アブストラクト付きプログラム(PDF)

Workshop 2015 on Mathematics and Mathematical Education
平成 27 年 8 月 30 日 (日)∼9 月 1 日 (火)
於 奈良教育大学 新館 2 号棟 310 講義室
〒 630-8528 奈良県奈良市高畑町
平成 27 年度科学研究費 【若手研究 B(26800039,代表者 花木 良)】の援助を受け,
「Workshop 2015 on
Mathematics and Mathematical Education」を開催いたします.
世話人 花木 良 (奈良教育大学教育学部) , 吉井 貴寿 (奈良教育大学理数教育研究センター)
アブストラクト付きプログラム
8 月 30 日 (日)
13:30-14:00 双曲コクセター多面体とその増大度 (幾何学)
雪田 友成 (早稲田大学大学院教育学研究科)
3 次元双曲幾何学におけるコクセター多面体の実現可能性について得られた結果を説明す
る。またその増大度の代数的性質について得られている結果を説明する。
14:20-14:50 内積の定義に見る現代数学教育の問題点 (数学教育学)
山崎 亮介 (東京大学大学院数理科学研究科)
本来、内積やそれの一般化であるリーマン計量とは、一般のベクトル空間や多様体上のベ
クトルや曲線の「長さ」,
「角度」を定義するためのものであり、空間を幾何学的観点で見
るための道具であるといえます。しかしながら、高校の数学 B の教科書をみると、内積が
初めからベクトルのノルムとなす角の積として定義されており、高校生が説明を聞かされ
ても内積の「ありがたみ」がよく理解できないような内容になっています。また、数学
の曲線の定義にも同じような構成が見受けられます。この講演では、内積と曲線の長さを
題材として幾何学的観点を養う教育方法を考えるとともに、高校生にも理解できる双曲幾
何学の入門についてお話ししたいと思います。
15:10-15:40 On an estimation of the flat plumbing basket number of knots (結び目理論)
井本 奈緒 (奈良女子大学大学院人間文化研究科)
For a knot K, Hirose and Nakashima introduced flat plumbing basket number, denoted
fpbk(K), which is the minimal number of annuli to obtain a flat plumbing basket surface
of K. In this talk, we introduce basket diagram to represent basket, which is an extension
of flat plumbing basket diagram, and introduce some operations on basket diagrams.
Further, we talk about an estimation of flat plumbing basket number of connected sum
of knots.
16:00-16:30 エッシャーの‘ 平面の正則分割 ’に関する教材開発 (数学教育学)
川内 充延 (兵庫教育大学)
「M.C. エッシャーのグラフィック作品とドローイング」(1960 年)には,
‘ 平面の正則分
割 ’の作品が図版として掲載されている。エッシャーの周期的なドローイングは,対称性
についての良いテキストであり,その作品は科学者たちの概念的なアイデアを具現化して
いた。本稿では,平面を隙間なく敷き詰めるための最小単位について,エッシャーの発想
を考察し,授業実践を念頭においた教材案を提示する。
16:50-17:20 数学の虚構性 (数学教育学)
小出 隆博 (早稲田大学大学院教育学研究科)
本講演においては、2016 年 1 月に提出予定の修士論文の一部分としての「数学の哲学」に
おける「数学の虚構性」について取り上げる。これは三部構成を予定している修士論文の
第一部にあたる。第二部は教育、第三部は宗教についてである。修士論文のタイトル案は、
「数学・教育・宗教における宗教性」であり、これは数学と教育と宗教が一つの宗教性で貫
かれているということを主張したいということである.
17:40-18:10 数学をいかにして伝えるか
花木 良 (奈良教育大学)
数学は多くの人にとって伝わりづらい学問である.
これまでに講演者が教材や教具を用いて伝えてきた数学を紹介する.
18:10-18:30 自由討論&諸連絡
8 月 31 日 (月)
10:00-10:30 ブロックを用いた作図教材の開発 (数学教育)
鎌部 祐希 (奈良教育大学大学院教育学研究科)
本教材は、図形の性質を利用し、作図ツールを作り出す体験をするものである。対象は、
中学 2 年生の「三角形・四角形」を想定している。本発表での作図ツー ルは、例えば、与
えられた長さに対して、その長さを一辺とする正方形を描く、すなわち平面上の 4 点を決
定するツールである。このようなツールを通した学習を考察する。
10:50-11:20 ガウスの超幾何関数及びその合流型超幾何関数における隣接関係について (複素解析学幾何学)
田端 利紀 (早稲田大学大学院基幹理工学研究科)
ガウスの超幾何関数(以下 GHGF とする)は 3 つのパラメータと 1 つの変数から構成され
る級数で、半径 1 の円板内で一様収束し、その上で正則関数となる。GHGF にはパラメー
タの値が 1 だけ異なっている関数を結ぶ微分差分関係式が存在する。これらの関係式を隣
接関係という。
今回の公演では、GHGF の隣接関係を紹介し、また、GHGF から合流というある種の極
限操作を用いて得られるクンマーの超幾何関数の隣接関係は GHGF の隣接関係の形式的極
限操作からも得られることを紹介する。
11:40-12:10 On a homomorphism induced by a 4-valent graph on a surface (結び目理論)
橋爪 惠 (奈良女子大学大学院人間文化研究科)
In 2010, Ayaka Shimizu et.al. defined a local transformation on link diagram called region crossing change.In [1], for each link diagram G on S 2 , I introduced a homomorphism
f : 2F (G) → 2V (G) induced by region crossing change, where F (G) (V (G) reap.) denotes
the set of the faces (crossings reap.) of G. Recently Kenta Ozeki extended f to a homomorphism induced by a 4-valent graph on a surface, denoted by φ and gave a dimension
of the image of φ. In this talk, I introduce his results and give some observations about
φ.
参考文献
[1] M. Hashizume. On the homomorphism induced by region crossing change, JP Journal
of Geometry and Topology, Volume14, Number 1, (2013), pp29-37.
14:00-14:30 Barning-Hall の Tree の生成行列の導出方法の一提案―原始ピタゴラス三角形の生成規則の背景
に注目して― (数学教育学)
今野 晃 (早稲田大学大学院教育学研究科)
算数・数学の学習時に重視することの1つとして,単なる知識のみならず構造的な理解を
求める傾向が強まっている。その上で,本研究は指導者が教材への理解を深めることの良
さを前提に,具体例を提示することを目的とする。本論では Barning-Hall の Tree の導出
をより構造的に行うべく,原始ピタゴラス三角形の生成規則の背景から考察する。
14:50-15:20 クライン群の分類問題と非初等的クライン群のヨルゲンセン数について (3次元双曲幾何学および
クライン群論)
山崎 亮介 (東京大学大学院数理科学研究科)
3次元完備双曲多様体は、3次元双曲空間の torsion free なクライン群による商空間として
表せることが知られており、したがってクライン群の研究は双曲多様体を見る上で非常に
有効な手段であるといえます。そのため、双曲幾何学においてメビウス変換からなる非初
等的な群がクライン群であるかどうかの条件は大問題となります。現在見つかっている十
分条件として」ポアンカレ多面体定理が良く知られていますが、群そのものの性質で記述
できる条件はほとんど見つかっておりません。一方、必要条件としてはヨルゲンセンの不
等式があり、クライン群をヨルゲンセン数により分類するという研究が佐藤宏樹氏(静岡
大学名誉教授)を中心に進みました。この講演では、クライン群周辺の話題と、ショット
キー群のスライスに関するヨルゲンセン数の計算結果を中心にご紹介したいと思います。
15:40-16:10 数学的活動を内容として捉えるための一考察 (数学教育学)
沼田 真依 (兵庫教育大学大学院学校教育研究科)
数学教育において数学的活動の重要性が叫ばれて久しい。現行の学習指導要領には、数学
的活動の側面として,方法,内容,目的の 3 つが示されている。しかし,多くの学校現場
では生徒が数学を学ぶために,その方法として数学的活動が位置付いている。生徒には数
学的活動自体を学ぶという意味で、数学的活動を内容としても捉えさせたい。そのための
視点について考察する。
16:30-17:00 2次元複体の3次元球面への埋め込み (結び目理論)
松崎 尚作 (早稲田大学大学院教育学研究科)
本講演では、主に、あるクラスの2次元 CW 複体を考え、それが3次元球面へ埋め込み不
可能である為の十分条件についてのべる。また、その複体と、3次元空間の絡み目との関
連についても説明する。
(この研究は、日本工業大の衛藤和文氏と、駒沢大学の小沢誠氏と
の共同研究である。)
17:20-17:50 エキゾチックな花紋折りの存在と分類について (低次元トポロジー)
佐藤 郁 (奈良女子大学理学部数学科)
日本の伝統的な遊びである折り紙は最近世界中で大きな興味の対象と p なっている.本講
演では内山光弘氏によって考案された,花紋折りと呼ばれる折り紙を取り扱う.内山氏自
身による花紋折りの特徴を述べた次のような文章がある.従来の正方形の折り紙とか,あ
るいは正多角形の,それぞれの角を一様に折りたたんで,中心点で交叉させ,互いに入れ
こにしますと,ちょうど風車のような巴の形が出現します.今回,この特徴を数学的な用
語を用いて定式化し,このような性質をもつ折り紙で,正多角形から生じていないような
ものについて調べて得られた結果について報告する.
18:10-18:40 線形の楕円型偏微分方程式に対する method of continuity について (偏微分方程式論)
多田 輝夫 (早稲田大学大学院基幹理工学部研究科)
偏微分方程式を扱う際、解の存在と一意性を考えるのは一般には難しい。本公演は、
N.V.Krylov の本を参考にして、線形の楕円型偏微分方程式に対して、特定の条件の下で解
の存在を示すことである。2階よりも高階の線形の偏微分方程式に対しても、method of
continuity を利用して解の存在を示すことができる。微分方程式が複雑であっても、method
of continuity を利用するとうまくいくことがあるというのを伝えることが目的である。
9 月 1 日 (火)
10:00-10:30 高等学校数学における積分と統計の関連について (数学教育学)
加藤 哲也 (奈良教育大学大学院教育学研究科)
現行の指導要領では,数学 III で極限や無限大,積分について学習するが,微積分を学ぶ
意義を知る機会に乏しい。そこで,連続型確率分布において,確率を求める際に積分を用
いることを紹介することにより,積分が他の分野にどう生かされているかを知ることがで
きる。
10:50-11:20“ TSP ”を基礎とした教材開発研究 −「角度と傾きの対比」に焦点を当てて− (数学教育学)
小川 俊彦 (早稲田大学大学院教育学研究科)
本講演では“ TSP(Three Squares Problem:3 つの正方形問題)”とよばれる問題に着目
する.これはギリシア時代から問われており,様々な立場から数多くの解法が明らかにさ
れている.ここでは,わが国の中学校数学科までの内容を前提とし,TSP を基礎とするこ
とによる内容の発展性を考察する.そこから,わが国の高等学校の指導・学習の可能性が
広げられること示す.
特に,本講演では「角度と傾きの対比」に焦点を当て,TSP が三角比の素地指導や導入と
して有用であることを述べる.
11:40-12:10 総括討論