824 E - 03 第 50 回地盤工学研究発表会 (札幌) 2015 年 9 月 ジオシンセティックスおよび矢板を用いた補強方法の実験的研究 支持力 補強土 せん断 名古屋工業大学 学生会員 名古屋工業大学 国際会員 (株)地層科学研究所 国際会員 (株)地域地盤環境研究所 国際会員 ○木下貴道 Hossain Md. Shahin 磯部有作 中井照夫 1.はじめに 我が国には緩い砂地盤や粘土地盤などの軟弱地盤が存在 しているが,その多くは生活圏に集中しており,軟弱地盤 御して試験を行う。地盤全体のひずみは,ダイヤルゲージ で測定する地盤の水平方向の変位量をもとに算出する。 上の建設が避けられない事情にある。建屋などの構造物や 補強パターンは表 1,2 に示す通りである。ジオシンセテ 盛土などが建設される場合,対象地盤の支持力増加が求め ィックスを用いた補強法のモデル化は,材料としてトレー られるとともに,施工時の外力や時間変化に伴う基礎地盤 シングペーパーを用い,表面摩擦を考慮して直径 1.6mm の の変状を抑制する必要がある。既往の研究から,ジオシン アルミ棒をトレーシングペーパーの両面に 10mm 間隔で貼 セティックスや矢板(ネイリングを補強材とした)を用い り付けた。ジオシンセティックスの端部にはアルミニウム る補強法では支持力増加の効果や鉛直荷重を受けた場合の 板を用いて,端部の形状はトレーシングペーパーより上に 変位抑制効果が得られている。そこで,本研究では,これ 5mm , 下 に 10mm 突 出 す る 形 状 と し た 。 補 強 材 幅 は らの補強法を用いてせん断変形が加わった場合の変位抑制 L=144mm,設置深度は D=120mm である。一方,矢板を用 効果について実験的に検討した。実験方法は,アルミ棒積 いた補強法では,矢板厚さ 0.3mm と 0.5mm の 2 種類を用意 層体を地盤材料とした二次元モデル実験で,対象地盤全体 し,矢板長さは 12cm で統一してある。ネイリングは 6cm にせん断変形を与えて実施した。 と 9cm にわけ,表面摩擦を考慮し,アルミ棒を接着してあ る。タイロッドは矢板どうしをピアノ線で引張ってモデル 2.せん断試験概要 化した。 二次元モデルせん断試験機の概要図を図 1 に示す。試験 荷重の与え方は,試験機上部に設置した載荷盤にある一 機は幅 1200mm,高さ 500mm,奥行き 50mm である。この 定の上載荷重までを漸増載荷した後,モデル地盤全体に繰 試験では実構造物の 1/100 程度のスケールを想定してい り返しせん断変形を与える。繰り返しせん断の与え方とし る。試験機左側上部のハンドルを回転させることで,模擬 ては,1 サイクルをフレームの左右の移動として,8 サイク 地盤の両側方に設置したアルミフレームの下端部を回転軸 ルの繰り返しせん断を与えている。上載荷重条件は,載荷 として動かし,繰り返しせん断を与える機構である。アル を基礎中心位置に載荷した場合では支持力の約 70%に,偏 ミフレームはたわまず,また左右のアルミフレームが連動 することから,一様なせん断変形を与えることができる。 表 1 ジオシンセティックスを用いた補強パターン 基礎の鉛直変位は,非接触式のレーザー変位計を用いて計 測している。また,基礎の水平方向への移動を許すための スライダーを設けている。ハンドルには与えている荷重を 500mm 測定できるロードセルを設置し,地盤に作用する応力を制 表 2 矢板を用いた補強パターン 図 1 2 次元モデルせん断試験機概要 Experimental Investigation on bearing capacity using geosynthetics and sheet pile T. Kinoshita, H.M. Shahin (Nagoya Institute of Technology), Y. Isobe (GRL) and T. Nakai (GRI) 1647 心位置に載荷した場合では支持力が約 30%にな るまで与えた。せん断は,地盤に kh=0.2,0.4 相当の繰返しせん断変形を与えている。 3.試験結果 図 2 にジオシンセティックスを用いた補強法 の繰返し回数~沈下量関係を示す。横軸には繰 返し回数をとり,縦軸の沈下量は,せん断 1 サ イクル毎に基礎に生じた変位 v を基礎幅 B で除 することで無次元化している。なお,沈下量 は,上載荷重を載荷した後のせん断による基礎 の沈下量を示している。無補強地盤と比較する と,端部ありの補強土地盤では沈下量の抑制効 果が見られた。端部なしについても端部ありと 図 3 偏差ひずみ分布(ジオシンセティックス) の違いが確認できた。図 3 にジオシンセティッ クスを用いた補強法の偏差ひずみ分布図を示す。上載荷重 を載荷してから地盤とせん断 8 サイクル与えた後の発生し たひずみの分布を可視化したものである。無補強地盤では 発生したひずみは大きいが,補強した場合ではひずみ発生 領域は小さくなり,特に端部ありの場合でのひずみ発生領 域は小さく効果が示された。図 4 では矢板を用いた補強法 の繰返し回数~沈下量関係を示し,図 3 と同様の方法でまと めている。矢板厚さ 0.3mm と 0.5mm の両方で矢板のみを用 いた補強法では沈下量の抑制はできたものの無補強地盤と 大きな相違が見られなかった。また,矢板が厚くなれば沈 下 量が 抑 制 され る 傾 向も 確 認で き た 。ま た , 矢 板 厚 さ 0.3mm とネイリング 9cm を組み合わせた場合と矢板厚さ 0.5mm とタイロッドを組み合わせた場合,矢板厚さ 0.5mm とネイリング 9cm を組み合わせた場合において沈下量抑制 効果が得られた。図 5 に矢板を用いた補強法の偏差ひずみ kh=0.4 0 中心載荷 2 偏心載荷 繰返し回数 4 6 8 0 沈下量 v/B 沈下量 v/B 0.02 0.04 0.06 無補強 端部なし 端部あり 0.08 0 6 2 繰返し回数 4 6 分布図を示す。無補強地盤と比較して,偏差ひずみが抑制 0.04 されたケースは,矢板厚さ 0.3mm とネイリング 9cm を組み 0 8 合わせたパターンである。矢板厚さ 0.5mm とタイロッドを 無補強 端部あり 組み合わせたパターンでも効果がある。 2 繰返し回数 4 6 8 沈下量 v/B 無補強 端部なし 端部あり 端部ありの変位抑制効果が大きいことが示され,端部な 0.01 しでは端部あり程の変位抑制効果は得られなかった。この 0.015 無補強 端部あり 0.02 ことより,端部による引張の影響が強いことが示された。 0.02 ・矢板を用いた補強法 図 2 せん断回数変位関係(ジオシンセティックス) 矢板厚さ 0.3mm 0 2 繰返し回数 4 6 0 0.06 0.08 2 繰返し回数 4 6 0.02 無補強 矢板のみ ネイリング6cm ネイリング9cm タイロッド 沈下量 v/B 沈下量 v/B 0.02 0.04 ネイリングやタイロッドを組み合わせることで変位抑制 矢板厚さ 0.5mm 8 0.08 8 効果が大きくなることが示された。 参考文献 1)中井 他(2012) 第 47 回地盤工学研究発表会,1025-1026. 0.04 0.06 4.まとめ ・ジオシンセティックスを用いた補強法 0.005 0.01 図 5 偏差ひずみ分布(矢板を用いた補強法) 8 0.02 0.06 0.005 沈下量 v/B 繰返し回数 4 0.08 kh=0.2 0.015 2 無補強 矢板のみ ネイリング6cm ネイリング9cm タイロッド 2)増田 他(2013) 第 48 回地盤工学研究発表会, 693-694. 3)増田 他(2014) 第 49 回地盤工学研究発表会究, 561-562. 図 4 せん断回数変位関係(矢板を用いた補強法) 1648
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