①請求人宛通知 鑑文

大 東 監 第 1 8 9 号
平成27年3月26日
請 求 人
様
大東市監査委員
乘
本
大東市監査委員
岩
渕
良
一
弘
住民監査請求の監査結果について(通知)
平成27年2月17日付けで提出のあった住民監査請求について、地方自治法
第242条第4項の規定により、監査結果を通知します。
1
請求人の請求内容
( 1 )大 東 市( 東 坂 浩 一 市 長 )は 、平 成 2 5 年 6 月 2 5 日 、北 条 幼 稚 園 大 規 模 改
造 建 築 工 事 の 入 札 を 行 い 、株 式 会 社 A( 以 下「 A 」と い う 。)、 株 式 会 社 B
( 以 下「 B 」 と い う 。) 、 株 式 会 社 C ( 以 下「 C 」 と い う 。 )の 3 社 が 入 札
した。
そ し て 、B が 税 抜 1 億 9 0 0 万 円 で 落 札 し 、市 は 平 成 2 5 年 7 月 2 日 、B
と1億1,445万円(税込)で契約した。工事は、平成25年7月3日
より平成26年2月28日までの期間で、大東市は平成25年8月2日に
工 事 代 金 内 金 4 ,5 7 0 万 円 、平 成 2 6 年 2 月 2 1 日 に 残 金 6 ,8 7 5 万 円
を支払った。
( 2 )し か し 、こ の 入 札 は 、審 査 型 制 限 付 一 般 競 争 入 札 と い う も 、実 質 は 市 と 市
長 の メ ガ ネ に 適 う 企 業 に 入 札 さ せ 、公 正 か つ 自 由 な 競 争 入 札 を さ せ 不 当 な 競
争 制 限 を し て は な ら な い と い う 独 占 禁 止 法 と 地 方 自 治 法( 以 下「 法 」と い う 。)
第234条の本来予定する一般競争入札を巧みに潜脱するものである。
まず、本件入札は、
①予定価格を1億1,200万円(税抜き)と定め、事前公開しており、
② 3 社 は 大 東 市 の 関 係 す る 業 者 と い う が 、実 質 は 東 坂 市 長 の 身 内 企 業 で あ る
C(市長東坂は前社長)を加え、
③ こ の 3 社 は 日 頃 よ り 、本 入 札 を 含 め 、大 東 市 の 入 札 企 業 と し て 癒 着 し た 企
業であり、談合等が常時行える関係にあり、
④ 大 東 市 の 建 設 請 負 で は 、適 宜 分 担 請 負 を し て 受 注 を シ ェ ア し あ う 企 業 ら で
行われた。
( 3 )事 実 、今 わ か っ て い る だ け で も 、本 件 の 他 に 前 後 し て 行 わ れ た 入 札 に お い
て3社が次のように関係している。
① 市 民 会 館 2 階 ホ ー ル の 増 築 他 建 築 工 事 で は 、平 成 2 6 年 5 月 2 2 日 の 入 札
で 、同 じ 3 社 の み で の 入 札 が 強 行 さ れ 、こ れ も B が 予 定 価 格 1 億 9 ,2 0 0
万円とピッタリ100%の入札価格で落札している。
こ れ は 、A と C が わ ざ と 予 定 価 格 を 超 え る 入 札 を し て 失 格 と な り 、B が 単
独落札したものであるが、東坂市長ら職員はこれを積極承認したのである。
1
②平成26年11月14日に行われた市の北条西小学校跡地活用建築工事
の 入 札 に お い て も 、3 社 が 関 わ っ て い る 。こ れ は 予 定 価 格 8 億 5 ,4 0 0 万
円という巨額の工事であった。
BとAは特定建設工事共同企業体を組んで入札参加業者として入札指名
さ れ て 参 加 し た が 、結 局 、本 番 の 入 札 で は 辞 退 し た 。そ し て 、他 の 地 元 業 者
も C と D の 共 同 企 業 体 が 落 札 す る よ う に 共 調 し 、C ら は 落 札 率 8 8 .5 % の
7 億 5 ,5 8 4 万 5 ,0 0 0 円( 税 抜 )で 落 札 し 、総 額 8 億 1 ,6 3 1 万 2 ,
600円で請負契約している。
③ ま た 、平 成 2 5 年 1 0 月 2 日 に 行 わ れ た 灰 塚 配 水 場 ポ ン プ 室 築 造 工 事 の 入
札 で は 、地 元 業 者 の B と C に 株 式 会 社 E 、株 式 会 社 F ら の 4 社 が 入 札 し て い
る。
公 表 さ れ た 予 定 価 格 1 億 4 ,8 8 2 万 円( 税 抜 )に 対 し 、F は 1 億 4 ,3
9 0 万 円 、E は 1 億 4 ,8 0 0 万 円 、B は 1 億 4 ,8 5 0 万 円 と ギ リ ギ リ の
高値で入札し、1億4,135万円で入札したCの落札に協力している。
こ の よ う に 、平 成 2 4 年 3 月 2 0 日 ま で C の 代 表 者 で あ っ た 東 坂 浩 一 が 大
東 市 長 に な っ て 以 降 、特 に 審 査 型 制 限 競 争 入 札 の 名 の 下 に 、官 製 な い し 官 公
認談合とでも呼ぶしかない入札と契約が続いているのである。
( 4 )上 記 の 事 例 は 、東 坂 市 長 や C ら 地 元 企 業 の 息 の か か っ た 入 札 事 例 で あ る が 、
上記3社らが関わらずに行われた入札事例をあげる。
平成26年11月18日に行われた北条西小学校跡地活用機械設備工事の
入 札 で は 、大 東 市 外 の 業 者 を 多 数 入 れ て 1 4 社 も 指 名 さ れ た 。そ の う ち 6 社
の 入 札 辞 退 が あ っ た も の の 8 社 で 競 争 が さ れ 、公 表 さ れ て い た 予 定 価 格 2 億
6,600万円(税抜)に対し、最低制限価格の2億40万6,000円
( 税 抜 )で 3 社 が 入 札 し た 。抽 選 の 結 果 、株 式 会 社 G が 落 札 し て い る 。こ の
落札率は75.3%であった。
( 5 )こ の よ う に 、市 長 の 東 坂 ら は 、大 東 市 の 建 設 会 社 の 元 代 表 者 と し て 影 響 の
及 ぶ 業 者 の と こ ろ で は 、C や B ら が 適 宜 高 値 で 落 札 で き る よ う に し て い る の
である。
本 件 の 北 条 幼 稚 園 大 規 模 改 造 建 築 工 事 で は 、B に 対 し 、落 札 率 な ん と 9 7 .
2
3 % と い う 高 値 落 札 を さ せ 、1 億 1 ,4 4 5 万 円( 税 込 )で 契 約 す る よ う に
させたのである。
(6 )ち な み に 、 本 件 で は 「 審 査 型 制 限 付 一 般 競 争 入 札 」 と い う 契 約 方 法 を 採 用
し た と い う が 、こ れ は 他 の 自 由 な 競 争 入 札 業 者 を 制 限 す る た め の 方 便 で あ り 、
他の地区の業者、大手や中堅の業者などを排除するものでしかない。
特に、東坂が市長になって以降、前岡本市長時代より格段の業者優遇入札
になったことは明らかであり、このままでは市民の税からなる公金が不当に
使用されることになる。
(7 )入 札 に よ る 不 当 に 高 い 契 約 金 1 億 1 , 4 4 5 万 円 ( 税 込 ) は 現 在 ま で に 支
払われている。その談合不法行為による損害は、予定価格の約74%である
最低制限価格税抜8,332万1,000円、税込8,748万7,050
円との差額とまではいわなくとも、正当な競争をした場合の予定価格80%
相当額である9,408万円(税込)との差額、2,037万円は市の蒙っ
た損害というべきである。
(8 )よ っ て 、 本 件 不 正 な 入 札 と 契 約 に よ り 、 大 東 市 に 損 害 を 生 ぜ し め 、 企 業 3
社と東坂市長以下、入札・契約担当課職員への損害賠償請求を怠っているこ
との違法を確認し、かつ不法行為者らに損害賠償請求をするように求める。
(9 )以 上 、 法 第 2 4 2 条 第 1 項 の 規 定 に よ り 、 別 紙 事 実 証 明 書 を 添 え 必 要 な 措
置を請求する。併せて、これまで東坂市長の任命した内部監査では公正な監
査を期待し難いので、同法第252条の43項第1項の規定により、当該請
求に係わる監査について、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づ
く監査によることを求める。
請求人
(略)
平成27年2月17日
大東市監査委員
様
3
【添付書類】
1.入札および契約結果一覧表
2.工事請負契約関係記録
3.振込明細書
2
請求の受理
本請求は平成27年2月17日に提出され、同年2月20日に要件審査を
行った。その結果、法に定める形式的要件を備えていると判断したので、同年
2月17日付けで受理し、監査を実施することに決定した。
3
個別外部監査契約に基づく監査
請求人は地方自治法(以下「法」という。)第252条の43第1項の規定に
基 づ く 個 別 外 部 監 査 人 に よ る 監 査 を 求 め て い る 。し か し 、本 市 で は 外 部 監 査 契 約
に 基 づ く 監 査 に 関 す る 条 例 が な い こ と か ら 、監 査 委 員 に よ る 監 査 を 実 施 す る も の
とした。
4
監査の実施
(1)監査対象事項
本 件 監 査 請 求 等 の 趣 旨 か ら 、北 条 幼 稚 園 大 規 模 改 造 建 築 工 事 に つ い て 、大 東 市
が企業3社と市長以下、入札・契約担当課職員への損害賠償責任を怠っている
ことの違法を確認し、それを前提として不法行為者らに市に与えた損害を賠償
させることを認めるべき違法または不当な事由があるか否かを監査対象事項と
した。
4
(2)監査対象部課からの関係書類の提出
平 成 2 7 年 2 月 2 5 日 に 、対 象 事 務 を 担 当 す る 総 務 部 契 約 課 お よ び 学 校 教 育 部
学校管理課から、監査に必要な関係書類の提出を受けた。
(3)請求人の証拠の提出及び陳述
平成27年3月2日に、法第242条第6項に基づき証拠の提出及び陳述の
機会を設けたが、請求人による新たな証拠の提出および陳述は行われなかった。
(4)監査対象部課からの事情聴取
平 成 2 7 年 3 月 2 日 に 、対 象 事 務 を 担 当 す る 総 務 部 契 約 課 か ら 事 情 を 聴 取 し た 。
(5)関係人への調査
法 第 1 9 9 条 第 8 項 の 規 定 に よ り 、平 成 2 5 年 6 月 2 5 日 に 実 施 さ れ た「 北 条
幼 稚 園 大 規 模 改 造 建 築 工 事 」の 入 札 参 加 業 者 3 社 に 対 し 、郵 送 に よ る 書 面 調 査 を
実施し平成27年3月12日までに回答を得た。また、3社の関係人に出席を
求め、同年3月12日に対面による事情聴取を行った。
5
監査の結果
(1)認定した事実
ア
市は平成25年6月25日に北条幼稚園大規模改造建築工事(以下
「 本 件 工 事 」 と い う 。) の 入 札 を 行 っ た 。
イ
本件工事の入札は、事後審査型制限付一般競争入札により実施された。
ウ
市 は 予 定 価 格 を 1 億 1 ,2 0 0 万 円( 税 抜 )と 定 め 、事 前 に 公 表 し て い た 。
エ
入札には、株式会社A、株式会社B、株式会社Cの3社が参加した。
5
オ
開札の結果、株式会社Bが税抜1億900万円で落札し、落札率は97.
3%であった。
カ
市は平成25年7月2日に株式会社Bと1億1,445万円(税込)で契
約を締結した。市は、平成25年8月2日に工事前払金として4,570万
円を、平成26年2月21日に工事竣工払金として6,875万円をそれぞ
れ支出した。
(2)判断
①
市の入札に談合があるとの主張について
ア
関係書類の調査結果
市長が決裁を行っている書類を確認したところ、平成25年5月15日に
本 件 工 事 の 施 行 伺 い を 決 裁 し て い る 。こ の 決 裁 文 書 に は 税 抜 1 億 1 ,2 0 0 万
円 の 予 定 価 格 が 記 さ れ て い る が 、こ れ は 入 札 に 際 し て 事 前 に 公 表 さ れ た 情 報 で
あり、官製談合に繋がるような情報ではない。
次 に 市 長 が 決 裁 を 行 っ た の は 、平 成 2 5 年 5 月 2 7 日 の 入 札 実 施 の 伺 い で あ
る 。決 裁 の 内 容 は 、委 員 長 で あ る 副 市 長 と 5 名 の 部 長 級 職 員 等 で 構 成 す る 大 東
市 事 後 審 査 型 制 限 付 一 般 競 争 入 札 資 格 審 査 会 ( 以 下 「 審 査 会 」 と い う 。) が 事
前 に 承 認 し た 入 札 実 施 要 領 に 基 づ い て 、本 件 入 札 を 実 施 す る と い う も の で あ る 。
こ れ に 関 連 す る 一 連 の 文 書 を 確 認 し た が 、審 査 会 が 入 札 実 施 要 領 で 事 前 に 承 認
し た 入 札 参 加 資 格 に つ い て 、市 長 が 決 裁 過 程 で 事 後 的 に 変 更 を 加 え る 等 の 関 与
を行った形跡もなく、官製談合を疑わせるような事実は存在しなかった。
こ の 後 に 市 長 が 決 裁 を 行 っ て い た の は 、平 成 2 5 年 6 月 2 8 日 の 落 札 業 者 と
の工事請負契約締結伺いであり、官製談合とは全く関係のない決裁である。
以上のように、官製談合に繋がるような入札情報に、市長は全く関与して
6
お ら ず 、入 札 参 加 資 格 の 原 案 作 成 、入 札 参 加 申 請 書 の 受 付 、申 請 者 の 入 札 参 加
決 定 等 の 官 製 談 合 に 利 用 し う る 入 札 情 報 は 、総 務 部 長 と 契 約 課 で 止 ま っ て い る
のである。
イ
職員への事情聴取の結果
本 件 入 札 に つ い て 情 報 を 知 る こ と が 出 来 る 職 員 を 確 認 し た と こ ろ 、総 務 部 長
と課長を含めた契約課職員4名の計5名であった。
こ の た め 総 務 部 長 お よ び 契 約 課 長 に 対 し 、こ れ ら 5 名 の 者 か ら 市 長 や 副 市 長 、
或 い は 他 の 部 署 の 職 員 、さ ら に は 市 の 外 部 の 者 等 へ の 本 件 入 札 情 報 の 漏 え い が
無 か っ た か に つ い て 確 認 を 行 っ た が 、入 札 情 報 は 厳 重 に 管 理 さ れ て お り 、漏 え
いは無いとの申し立てであった。
あ わ せ て 、本 件 入 札 実 施 の 前 後 で 、業 者 間 で 談 合 が 行 わ れ て い る と の 情 報 が
市に寄せられていなかったかを確認したところ、そのような情報は無かった
とのことであった。
以上のことから、官主導ないし官公認とも呼ぶべき談合はないと判断した。
ウ
入札参加業者に対する書面及び対面調査の結果
次 に 、当 職 は 調 査 に 万 全 を 期 す る た め 、法 第 1 9 9 条 第 8 項 の 規 定 に 基 づ き 、
本 件 入 札 に 参 加 し た 3 業 者 に 対 し て 、談 合 の 存 在 に つ い て 書 面 に よ る 回 答 を 求
めるとともに、対面によりその内容を確認した。
結果は、いずれの業者も談合を完全に否定した。
②
市の事後審査型制限付一般競争入札制度が不当であるとの主張について
請 求 人 は 、 市 の 事 後 審 査 型 制 限 付 一 般 競 争 入 札 に つ い て 、「 こ れ は 他 の 自 由
な 競 争 入 札 業 者 を 制 限 す る た め の 方 便 で あ り 、他 の 地 区 の 業 者 、大 手 や 中 堅 の
業 者 な ど を 排 除 す る た め の も の で し か な い 。」 と 不 当 性 を 主 張 す る 。
7
し か し な が ら 、こ の こ と に つ い て の 当 職 の 判 断 は 、平 成 2 6 年 1 2 月 2 2 日
付 大 東 市 監 告 示 第 5 号 で 公 表 し て い る と お り で あ り 、請 求 人 の 主 張 に は 理 由 が
ないことを申し添えておく。
③
その他の主張について
請 求 人 の そ の 他 の 主 張 は 、い ず れ も 市 の 入 札 に 談 合 が あ っ た と す る 個 人 的 な
思 料 を 一 方 的 、断 定 的 に 述 べ て い る に 過 ぎ ず 、直 接 的 な 証 拠 を 以 て 立 証 さ れ て
いるとは到底言えないものである。
当職としては、①に示すとおり談合の存否そのものについて可能な限り
直接的な調査を行い、請求の趣旨に答えているところである。
(3)結論
以上の判断により、請求人の請求には理由がなく、これを棄却する。
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