ジオシンセティックスおよび矢板を用いた補強方法の実験的研究 E

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E - 03
第 50 回地盤工学研究発表会
(札幌) 2015 年 9 月
ジオシンセティックスおよび矢板を用いた補強方法の実験的研究
支持力
補強土 せん断
名古屋工業大学
学生会員
名古屋工業大学
国際会員
(株)地層科学研究所 国際会員
(株)地域地盤環境研究所
国際会員
○木下貴道
Hossain Md. Shahin
磯部有作
中井照夫
1.はじめに
我が国には緩い砂地盤や粘土地盤などの軟弱地盤が存在
しているが,その多くは生活圏に集中しており,軟弱地盤
御して試験を行う。地盤全体のひずみは,ダイヤルゲージ
で測定する地盤の水平方向の変位量をもとに算出する。
上の建設が避けられない事情にある。建屋などの構造物や
補強パターンは表 1,2 に示す通りである。ジオシンセテ
盛土などが建設される場合,対象地盤の支持力増加が求め
ィックスを用いた補強法のモデル化は,材料としてトレー
られるとともに,施工時の外力や時間変化に伴う基礎地盤
シングペーパーを用い,表面摩擦を考慮して直径 1.6mm の
の変状を抑制する必要がある。既往の研究から,ジオシン
アルミ棒をトレーシングペーパーの両面に 10mm 間隔で貼
セティックスや矢板(ネイリングを補強材とした)を用い
り付けた。ジオシンセティックスの端部にはアルミニウム
る補強法では支持力増加の効果や鉛直荷重を受けた場合の
板を用いて,端部の形状はトレーシングペーパーより上に
変位抑制効果が得られている。そこで,本研究では,これ
5mm , 下 に 10mm 突 出 す る 形 状 と し た 。 補 強 材 幅 は
らの補強法を用いてせん断変形が加わった場合の変位抑制
L=144mm,設置深度は D=120mm である。一方,矢板を用
効果について実験的に検討した。実験方法は,アルミ棒積
いた補強法では,矢板厚さ 0.3mm と 0.5mm の 2 種類を用意
層体を地盤材料とした二次元モデル実験で,対象地盤全体
し,矢板長さは 12cm で統一してある。ネイリングは 6cm
にせん断変形を与えて実施した。
と 9cm にわけ,表面摩擦を考慮し,アルミ棒を接着してあ
る。タイロッドは矢板どうしをピアノ線で引張ってモデル
2.せん断試験概要
化した。
二次元モデルせん断試験機の概要図を図 1 に示す。試験
荷重の与え方は,試験機上部に設置した載荷盤にある一
機は幅 1200mm,高さ 500mm,奥行き 50mm である。この 定の上載荷重までを漸増載荷した後,モデル地盤全体に繰
試験では実構造物の 1/100 程度のスケールを想定してい
り返しせん断変形を与える。繰り返しせん断の与え方とし
る。試験機左側上部のハンドルを回転させることで,模擬
ては,1 サイクルをフレームの左右の移動として,8 サイク
地盤の両側方に設置したアルミフレームの下端部を回転軸
ルの繰り返しせん断を与えている。上載荷重条件は,載荷
として動かし,繰り返しせん断を与える機構である。アル
を基礎中心位置に載荷した場合では支持力の約 70%に,偏
ミフレームはたわまず,また左右のアルミフレームが連動
することから,一様なせん断変形を与えることができる。
表 1 ジオシンセティックスを用いた補強パターン
基礎の鉛直変位は,非接触式のレーザー変位計を用いて計
測している。また,基礎の水平方向への移動を許すための
スライダーを設けている。ハンドルには与えている荷重を
500mm
測定できるロードセルを設置し,地盤に作用する応力を制
表 2 矢板を用いた補強パターン
図 1 2 次元モデルせん断試験機概要
Experimental Investigation on bearing capacity using geosynthetics and sheet pile
T. Kinoshita, H.M. Shahin (Nagoya Institute of Technology), Y. Isobe (GRL) and T. Nakai (GRI)
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心位置に載荷した場合では支持力が約 30%にな
るまで与えた。せん断は,地盤に kh=0.2,0.4
相当の繰返しせん断変形を与えている。
3.試験結果
図 2 にジオシンセティックスを用いた補強法
の繰返し回数~沈下量関係を示す。横軸には繰
返し回数をとり,縦軸の沈下量は,せん断 1 サ
イクル毎に基礎に生じた変位 v を基礎幅 B で除
することで無次元化している。なお,沈下量
は,上載荷重を載荷した後のせん断による基礎
の沈下量を示している。無補強地盤と比較する
と,端部ありの補強土地盤では沈下量の抑制効
果が見られた。端部なしについても端部ありと
図 3 偏差ひずみ分布(ジオシンセティックス)
の違いが確認できた。図 3 にジオシンセティッ
クスを用いた補強法の偏差ひずみ分布図を示す。上載荷重
を載荷してから地盤とせん断 8 サイクル与えた後の発生し
たひずみの分布を可視化したものである。無補強地盤では
発生したひずみは大きいが,補強した場合ではひずみ発生
領域は小さくなり,特に端部ありの場合でのひずみ発生領
域は小さく効果が示された。図 4 では矢板を用いた補強法
の繰返し回数~沈下量関係を示し,図 3 と同様の方法でまと
めている。矢板厚さ 0.3mm と 0.5mm の両方で矢板のみを用
いた補強法では沈下量の抑制はできたものの無補強地盤と
大きな相違が見られなかった。また,矢板が厚くなれば沈
下 量が 抑 制 され る 傾 向も 確 認で き た 。ま た , 矢 板 厚 さ
0.3mm とネイリング 9cm を組み合わせた場合と矢板厚さ
0.5mm とタイロッドを組み合わせた場合,矢板厚さ 0.5mm
とネイリング 9cm を組み合わせた場合において沈下量抑制
効果が得られた。図 5 に矢板を用いた補強法の偏差ひずみ
kh=0.4
0
中心載荷
2
偏心載荷
繰返し回数
4
6
8
0
沈下量 v/B
沈下量 v/B
0.02
0.04
0.06
無補強
端部なし
端部あり
0.08
0
6
2
繰返し回数
4
6
分布図を示す。無補強地盤と比較して,偏差ひずみが抑制
0.04
されたケースは,矢板厚さ 0.3mm とネイリング 9cm を組み
0
8
合わせたパターンである。矢板厚さ 0.5mm とタイロッドを
無補強
端部あり
組み合わせたパターンでも効果がある。
2
繰返し回数
4
6
8
沈下量 v/B
無補強
端部なし
端部あり
端部ありの変位抑制効果が大きいことが示され,端部な
0.01
しでは端部あり程の変位抑制効果は得られなかった。この
0.015
無補強
端部あり
0.02
ことより,端部による引張の影響が強いことが示された。
0.02
・矢板を用いた補強法
図 2 せん断回数変位関係(ジオシンセティックス)
矢板厚さ 0.3mm
0
2
繰返し回数
4
6
0
0.06
0.08
2
繰返し回数
4
6
0.02
無補強
矢板のみ
ネイリング6cm
ネイリング9cm
タイロッド
沈下量 v/B
沈下量 v/B
0.02
0.04
ネイリングやタイロッドを組み合わせることで変位抑制
矢板厚さ 0.5mm
8
0.08
8
効果が大きくなることが示された。
参考文献
1)中井 他(2012) 第 47 回地盤工学研究発表会,1025-1026.
0.04
0.06
4.まとめ
・ジオシンセティックスを用いた補強法
0.005
0.01
図 5 偏差ひずみ分布(矢板を用いた補強法)
8
0.02
0.06
0.005
沈下量 v/B
繰返し回数
4
0.08
kh=0.2
0.015
2
無補強
矢板のみ
ネイリング6cm
ネイリング9cm
タイロッド
2)増田 他(2013) 第 48 回地盤工学研究発表会, 693-694.
3)増田 他(2014) 第 49 回地盤工学研究発表会究, 561-562.
図 4 せん断回数変位関係(矢板を用いた補強法)
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