はじまる、飲料のスタイル化

VOL.
56
生活者の清涼飲料との関わり
2013.4
はじまる、飲料のスタイル化
2012 年の清涼飲料市場は、3 年連続で成長し、過去最高の生産量
大別され、飲用者が増加傾向にあるカテゴリーのほとんどは、意識し
を記録。震災後から続くミネラルウォーターの需要増や各社の新商
て飲まれる 飲料として位置づけられた
(裏面参照)
。
品展開の成果が表れ、一見好調に見える飲料市場だが、コモディ
最近のヒット商品を見ても、ダイエットに効くトマトジュースや、
トクホ
ティ化や PB の拡大、上位ブランドへの集中化など市場環境の厳し
の「メッツコーラ(キリン)
」
、子供の水分補給のための「グリーン ダ・
さは増している。
カ・ラ
(サントリー)
」
など、
飲用目的やシーンがわかりやすく意識的な
今号では、
マイボトルの定着など、生活者の飲料との関わり方が変化
習慣につながっている商品が目立っている。
し、多くのカテゴリーや商品が登場する飲料市場において、
「選ばれ
スタイル化が生み出す、飲料の計画購買
る」商品となるための方向性を考える。
生活者が飲料を購入するチャネルとし
図 2 清涼飲料を購入するチャネル
としての利用率の推移
意識して生活に取り込まれる飲料カテゴリーの伸張
て、コンビニエンスストアや自動販売機
生活者が普段飲んでいる飲み物と、飲み物に対する意識との関係を
の利用が低下する一方、スーパーマー
コレスポンデンス分析で捉えたところ、飲み物への意識は、
「ルーチン
ケットやドラッグストアの利用が上昇し
(何となくいつも同じもの)
」
、
「こだわり」
、
「健康」
、
「満腹
(空腹を満た
ている(図 2)
。今後はネットスーパーを
す)
」
、
「受容(何でもよい)
」
という5 つの傾向で捉えられた。多様化し
はじめ、ネットで飲料を購入する機会
た飲料のカテゴリーは、それらの意識とのつながりから、生活の定番
が増加することも想定され、飲料の計
となり無意識に飲まれているカテゴリー(図 1 右上)と、意思をもって
画購買へのシフトが進む。
生活に取り込まれ、意識的に飲まれているカテゴリー(図 1 左下)
とに
水分補給やエコに対する意識など、飲料を取り巻く様々な意識変化
図 1 飲み物に対する意識と普段飲む飲み物との関係 * 1
受容
無意識に飲まれている
水分補給ができれば何を
飲んでも変わらないと思う
決まったものしか
買っていない
その他
急須でお茶をいれたりするのは面倒だ
インスタントコーヒー
コーラ
サイダー
スティックコーヒーなどの
粉末飲料を利用する
スポーツドリンク
周囲はあまり気にせずに
飲みたいものを飲む
ココア
コーヒー牛乳
小腹が空いたときに
飲み物を飲む
ノンアルコール・
ビールテイスト飲料
いろいろな商品が出ているが
飲みたいと思うものは少ない
気分転換をする
ときに飲む
ウーロン茶
ジュース
紅茶
レギュラーコーヒー
家には様々な種類の飲み物がある
野菜ジュース
乳酸菌
水道水に
飲料
お気に入りのカップで飲みたい
抵抗がある ミネラル・ナチュラルウォーター
低脂乳
糖質やカロリーなどの
ドリンクヨーグルト
豆乳 成分を意識して飲む お茶の入れ方や
機能性飲料
健康茶
青汁
トマトジュース
ハーブティー
酢・健康酢
茶葉にこだわりがある
こだわり
新商品や話題の商品について
友人と話題にする
満腹
意識して飲まれている
自動販売機
30
ドラッグストア
0
2006
2009
DNP「メディアバリュー研究」
2012
(年)
を背景に、多くの生活者が飲料を携帯するようになっ
90
た。その動きの中で飲料の好みや習慣、
意識の多様化
る生活者が登場。そして、健康と紐付けられるスタイ
30
ルや、生活のリズムや嗜好、自己表現に紐付けられる
スタイルなど、飲料との関わり方は生活そのもののス
タイルとも紐づきはじめている。
0
飲料が生活習慣や生活スタイルの一部として意識的
に取り込まれていくことで、購買行動は非計画型から
計画型へと変化し、少量でも継続的・安定的な購入
り、ロングテール領域での生き残りも可能になる。意
識された習慣として計画購買のリストに入るために
健康
DNP「飲料に関する調査」
* 1 このグラフは各飲料カテゴリーと生活者の意識との関連性を位置関係で見ています。近くにある項目は関連性の高い項目と言えます。
(エルネ)
を対象に 2013 年 3 月に調査を実施(対象 20 ∼ 60 代男女、
有効回答数 2,631 件)
。
* 2 DNP が保有する生活者パネル
*2
コンビニエンスストア
60
が見込める商品は流通サイドからも評価されやすくな
体によいと言われる飲み物は
一通り試してみる
美容や栄養バランスを
意識して飲み物を飲む
美容飲料
スーパーマーケット
も同時に進み、飲料をスタイルとして取り入れ、
確立す
60
日本茶
多くの水分をとった
ほうが良いと思う
牛乳
100% 果汁
食事代わりに
飲み物を飲む
ルーチン
90
(%)
は、機能的な側面での習慣化にとどまらず、飲むこと自
体が自己表現につながるような「私のライフスタイル」
としての価値づくりがいままで以上に求められている。
清涼飲料への意識と市場変化
2008 年から2012 年にかけての飲用率の伸びで飲料カテゴリーを比較す
一方、日本茶や牛乳は、多くの人々の生活に習慣として組み込まれ、飲用
ると、伸びているのは、
トマトジュースや野菜ジュース、豆乳、
ドリンクヨーグ
者は多いものの、2008 年と比較すると飲用率は減少傾向にある。コー
ルトや美容飲料など健康を意識して習慣的に飲まれているもののほか、
ヒー牛乳とココアは、美味しさ
(甘さ)、手軽さなどのポイントが評価され比
コーラやサイダーなど炭酸飲料。2012 年は大人向け炭酸市場を中心とし
較的若い層に飲まれているが、飲用率は同様に減少傾向となっている。
た新商品のヒットが目立った。
各種飲料を飲む理由
DNP「飲料に関する調査」
ので(男性 30 代)
• カロリーが少ないから
(女性 20 代)
サイダー
• いつもの味だから
+3
0
(男性 50 代)
• 体によい(男性 60 代以上)
青汁
ドリンク
ヨーグルト
野菜ジュース
豆乳
•女性ホルモンの補充に
コーヒー
牛乳
紅茶
酢・
健康酢
乳酸菌飲料
ココア
機能性 スポーツ
飲料 ドリンク
2
0
1
2
なればと思って飲んで
いる(女性 50 代)
•すごく好きで、毎日
飲んでいる(女性 20 代)
ティー
濃縮乳酸
飲料
健康茶
牛乳
レギュラー
コーヒー
レギュラーコーヒー
インスタントコーヒー
•いつも飲む習慣がある
インスタント
コーヒー
(女性 60 代以上)
年︶
(男性 20 代)
• なんとなく(男性 20 代)
上ビタミン補給の為に
毎朝飲んでいる
トマト
ジュース
豆乳
100 % 果汁ジュース ハーブ
年∼
コーヒー牛乳
• 手軽に飲めるから
コーラ
サイダー
2
0
0
8
(女性 30 代)
トマトジュース
•学生時代から 30 年以
+
ミネラル・ 美容飲料
ナチュラルウォーター
飲用率の伸び︵
コーラ
• 好きだから(男性 20 代)
• さわやかな気分になる
● ふだん飲んでいる飲料(飲用率の伸びと、飲用者の平均年齢の関係)
(pt)
•落ち着く(男性 60 代以上)
ウーロン茶
日本茶
日本茶
•いつものだから
­6
ココア
• 甘くて美味しいから
(女性 60 代以上)
(女性 20 代)
•いつも家に置いてある
­
• ご飯代わり(女性 20 代)
から(男性 20 代)
35歳
40 歳
45歳
50 歳 (平均年齢)
「JNN データバンク全国調査 2008 年、
2012 年」13 ∼ 69 歳男女 約 7,400 人
※ 2012 年度の飲用者数を円の大きさに反映
●清涼飲料の品目別生産量の推移
● 1 世帯あたりの飲料への年間平均支出金額の推移
炭酸飲料、
ミネラルウォーター、
果汁飲料の伸びが顕著。
4000
(千 Kl)
炭酸飲料
コーヒー飲料等
3500
ミネラルウォーター
3000
緑茶飲料
スポーツ・機能性飲料
2500
果実飲料等
2000
ウェブでの公開はしておりません。
冊子にてご覧ください。
1500
紅茶飲料
ウーロン茶飲料
ブレンド茶飲料
1000
その他野菜飲料
豆乳類等
500
0
2012 年の飲料総支出金額は 44,989 円となり、この 5 年間で最高額。
トマトジュース
2008
2009
2010
2011
2012(年)
全国清涼飲料工業会「清涼飲料水関係統計資料」
※
「炭酸飲料」
は 2009 ∼ 11 年ビールテイスト炭酸飲料が含まれているが、
2012 年から統計上の取扱い変更により除外。
生活者とのコミュニケーションチャネルを探る
45,500
(円)
45,000
44,500
44,000
43,500
43,000
42,500
42,000
41,500
2008
2009
2010
2012(年)
2011
総務省
「家計調査
(総世帯)
」
4000
• DNP は 2001 年より、生活者の情報コミュニケーションや購買行動の変化を捉える生活者調査研究
に取り組んでいます。
「メディアバリュー研究」 3500
http://www.dnp.co.jp/mediavalue
• 生活者の購買行動把握から、商品(ブランド)を通した、企業と生活者のコミュニケーション戦略まで
幅広くサポートしておりますので、
お気軽にご相談ください。
3000
2500
C&I事業部 マーケティング開発室
〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20 URL http://www.dnp.co.jp/cio/ 2000
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当レポートは、
メディアバリュー研究が実施する調査を基にしています。
1500
© 大日本印刷株式会社 2013 printed in japan
1000
45500
45000
44500
44000
43500
13.4
43000