第40回中東協力現地会議 「中東地域のインフラ分野における 商社ビジネスの現状と課題」 2015年8月28日 一般社団法人日本貿易会 市場委員会委員長会社 三菱商事㈱ 常務執行役員 中東・中央アジア統括 吉川 惠章 本日のテーマ 1. 中東地域の位置づけ・重要性 2. 有望なインフラ市場としての中東地域 3. インフラ輸出推進に向けた商社の役割 4. 中東地域における三菱商事のインフラプロジェクト戦略 5. 中東地域における総合商社の具体的な案件事例 6. インフラプロジェクト遂行上の課題 7. インフラ輸出における政府及び政府関係機関への期待 1 1. 中東地域の位置づけ・重要性 成長率 % 名目GDP 10億$ 10 800 4000 9 8 世界平均 3500 MENA20 700 MENA20 3000 ASEAN10 600 7 6 2500 500 5 2000 400 4 1500 300 1000 200 500 100 3 2 1 0 2000 0 2005 2010 2015 2020 出所:IMF, World Economic Outlook Database, April 2015 人口 100万人 MENA20 ASEAN10 MENAP22 0 2000 2005 2010 2015 2020 出所:IMF, World Economic Outlook Database, April 2015 2015年の名目GDPは2.6兆ドル 2015年の成長率は2.7% 近年は低迷傾向にあるものの、 ASEAN10(2.5兆ドル)とほぼ 同規模 2016年は3.7%、2020年は 4.0%と上向くことを予測 2020年の名目GDP予測は3.6兆 ドル今後5年で約4割増の成長を 予測 2000 2005 2010 2015 2020 出所:IMF, World Economic Outlook Database, April 2015 2015年の人口は4.3億人 ASEAN10の7割程度 アフガニスタン、パキスタンを含めた MENAP22はASEAN10を超えた規模 IMFによるMENA20の定義:アルジェリア、バーレーン、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビヤ、モーリタニア、 モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、スーダン、シリア、チュニジア、UAE、イエメン 2 2. 有望なインフラ市場としての中東地域 中東地域のインフラ需要は2020年までに約430兆円 チュニジア • • • • • 高速道路整備 • 太陽光発電 • 上下水道整備 トルコ クエート 大橋建設計画 原発計画 病院建設 廃棄物焼却発電 • IWPP • 太陽熱発電 • 下水処理 バーレーン • 製油所拡張 • 地球観測衛星 • LNGターミナル モロッコ • • • • 太陽光発電 資源開発 地方道路整備 上下水道整備 カタール アルジェリア • • • • 原発計画 鉄道事業 海水淡水化 風力発電 エジプト リビア 出所:経済産業省 通商政策局 中東アフリカ課 • W杯関連 (サッカースタジアム等) • メトロ • 水・電力関連 • 鉄道事業 • 石油ガス関連 • 電力等の国内 インフラ構築 • • • • 太陽光発電 新都市建設 資源開発 原発計画 サウディアラビア • • • • 太陽光発電 原子力発電 メトロ建設 長距離鉄道 オマーン UAE • • • • 都市鉄道 原発計画 ドバイ万博関連 鉄道(湾岸6カ国) • 海水淡水化 • IPP 人口増加と経済成長に伴うハード・ソフト両面における経済・社会基盤整備 (電力・水・交通等)が喫緊の課題 治安・内政の安定化を図る上でも社会インフラ整備が必須 非石油部門の産業育成による経済構造の多角化・高度化の必要性 “トルコから見た中央アジア”、“ドバイから見たアフリカ”という市場の捉え方が重要 3 3. インフラ輸出推進に向けた商社の役割 商社の強み ① 制度金融・ファイナンス組成力 ② 高い技術力を有するメーカーとのパートナーリング ③ グローバルな拠点・情報ネットワーク ④ トップ外交における官民連携 商社の役割 案件組成・ファイナンス -案件の発掘・提案 -資金調達の枠組み を組成 設計・調達・建設 -パートナーの選定 -相手政府関係他と の交渉 管理・運営 -事業コストを管理し 利益を確保する経営 4 4. 中東地域における三菱商事のインフラプロジェクト戦略 1 顧客・パートナー戦略 × 中東地域パートナー企業と組んで、 第三国でのインフラ事業展開を狙う。 【カタール企業との協業事例】 カタールにおける電力・水分野の取組み 電力ケーブル案件継続受注 Ras Abu Fontas A2 海水淡水化プラント案件 Ras Abu Fontas A3 海水淡水化プラント案件 電力・造水事業 (Facility-D) 出資者:三菱商事・東京電力30% カタール発電造水会社(QEWC)他70% 2 投資戦略 地域への中長期的なコミットメント、パート ナーとの重層的関係を構築すべく、事業投 資を加速。 【中東地域に於ける事業投資実績】 1981-1990 1991-2000 SHARQ (サウジ・石化) NJFC IMC (ヨルダン・肥料) (サウジメタノール) Oman LNG (オマーン・LNG) 2001-2010 2011BGC (イラク・ガス) Qalhat LNG (オマーン・LNG) MCOSA (サウジ・コンプレッサー) AJIL (サウジ・リース) MMC Kaz (カザフ・自動車) Intercity (トルコ・リース) JAPEX Garraf (イラク・E&P) ETA-MELCO MPSSA (UAE・エレベータ) (サウジ・ガスタービン) ITECO (UAE・パイプ) 第三国での発電事業展開 中東最大級(5.25万kW)の太陽光発電事業 (Shams Ma’an) 出資者:三菱商事35% Nebras(QEWC海外発電子会社)35% KAWAR(ヨルダン企業)30% 三菱商事は同国発電容量の約16%のシェア IPP3 (ヨルダン・火力) 2010年迄の投資は8件 2011年以降、11件の投資を 実現、この5年間で倍増 その内7件はインフラ案件 Shams Ma’an (ヨルダン・太陽光) METITO (UAE・水) Facility D (カタール・IWPP) Calik Energy (トルコ・総合インフラ) 5 5. 中東地域における総合商社の具体的な案件事例 -発電インフラ- ※社名はアルファベット順 丸紅 地域 事業 概要 出資者 事業 規模 意義 三井物産 双日 UAE オマーン サウディアラビア Taweelah B 発電・造水所の建設・ 保守・運営 Salalah発電所の建設・保守・運営 リヤドPP11ガス焚コンバインドサ イクル発電所の建設・保守・運営 アブダビ電力水会社への売電・売水 オマーン国営電力・水公社への 売電 サウジ電力公社への売電 丸紅:14% アブダビ政府:60% 日揮:6% その他:20% 三井物産:45% DIDIC:10%(在サラーラ投資会社) 双日:15% GDF Suez:20% Al Jomaih :15% サウジ電力会社:50% 設備容量:2,000MW(発電) 設備容量:673MW 設備容量:1,720MW 総事業費:約630百万ドル 総事業費:約20億ドル サウジ大手財閥グループとの協業 による第三国への展開。 双日にとって中東初のIPP事業。経 営人材を派遣し、事業運営に主体 的に参加。 160MIGD(造水) ACWA:45%(サウジ大手財閥G) 総事業費:約26億ドル 丸紅にとって中近東市場でコン ソーシアムリーダーとして取り組 んだ初のIWPP案件、同市場での I(W)PP事業展開の布石となった。 国際協力銀行としても中近東市場 のIWPP案件に対する初のプロファ イ供与案件となり、同市場での I(W)PP案件への融資供与展開の布 石となった。 オマーン国における三井物産発の 下流インフラ事業への出資参画。 オマーン国に於けるプレゼンスの 確立、中長期的観点からの同国国 創りへの貢献。 6 5. 中東地域における総合商社の具体的な案件事例 -水インフラ- ※社名はアルファベット順 三菱商事 伊藤忠商事 地域 事業 概要 出資者 事業 規模 意義 住友商事 サウディアラビア UAE 東洋紡等との合弁(Arabian Japanese Membrane Company)を 通じたRO膜製造販売 中東・アフリカ・アジア地域で広 電源開発等との合弁(Sahara 範に水事業を展開するMETITO社 Cooling Limited)によるUAEの地域 ( 50年以上の歴史)に、三菱重工 冷房事業 と共同で出資参加 伊藤忠商事:14.9% 三菱商事:23.0% 住友商事:30% 東洋紡:36.1% 三菱重工:15.4% JPOWER:30% ACWA:49.0%(サウジ大手財閥) 創業家等他株主合計:61.6% Tabreed:40%(冷水供給会社) 資本金:6.3百万ドル 従業員数;2,200名超 資本金 総資産:22.3百万ドル 運営事業処理水量:100万トン/日 以上(案件実績:3000件以上) 保有資産 :56,300RT/プラント 6箇所 今後大きな成長が期待される 中東・アフリカ・アジア水事業 市場を取り込む為のプラット フォームとして出資参画。 中東における地域冷房事業のパイ オニアであるUAE国のTabreed社と の共同事業であり、環境/省エネ型 の地域冷房普及へ貢献する。 国際協力銀行(JBIC)も、同行水 分野で初の試みとして、成長支援 のために最大92百万ドルの出資を 決定。 住友商事・J Powerの日本連合にて 事業にマジョリティ出資、主体的 に関与。 造水量:約150万トン/日 現地パートナーとの協業により、 サウジでのRO膜の安定供給並びに 現地への技術移管を目指し、RO膜 エレメントの製造・販売拠点を設 立、当国の水資源確保に寄与。 サウジのみならず、その他中近東 地域、北アフリカ諸国にも広く展 開予定。 UAE :14.3百万ドル 7 6. インフラプロジェクト遂行上の課題 日本企業の競争力向上 <インフラ全般> 中国・韓国との価格面・技術面での競合に加え、参入者増加による競争激化。 <電力> 日本勢はガスタービンと石炭火力発電機器に強みも欧米と競合。 送配電は海外展開の歴史が浅く事業規模で劣後。 <鉄道> O&M事業を取り込む為のコンソーシアム構築(鉄道・空港事業者の海外進出後押し)。 日本メーカーの供給キャパシティの制約。 制度金融の拡充 量的拡充:初期投資の規模、投資資金回収が長期化。現行の資金供給能力では 対応困難な巨額案件が多数存在。 新たなリスクへの対応:サブソブリン(地方政府 / 国営公社)リスクやマーケットリスク (ライダーシップリスク・完工遅延リスク)を取れる中国への対抗策。 更なる迅速化:従来の円借款の優位性(低金利、長期間)が低下する中での、 ファイナンス供与の更なる迅速化。 Localizationへの対応 一定比率以上の当該国人材の雇用、当該国企業への下請けの要求 (サウディアラビア、クェート、オマーン等)。 外国企業進出における障害(会社登記・許認可、スポンサー制度、ビザ発給等)。 8 7.インフラ輸出における政府及び政府関係機関への期待 課題 日本企業の 競争力向上 政府・政府関係機関への期待 官民一体でのトップセールスのさらなる強化 「パッケージとしてのインフラ」および「質の高いインフラ」を アピールしたトップセールスのさらなる推進と官民連携の強化 公的金融機関(JICA・JBIC・NEXI)の機能強化 制度金融の拡充 実情を踏まえた柔軟な対応、手続きの迅速化と人員強化、 ODAの戦略的活用 ビジネス環境整備 規制緩和の働きかけおよび投資協定等の締結推進 Localization への対応 地域の平和と安定の確保 テロや非常事態時の邦人関係者の安全確保および地域安 定への働きかけ 9
© Copyright 2024 ExpyDoc