2015-12-10 00:10:56 Title Ecological and

>> 愛媛大学 - Ehime University
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Ecological and Epidemiological Studies on Sandfly Vectors of
Leishmaniasis in Ecuador, with Special Reference to the
Transmission in the Andes Regions( 審査結果の要旨 )
Eduardo A. Gomez Landires
. vol., no., p.-
2015-02-17
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/4587
Rights
Note
受理:2015-01-21,審査終了:2015-02-17
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(第5号様式)
学位論文審査の結果の要旨
氏
審
論
名
査
文
委
員
Eduardo A. Gomez Landires
主査 伊藤 桂
副査 小西 和彦
副査 伊藤 文紀
副査 是永 正敬
名
Ecological and Epidemiological Studies on Sandfly Vectors of Leishmaniasis in Ecuador, with Special
Reference to the Transmission in the Andes Regions
(エクアドル国におけるリーシュマニア症媒介昆虫サシチョウバエに関する生態学的・疫学
的研究-とくにアンデス地域における伝播を中心に-)
審査結果の要旨
本論文はエクアドル国アンデス高地のリーシュマニア症(以下「リ症」と略す)と、その
媒介サシチョウバエによる伝播様式、並びにヒト吸血性サシチョウバエ各種の全国的調査結
果を中心にまとめたものである。サシチョウバエは種々の病原体(リーシュマニア、バルト
ネラ、フレボウイルス、オルビウイルス、ベシクロウイルス、トカゲマラリア)を媒介する
ハエ目(Diptera)チョウバエ科(Psychodidae)の昆虫である。サシチョウバエを研究するに
当たり、まず、エクアドルの生物地理学的要因について文献調査を行った。エクアドルは高
度差によって太平洋側低地(海抜 0~300m)、アンデス斜面の太平洋側及びアマゾン側(海
抜 300~1,200m)、アンデス山地(2,000m 以上)、アマゾン側低地(0~300m)に大別され、
これらの要因が「リ症」媒介昆虫(サシチョウバエ)や Leishmania 原虫保虫宿主動物の生息
・分布に大きく関与していることを明らかにした。
サシチョウバエは蚊の三分の一ほどの大きさの微小吸血昆虫である。本研究ではサシチョ
ウバエ 18,119 個体を実体顕微鏡下で解剖・同定し、全国的規模での種(species) の分布と
Leishmania 属原虫の寄生状況についての結果をまとめた。エクアドル国では申請者らを中心
とした研究によって、76 種のサシチョウバエの分布が知られているが、そのうち 29 種はヒ
ト吸血性であることが判明した。本研究ではヒト吸血指向性の差異その他の生態学的見地か
ら「リ症」媒介者としてとくに重要と考えられる 10 種をリストアップした。また、解剖結
果に基づき、Leishmania 原虫感染が認められたサシチョウバエ種は Lutzomyia gomezi、 Lu.
trapidoi、 Lu. tortura、 Lu. ayacuchensis の 4 種である。また、アンデス山脈を中心に太平洋
側及びアマゾン側におけるサシチョウバエの興味ある種構成を明らかにした。
一方、「リ症」の伝播3要素とされる Leishmania 原虫、媒介サシチョウバエ及び保虫宿主
動物(イヌ、クマネズミ)についてパイロット地区を設け、通年(13 か月)にわたって媒
介サシチョウバエ(Lu. ayacuchensis) 2,600 個体を採集し解剖したところ、95 個体(3.65%)
が Leishmania 原虫陽性を示した。調査結果に基づき、この流行地での伝播強度(transmission
intensity)及び感染強度(infection intensity)は、雨期に高い傾向がみられ、この時期での媒介サ
シチョウバエ対策が疾病対策上重要であることを指摘した。さらに、パイロット地区での通
年調査結果やアンデス高地の季節変化に伴うヒトと伝播要素の接点、Overlap の仕方を図式
化して伝播モデルを提唱した。
次に、エクアドル国太平洋岸の低地からアンデス斜面に至る地域でパイロット地域を設け、
海抜 300m から 2,500m の間に 5 定点を設置し、サシチョウバエの種構成及び Leishmania 原
虫感染の高度(海抜)による違いを調べた。その結果、サシチョウバエは低地(海抜 300m)
で 7 種、高地(2,500m)で 1 種のみが分布した。また、アンデス型「リ症」の病原虫 L.
(L.) mexicana は海抜 650m~2,500m に生息するサシチョウバエ1種(Lu. ayacuchensis) のみで
感染が証明され、定点の高度が高くなるにつれて感染率も高くなる傾向を示した。なお、
「リ症」媒介種として重要な Lu. ayacuchensis の各定点における採取個体について遺伝子解
析を行ったが高度差による明らかな差異は認められなかった。
以上のように、本研究ではエクアドルに分布するサシチョウバエ種 76 種のうち、「リ症」
媒介種として重要なヒト吸血性 29 種の分布及び Leishmania 原虫の寄生状況を初めて明らか
にした。これらの成績は「リ症」の媒介者対策や監視体制(Surveillance)を実施していく上で
極めて重要である。また、アンデス流行地に2つのパイロット地区を設けて詳細な生態疫学
的、分子生物学的解析を実施し考察を加えた研究成果は「リ症」の媒介昆虫対策に寄与する
だけでなく、本症の医学・生物学の理解と解明に大きく貢献する。さらに、これらの成果は
他の昆虫媒介性疾病のモデルとしても有用であると考えられる。
本論文の公開審査会は、平成 27 年 2 月 7 日に愛媛大学農学部において開催され、口頭発
表とこれに関する質疑応答が行われた。引き続き開催された学位論文審査委員会において論
文内容について慎重に審査した。その結果、審査委員全員一致して博士(学術)の学位を授与
するに値するものと判定した。