Icahn School of Medicine at Mount Sinai 2015年度神経学会での多発性硬化症ハ イライト この教育アクティビティはBiogen社から独立教育研究助成を受けています。 www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-ms 2015年度神経学会での多発性硬化症ハイライト http///www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-ms このアクティビティーの参加対象者は、多発性硬化症(MS)患者の管理に携わる神経科医、一次医療従事者などの臨床医です。 このアクティビティーの 目標は、MSの診断と管理に関する新しいデータの臨床的妥当性を評価することです。 アクティビティー終了後は以下のことに参加できます: • • 最近のMS 研究に関する重要なデータの評価 MS患者の管理を改善するために、 これらの評価結果を臨床現場で適用する方法の検討 教授陣と利益相反情報開示について ACCMEの認定を受けた団体であるMedscape社は、教育アクティビティーの内容を管理する立場にあるすべての個人に、いか なる民間営利団体との関連する金銭的関係の開示を要求しています。ACMEの規定する 「関連する金銭的関係」 とは、利益相反 の可能性がある配偶者やパートナーも含めた、金額に関わりなく過去12ヶ月に生じた金銭上の関係をいいます。 Medscape社は著者に、被験薬や米国食品医薬品局で規制されている薬物の適応外使用については最初に記述する時と内容 的に適切な箇所で特定することを奨励しています。 Michelle T. Fabian医師 マウントサイナイ・アイカーン医科大学(ニューヨーク市)神経学助教 Michelle T. Fabian医師は関連する金銭的関係がないことを開示。 Fabian医師は下記の機関により承認済の薬剤の適応外使用、機械装置、生物製剤、診断法について検討する: (FDA) (米国内で使用の際)。 食品医薬品局 Fabian医師は米国内での使用にあたりFDA 未承認 の被験薬、機械的装置、生物製剤、診断法について検討する。 運営委員会 会長: Stephen Krieger医師 マウントサイナイ・アイカーン医科大学(ニューヨーク市)神経学准教授 開示:Stephen Krieger医師は開示済みで、下記の関連する金銭的関係: 以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める: Acorda Therapeutics; Bayer HealthCare Pharmaceuticals; Biogen Idec Inc.; EMD Serono, Inc.; Genentech, Inc.; Genzyme Corporation; Questcor Pharmaceuticals, Inc.; Teva Neuroscience, Inc. Mathias Buttmann医師 ビュルツブルグ大学(ドイツ、ビュルツブルグ)神経学部、顧問神経科医、MS外来クリニック部長、多発性硬化症の臨床研究グル ープ副長 Mathias Buttmann医師は下記の関連する金銭的関係を開示した: 以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:Teva Neuroscience, Inc. 以下から臨床研究助成金を受取: EMD Serono, Inc.; Novartis Pharmaceuticals Corporation 以下から講演者謝礼金を受取: Biogen Idec Inc. 以下から議会への旅費助成金を受取: Genzyme Corporation; Bayer HealthCare Pharmaceuticals Patricia K. Coyle医師 ストーニーブルック大学医学センター(ニューヨーク州、 ストーニーブルック)神経学部教授; 臨床業務副長; 多発性硬化症複合 ケアセンターのディレクター ページ 2 www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-ms 開示: Patricia K. Coyle医師は以下の開示をした。下記の関連する金銭的関係: 以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める:AbbVie Inc.; Accordant; Acorda Therapeutics; Bayer HealthCare Pharmaceuticals; Biogen; EMD Serono, Inc.; Genentech, Inc.; Genzyme Corporation; Mylan Laboratories Inc.; Novartis Pharmaceuticals Corporation; Roche; Sanofi; Teva Pharmaceuticals USA 以下から臨床研究助成金を受取: Actelion Pharmaceuticals, Ltd; Novartis Pharmaceuticals Corporation; Opexa Therapeutics, Inc. Gavin Giovannoni, MBBCh(医学・外科学士)、博士 バーツ・ロンドン医科歯科学校(英国、 ロンドン)教授 Gavin Giovannoni, MBBCh(医学・外科学士)、博士は下記の関連する金銭的関係を開示した: 以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める: Canbex Therapeutics; GW Pharmaceuticals; EMD Serono, Inc.; Novartis Pharmaceuticals Corporation; Genzyme Corporation; Sanofi; FivePrime Therapeutics; Ironwood Pharmaceuticals, Inc.; Synthon BV; Vertex Pharmaceuticals Incorporated 下記の運営委員会の会員を務る: AbbVie Inc.; Biogen Idec Inc.; Novartis Pharmaceuticals Corporation; Teva Neuroscience, Inc.; Roche Óscar Fernández博士 Hospital Regional Universitario(マラガ、 スペイン)、臨床神経科学部ディレクター Oscar Fernandez博士は関連する金銭的関係を開示した: 以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める: Actelion Pharmaceuticals, Ltd; Allergan, Inc.; Almirall Prodesfarma, S.A.; Bayer HealthCare Pharmaceuticals; Biogen Idec Inc.; EMD Serono, Inc.; Genzyme Corporation; Roche; Teva Neuroscience, Inc. 下記の講演者または講演者事務局を務める:Actelion Pharmaceuticals, Ltd; Allergan, Inc.; Almirall Prodesfarma, S.A.; Bayer HealthCare Pharmaceuticals; Biogen Idec Inc.; EMD Serono, Inc.; Genzyme Corporation; Roche; Teva Neuroscience, Inc. 下記から臨床研究助成金を受取:Actelion Pharmaceuticals, Ltd; Allergan, Inc.; Almirall Prodesfarma, S.A.; Bayer HealthCare Pharmaceuticals; Biogen Idec Inc.; EMD Serono, Inc.; Genzyme Corporation; Roche; Teva Neuroscience, Inc. Claire S. Riley医師 コロンビア大学メディカルセンター(ニューヨーク州、ニューヨーク市)神経学助教 Claire S. Riley医師は下記の関連する金銭的関係を開示した: 以下のアドバイザーまたはコンサルタントを務める: Biogen Idec Inc.; Novartis Pharmaceuticals Corporation; Teva Neuroscience, Inc. 下記から臨床研究助成金を受取:Biogen Idec Inc. Ron Schaumburg文学修士 Medscape LLC、科学ディレクター 開示: Ron Schaumburg修士は以下を開示した:関連する金銭的関係を開示無し。 CME検閲者 Nafeez Zawahir医師 Medscape LLC、CME臨床ディレクター 開示: Nafeez Zawahir医師は関連する金銭的関係を開示した。 査読者 Ilana Katz-Sand医師 マウントサイナイ・アイカーン医科大学神経科准教授 開示: Ilana Katz-Sand医師は関連する金銭的関係を開示した。 ページ 3 2015年度神経学会での多発性硬化症ハイライト 2015年度の米国神経科学会では、多発性硬化症 (MS) に関する基礎科学研究、試験中の治療法についての報告、第3相試験や 市販後延長調査の結果などのあらゆる視点から提起された科学的プレゼンテーションが多数ありました。 ここでは、新しいデー タの臨床応用と幾つかの有望な新興治療の選択肢を中心に要約します。MSを単一疾病過程として再概念化する新しい組織分 布モデルについても検討します。 第 3 相試験 ダクリズマブ: DECIDE試験[1] 高収率合成ダクリズマブ(DAC HYP)はCD25に対するヒト化モノクローナル抗体で、 インターロイキン-2 のシグナル伝達の可 逆的変調を引き起す。DECIDEは無作為化、二重盲検、実薬対照試験で、4 週間に一回DAC HYP 150 mg の皮下投与と週一回イ ンターフェロン (IFN) β-1a 30 mcg の筋肉注射を 96〜144週間投与して比較した。本試験では、1841例の患者をDAC HYP投与 群とIFN β-1a 投与群に1:1の割合で無作為化割付し、年率換算再発率(ARR)を主要評価項目として実施した。 DAC HYP 対 IFN β-1a 治療の試験結果は、ARRの45% 減少(P <0.0001)、および再発患者率の41% 減少(P <0.0001)が見られ た。96週目における新規又は拡大したT2 高信号病巣数の54% 減少(P <0.0001)、および 3 ヵ月の確定した身体障害進展のリス クでは16% 減少(P =0.158)を認めた。MSの臨床的に意義のある身体障害進展のリスク (多発性硬化症インパクト尺度-29 の身 体的副尺度で7.5 ポイントの悪化 )において、DAC HYP投与患者はIFN β-1a 投与患者に比べて24%低下した(P =0.0176)。感 染、皮膚事象、肝事象はDAC HYP群でIFN beta-1a群よりも高頻度に認められた。[1] 解説:DAC HYPはCD25を阻害する免疫調節剤であり、インターロイキン2 シグナル伝達の減少、白血球産生減少、制御性ナチュ ラルキラー細胞の増加を引き起こします。第3相DECIDE試験において、DAC HYPはIFN β-1a の毎週 30 mcg 投与と比較して優 れており、統計学的に有意なARR と新しい磁気共鳴画像(MRI)活動の低下を示しました。全体的に、DAC HYP群の患者はより高 頻度の感染、皮膚事象、肝酵素異常を示したものの、DAC HYPは許容可能な安全性プロファイルを示しました。DAC HYPはMS 治療に対し、効果的で比較的安全であると思われます。 フィンゴリモド: INFORMS試験[2] フィンゴリモドは経口用スフィンゴシン1‐リン酸受容体調節薬であり、 リンパ節からのリンパ球放出を阻害する。 フィンゴリモ ドの無作為化、二重盲検、 プラセボ対照試験を一次進行型 MS (PPMS) 患者を対象に実施した。総合障害度評価(EDSS)尺度に 基づいた新しい複合主要評価項目、Timed 25‐Foot Walk検査 (T25FW、25 フィート歩くのに要した秒数の検査)、 または9‐ホ ールペグ検査のスコアを3 ヵ月後に確定した身体障害進展の評価に使用した。重要な副次的評価項目はEDSSと脳容量の萎縮 率で評価した障害進展であった。 INFORMS試験では、970例の患者をフィンゴリモド投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。複合主要評価項目(リスク 減少=5.05%; P =0.544) と EDSS 評価項目(リスク減少=11.95%; P =0.218)のいづれも達成されなかった。脳容量の萎縮率に おいてはフィンゴリモド群とプラセボ群の間に差は認められなかった。 フィンゴリモド群において、PPMSコホートと一致して全 体的なMRI活動病巣は低かったものの、より少ないガドリニウム増強と新規T2病巣が認められた。 フィンゴリモドの安全性につ いての結果は、以前のMS試験のものと一致した。 フィンゴリモドにはPPMSの病態進行に関して有意な遅延が見られなかった。 解説: このINFORMS試験は、健全な科学的根拠に基づいて実施されましたが、PPMS患者にフィンゴリモドの有益性を示すこと ができませんでした。期待通りに、 フィンゴリモ群の患者には低率で新規のMRI活動が認められました。さらに意外なのは、脳萎 縮率は2 群間で変化がなかったことです。 このINFORMS試験は成功しませんでしたが、3 ヵ月間の進行停止という新しい複合評 価項目を用いた初の臨床試験で、被験者の治験完了率が80%でした。過去に行われた進行型MSの治験では、進行度を精巧に 検出できる評価法を必ずしも使用した訳ではありません。 この治験デザインが今後の治験デザインに影響を及ぼす可能性があ ります。 MD1003: 進行型MSにおけるビオチン高用量投与[3] ビオチンはエネルギー代謝と脂肪酸合成の重要ステップに関わるビタミンである。 とりわけ、ビオチンは、 ミエリン合成での 律速酵素の可能性があるアセチルCoAカルボキシラーゼを活性化する。 この仮説と23例の非盲検パイロット試験 (MD1003 )のデータに基づ いて、二次進行型MSまたはPPMSと診断された患者を対象に300mg/日のビオチン高用量投与の第3 相試験が実施された。本治験では154例の患者がMD1003またはプラセボ群に2:1の割合で一重盲検で割り付けられた。 MD1003群には12例の、 プラセボ群には8 例の中止があった。全ての解析は治療意図 (ITT) の原理に従って行われ, 全ての無作 為家で割り付けられた患者は、割り当てられた治療群別に解析された。主要評価項目は、9ヵ月目に改善を示した患者との比率 年、12ヵ月目に改善が確認された患者との比率で定義した。改善は、EDSSスコアの減少 (ベースラインのEDSSスコアが 5.5 以 下の例には1 ポイント以上、ベースラインのEDSS が6 以上の例には 0.5 ポイント)、 またはT25FWの20以上%の向上のいずれか で定義された。各転帰は、 スクリーニング時と無作為化の来院時で得られた最善のEDSSとT25FWで比較した。 ページ 4 www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-ms ITT母集団においては、主要評価項目が達成され (P =0.0051) 、 プラセボ群では全く改善が認められなかったのに対し、MD1003 群の12.6% が9ヵ月目にEDSS またはT25FWスコアの改善を示したことが12 ヵ月目に確認された。病気進行のリスク減少の証拠 を示した二次解析は、 この主要評価項目を裏付けた。平均EDSS スコアは0と12 ヵ月目の間で、MD1003群では減少し、 プラセボ 群では進行した(-0.03対+0.13; P =0.015)。MD1003群では、わずかに4%の患者が9 ヵ月目にEDSSスコアが進行し、12 ヵ月目に 確認されたのに対して、 プラセボ群では13% が進行したが、 この結果に統計的有意差はなかった(P =0.07)。 MD1003の忍容性は良好であった。有害事象の全体的な発生は2群間で類似していた。実薬治療群の患者が一人自殺したが、 こ の事象は治験薬とは関連性が無いものと考えられた。 解説:高用量のビオチンを投与した本治験は、最初に成功した進行型MSを対象とした第3相試験です。治験の主要評価項目は 達成されましたが、実際の治験パラメータの平均変化は非常にわずかでした。また、本治験では十分な解析力がありませんで したが、副次評価項目である病気進行のリスク減少についても、2群間で統計的有意差が認められませんでした。有害事象の発 生頻度はMD1003群とプラセボ群で同様でした。本治験はMD1003使用に対する最初の裏付けとなりますが、ビオチンが進行 型MS治療に有効な治療法であるか否かを理解するには、 より大規模な治験が必要です。 視神経炎の神経保護と修復 抗-LINGO-1: RENEW試験[4] LINGO-1 (ロイシンリッチリピートおよび免疫グロブリンドメイン含有神経突起成長阻害剤受容体-相互作用タンパク-1) は中 枢神経系(CNS)に特異的な膜糖蛋白で、 この機能拮抗は脱髄疾患の前臨床試験モデルにおいてCNS再ミエリン化の改善と神 経軸索保護をもたらすことが証明されている。 RENEWとは、最初の片側性急性視神経炎(AON)の発症を経験した患者を対象とした、ヒトモノクローナル抗体である 抗-LINGO-1の無作為化、二重盲検、 プラセボ対照第2相試験であった。患者はプラセボまたは100 mg/kgの抗-LINGO-1を4週ご とに一回、合計6用量を投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けらた。最終投与後、12週間の追跡調査が行われた。 RENEW 結果は主要評価項目である全視野視覚誘発電位で測定した潜時の回復において、抗-LINGO-1 群はプラセボ群に比べ て改善を示しました。薬剤治療群は視覚神経伝導潜時が24週目に7.55ミリ秒で、 プラセボ群に比べて34% の改善を示した(P =0.05)。さらなる潜時の回復が治験の最終来院(32週目)時に見られ、 プラセボ群と比較して統計的に有意な9.13ミリ秒の41% 改善を示した (P =0.01)。重要な副次評価項目である網膜層の厚さや視覚機能の変化には効果が認められなかった。網膜神経 節細胞層の解析では、治療薬投与前に重度な薄層化が起こっていたことが立証された。 解説:現在のMS療法は新規の炎症性MS活動の減少に効果があります。 しかし、炎症性活動がすでに発生している場合の神経 修復に注目したMS療法は現在知られていません。抗-LINGO-1 はこのクラスで最初のミエリン修復を促進するモノクローナル 抗体療法です。治験の最後に、抗-LINGO-1 群の患者は視力の改善は認められませんでしたが、 プラセボ群に比べて速い全視野 視覚誘発電位の伝導を示しました。本薬剤による今後の治験では、次の2 つの質問に答える必要があります: (1) この効果は神 経系の他の部位でも再現可能であるか? (2) この結果はMS患者の機能回復につながるか? AONを対象としたフェニトイン[5] 炎症性脱髄疾患の実験モデルおいて、 フェニトインによる電位依存性Na+チャネルの部分的遮断には神経保護作用がある。 こ の第2相治験では、 フェニトインによる Na+チャネルの遮断がAONにおいて神経保護作用を及ぼすことが可能であるかを評価 した。本治験はAON患者の86症例を症状の発生から2週間以内に、 フェニトイン(4 mg/kg/日) とプラセボを3ヵ月間投与する群 に無作為に割り付けた。網膜神経繊維層(RNFL)の厚さと黄斑の容量を6ヵ月後に測定した。視覚機能、視覚神経画像、視覚誘発 電位も測定した。主要転帰は6ヵ月後の患眼のRNFLの厚さとし、反対側の眼の RNFLの厚さをベースラインとした。 86例中81例が治験を完了し、ITT比較では罹患眼の平均RNFLの厚さは6ヵ月目で実薬群(n=39)はプラセボ群(n=42)より 7.15 mcm 厚く (P =0.02)、30%の保護効果が得られた。調整黄斑容量は実薬群で0.20 mm3大きく (P =0.005)、34%の保護効果 が得られた。視力の回復は全般的に順調で、群間で視力の転帰に有意差は認められなかった。 解説:本治験は英国ロンドンにある国立神経学および神経外科学病院のRaju Kapoor医師のチームよって行われたもので、良く 知られた比較的安全な薬剤であるフェニトインの投与が視覚神経炎の発症直後に神経保護作用があると考えられることから、 広範囲にわたる影響をもたらす可能性があります。ほとんどの再発からの回復は良好ですが、永久的な軸索損失という結果が 懸念されます。 フェニトイン群でRNFLの厚さが有意に大きかったことは、薬剤が軸索の完全性を保つ能力を裏付けるもので、非 常に興味深いものです。抗-LINGO-1の例と同様に、 この効果が神経系の他の部位でも起こるのか、またこの効果が神経機能の 保護につながるのかを明らかにするさらなる試験が必要です。 ページ 5 2015年度神経学会での多発性硬化症ハイライト 拡張試験・現実的な試験 アレムツズマブ: CARE-MS II 拡張試験[6]の最新情報 CARE-MS I I試験においてアレムツズマブは、それまでの薬剤療法を受けていながら再発をきたす再発寛解型多発性硬化症 (RRMS)患者に対して2 年にわたるMRI転帰の改善をなどの点でIFNβ-1aの皮下注射に比べて優れた効果を示した。 この拡張 試験では、 アレムツズマブ投与を受けた患者は、以前の治療コース終了後1年以上にわたって、必要に応じて投薬を継続するこ とができた。MRI検査はベースライン時とその後毎年行われた。合計393人のCARE-MS II ・アレムツズマブ治療済み患者(92.9% )が拡張試験に参加した。データは最初の治療から 4 年間利用可能であった。4年間を通して67.7% の患者が最初の2コース の治療のみを受け、24.2%が追加の1コースを、7.4%が追加の2コースを受けた。ガドリニウム増強病巣の無い患者は3年目で 86.5%、4年目で89.1%であった。新規及び拡大T2病巣が無い患者は3年目で69.0%、4年目で70.3%、新規T1病巣の無い患者は 3年目で 87.5%、4年目で86.3%であった。ほとんどの患者は3年目(68.4%) および4年目(69.9%)MRI活動が認められなっかた。 解説:これらの試験結果はアレムツズマブ投与がMS治療に効果であることをさらに裏付けました。患者の大多数が治療開始 後、3年目と4年目に依然として新規のMRIの活動病巣が認められなかった。 テリフルノミド:12年間わたる拡張試験[7] テリフルノミドは1日一回経口投与するRRMS治療に用いる免疫調整剤である。中核となる第2相試験で、RRMS患者はテリフル ノミド14 mg、テリフルノミド7 mg、 プラセボ群に無作為に(1:1:1)割り付けられた。36週間の中核試験の終了後、患者は長期の 非盲検拡張試験に参加することができた。本試験では、患者はテリフルノミドを継続するか、 または以前プラセボ群であった患 者はテリフルノミド14 mg または 7 mg 投与群に割り付けられた。 初回の試験では、179人の患者がテリフルノミドまたはプラセボ投与群に無作為化され、147人が拡張試験に参加した。中核試 験と拡張試験での治療を含めて、両治療群で合計990人年以上がテリフルノミドを服用した。初回の試験中に両群でARRは低く 止まり、拡張試験で再発のなかった患者の割合は14-mg群(51.5%) で7-mg群(39.5%) よりも高率でした。拡張試験後、最大528 週までEDSSスコアの増加は最小限に止まった。テリフルノミドの長期投与による新規のまたは予期せぬ有害事象は認められ ず、安全性と忍容性のプロファイルも他の臨床試験のものと同様でした。 解説:拡張試験も含めて7- mg群と14-mg 群の患者ともに奏功が認められました。拡張試験は常に疾患管理の良好な患者に限 られるため、治験薬投与を継続する傾向がありますが、本治験では病態修飾療法 (DMT) としてテリフルノミドを長期にわたっ て使用する裏付けが得られました。最高12年間追跡した両治療群において再発率は低いままで、両群ともに進行が認められた 患者は最小限で、第3相試験で見られた結果と同様でした。 NEDA-4: TRANSFORMS試験の事後解析[8] 1年間の二重盲検、無作為化、第3相TRANSFORMS試験(フィンゴリモドを日量 0.5 mg [n=431] 対 IFN β-1a を週あたり30 mcg [n=435])の事後解析で、治験責任医師は、再発、新規/拡大T2病巣、6ヵ月目に確認された障害の進行の不在の確認(これらは従 来のNEDAの3 つの測定法)に加えて4番目として脳容量の減少の不在で定義されるNEDA-4を達成した患者を検討した上で、 疾患活動性の認められない状態(NEDA)についての概念を拡大した。データは、425例のフィンゴリモド投与患者と418例のIFN 投与患者をもの使用した。 フィンゴリモド投与群(27.9%)はIFN投与群(16.7%) よりもNEDA-4状態を達成した患者が有意に多 いことが示された。 フィンゴリモド投与患者はIFN β-1a投与患者に比べて1年間に渡ってNEDA-4 状態を達成するオッズ比が2 倍であった。 解説:今後何年かでNEDA 転帰と短期および長期におけるDMTの全体的な成功との関連性に注目した多くの研究が行われる でしょう。事後解析の結果、 この治験においてNEDA-4はフィンゴリモド群でほぼ2倍高い率で起こることが明らかになりました。 同様に注目すべき点は、 このような短期間の治験に関わらず、限られた症例数ではありましたが両群においてNEDA-4の達成が 認められたことは、疾患活動に複合マーカーを使用することにより、従来の臨床パラメータを使用よりも検知度が高いという強 調すべき事実です。 抗-JCウイルス (JCV)抗体インデックス試験[9] ナタリズマブに関連した進行性多病巣性白質脳症(PML)を発生させる多くの既知のリスク因子がある。それらには、抗-JCV抗 体、以前の免疫抑制剤の使用、ナタリズマブ投与期間(とりわけ2年以上)がある。以前実施したPMLを有する71例のナタリズマ ブ投与患者と、PMLを罹患していない2522例の患者を用いた試験において、抗-JCV抗体インデックスは、以前免疫抑制剤を使 用していない抗-JCV抗体陽性患者におけるPMLのリスクを区別できた。 この現在の解析には2014年3月現在の臨床試験と市販後資料のデータが含まれる。PMLを有し、PML診断6ヵ月前の血清および 血漿サンプルが存在する101例のナタリズマブ治療患者と、非PML抗JCV抗体陽性患者8112例、PMLを罹患し免疫抑制されて いない68例、および非PMLで免疫抑制されていない6745例の患者のデータが利用可能であった。抗JCV抗体インデックスは68 例のPMLを罹患して免疫抑制療法を受けていない患者で、6745例の非PMLで免疫抑制されていない患者よりも有意に高い値 を示した(P <0.0001)。免疫抑制療法を受けておらず、抗JCV抗体インデックスが0.9〜1.5の閾値未満の患者では、 ナタリズマブ治 ページ 6 www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-ms 療の最初の2年間におけるPMLリスクは1000患者あたり約0.1〜0.2で、25〜48ヵ月および49〜72ヵ月ではそれぞれ範囲は1000 患者当たり0.5〜1.1および0.6〜1.4 であった。1.5以上のインデックスを有する非免疫抑制患者では、 ナタリズマブ治療の最初の 2 年間における PML リスクは1000患者あたり 1.2 で、25〜48 ヵ月および49〜72 ヵ月ではその範囲はそれぞれ1000患者当たり 8.8 および10.1であった。 解説:本治験はJCV-陽性患者におけるJCV抗体インデックスに関する重要な最新情報を提供しています。以前に見られたよう に、 このインデックスは免疫抑制の経歴の無い患者に使用すると最も有用である様に思われます。JCVインデックスが1.5 未満 の患者では、治験を通してPMLリスクは低く保たれ、 これはインデックスの高い患者でリスクが時間の経過に伴って非常に増加 するのと反対でした。データ数は依然として限られていますが、本治験の結果は以前のものと一貫性があり、抗JCV抗体インデッ クスが以前免疫抑制されていない抗JCV抗体陽性患者のPMLリスクを区別できる可能性を示唆しています。 IFN不応例に対するフマル酸ジメチル(DMF)[10] 本試験は以前のIFN-β治療に不奏功であったと考えられたRRMS患者において2年間にわたる遅延放出DMFの効果を第3相 DEFINEとCONFIRM試験の統合データを事後解析を用いて評価したものである。 162例のプラセボ群と156例のDMF1日2 回投与群を含めて合計475例の患者がIFN-β 不奏功基準を満たした。2年目の新規/新 しく拡張したT2病巣数の平均とこれらの患者におけるガドリニウム増強病巣数の平均は、DMFの1日2回投与により有意に減少 し(それぞれの比率 [95%信頼域 (CI)]:0.15 [0.08-0.28], P <.0001、および 0.06 [0.02-0.20], P <0.0001)、ARRはDMFの1日2回投 与によりプラセボと比較して有意に減少した(0.570 [95% CI, 0.388-0.836]; P =0.004) 。効果の程度はDEFINEとCONFIRM試験の 総体母集団で見られたものと同様であった。 解説:この試験ではDEFINEとCONFIRM試験においてIFN不奏功者のサブセットを調べました。 これらの治験において、治験の全 参加者と同様に、以前にIFN治療が奏功しなかった患者はDMFが非常に効果がありました。 これは決してDMTがIFNより優れて いる証拠を示すものではありませんが、IFN療法で破綻事象を起こした患者に対し、DMF が効果的な治療オプションになる可 能性を示唆しています。 「先生、薬の服用を止められますか?」:MS が安定化している患者における薬剤療法の停止[11] DMTを中断したあとのMSの経過についてはデータが不足してる。 この試験では治験責任医師は世界中の30,000例のMS患者 の観察登録簿である 多発性硬化症データベース(MSBase)を使用した。DMT中断時に40歳以上で、再発はなくEDSSスコアは5 年間以上安定しており、DMT投与は3年以上継続投与されており、DMT停止後3年以上追跡された患者を含む。DMT投与再開を 予測するための主要評価項目は最初の再発と 3 ヵ月後の障害進行の確認であった。 この試験のために15カ国42箇所の医療施設が182患者を識別した。DMTの投与停止は、改善の欠如(9%)、病気の進行 (10%)、非忍容性(8%)、有害事象(6%)、未知の理由(66%)によるものであった。薬剤停止期間中(中央値4.2年、範囲3〜14.7 年)24.2%の患者が再発、32%が3カ月後の診断で病気の進行を示し、10.6%の患者がその両方を示した。DMT投与が182例中 77の患者で(42%)3カ月以上インデックスDMTを停止後に再開された。DMT再開までの期間の中央値は22カ月であった。研究 者はMS患者コホートでDMTを停止した患者にDMT投与再開が高率に認められたと結論した。年齢が若くEDSSスコアの低い患 者に再開率が高いことが予測された。DMTの再開は障害進行率の低下と関連していた。 解説:Kister医師と同僚たちは、比較的長期に渡って病気が安定していたあとにDMTを停止した患者を対象としたこの興味深い 試験で、DMT停止問題の調査を開始しました。興味あることに、 DMT停止後何年か経たあとで、以前の5年間病気を問題なく制 御できたにも関わらず、高率の患者に再発または病気の進行の証拠が認められました。本試験の限界には、66%の患者が最初 にDMTを停止した理由を研究者が識別できなかったという事実が含まれています。 しかしながら、 この試験で持ち上がった疑 問は非常に重要であり、また複雑でもあります。臨床医にDMTの停止決断を促す証拠が得られるまで多くのさらなる試験が必 要です。 疫学 MSの組織分布モデル[12] 炎症性(再発)および神経変性(進行性)の両過程がMSの経過に寄与るが、両者の関係または臨床的不均一性のスペクトルに ついて現在の臨床経過分類では十分に特徴付けられていない。 これらの分類を個別の患者に適用するには診断と予後の生来 の不確実性が存在する。MSの経過の基礎となる要素の混合体を包囲するために概念的に明快で、生物学的に説明できるモデ ルがこれらの分類上に構築された。 Stephen Krieger によって提唱された新しいMSモデルは5つの因子を含んでいる: 病巣の組織分布とそれらの引き起こす再発、 再発頻度、再発の重度、再発からの回復、進行率である (図)。本モデルは3次元のアニメ化した表現で因子間の相互作用を視覚 的に描写している。CNSは浅い端部と深い端部から成るプールとして表されている。脊髄と視神経炎が浅い端部を占め、後頭蓋 ページ 7 2015年度神経学会での多発性硬化症ハイライト 窩が中央部を、両大脳半球が深い端部を構成し、各々が漸増予備能を有している。MS病巣はプールの床から発する組織分布ピ ークとして立ち上がる。水面は臨床的閾値を表している: 水面下の病巣は臨床的にサイレントで、水面を超えるものが臨床的再 発を引き起こす。進行は、機能容量の枯渇を示す、ゆっくりと低下する水面として表現されている。Uhthoff(ウートホフ)現象の症 状再燃のように、進行は臨床的には基礎的病巣組織分布の表面を漸次暴露しながら以前の再発/病巣の形で起こる。 図。新しい多発性硬化症(MS)の組織分布モデル。 本モデルは病気の進行を、臨床経過分類を補完する臨床的なニュアンスをもたせながら表現している。数学的に表現しながら、 予後および予側説明は、臨床治験データセットへの適用を含めて、経験的に検査することが可能である。 この疾患経過の新しい 概念は意義があり、臨床 MS 研究に示唆を与える可能性がある。 解説:Stephen Kriege医師はMS疾患経過のモデルを作成しました。 これはユニークで重要な臨床的および無症状、炎症性およ び変性の臨床構成要素を全て組み込んで作り上げた統一的原型です。そのため、現在の決定的な臨床経過分類の規範とは対 照的に、 この単一モデルが各々の者のMS経過を説明する助けになります。さらなる開発により、本モデルは個人患者の疾患経 過をさかのぼってよりよく理解する助けになる可能性がありますが、また、現在欠けている分野である予後判定能力をより正確 なものに導く可能性もあります。 GEMSプロジェクト[13] MS予防法の調査には、高リスク集団における早期の識別と病気発生の理解を必要とする。GEMS プロジェクトは、 MSを患って いる人々の第一度近親者における早期検出を目標として2011年に始まった。各参加者は標的遺伝子型判定のために唾液を提 出し、人口統計およびリスク因子をとらえるための詳細なウェブベースのアンケートに回答した。各参加者について、遺伝的およ び環境的リスクの加重スコアを計算した。それらには64種類の遺伝的変数と性別、伝染性単核症、喫煙などの他の因子も含ま れていた。 患者支援グループとソーシャルメディアの助けにより、GEMS 治験責任医師達は米国全土から2600人以上の第一度近親者を募 集することができた。最初の1696人の参加者(登録者は1583人が無症状、113人がMS罹患者)についての解析では、 追跡期間 は2.1 ± 0.8年(平均 ± 標準偏差) であった。参加者のうちMS患者27% と、無症状参加者25%が伝染性単核症の病歴を持って これらの両比率は一般集団の比率の2倍である。MSを患っている参加者のうち、その時点で喫煙者であった比 いた(P=0.39)。 率は無症状群に比べて有意に高いかった (P =0.0096)。最初に無症状であった1583例の参加者のうち4例が登録後に MSを発 症し、米国における散発性MS発生率よりも30倍高い発生予測(年あたり100,000人の第一度近親者につき123例)を示した。 GEMS試験は素早く大規模な第一度近親者の参加者を募集できる電子通信の役割を強調し、高リスク家族を対象とした前向き 試験のデザインに重要な情報を与える高リスク集団におけるMSの予測発生率を初めて提供した。 解説:過去10年間に研究者は、個人におけるMS発生リスクを予測するのに用いられるツール作成を試みてきました。 このグル ープはGEMSプロジェクトでその方向を飛躍的に推進しました。第一度近親者がMSを有する合計1600例の無症状者が本試験 で解析されました。治験責任医師は既知の遺伝および環境リスクを評価し、それらのスコアに基づいて患者を7つの層の内の1 つに分類することができました。本治験で最高スコアを示した例を含む最も高い層である4例からなるこのコホートでは、追跡 期間中に全員がMSを発症しました。MSの高リスクを有する患者を識別することは、臨床的に顕性になる前に介入する機会を得 る可能性があります。 ページ 8 www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-ms 退役軍人の治験[14] 人口ベースのコホートでMSの障害進行を評価した試験は少なく、それらのほとんどがヨーロッパ人の子孫に偏っていた。湾岸 戦争時代の人口ベースの MS コホート (N=2691) では、病気の進行を Kurtzke 障害尺度(DSS) で評価した。本治験のコホートは 1990年から2007年の間に米国の兵役を勤めて発症した例からなり、神経障害は診断時とつい最新の検査で評価された。人種、 民族、性別、地理的位置、戦争現場への配備、臨床的変数が患者のデータベースからコード化された。発症からDSS6(杖使用)お よびDSS7(車椅子使用) までの期間が評価された。 発症から平均8年間にわたる追跡期間中に、黒人および男性はDSS6とDSS7へ進行する有意な独立予測因子であった。病状の 進行性経過と運動または多発症状の発生もDSS6とDSS7へ進行する独立予測因子であった。DMTの使用はDSS6への進行に対 する防御機能が見られた。戦場への配備および軍隊加入の地理的位置は神経学的進行の予測因子ではなかった。 解説:1990年から1997年の間にMSを発症した米国退役軍人からなるこの大規模なコホートでは、黒人および男性であること が進行リスクを高めたことから、 これらの患者におけるより早期で積極的な治療戦略を支援する可能性があります。DMTはリス クを低減させるように思われました。興味あることに、戦場での勤務は進行リスクを高めない様です。 これはストレスは患者の MS進行に直接的影響を及ぼさないという以前の調査結果を再強調するものです。 微生物叢とMS[15] 微生物叢として知られる人の腸管に棲息する莫大な数の微生物は、免疫反応に影響を及ぼし、慢性病への感受性を調整するこ とが立証されている。最近の試験は、腸内菌共生バランス失調とクローン病、1型糖尿病、肥満、自閉症との関連を示した。動物 モデルでは腸内微生物叢がMSに重要な役割を果たしている可能性を示唆した。MS微生物叢コンソーシアムとは、2 箇所のト ランスレーショナルMSセンター(ニューヨークにあるMount Sinai Medical Centerとサンフランにあるカリフォルニア州立大学 [UCSF])、微生物叢重視の基礎および実験プログラム、シークエンシングおよびバイオインフォマティクスコアから成る多数の 専門分野にわたる共同団体である。追跡した変数には、人口統計、肥満度指数、病歴、MSの臨床経過と表現型、治療、食事を含 む。MS微生物叢コンソーシアムは独立審査委員会が承認したプロトコルに従ってMSと対照の患者を募集し、血や糞便サンプル の処理、分析を実施している。 初期の結果は酢酸グラチラマー投与した患者の微生物叢は未治療群と比較して属レベルで有意差のあることを示している。女 性は、同性の対照群と比較して有意な腸内細菌科の増加を示した。地理的相違もまた明らかになった。驚いたことに、無菌マウ スに移植した場合に、MS患者由来の微生物叢は対照群由来の細菌叢と比較して、 より重度な 実験的な自己免疫性脳脊髄炎を 起こした。症例と対照群間で見られた差異は、生物学的影響を示唆するもので、地理的、人口統計的、食事因子の影響のさらな る調査の必要がある。MS患者の腸内微生物叢はマウスで免疫応答を調整することができる。 解説:微生物叢はMS研究における比較的新しい分野です。 この共同研究は複数のアプローチによる大規模調査です。 これまで の本プロジェクトの結果で多分最も興味深いことは、MS患者由来の腸内微生物叢を無菌マウスに移植すると実験的な自己免 疫性脳脊髄炎の重症度に増加が認められたことです。人微生物叢の研究は、MSの病原性の理解を深める重要な見識をもたら す可能性と共に、治療戦略に導く可能性も秘めています。 コーヒーとMSの関連性[16] カフェイン摂取は、パーキンソン病やアルツハイマー病を発症させるオッズ比の低減と関連付けられているが、 これまでのカ フェイン摂取とMSリスクに関する試験は決定的なものではなかった。Ellen Mowryのチームによる試験では、スウェーデンと オランダの2団体の集団ベースについて症例対照研究を行い、疾患発症前のコーヒー摂取量とMS発症リスクの関連性を調査 した。 スウェーデンコホートでは、インデックス年度中に毎日コーヒーを6杯以上摂取するとMS発症の調整オッズ比0.67(95% CI、0.47-0.95) となり関連性が見られた。カリフォルニア州北部の試験では、インデックス年前に毎日コーヒーを4杯以上摂取し た人々に対するMSのオッズ比も0.67(95% CI、0.47-0.95) であった。 解説:MSのリスクの原因となる、あるいはリスクを変化させる恐れがある食事や環境の因子についてはほとんど知られていま せん。本試験は2組の異なる患者コホートで実施されましたが、高レベルのコーヒー摂取がMSリスクの中程度の低下と関連し ていることが判明しました。本試験の結果で重要なのは、高レベルのコーヒー摂取でのみに有意な影響が見られたということ です(米国のコホートでは1日あたり6杯以上に相当)。また、他のタイプのカフェインではこの関連性は認められませんでした。 本試験の著者は、 この関連性は他の測定不可能な要因による可能性があるものの、コーヒーに直接的な免疫調整効果があると 仮定しています。 ページ 9 2015年度神経学会での多発性硬化症ハイライト 参考文献 1. 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Accessed May 26, 2015. 略語 AON = 急性視神経炎 ARR = 年率換算再発率 CARE-MS II =Genzyme社が依頼者であるアレムツズマブの治験のことで、多発性硬化症患者を対象にした拡張プロトコ ルに従って実施された CI = 信頼区間 CNS = 中枢神経系 CONFIRM = 多発性硬化症における経口薬BG-12またはグラチラマーのプラセボ対照第3相試験 DAC HYP = 高収率合成ダクリズマブ DECIDE = 再発寛解型多発性硬化症における経口薬BG00012の有効性と安全性を評価する治験 DMF = ジメチルフマル酸 DMT = 病態修飾療法 DSS = 障害度評価 EDSS = 総合障害度評価 GEMS = 多発性硬化症の遺伝子と環境要因に関する調査 IFN = インターフェロン INFORMS = 一次進行多発性硬化症におけるFTY720の治験 ITT = 治療意図 JVC = JCウイルス LINGO-1 = ロ イシンリッチリピートおよび免疫グロブリンドメイン含有神経突起成長阻害剤受容体-相互作用タンパ ク-1 MRI = 核磁気共鳴画像 MS = 多発性硬化症 MSBase = 多発性硬化症データベース NEDA = 疾患活動性の認められない状態 PML = 進行性多病巣性白質脳症 PPMS = 一次進行型MS RNFL = 網膜神経繊維層 RRMS = 再発寛解型多発性硬化症 T25FW = 25 フィートを歩くのに要する時間の検査 TRANSFORMS = 再発性多発性硬化症におけるフィンゴリモド経口投与またはインターフェロン筋肉内注射の比較治験 UCSF = カリフォルニア州立大学、サンフランシスコ ページ 11 2015年度神経学会での多発性硬化症ハイライト 免責事項 本文書は教育目的のみに作成されたものです。本文書を読むことで医学生涯教育(CME)の単位を取得することはできません。 本アクティビティーに参加するには http://www.medscape.org/clinicalupdate/perspectives-msをご覧ください。 このアクティビティーの内容に関するご質問は、[email protected] から教育アクティビティー提供者にお問い合わせくださ い。 技術的なご質問は、[email protected] にお問い合わせください。 上記の教育アクティビティーには、模擬症例に基づいたシナリオが含まれる場合があります。 これらのシナリオに描写される患 者は架空のものであって、実際の患者との関連性を意図するものではなく、 またそれを暗示するものでもありません。 ここで示した資料は必ずしもMedscape社、 またはmedscape.orgで教育プログラムを支援する会社の見解を反映するものでは ありません。 これらの資料には米国の食品医薬品局で未承認の薬品や承認済薬品でも適応外使用の治療法について検討され ている場合があります。検討された治療薬を使用する前に必ず資格のある医療専門家に相談してください。読者は患者の治療 を行ったり、 この教育活動で述べられた何らかの療法を適用する前に全ての情報とデータを確認することが必要です。 Medscape 教育 © 2015年 Medscape, LLC ページ 12
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