埼玉県内企業の 2015 年雇用動向調査

埼玉県内企業の 2015 年雇用動向調査
調査対象:県内企業 569 社
調査方法:アンケート方式 (8 月上旬 郵送回収)
回答企業:262 社(回答率 46.0%)
業種別内訳:製造業 150 社
非製造業 112 社
要旨
本調査は、埼玉県内企業の雇用情勢の現状と今後の見通しを把握するために実施した。
雇用情勢をみると、全産業で「適正」とする割合は 53%と選択肢の中で最も多く、「過剰」
が 14%、
「不足」が 33%となっている。前年から過剰感が薄れるとともに不足感も緩和され、
「適正」が半数強となったが、今年もほぼ同様な情勢となっている。ただし、依然として、3
割強の企業が不足感を拭えない状況が続いている。
一年後に見込まれる雇用者数については、「増加見込み」とする企業が 5 年連続で増加した
後、今回は 45%と前年比 3 ㌽減少している。県内企業の雇用は、一年後は増加ペースが鈍る
ものの、人手不足を背景とする増加基調が続くものとみられる。
1.雇用者数の過不足感
(1)適正が最多 ~前年とほぼ同様の状況~
2015 年の雇用者数の過不足感について、
「過剰」、
「適正」、
「不足」の 3 択で尋ねたところ、全
産業で「適正」とする割合は前年比 1 ㌽減の 53%、
「過剰」は 14%と同 1 ㌽増に対し、「不足」
は横ばいの 33%となっている。前年から過剰感が薄れるとともに不足感も緩和され、「適正」が
半数強となったが、今年もほぼ同様な情勢となっている。ただし、依然として、3 割強の企業が
不足感を拭えない状況が続いている。(図表1)
図表1.雇用者の過不足感(全産業)
53
14
2015年
2014年
33
54
13
2013年
22
2012年
33
35
24
41
44
19
2011年
27
2010年
34
65
16
61
12
45
44
2009年
0
20
40
過剰
(2)業種別・企業規模別
60
適正
11
80
100(%)
不足
~非製造業で不足感が強い~
業種別に雇用者数の過不足感をみると、
「過剰」とする割合は、製造業が 19%、非製造業では 6%
と、ともに前年比 1 ㌽増となる一方、
「不足」は製造業が前年比 2 ㌽減の 22%、非製造業が同 1
-1-
㌽増の 48%となっている。前年と比べ大きな動きは見られていない。非製造業は、製造業に比べ
不足感が強く、特に、不足とする企業は運輸・倉庫で 9 割、建設業で 7 割にのぼっている。
規模別では、
「過剰」とする割合は、従業員 100 人以上の企業(以下、規模の大きい企業)は前
年比 1 ㌽減の 11%とほぼ横ばい、従業員 100 人未満の企業(以下、規模の小さい企業)は 4 ㌽増
の 17%と、過剰感が若干強まっている。一方、
「不足」は規模の大きい企業が前年比 1 ㌽減の 37%、
規模の小さい企業では 1 ㌽増の 29%とほぼ前年と同様の結果となっている。規模の大きい企業の
方が、規模の小さい企業に比べ不足感が強い状況となっている。
(図表2)
図表2.雇用者の過不足感(業種別・規模別)
59
19
18
製造業(2015年)
〃 (2014年)
6
5
非製造業(2015年)
〃 (2014年)
24
46
47
48
37
50
12
38
17
規模の小さい企業(2015年)
〃 (2014年)
13
0
48
52
11
規模の大きい企業(2015年)
〃 (2014年)
22
58
20
29
54
59
28
40
過剰
60
適正
80
100
(%)
不足
2.
「適正」の理由(複数回答) ~「事業規模や事業活動から考えて適正」が半数~
今回調査で雇用者数が「適正」としている回答が 53%と半数を占めている。「適正」とする理
由を聞いたところ、全産業では、
「自社の事業規模や事業活動から考えて適正と見られるため」が
図表3.雇用者適正の理由
(%)
54
60
52
51
50
全産業
40
32
31
32
製造業
非製造業
29
26
30
20
16
20
14
10
10
2
1
0
自社の規模や事業活動
から考えて適正
既に人員の補充等を
実施
人員体制見直しや
配置転換を実施
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
-2-
既に人員を削減し、
人員の補充をしない
その他
4
52%と最も多い。これに、
「既に人員の補充等を実施しているため」が 32%、
「人員体制の見直し
や配置転換などを実施したため」が 26%などと続いている。
業種別にみると、製造業、非製造業ともに、全産業と同様に、
「自社の事業規模や事業活動から
考えて適正と見られるため」が最も多い。これに、
「既に人員の補充等を実施しているため」、
「人
員体制の見直しや配置転換などを実施したため」の順で続いている。
(図表3)
3.
「不足」の理由(複数回答) ~非製造業で「労働市場の需給逼迫」が最多~
今回の調査でも雇用者数が「不足」としている回答が前年と同様に 33%もあり、依然として不
足感が強い状況にある。
「不足」とする理由を聞いたところ、全産業では、
「労働市場の需給逼迫」
が前年比 6 ㌽増の 45%と最も多い。次いで、同 28 ㌽と大幅に増加した 41%の「団塊世代など高
年齢層の退職」が 4 位から 2 位に順位を上げている。団塊世代(1947~49 年生まれ)が 65 歳を
過ぎ、労働市場から本格的に退出している状況が背景にあると考えられる。一方、同 8 ㌽減の 32%
となった「販売好調、受注増加等」がトップから 3 位に後退している。以下、
「事業規模を拡大」
が 15%、
「新分野に進出等業務分野を拡大」が 9%で続いている。
図表4.雇用者不足の理由
(%)
54
60
50
45
41 42
40
40
全産業
32
30
30
製造業
非製造業
33
30
19
15
15
20
9
9
12 12 12
6
10
0
労働市場の
需給逼迫
団塊世代など
高年齢層の退職
販売好調、
受注増加等
事業規模を拡大
新分野進出等
業務分野を拡大
その他
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
業種別にみると、製造業では、
「団塊世代など高年齢層の退職」が 42%と最も多く、
「労働市場
の需給逼迫」
、
「販売好調、受注増加等」がともに 30%、これに「新分野に進出等業務分野を拡大」
が 15%で続いている。非製造業では、
「労働市場の需給逼迫」が 54%と最も多く、これに「団塊
世代など高年齢層の退職」が 40%、
「販売好調、受注増加等」が 33%、
「事業規模を拡大」が 19%
と続いている。製造業は一般機械で「販売好調、受注増加等」を、非製造業では一般建設で「団
塊世代など高年齢層の退職」
、運輸・倉庫で「労働市場の需給逼迫」をそれぞれ挙げる企業が多く
見られた。
(図表4)
-3-
4.
「過剰」の理由(複数回答) ~「販売不振・受注減少等」がトップ~
今回の調査では雇用者数が「過剰」としている回答は 14%となっている。「過剰」とする理由
を聞いたところ、全産業では「販売不振・受注減少等」が前年比 12 ㌽増の 83%と最も多く、こ
れに「合理化を推進」が 28%で続いている。「販売不振・受注減少等」は、特に非製造業で前年
比 26 ㌽増の 86%と、大幅に増加している。
「その他」では、世代交代に備えたり、繁忙期に備え
たりするために、雇用者が過剰となっていると回答する企業も見られた。
(図表5)
図表5.雇用者過剰の理由
(%)
90
83
83
86
80
70
全産業
製造業
非製造業
60
43
50
28
40
31
29
30
14
14
20
6
10
3
0
7
3
0
0
販売不振・
受注減少等
合理化を推進
事業規模を縮小
好況期に大量
採用実施
その他
(注)複数回答のため合計は100%にならない。
5.雇用形態別の過不足感
~「不足」が「過剰」を上回る~
雇用者数の過不足感を正規社員と派遣社員・パート等の雇用形態別に尋ねたところ、正規社員
では、
「適正」とする割合が 62%と前年比 2 ㌽減となる一方、
「過剰」が 10%、
「不足」は 28%と
それぞれ同 1 ㌽増となっている。
「不足」が「過剰」を引き続き上回っている。
図表6.雇用形態別過不足感(全産業)
10
62
9
64
正規社員(2015年)
〃 (2014年)
派遣社員、パート等
(2015年)
5
〃 (2014年)
5
0
28
27
74
21
71
20
過剰
40
適正
-4-
24
60
不足
80
100
(%)
また、派遣社員・パート等では、
「適正」とする割合が 74%と大半を占める一方、
「不足」は 21%
と、
「過剰」の 5%を大きく上回っている。派遣社員・パート等の不足感は、製造業は飲・食料品
で、非製造業は運輸・倉庫などで、特に顕著である。(図表6)
6.職種別の雇用動向
(1)製造業 ~研究・技術開発部門で過剰感が解消~
職種別に製造業の雇用者数の過不足感をみると、いずれの職種も、
「適正」とする割合が最も多
い。
「不足」は営業・販売部門、生産部門、研究・技術部門で約 3 割、これに対し、
「過剰」は生
産部門が 15%、一般事務部門が 11%と二桁を超えたものの、営業・販売部門で僅か 3%にとどま
り、研究・技術開発部門ではゼロと過剰感が解消されている。(図表7)
図表7.職種別過不足感(製造業)
一般事務(2015年)
〃 (2014年)
11
8
管理 (2015年)
〃 (2014年)
8
10
83
85
80
70
55
30
25
64
0
67
33
69
3
0
27
28
68
15
11
研究・技術(2015年)
〃 (2014年)
12
12
78
営業・販売(2015年) 3
4
〃 (2014年)
生産 (2015年)
〃 (2014年)
6
7
20
28
40
過剰
60
適正
不足
80
100
(%)
(2)非製造業 ~営業・販売部門で不足感が強い~
非製造業では、いずれの職種も「適正」割合が最多である。
「不足」は、各部門ともほぼ前年並
であるが、特に営業・販売部門で 42%と他の部門に比べ不足感が著しく強い状況が続いている。
(図表8)
-5-
図表8.職種別過不足感(非製造業)
8
一般事務(2015年)
〃 (2014年)
6
管理(2015年)
5
〃 (2014年)
6
84
19
76
18
54
42
59
2
〃 (2014年)
10
76
4
営業・販売(2015年)
6
86
39
(%)
0
20
過剰
40
適正
60
80
100
不足
7.年代別の過不足感 ~若年層で不足感が強い~
年代別の雇用者数の過不足感は、全産業で「過剰」が最も多かったのが 50 歳代以上の 32%、
次いで 40 歳代が 12%と、高年齢層で過剰感が強い。一方、
「不足」は 10~20 歳代では 52%、30
歳代で 48%と前年に比べ減少しているものの、若年層での不足感が強い状況がうかがわれる。
(図
表9)
図表9.年代別過不足感(全産業)
59
32
50歳代以上(2015年)
55
39
〃 (2014年)
12
40歳代(2015年)
30歳代(2015年)
3
〃 (2014年)
2
2
10-20歳代(2015年)
1
〃 (2014年)
6
18
70
69
11
〃 (2014年)
9
20
49
48
44
54
46
52
38
61
(%)
0
20
40
過剰
適正
-6-
60
不足
80
100
8.一年後の雇用者数見込み ~約半数の企業が「増加見込み」~
一年後に見込まれる雇用者数についてみると、全産業で、「増加見込み」とする割合が 45%と
前年比 3 ㌽減少する一方、
「減少見込み」は同 4 ㌽増加している。
「増加見込み」はリーマン・シ
ョックの影響を受けた 2009 年の 26%を底に 2014 年まで 5 年連続で増加した後、今回の調査では
若干減少している。県内企業の雇用は、一年後は増加ペースが鈍るものの、人手不足を背景とす
る増加基調が続くものとみられる。
(図表10)
図表10.1年後の雇用者見込み(全産業)
45
2015年
43
48
2014年
2012年
40
2011年
37
0
12
51
12
51
18
48
26
2009年
12
48
31
2010年
9
46
42
2013年
13
42
20
40
26
60
増加見込み
現状程度
80
減少見込み
100
(%)
9.まとめ
埼玉県の有効求人倍率(公共職業安定所を通じて求職者 1 人に対し、企業から何件の求人がある
かを示したもの)は、2006 年、2007 年は 2 年連続して 1 倍を超えていたが、2008 年に 0.87 倍と
1倍を割り込み、リーマン・ショック後の 2009 年には 0.40 倍と低下した。その後は持ち直し傾
向にあり、2014 年は 0.62 倍、2015 年 7 月は 0.84 倍へと上昇している。
埼玉県内企業の雇用情勢をみると、雇用者数が「適正」としている回答が 53%と選択肢の中で
引き続き最も多い状況にある一方で、33%の企業が依然「不足」と回答している。雇用者数を「不
足」としている企業にその理由を聞いたところ、
「労働市場の需給逼迫」と「団塊世代など高年齢
層の退職」が多く、ともに 4 割にのぼっている。年代別にみると、10-20 歳代の「不足」の割合
が 52%に上り、若年層における労働力の不足感が強いことがうかがわれる。
今後は、15~64 歳の生産年齢人口がさらに減少すると想定され、景気後退期に人手不足の程度
が多少緩むことはあるとしても、構造的に雇用の不足感は緩和されにくいものと思われる。
(以上)
-7-