Title シダ植物生態観察雑記 (八) Author(s) 志村, 義雄 Citation 北陸の植物 = The Hokuriku journal of botany, 16(2): 59-59 Issue Date 1968-05-15 Type Journal Article Text version publisher URL http://hdl.handle.net/2297/44722 Right *KURAに登録されているコンテンツの著作権は,執筆者,出版社(学協会)などが有します。 *KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。 *著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲を超える利用を行う場合には,著作権者の許諾を得てください。ただし,著作権者 から著作権等管理事業者(学術著作権協会,日本著作出版権管理システムなど)に権利委託されているコンテンツの利用手続については ,各著作権等管理事業者に確認してください。 http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/ 北陸の植物 第16巻第2号 昭和43年5月 志村義雄*シダ植物生態観察雑記(八) Y.SHIMuRA:Mi誕北nmusnotaontheecologicalob"rvatjon ofP"xidophytamJapan(8) (17)ヒカゲワラビの季節型ヒカゲワラビは関東以西の本州,四国,九州に分布し, 一般に樹林下の陰湿な場所に好んで生育し,冬季地上部(葉)が枯死する。すなわち夏緑 性5)のシダである。このシダはすでに報告5)されているように,薩南諸島の沖永良部島に おける知名町大津勘の水蓮洞および住吉の昇龍洞(いずれも鐘乳洞)の各入口附近の亜熱 帯林の林床下に自生している。筆者および沖利晴(同島在住)の観察によると,このヒカ ゲワラピは特に12月,1月,2月,3月上旬において,新葉,ソーラスの熟し始めた葉, ソーラスの完熟した葉および胞子の落下した葉など,その種々の発育段階にある葉がみら れ,内地(本土)におけるように,冬季地上部(葉)が殆んど一斉に枯死していない。す なわち沖永良部島のヒカケワラビは夏緑性でなくて常緑性である。このシダの季節型は亜 熱帯では常緑性,暖帯では夏緑性になる。 (18)オクタマシダ,アオガネシダ,トキワシダ,ミサクポシダが同一岩壁に自在す 静岡県龍山村西川と瀬尻の間,天龍川の流れをせき止て造られた秋葉ダムに流入する河 内沢の急峻な一谷間で,北面の岩壁すなわち海抜約400mの樹林下に横たわる高さ5m,巾 30m,こけで被われ,イワヒバやヒトツバが点々と着生する一大岩面に,100余株のトキ ワシダ,20余株のアオガネシダ,数株のオクタマシダとミサクポシダが混生している。恐 らくこのような自生地は,日本では珍らしい例であろう。伊藤洋')はオクタマシダとアオ ガネシダはほとんど完全に分布区域を別にすると報告しているが,この河内沢では両種が 混生している。筆者3,4)はこの外,駿河静岡市牛妻森谷沢と遠江佐久間町城西大洞沢でも 両種の混生状態を観察している。いずれにしてもこの4種のシダは,同一の環境条件下で 生育が可能であることを物語っている。また倉田2)はミサクボシダがトキワシダとオクタ マシダの中間的形態を具えていると述べているので,前記の岩壁にこの3種が自生してい ることは甚だ興味深い。この河内沢の自生地は黒沢美房が見出したことを付記しておく。 引 用 文 献 1.伊藤洋:植物研究雑誌39:3251964 2.倉田悟:北陸の植物11:98∼1011963 3.志村義雄:ヒコビア4:125∼1311964 4.志村義雄:北陸の植物14:62∼671966 5.田川基二:原色日本羊歯植物図鑑1959 Resum6 17.Thepha'ologicalWpeofDj〃αzj"”c腕潅"se(BAK.)C.CHR.isordinarily 饗静岡大学教育学部生物学教室Biologicallnstitute,FacultyofEducation, S h i z u o k a U n i v e r s i t y −58− May 1968 The Journal of Geobotany Vol XVI. No. 2 summer green in Japan proper. However, the species is found町er gr聞1 in Okinoera bu island, Ryukyu Archipelago. Thus, the phenological type of the sp配ies is summer green in the warm temperate wne and is ever gr配n in the subtropical zone. 18. Asplenium pseudo-wit/,町dii, A. wilfordii, A. ρseudo-wilfi町dii var. iidanum and A. Yoshinagae grow all together on rocky cliff, intermingled with m国ses, in me valley of Kochizawa, Tatsuyamamura, Totomi Province. 鈎 While ITO reported that the area of distribution of A. of A. pseudo-wit/.町dii, the two speci田grow on the 叩 ilf ordii differs from that me cliff in Kochizawa. 祖 Furthermore, I have observed the same ca担 both in Shizuoka City, Suruga Province and Sakumacho, To旬mi Province. It may be said that the four taxa mentioned above grow with the same range of distribution. - 59ー
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