力はヒレ間隔 S=4cm の千鳥配置にすることで並列時よりも最大で 5%の推力が向
上することが確認された(Table 1).配置による推力の違いは Fig.2 の位相平均推力に表れており,千鳥配置時は推力
の立ち上が急峻であることがわかった.
本研究ではこの推力向上に寄与するヒレ後流の特徴を把握するため,PIV 計測と主成分解析による主要な流れパター
ンの抽出を行った.
Propulsor
PIV analysis grids
Camera
S
V (i , j)
B
Fin-1
Y
Green
Laser
80mm
Fin-2
70mm
Captured image size: 320 x 228
X
Fig.1 Experimental setup and fin arrangement
Table 1 Averaged thrust
S
推力
(mm)
T(N)
0
0.43
20
0.44
ヒレと駆動条件
・駆動周波数
1.67Hz(同期)
・ポリプロピレン製
40
0.45
ヒレ(1mm 厚)×2 枚
Fig.2 Ensemble-ave. thrust
2.流れの PIV 計測方法と主成分解析
Fig.1 に示す三角形ヒレを用い,並列配置及び千鳥配置のヒレ後流の水平断面の流れ場の PIV 計測を行った.駆動条
件は前述の Table 1 と同じであり,二枚のヒレは同期した動きを行う.配置は推力試験により顕著な違いが見られた並
列配置(S=0mm)と千鳥配置(S=40mm)の二ケースとした.後流の可視化は流動内に混入された直径φ0.1mm のセ
ルロース粒子群をレーザーシート光で照射し,300fps の高速カメラ(カトウ光研 K-Ⅱ)を用いて約 20 ㎝×20 ㎝の範囲の
水平断面画像を撮影した.ここで,カメラは粒子からの強い後方散乱光を撮影するために傾斜した位置に設置したため,
撮影画像(320pix×228pix)は奥行方向が圧縮された画像となるが,台形補正等の画像処理は行ってない.
撮影されたヒレの振り始めから 1.8 秒(約 3 周期分)の画像から PIV により流速ベクトル場を求めた.PIV 計測は濃
度相関法によるアルゴリズム(ライブラリー社製)を使用し,17×10 に分割した格子(格子サイズ:15pixel×15pixel)
の速度成分から流速を求めた.今回の PIV 計測条件は過誤ベクトルの発生を抑えるため,二枚毎に算出した四シーンの
ベクトル場を平均化したため,一シーンは 0.03 秒間の平均場となる.さらに格子間隔が大きいことからヒレから放出さ
れる渦のような小規模スケールの流れ構造は検出できないことに注意が必要である.
PIV 計測で得られたヒレの振り始めから 1 周期毎(約 0.6 秒間,180 シーン)の流速データを用いて主成分解析を行
い,配置に伴うヒレ後流の流れパターンの違いを比較した.主成分解析は高次元のデータをいくつかの成分に低次元化
する教師なしの線形射影であるが,カルマン渦列を示す鈍頭物体後流では平均流と類似したパターンが第1モードに,
剥離渦を形成するパターンが第 2,第 3 モードに現れることが知られている.今回は空間及び時間の解像度が粗い PIV
計測結果を用いたため,渦などの流れの変動成分の抽出は期待できないことから,主流となる第 1 モードのパターンに
注目した.
3.PIV 結果と PCA で抽出された流れパターン
ヒレが並列に配置されたケースと千鳥状に配置されたケースの PIV 計測結果について,ヒレの振り始めから 3 周期分
の平均流速場を Fig. 3 に示す.並列配置では速い流れが広範囲に広がっているのに対し,推力の向上が見られた千鳥配
置では前方側のヒレから後方のヒレを介して後方に分布するパターンが見られるなど,配置に伴う流れの違いが確認さ
れた.
0
10
20
30
40
50 (cm/s)
Averaged
00
1010
2020
3030
4040
(cm/s)
5050(cm/s)
Averaged
Fig.3 Averaged velocity fields obtained by PIV
主成分解析結果について,ヒレの振り始めから 1 周期目の解析により得られた各モードの固有値と各周期のモード 1
のパターンを Fig. 4 に示す.固有値の累積図を見ると,両配置ともモード 1 とモード 2 が支配的であることがわかる.
正規化されたモード 1 のパターンは Fig. 3 の平均流速場と類似し,モード 2 以降は流速変動を与えると推測される斑点
状のパターンが得られた.平均推力が約 5%向上した千鳥配置における周期毎のモード 1 のパターンは前方のヒレから
発生した流れが二股に分かれ,一つは後方のヒレを介して移流する細長い帯状のパターンを示し,周期毎に後方に発達
している様子が示されている.この帯状の流れパターンは後方のヒレが前方のヒレが作り出す流れの中で振られている
ことを示唆しており,推力向上のメカニズムを表すものと推測できる.
90%
100%
90%
80%
80%
70%
寄与率
累積寄与率
50%
寄与率
70%
寄与率
寄与率
60%
40%
60%
累積寄与率
50%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
0%
0
2
4
6
8
10
0
2
1周期目
1周期目
2周期目
2周期目
3周期目
3周期目
(a) Parallel fin setting
4
6
8
10
モード(No.)
モード(No.)
(b) Staggered fin setting
Fig. 4 Eigen values and dominant flow patterns
4.まとめ
本研究では三角形のヒレを持つ二台の弾性振動翼を並列および千鳥状に配置し,推力の違いをもたらす流れ構造の把
握を試みた.PIV 計測と得られた流れ場の主成分
解析の結果,並列配置に比べておよそ 5%推力が向上する千鳥配置のヒレが発する流速場は前方のヒレから後方のヒレ
を介して分布する帯状のパターンを形成することが確認された.
参 考 文 献
1) 池田洋平,田尻智紀,高田洋吾: 各アクチュエータの位相差と尾ひれの素材が魚ロボットの推進性能に及ぼす影響, 日本機械学会
ロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMEC2013), 1A1-B06.
2) Stefano Marras, Maurizio Porfiri, Fish and robots swimming together: attraction towards the robot demands biomimetic
locomotion,J. The Royal Society Interface 9 (73)(2012),p.1856-1868.
3) Gen-Jin Dong, Xi-Yun Lu, Characteristics of flow over traveling wavy foils in a side-by-side arrangement, Physics Fluids
(2007), 19057107.
4) 田中千智,尾形陽一,西田恵哉:群魚推進に及ぼす後流渦列挙動の数値的考察,日本機械学会中国四国支部第 51 期総会・講演会
講義論文集 (2013), 1106.
5) 細谷和範,石井貴之,小林大輝: 並列に配置された弾性振動翼の推力特性に関する実験的研究, 日本機械学会ロボティクス・メ
カトロニクス講演会(ROBOMEC2015), 2S1-C06(1)-(4).