事務機器WG成果報告 - 日本貿易振興機構北京事務所知的財産権部

2014年度 事務機器WG
成果報告
『再製造に関する諸問題の検討』
2015年3月12日
中国IPG 事務機器WG
馬場 崇智 (富士ゼロックス(中国))
活動テーマ
活動テーマ
2014年度の活動開始前は、以下の2テーマが上がっていたが、実際に
活動したのは「再製造に関する諸問題の検討」のみ。
WG
年度
番号
テーマ名
再製造に関する諸問題の検討
事務機器WG
2014
J
調査会社の偽装摘発に対する対応策の検討
活動
活動せず
2
WGメンバー
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
会社名
エプソン(中国)有限公司
キヤノン(中国)
京セラドキュメントソリューションズ(中国)有限公司
京セラドキュメントソリューションズ(中国)有限公司
京セラドキュメントソリューションズ(中国)有限公司
コニカミノルタ(中国)投資有限公司
コニカミノルタ(中国)投資有限公司
シャープ(中国)投資有限公司
シャープ(中国)投資有限公司
富士ゼロックス(中国)有限公司
富士ゼロックス(中国)有限公司
ブラザー(中国)商業有限公司
ブラザー(中国)商業有限公司
ブラザー(中国)商業有限公司
ブラザー(中国)商業有限公司
ブラザー(中国)商業有限公司
リコー中国投資有限公司
リコー中国投資有限公司
IP FORWARD China
※1;途中交替
※2;第1回WG(4/11)参加
参加者
参加者((敬称略)
敬称略)
小林利彦
小澤潤
中島真二※1
鈴木克英
銭寅生※1
草野明彦
李媛麗
宮腰佳代子
郭喆
馬場崇智
銭楓
熊澤一※1
周佳麗
川上仙智
張 ※1
奥田聖二郎
永塚広明
賈玉
分部悠介※2
3
現状認識
現状認識
ⅰ)再製造業者の再製造複合機が散見され、オリジナルメーカの新品
複合機と比べて、10%前後の価格で販売されている。
再製造業者の
銘板
再製造と明記
再製造業者の
銘板
再製造と明記
4
現状認識
現状認識
ⅱ)再製造複合機の中には操作パネルが日本語・英語標記のものが中国
国内で流通していること、また、再製造複合機に係わる標準の検討が
開始されたことを鑑みると、再製造複合機は中国国外の中古機等が
基になっていると推測される。
液晶は日本語標記
プリントは英語標記
印刷部分は英語標記
中国
中古機
廃棄物
Ⅰ.輸入
Ⅱ.密輸
GB/T「再製造複写
(多機能を含む)設備」
(草案)
Ⅲ.再製造
Ⅳ.販売・サービス
再製造機
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現状認識
現状認識
ⅲ)再製造複合機の中には、オリジナルメーカの商標の近くに、自身の
商標を明示しているものがある。
オリジナルメーカ
の商標
再製造業者
の商標
再製造業者
の商標
オリジナルメーカ
の商標
6
課題および調査目的
課題
ⅰ)他の法規制関連
再製造複合機の基になっていると推測される中古機等の流通過程の
適法性、および流通している再製造複合機の適法性に対する理解が
不十分。
ⅱ)知財権(商標)関連
再製造複合機に対して、オリジナルメーカの商標の近くに、自身の
商標を明示していることの適否に対する理解が不十分。
調査目的
ⅰ)他の法規制関連
上記中古機等の流通過程および上記再製造複合機の適法性を把握し、
再製造業者に対する注意点およびオリジナルメーカが複合機の再製造
を行う際の注意点に対する理解を深める。
ⅱ)知財権(商標)関連
再製造複合機に対して、オリジナルメーカの商標の近くに、自身の
商標を明示していることの適否について理解を深める。
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調査研究方法
調査研究方法
ⅰ)他の法規制関連
前記中古機等および前記再製造複合機を念頭において、輸入・密輸・
修理再生・販売の各領域毎に、以下の項目について情報収集/整理。
①法令法規など
②法律執行機関(地方レベル主管部門)
③執行実績
など
ⅱ)知財権(商標)関連
オリジナルメーカの商標と他の商標とが付されていることで争いに
なった裁判例の理解、および弁護士との意見交換。
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連
①輸入・密輸・修理再生・販売の各領域毎に、法令法規などの情報を、一定量収集
整理できた(以下の表参照)。
②法律執行機関の執行実績は、輸入・密輸における輸入禁止廃物違反・強制認証
表示違反などが確認できた。
調査領域
法令法規など
法律執行機関
執行実績
(地方レベル主管部門)
輸入
機電産品進口管理弁法
商務部(機電産品進出口弁公室)
確認できず
注:中古機電製品輸入許可書の
審査機関。
進口旧機電産品検験監督管理弁法
老廃のコピー機・プリンターが原則として輸入
禁止の中古機電製品に属する。
国の特別需要で国家貿易主管機関の承認が
ない限り、輸入の許可・届出が取れない。
進口旧機電産品検験監督程序規定
所在地直属の検験検疫局
有り
注:中古機電製品輸入の届出手続
きの主管機関。
所在地直属の検験検疫局
輸入の中古機電製品の届出・運送前点検・到着
時点検・監督管理などに関する詳細規定。
進出口商品検験法実施条例
中古機電製品の不法輸入行為を処罰する法執
行機関の主な法的根拠。
所在地直属の検験検疫局
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連
調査領域
法令法規など
法律執行機関
執行実績
(地方レベル主管部門)
密輸
国家輸入禁止固体廃棄物目録
地方税関
有り
質量監督検査検疫局
確認できず
環境保護総局
確認できず
廃棄物リスト68に該当すれば適用があると
考えれられる。
修理再生
再製造単位の品質技術コントロール規範
MFP・Printerの修理再生という作業自体に
対してはこの規範しかないと思われる。
電子廃棄物環境汚染防止管理弁法
MFP・Printerの修理再生という作業によって
発生する事柄(排水などによる環境汚染など)に
対しての法規制は全体的に把握できていない。
本件のような内容がある。
固体廃棄物環境汚染防止法
同上。
注:県レベル以上地方政府の
環境保護行政主管部門。
環境保護総局
確認できず
注:県レベル以上地方政府の
環境保護行政主管部門。
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連
調査領域
法令法規など
法律執行機関
執行実績
(地方レベル主管部門)
販売
不正競争防止法 (誤認混同関連)
各地の工商行政管理局
確認できず
各地の質量技術監督局
確認できず
各地の工商行政管理局
確認できず
各地の工商行政管理局
確認できず
1.他人の登録商標を冒用した場合。
2.他人の企業名称又は姓名を無断で使用し、他人の
商品と誤認させた場合。
3 商品に認証標章・有名優良標章等の品質標章を偽造し、
3.商品に認証標章・有名優良標章等の品質標章を偽造し、
又は冒用し、産地を偽り、商品の品質を誤認させる
虚偽の表示をした場合。
製品品質法 (誤認混同関連)
製品の原産地を偽造した場合、他人の工場の名称及び
工場所在地を偽造又は冒用した場合並びに認証標章等
の品質表示を偽造又は冒用した場合。
不正競争防止法 (広告虚偽関連)
事業者は広告又はその他の手段を利用し、商品の品質、
原材料名、性能、用途、生産者、有効期限、産地等を
誤認させる虚偽の宣伝をした場合。
広告法 (広告虚偽関連)
広告を利用して商品又はサービスについて虚偽の宣伝
をした場合。
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連
調査領域
法令法規など
法律執行機関
執行実績
(地方レベル主管部門)
販売
刑法 (広告虚偽関連)
各地の公安局
確認できず
各地の質量技術監督局
確認できず
各地の質量技術監督局
確認できず
各地の公安局
確認できず
広告主、広告経営者又は広告発布者が、国の規定に
違反し、広告を利用して商品又はサービスについて
虚偽の宣伝をし、情報が重い場合。
製品品質法 (品質問題関連)
人体の健康、人身及び財産の安全を保障する国家標準、
業界標準に合致しない製品を製造、販売した場合。
製品品質法 (品質問題関連)
製品の中に雑物を混入し、偽物を混入し、偽物を本物
と偽り、劣等品を優等品と偽り、又は不合格製品を
合格製品と偽った場合。
刑法 (品質問題関連)
人身、財産の安全を保障する国家標準、業界標準に
合致しない電気製品、圧力容器、可燃性・爆発性の
製品又はその他の人身、財産の安全を保障する国家
標準、業界標準に合致しない製品を生産し、又は
以上の人身、財産の安全を保障する国家標準、業界
標準に合致しない製品であることを明らかに知りな
がらこれを販売し、重大な結果をもたらした場合。
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連
調査領域
法令法規など
法律執行機関
執行実績
(地方レベル主管部門)
販売
刑法 (品質問題関連)
各地の公安局
確認できず
各地の質量技術監督局
確認できず
各地の工商行政管理局
確認できず
生産者又は販売者が、製品に不純物や偽物を混入させ、
偽物を本物と偽り、不良品を良品と偽り、または不合
格製品を合格製品と偽った場合。
製品品質法 (表示問題関連)
製品又はその包装上の標章が以下に合致しない場合。
1.製品品質検査合格証明があること。
2.中国語で表示した製品の名称、製造工場の名称及び
工場所在地があること。
3.製品の特徴及び使用上の要求に基づき製品の規格、
等級、主要含有成分の名称及び含有量を表示する
必要がある場合、中国語を用いて適切に表示する
こと。
循環経済促進法 (表示問題関連)
再製造または再生新品の表示の無い再製造品または
再生新品製品を販売した場合。
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連 事例(税関HP)
輸入
密輸
■厦门税関(2013/4/28)
廃旧プリンタ120台、廃旧複写機133台
輸入禁止廃旧機電産品、輸入禁止固体廃物目録
輸入禁止
廃物違反
http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/tab49685/info434095.htm
輸入
密輸
■上海税関(2013/8/21)
廃旧プリンタ・複写機・複合機 計252台
強制性認証標識なし、出入境検験検疫部門鑑定
強制認証
表示違反
http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/tab65602/info622645.htm
■広東高明検験検疫局(2006/2/22)
廃旧プリンタ
輸入禁止廃物目録の商品
輸入禁止 http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/tab637/info44672.htm
輸入
密輸
廃物違反
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅰ)他の法規制関連 事例(各種記事)
輸入
密輸
輸入禁止
廃物
違反?
販売
根拠
未確認
■寧波税関(2001/9/9)
旧複写機560台、旧ファックス83台
http://www.people.com.cn/GB/tupian/75/20010909/555548.html
■南海管业城-廃旧電器経営店舗-(2010/4/15)
旧複写機、旧プリンタ
http://dadao.net/php/prtime/temp_news.php?ArticleID=144361
■黄埔税関(2004/1/19)
廃旧複写機
輸入固体廃物
輸入禁止 http://news.xinhuanet.com/newscenter/20
輸入
密輸
輸入
密輸
廃物違反
輸入禁止
廃物
違反?
04-01/19/content_1283498.htm
■深 税関(2009/6/5)
廃複写機
http://news.xinhuanet.com/legal/200906/05/content_11493715.htm
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅱ)知財権(商標)関連
①オリジナルメーカの商標と他の商標とが付されていることで争いになった
裁判例として、ビール瓶の事件「湖南省高級人民法院2011湘高法民三终字
第40号」を基に法律事務所と意見交換を行い、数件の類似事件と共に
事務所の意見を得た。
②同様なビール瓶等の事件であっても、商標権侵害となるケース・ならないケース
があり、商標権の使用行為の有無・混同惹起の恐れの有無・業界全体の商慣習
があり、商標権の使用行為の有無
混同惹起の恐れの有無 業界全体の商慣習
バックグラウンドで、判断が分れる。
ビール瓶事件①
ビール瓶事件②
高民三(知)终字第111号
白酒事件
(2011)湘高法民三终字第40号
(2013)
(2007)宜中民三初字第22号
湖南省高级人民法院
上海市高级人民法院
江西省宜春市中级人民法院
江鹤泉酒业有限责任公司 vs
重庆 酒(集团)有限责任公司;商標権
者
浙江喜盈门 酒有限公司 vs
百威英博(中国)销售有限公司:商標権者
四特酒有限责任公司:商標権者 vs
江西樟树市健酒实业有限公司
非侵害
侵害
侵害
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅱ)知財権(商標)関連
ビール瓶等の事件の事件の概要(
ビール瓶等の事件の事件の概要(各事件で共通の内容)
各事件で共通の内容)
①商標権者が自身の商標を付したビール等を生産・販売
②ビール等が消費された空ビンを回収
③回収された空ビンに業者Aが業者Aのビール等を充填し、業者Aの商標を貼付け
④是を販売
(Step1)
(Step2)
(Step3)
(Step4)
ビール瓶等の事件の事件の概要(
ビール瓶等の事件の事件の概要(各事件で異なる内容)
各事件で異なる内容)
⑤業者Aのビール等のラベル・商標の内容・表示の仕方は夫々異なる(詳細は次頁を参照)
業者
業者A
A
Step1
生産・販売
Step2
空ビン回収
Step3
ビール充填・商標貼付け
登録商標刻印
商標権者
空ビン
業者A
業者A
のビール等
のビール等
回収・再生利用等の政策有り
Step4
販売
業者
業者A
Aの
商標貼付け
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研究に基づく成果
ビール瓶事件①
ビール瓶事件②
白酒事件
非侵害
侵害
侵害
権利者の商品形態
ビール瓶に商標を刻印(詳細以下)
ⅰ.水滴の形のロゴマークを刻印
ⅱ.目に付き難いところに刻印
ⅲ.刻印とビール瓶の色が同じ
(目に付き難い)
権利者の商品形態
ビール瓶に商標を刻印(詳細以下)
ⅰ.百威(バドワイザー)のロゴマークを
刻印
ⅱ.刻印とビール瓶の色が同じ
(目に付き難い)
権利者の商品形態
白酒の瓶に商標を刻印(詳細以下)
ⅰ.四特専用と刻印
ⅱ.目に付き難いところ(瓶の底)に刻印
業者の行為
自身の商標ラベルを貼付け(詳細以下)
ⅰ.自身の商標(鶴泉と金鞭溪)を表示
したラベル
ⅱ.際立っている部所(瓶の本体,首,蓋)
業者の行為
自身の商標ラベルを貼付け(詳細以下)
ⅰ.権利者(バドワイザー)の子会社
(ハルピンビール)のラベルと類似
ラベル
ⅱ.小さな文字で自身の商標を表示
業者の行為
自身の商標ラベルを貼付け(詳細以下)
ⅰ.顕著な部分に貼付け
消費者の認識
消費者の認識
業者の商品であることを認識可能
権利者の商品と関係があると誤認
ⅰ.権利者の商標(水滴のロゴマーク)が ⅰ.業者のラベルから新しい商品だと
瓶に刻印として残っていたとしても、 識別できない。権利者(バドワイ
権利者のビールと何ら関係ないと
ザー)と関係があるように思う
識別できた
消費者の認識
詳細は不明
ⅰ.但し、白酒は瓶自体(の形状がが
まちまちで)、識別の重要な要素に
なる
業界の商慣習など
政策;ビール瓶は、回収に関する政策・使用基準に関するガイドライン・その他
ガラス容器の再生利用に関するガイドラインがある
商習慣;ビール瓶は廃棄物にならない・正当なルートで回収できる・ビールを買
うときには瓶代も支払う・瓶を持って行いけば瓶代は帰ってくる
業界の商慣習など
商習慣;白酒の空き瓶は廃棄物・瓶を
回収・再利用しない
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研究に基づく成果
研究に基づく成果
ⅱ)知財権(商標)関連
■法律事務所 見解(抜粋)
1. ビール瓶事件の裁判所の考えは以下と思われる。
先ず、商標権の使用行為の有無・混同惹起の恐れの有無を判断
更に、ビール瓶という資源再利用の正当性・妥当性を判断
2. 判断の際には、業界全体の商慣習・バックグラウンドを考えなければ
ならないと思われる。裁判所は、先ず事件の事実を見て、それから
総合的に判断して結論を導き出す。
3. ダブルブランドに関して、被疑侵害者のブランドが登録商標であるか
否かは問題ではない(関係ない)。
4. ダブルブランドに関して、上記1.2.の通り、商標権の使用行為の有無
混同惹起の恐れの有無、業界全体の商慣習バックグラウンドが、問題
となる。
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実務への提言
実務への提言
ⅰ)他の法規制関連
①法令法規などの情報を一定量収集整理できたが、網羅的に把握できて
いない為、この点、留意が必要。
②法律執行機関の執行実績が確認できた領域があるが(輸入・密輸における
輸入禁止廃物違反・強制認証表示違反など)、執行機関の思考は未確認で
あり、意見交換等ができればより理解は深まると思われる。
③何処に何をすれば執行されるのか・何をすれば執行されないのか等の
実務上理解が必要なことまで収集整理できず残課題である。
ⅱ)知財権(商標)関連
①ビール瓶等の事件については理解が深まったが、事務機器で考えた
場合についていは検討できず残課題である。
②同様な事件であっても、商標権侵害となるケース・ならないケース
があり、商標権の使用行為の有無・混同惹起の恐れの有無・業界全体の
商慣習バックグラウンド等を個別具体的に検討する必要がある。
20
ご清聴ありがとうございました。
中国IPG
事務局 日本貿易振興機構(JETRO)
北京・上海・広州事務所