平成26年度 1 課題名 2 小課題名 調査研究実績報告書 ばれいしょミニチューバー生産体系の高度化 ばれいしょ施設内生産技術の高度化に関する調査 ばれいしょ養液栽培による施設内生産技術の高度化(養液栽培方式による増殖率比較調査) 3 調査研究実施期間:平成 23 年度 ~ 27 年度 4 課題実施責任者及び担当者の所属並びに氏名 実施責任者:嬬恋農場調査役 新 ・ 継 ・ 完 ) 向中野晃彦 :嬬恋農場業務部 MnT チーム 木村哲男 協力・分担:嬬恋農場業務部 MnT チーム 大川昇一 実施者 5 ( 松本正文 調査研究の目的 エアロポニックスについては、韓国を始め諸外国の種ばれいしょ栽培で一部使用されている。当 場栽培法の養液栽培とエアロポニックスを比較することにより、エアロポニックスの増殖率が養液 栽培よりも優れる場合は、養液栽培の栽培法を改良し、増殖率を同等のものとする。 これまで、養液循環型養液栽培装置の作製、エアロポニックスでの塊茎形成日長操作の効果の検 証等を行ってきたが、高設栽培と温室天井の高さの制限および作業性によるエアロポニックスの茎 葉重なりの問題、漸次収穫によるバルブ開閉操作ミスの問題、2方式折衷型(嬬恋方式養液栽培ベ ッドに噴霧ノズルを取り付けた栽培方式)での過湿の問題等が起こった。装置・操作に改良を加え、 各栽培方式の増殖率等データを得る。 6 調査研究の方法 養液循環型で、エアロポニックス、嬬恋方式養液栽培、2方式折衷型の増殖率比較調査を行った。5 月 29 日に嬬恋方式養液栽培・2方式折衷型のデジマ・ニシユタカ、6 月 4 日にエアロポニックスの デジマ・ニシユタカ、6 月 13 日にすべての栽培方式のワセシロ・男爵薯を、各調査区に株間 16cm で 10 株ずつ定植した。嬬恋方式養液栽培・2方式折衷型のバーミキュライト厚は 1cm 未満とした。 デジマ・ニシユタカ・ワセシロのエアロポニックス区には培養苗と MT 苗(MT から苗立てしたもの) を定植した。エアロポニックスについては誘引テープを斜めに張り茎葉の重なりを緩和し、2方式 折衷型では一定水圧以下で給液をストップするミストノズルを使用し、バルブ不良による過湿を防 止した。EC・pH の調整は肥料管理機を使用し、栽培期間中 EC1.8、pH5.5 を保つようにした。給液 は、エアロポニックスでは定植後日中 5 分間隔で 15 日間行い、それ以降日中 10 分間隔で行った。 嬬恋方式養液栽培・2方式折衷型の給液は生育に合わせ 3 ~ 8 回/日行った。エアロポニックスでは 8 月 8 日に栽培容器内への茎の引き下ろし作業を行った。8 月 21 日~ 11 月 25 日まで、早朝と夕方に 16 時間日長となるように電球色 LED 電球照明による日長操作を行った。9 月中旬より気温低下に応じ て、ストーブを使用して加温栽培を行い、10 月 14 日より排気を室内排気に変更し、室内の二酸化炭 素濃度を高めた(濃度については無調整)。12 月 15 日にすべての栽培を終了した。 7 調査研究結果の概要・要約 養液栽培ベッド内への病原菌侵入を想定し、侵入時の病原菌増殖を抑える目的で、養液 pH を 5.5 と低めに設定したが、肥料管理機 pH メーターの不良により 7 月から 8 月初めにかけて養液 pH が 4 程度となり、ワセシロ・男爵薯のエアロポニックス培養苗区にて生育不良及び減収となった(表 1)。 エアロポニックスの MT 苗区では、定植時の生育差の影響もあるが、容器上部に根が集中して生 育し、8 月に容器内に茎を引き下ろして、容器内下部の根切りシート上に根を接し、生育を促したも -1- のの、生育差が生じたために減収となったと考えられる(表 1)。 デジマ・ニシユタカではエアロポニックスの増殖率が高い結果となったが、エアロポニックスで は嬬恋方式養液栽培よりも収穫時期が遅れる傾向にあり、ストーブの室内排気による二酸化炭素濃 度増加と収穫ピークが重なったために増収となったと考えられる(表 2)。 ワセシロ MT 苗のエアロポニックスでは、生育が遅れ、上記同様二酸化炭素濃度増加と収穫ピー クが重なったために増収となったと考えられる(表 2)。 8 主要成果の具体的データ 表1.養液栽培方式による増殖率比較調査(1株当たり平均) 品 種 名 エアロポニックス エアロポニックス 培養苗 MT苗 調 査 項 目 8.22株 8.71株 デジマ・ニシユタカ ㎡当たり株数 ワセシロ・男爵薯 (栽培ベッド・栽培ベッド両側通路面積より) 10~5g増殖率(塊茎着生数) デジマ 収穫総重量(g) ㎡当たり10g以上塊茎収穫個数 ㎡当たり収穫総重量(g) 10g以上増殖率(塊茎着生数) 10~5g増殖率(塊茎着生数) ニシユタカ 収穫総重量(g) ㎡当たり10g以上塊茎収穫個数 ㎡当たり収穫総重量(g) 10g以上増殖率(塊茎着生数) 10~5g増殖率(塊茎着生数) ワセシロ 収穫総重量(g) ㎡当たり10g以上塊茎収穫個数 ㎡当たり収穫総重量(g) 10g以上増殖率(塊茎着生数) 10~5g増殖率(塊茎着生数) 男爵薯 8.22株 8.71株 65.8 12.2 1743 540.9 14327 47.0 3.8 996 386.3 8187 11.2 3.0 219 97.6 1907 10.3 3.0 202 89.7 1759 10g以上増殖率(塊茎着生数) 収穫総重量(g) ㎡当たり10g以上塊茎収穫個数 ㎡当たり収穫総重量(g) 嬬恋方式 養液栽培 2方式折衷型 5.84株 5.79株 16.0 4.6 362 131.5 2976 24.5 5.6 500 201.4 4110 38.1 9.5 754 331.9 6567 - - - - - 5.36株 5.84株 42.1 10.3 921 245.9 5379 29.7 5.6 674 173.4 3936 22.1 2.7 439 128.0 2542 25.7 6.0 533 148.8 3086 37.2 7.4 766 199.4 4106 29.9 4.9 646 160.3 3463 18.9 2.8 392 110.4 2289 33.2 9.5 649 193.9 3790 表2.デジマおよびワセシロの 10g 以上収穫個数(10 株)と栽培中の温室温度・湿度と二酸化炭素濃度 (おんどとり TR-76Ui による測定・校正無し、測定値は収穫から次収穫(約 1 週間)までの平均値) 収穫日 7/28 8/6 嬬恋方式 養液栽培 栽培方式と 10g以上 収穫個数 (10株) 8/21 8/27 4 15 12 9/4 23 エアロポニックス デジマ 培養苗 エアロポニックス MT苗 2方式折衷型 ワセシロ 測定項目 嬬恋方式 養液栽培 9/12 9/20 9/26 10/4 12/1 12/8 12/15 28 25 32 38 21 32 22 23 28 28 19 23 17 21 10 7 9 18 28 28 41 34 40 61 63 43 65 68 61 92 4 2 8 6 8 8 20 17 10 19 25 33 26 19 11 19 25 31 28 19 20 23 32 6 5 20 30 20 20 18 39 31 20 13 5 10/10 10/17 10/23 10/29 11/5 11/12 11/19 11/26 14 22 18 35 24 1 1 12 3 19 21 29 27 26 37 28 24 38 37 29 18 31 二酸化炭素濃度 (ppm) 454 448 457 468 470 472 474 473 482 480 490 1,218 1,815 993 1,483 2,819 3,549 4,433 4,472 4,986 5,396 温度(℃) 26.2 25.6 23.0 23.7 23.2 19.5 20.7 20.5 20.0 20.9 19.5 18.2 16.5 17.0 15.7 16.5 15.0 15.3 15.3 12.7 12.6 58 56 68 68 67 75 68 56 58 60 66 60 65 56 59 62 49 53 65 52 52 エアロポニックス MT苗 湿度(%RH) 9 8/12 今後の問題 肥料管理機 pH メーターの不良によりエアロポニックスの早生品種で生育不良が起こった。エア ロポニックスは枯凋防止のために給液回数が多く、また培地がないために、養液 pH 変化の影響が早 く植物体に現れたと考えられる。pH メーターの定期交換により再発は防止できるが、エアロポニッ クスは増殖率が高いと考えられるもののミニチューバーの安定生産に不安が残る結果となった。 10 次年度の計画 嬬恋方式養液栽培・エアロポニックス・2方式折衷型について、これまでの栽培での問題点を整 理し、改良等を行って増殖率・コスト比較を行う。養液循環型養液栽培での栽培期間中養液の肥料 成分推移について取りまとめを行う。コスト比較を含めた最終取りまとめを行う。 11 業務改善に活かし得る事項 12 成果の発表等 なし なし -2-
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