総合理工学研究科 フォトニクス分析の新たなブレークスルー 物理・数理科学コース 宇宙初期における反物質消滅 ニュートリノによる物質生成 キーワード :ニュートリノ混合、ディラック/マヨラナ位相、CP の破れ 主研究担当者 :安江 正樹(教授) どのような研究課題に取り組むのか Background and Motivation 宇宙を構成する物質に対し反物質が存在し、物質 と反物質は対で生成される。初期宇宙で反物質は物 質と同量存在したはずだが、現在の宇宙には反物資 は存在しない。「宇宙における反物質消滅の謎」とい われ謎の解明が重要な研究テーマである。この謎を 素粒子レプトン族のニュートリノにより解決する「レプ トンによる物質生成(leptogenesis)」の構築をめざし、 未知の部分が多いニュートリノの性質を理論的に明 らかにする。 どのような点が新しいか Originality 長い間質量が無いと思われたニュートリノに質量 が発見され、反物質を消し去る小林・益川機構が適 用できるようになった。複素数のニュートリノ質量に おける位相の現れ方(CP の破れ方)が鍵になる。用 いる仮説の詳細に依らず新しいニュートリノ理論が 満たすべき数学的な性質に焦点を当て、地上実験で 検証可能な「位相が満たす条件」を提案し、初期宇 宙での「レプトンによる物質生成」の拘束条件として 新たな枠組みを示す。 提案中の複素数のニュートリノ質量 宇宙の物質量計算値と観測値(WMAP Bound) 研究展望とインパクト Impact and Perspective 質量の存在により 3 種類のニュートリノ間混合が 起こる。「レプトンによる物質生成」には2種類の位相 (ディラック位相・マヨラナ位相)が関係するが、1-3 混 合と呼ばれる混合(θ 13)が未観測(θ 13=0)でディラ ック位相が効かない。この特別の場合の位相を持つ ニュートリノ理論を構築、「レプトンによる物質生成」 の制限を数値計算で予言。また、新たな混合模型 「双対ニュートリノ混合模型」を提案中。 研究グループからの論文 T. Baba and M. Yasue, Phys. Rev. D Vol.75 (2007) pp055001 1-14; Vol.77 (2008) pp075008 1-20; Prog. Theor. Phys. Vol.123 (2010) pp659-686. K. Yuda and M. Yasue, Phys. Lett. B Vol 693 (2010) pp571-574. T. Kitabayashi and M. Yasue, Phys. Lett. B Vol.696 (2011) pp478-481.
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