バイオマスで拓く新たな循環型都市農業 と関連ビジネス 東城清秀

バイオマスで拓く新たな循環型都市農業
と関連ビジネス
バイオマスを利用することで、分散している都市域の農業
をバイオマス循環系に組み込み、持続的な農地の維持と
安全な食料生産を実現する
東京農工大学大学院農学研究院
東城清秀
都市農業をつなぐバイオマスビジネス
目的: 都市域に広がる遊休農地の解消と持続的な農地の維持・利用を実現する
●農業者の高齢化により急激に増加する都市域の遊休農地を本来の農
地として機能させる。
遊休農地の活用
都市域の農地の機能
東京・埼玉・神奈川の都市域には4万haの遊休農地があるとされている。一方で、都市における農地には、
食料生産だけでなく、涵養性・環境・生態系の保全など、様々な機能が期待されている。
●点在孤立している農地をつなぎ、疲弊した土壌に有機物を供給する仕
組みを創ることで、持続的な農地の利用を図る。
点在孤立した農地
土壌の機能を維持する
点在孤立した農地では、土壌の維持に必要な有機物が確保できない状況となっている。都市に存する
様々な有機物・バイオマスを利用することで、持続的な農地の保全と利用を推進する。
バイオマスを利用して新たなものの循環と人との関係を創る
食品加工残渣や家庭生ゴミなどの有機物を提供してもらい、機能的な堆肥・バイオ肥料などを製造し、生産
した農産物をバイオマス提供者に供給する循環の仕組みを作る。
ものの循環と人をつなぐバイオマス
仕組み作り
財政的支援
安全性の
確保・有機
農産物
自治体
孤立農地
技術診断
技術指導
遊休農地
市民農園
バイオマス
から堆肥・
燃料・工業
原料の製
造
農業技術
教育機関
有機物の投入
による土壌環
境の保全
農地情報
農産物
人材養成
認証機関
堆肥・
肥料・
燃料
バイオマス資源管理
加工会社
作物
残渣
有機性
廃棄物
の削減
バイオ
マス
住民
食品廃
棄物
農産物
燃料
食品製造会社
バイオマスの提供
食料の確保
農地に有機物を入れることの必要性
化学肥料だけで栽培を続けると、土壌の肥沃性は失われ、土壌は単粒化
して保水性や養分の保存性が劣化して、流亡しやすくなる。健康で安全な
農産物を栽培するためには、多様な土壌微生物が棲む有機物豊富な土壌
を維持することが必要となる。
化学肥料
(kg-N/ha/年)
(kg-C/ha/年)
堆肥
(kg-N/ha/年)
(kg-C/ha/年)
出典:NDNCモデルによる「茨城県の黒ボク土壌における大豆栽培」の物質フロー(西尾隆,農業技術大系
第3巻,農山漁村文化協会,2001)
化学肥料で栽培する農地の物質収支を見ると、窒素も炭素もマイナス値であるが、
堆肥で栽培する農地のそれはプラス値となる。
システムの課題
経済性の検討課題
システムの利点
肥沃な土壌の維持・保全
 安全な農産物の生産
 防除等の住民への影響軽減
 周辺環境・生態系保全に寄与
• 市民の生ゴミ処理費(自治体負担分)
• 企業の食品廃棄物処理費
• 市民農園・遊休地のバイオマス処理費
• 堆肥・燃料の販売
• 農産物の販売
都市域における農地の持続的な存立
システム化の検討課題
 収集バイオマスの計量・評価法
 製造した堆肥・バイオ燃料の評価法
 農地の管理・保全機能の評価法
自治体の補助・カーボンクレジットなど
の活用による経済性の確保
技術的な検討課題
•
•
•
•
バイオマスの流通技術
流通に向けた規格
堆肥、バイオ肥料、燃料への変換技術
情報収集・解析技術
都市域における農地管理情報の充実
バイオマスの発生・賦存情報の充実
バイオマスを利用した循環型農業へのシフト
残渣
収集
未利用
液体燃料
残渣
収集
廃棄
バイオマス
サプリメント
建築資材
情報
飼料・肥料
有機
食品
医薬品
再資源化
農地
流通
貯蔵
ポストハーベスト技術システム
加工 リファイナリ
農産物
食
料
収集
プレハーベスト
技術システム
エネルギー
飼料
肥料
堆肥
持続性
ガス燃料
(参考)
東京都の農業
 東京都には小規模な農地が点在する。
 作物は野菜や果樹が中心であるが、減少
傾向は続いている。
資料 農林水産省「世界農林業センサス(2010年)」
資料 関東農政局「東京農林水産統計年報」
 東京都の畜産は減少傾向が著しい。
資料 農林水産省「畜産統計調査」
 耕作放棄地は平成22年に991haで減少傾
向にあるが、自給的農家では304haで、
25.1%増加している。