応用技術部生物工学科 奥 村幸広 八 十川大輔 発酵食品部調味食品科

近赤外 を利用 した調 味料の非破壊分析 に 関す る試験研究
(H9-10)
応用技術部生物工学科 奥 村幸広 八 十川大輔
中川 良 二 長 島 浩 二
発酵食 品部調味食 品科
山木 携
本 堂正明
研究の 目的 と概 要
食 品成分 の分析 に関 して注 目されてい る技術 に、
非破壊計測法 を利用 した分析技術 が ある。非破
壊法 の特徴 として迅 速性 、
大量 の化学薬 品が不要、
試料 の前処理が容易 、
測定試料 の 回収 が可能 な
どが あげ られ る。この特徴 を利用 して 、
大量試料 の定期 的な分析や 、
製造 プ ロセ ス にお けるオ ン ラ
イ ン管理 にお い て非 常 に有効 な技術 として 、そ の活用 が期待 され てい る。
近赤外法は、
食 品 の非破壊分析 の なかで も研 究 の進 め られ てい る技術 のひ とつ である。本研究で
は演1定対象 として 醤油 を とりあげ 、
BRIX、食塩 の分析 に関 して予測精度 の 良好な検量線 の
全窒素、
1ヽ
作成 が可 能で あった 今回 はアル コール の測定 につい て検討 を行 った。
実用または予定 され る効果
・醤泊 の JAS格 付検査 (公定法)へ の適用
・
醤油製造 にお けるオ ン ライ ンエ程管理手法 の 開発
2.
試験研究の方法
試料 は北海道味噌醤油技術会 よ り提供 していただいたJAS格付 検 査用の醤油 を使用 した。基準 と
な る化 学分析値 はGC法 で測定 した。近赤外 (bTIR)スペ ク トル はNIR Systems社のNIRS 6500型を
使用 して連続 スペ ク トル を測定 した。検量線 の作成 ・
評価 、お よび スペ ク トル の二 次微分 は、装置
付属 のNSAS kr.3.20を使用 した。GCお よびNIRス ペ ク トル の測 定条件 は表 1に示 した。
JAS格 付検査用試料216点について 、
GC法 によ り基準 とな るエ タノー ル 含 量 を測定 し、それ ぞれ
のNIRス ペ ク トル (図2)を 測定 した。この うち検量線作成試料 として 108′
点を選抜 し、重回帰分
析 (変数増加 法)に よつて 、化学分析値 と相 関 の高 い 波長 を選択 しなが ら、検量線 を作成 し、SEC
点
検量線評価用試料 108′
(検量線標 準誤差)の低 い もの を50個選抜 した。これ らの検量線 を用 いて 、
ー
に対 してそれ ぞれ予測 エ タノ ル 含 量 を算 出 し、
既知 の化 学分析値 と照合 した。そ の 中か ら、SEP
予測精度 の高 い検量線 として評価 した。
(予演1標準誤差)の低 い もの を、
実験結 果
一
次微分処理 は、
微少 な ピー クを強調す るために有効であるが、 方で ノイ ズ も同時に強調す
(1)二
ー
ー
原ス
るた め、
検量線 の精度 向上 に寄与す るか どうかはケ スバ イケ ス とい われ てい る。そ こで 、
ペ ク トル お よび 二次微分 スペ ク トル か ら検量線 を試作 し、
そ の結
予測精度 の比較 を行 つた (表2)。
ー
予浪1精度 の
果、
醤 油 中 のアル コ ル 測定 に関 しては、スペ ク トル を二 次微分 処理す る ことによ り、
高 い検量線 を作成す る ことが 可能だ った (図2,3)c
0∼5%に 調製 した エ タノール 水溶 液 のNIRス ペ ク トル を演1定 し
(2)選択波長 の帰属 を行 うた め、
ー
成 分 由来 の 吸収 ピ クが確認 しに
た。水溶液系 のhIIRスペ ク トル は、
水 に由来す る吸収 が大 き く、
エ タノール 由来 の ピー クを強調 して検討 した (図4)。
くい。そ こで 、
水 との差 スペ ク トル を計算 し、
ー
それ以
1700nIIn付
近お よび2200∼2300nln付
近 に見 られ る正 の吸収はエ タノ ル に由来す るもの、
一
外 の負 の吸収 は主 に溶媒 (水)の吸収 の変化 であると考え られ る。第 波長 として選択 された2266nln
エ タノール の 吸収 に由来す るもの と考 え
次微分 スペ ク トル )は、
(原スペ ク トル )お よび1688nln(二
られた。
―-52-―
表 1-b近 赤外 ス ペ ク トル測定条件
表 1-a GC測 定条件
GC本 体
カ ラム
70型世
五263‐
日二
80mesh)
Porapak pe
η Q(50‐
3111m×2m(ガ ラス カ ラム)
検 出器
温度
ガ ス流量
内部標準
FコD
カ ラ ム 1 4 5 ℃、注入 部 ・検 出部 2 1 0 ℃
キ ャ リア ー 3 0 皿/ m i n ( H c )
NIR wstems 6500型
透 過 検 出器
装置
検 出器
セル
測 定範 囲
温度
lmm
2 n m ス テ ップ
400∼ 2500nln、
25℃
PrOH
2‐
エタノール、0∼5%
原 スペ ク トル
0
4
5
Ю
0
︱︱︱︱︱ウ
%
5
”
レ
一
エ
ノ
タ
-01
● 15
二 次微分ス ペ ク トル
400
800
図 4.
1200
1600
2000
エ タ ノ ー ル の N I R ・差 ス ペ ク トル ( 原ス ペ ク トル )
( 0 ∼5 % エタノールから水のスペクトルを差し引いたもの)
2400
図2 . 醤油のN I R ス ペ ク トル ( 透過法、光路長 l m m )
650
0.175
1982
1898 2210
0.218
2266
1982
1402 2212
0225
0228
2266 2208
2266
1982
郷
2266
-
“
λ 4
λ 3
432
NI R計算 値 ︵%︶
λ2
昴
λl
2266 2208
“
〈
原 スペク トル)
N I R計算 値 ︵%︶
作検量線の選択波長 と予測精度
“
表 2.試
1898 2330
0.233
( 二次微分スペク トル)
λl
λ 2
λ 3
1864
1688
1314
586
1784
0.138 -―――一一―J>
1580
0.138
470
0.138
0.138
1`88 1382 2290
582
0.139
駒 ”
976
節
472
1688 1382
昴
1688
584
SEP
“
1688 1888 2292
λ 4
050
250
450
650
化学 分析 値 ( % )
4.要 約
ー
醤 油 中 の ア ル コ ル 分 に関 して 、近 赤 外 法 に よ る非破 壊 分析 を試 み た 。 予測 精 度 の 高 い 検 量
ー
線 を作 成 す る に は ス ペ ク トル の 二 次 微 分 処 理 が 有 効 で 、 エ タ ノ ル 由 来 の 吸 収 波 長 で あ る
1 6 8 8 n m を 含 む 4 波 長 を使 用 した 検 量線 に よ つて 、 S E P = 0 . 1 3 8 の精 度 で 演1 定可能 で あ つた 。
1)食
品加工研究センター 平 成 9 年度事業報告
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