患者さんと歩んだ透析導入年数最長記録の軌跡

第10回 健育会グループ
チーム医療症例検討会 in 熱川
演 題 名
患者さんと歩んだ透析導入年数最長記録の軌跡
施 設 名
茅ヶ崎セントラルクリニック
発 表 者
○小田島 英明(
英明(臨床工学技士)
臨床工学技士)、花岡 美奈子(
美奈子(看護師)
看護師)、佐藤 アケミ(
アケミ(看護師)
看護師)、前
田、朋子(
(ケアワーカー)
田、朋子
ケアワーカー)、佐野 敦子(
敦子(管理栄養士)
管理栄養士)、岩尾 總一郎(
總一郎(医師)
医師)
概
要
【はじめに】
妊娠中毒症による腎不全により 37 歳で透析を導
入。39 年間にわたり透析を継続してきたことから、
合併症を併発し、日常生活に支障をきたしていた。
各職種のメンバーが協働し、合併症の発症を予防す
る事に努め、当院での最長透析期間記録を更新した
症例を報告する。
【症例紹介】
患者:A氏 75 歳 女性
身体:148cm 35.3kg
家族構成:息子(キーパーソン)と同居
診断名:透析関連アミロイドーシス
慢性腎不全
甲状腺機能低下症
既往歴:手根管開放術、ばね指、脊椎固定術
現病歴:S50 年妊娠中毒症により腎不全となり、
S51 年 A 院でシャントを造設し、透析開
始となる。H18 年 B 病院に転院し、維持
透析を行っていたが、息子さんと同居す
るため H19 年 9 月当クリニックへ転院
となる
性格:自分自身に厳しい
自分でしないと気が済まない
素直で協力的である
【治療(ケア)計画】
アミロイドーシスの発症予防、骨折予防を主とし
て、日常生活に支障をきたさぬよう、チーム(①医
師・看護・臨床工学、②ケア、③栄養)としてアプロ
ーチしていく。
【経過】
2007 年、当クリニックに転院して透析開始後も、
透析アミロイドーシス症で関節にβ-2 ミクログロ
ブリン(MG)というタンパク質が沈着し、手掌のし
びれ、肩関節や腰の痛みが発生していた。また 38℃
代の不明熱が断続して続くようになり、敗血症を疑
ったが、入院精査の結果、これらの発熱もアミロイ
ドーシスによるものと診断された。
アミロイドは手術しても取り除くことが困難であ
る。当院では予防を主として、血液中のβ2-MG をで
きるだけ少なくするため、β2MG 吸着療法(リクセル
S-15)を使用した。
数値の減少と同時に関節痛が緩和
し、解熱傾向となった。炎症反応は改善されたが、
一方で小柄な患者のため身体負担も大きかった。透
析中にカリウムが低下し、不整脈が多発したため、
一旦リクセルは中止とした。看護師、臨床工学技士
による透析効率へのアプローチを行い、体調が思わ
しくない場合は、透析条件を下げて、余計な栄養分
まで抜かない工夫もした。
また、患者は体動時に頚部や腰部等躯幹部の疼痛
を訴え、透析中も腰痛にて仰臥位を取ることができ
ない状態だった。このため、本人が長時間にわたっ
てベッドで受ける疲労の軽減のため、声掛けを行っ
て無理のない体位交換を実施した。骨粗鬆症による
骨折を防ぐため、コルセット装着の上、急激な動き
をしないよう介助も随時行った
栄養面では、
透析とミネラルの関係に注意を払い、
アンバランス要因となるカルシウム沈着の予防、骨
を脆くする副甲状腺ホルモン分泌を抑止するための
血清リン値に注意し、タンパク質を含む食事指導に
取り組んできた。
【結果】
当クリニックでの全体の管理が上手く進捗し、良
好であるため、
体重の増えが 1.5kg~2.0kg 以内に収
まり、血清リンの管理値が 5.5mg/dl と維持され、透
析効率が kt/v1.8 平均となっている
【考察】
39 年にわたり透析を維持しているのは、患者本人
が自分自身に厳しく、何事も自分でしないと気が済
まない性格による。本人の自己管理がしっかりなさ
れている分、当院職員が専門性を活かし、各職種が
チームとなり、
患者へのアプローチを行う事により、
炎症等再発の予防につながり、安定した透析の提供
に繋がっていると考える。