近接交差点におけるミクロシミュレーションを活用した検討

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №228
近接交差点におけるミクロシミュレーションを活用した検討
八千代エンジニヤリング(株)
1.検討の背景と目的
藤間 翔太
異なるため、通行するタイミングによってスムーズに通
本発表は、近接する交差点の検討に関し、ミクロ交通
行できるケースとスムーズに通行できないケースがある
シミュレーションを活用した事例について紹介するもの
ことから、当該交差点の混雑を一層悪化させているもの
である。対象は、幹線道路の交差点及び近接する交差点
と考えられた。具体的には、交差点①と交差点②の間の
であり、2つの交差点間距離が短いことに起因する制約
距離は約 150 メートル程度しかない。そのため、信号の
条件、交通量の増加により発生した交通問題への対策検
タイミングによっては、交差点間に自動車が滞留しきれ
討が必要となった。そこで、2つの信号サイクルの関係
なくなり、上流側の後続車は交差点に入りきれず、先詰
を反映したミクロ交通シミュレーションを活用すること
まりが発生している状況である。様々な要因が発生して
で、対策メニューの抽出及び、対策効果について検証を
いるうえに、上記の状況は、信号サイクルのタイミング
行い、最適な対策案を検討した。
によって異なるため、時間の状況をまとめて扱う交差点
需要率の計算では反映が困難である。そこで、これらを
2.問題と対策
反映できるとともに、刻々と変化する交通状況を表現で
当該交差点においては、近傍の道路の通行料金の変更
後交通量が増加しており、対策が課題となっていた。
西側流入
17000
〔台/12h〕
16500
6000
ミクロ交通シミュレーションを活用することで、道路の
〔台/12h〕
拡幅などを伴わない信号調整などのソフト対策で問題解
5000
16000
決が可能であるか否か、検証を行い、解決困難な問題に
4000
15500
15000
3000
14500
2000
14000
13500
北側流入
きるミクロ交通シミュレーションを活用することとした。
関しては、ハード対策での対応が可能か否かを検討した。
1000
~
~
0
13000
料金変更前
料金変更前
料金変更後
料金変更後
幹線道路
交差点①
3.シミュレーションの実施
東側流入
15000
〔台/12h〕
ミクロ交通シミュレーションは、道路上で起こる交通
14500
現象をコンピュータ上で再現し、定量的かつ視覚的に評
14000
価するものであり、車両1台毎の挙動を模擬するミクロ
13500
南側流入
9000
~
~
〔台/12h〕
13000
料金変更前
モデルで、交通流の複雑な動きをきめ細かくシミュレー
料金変更後
8500
ションすることができる。今回のシミュレーションは、
交差点②
8000
汎用のミクロ交通シミューレーターを用いて、まず現況
7500
~
~
7000
料金変更前
再現モデルを作成したうえで交通量と対策案を反映し、
料金変更後
図 1 交差点①流入交通量の変化
シミュレーション結果のデータによって評価を行った。
まず、交通量調査や信号現示調査結果に基づき、交差点
4.シミュレーション結果
需要率の算定を行ったところ、交通量増加前で既に交差
シミュレーションを活用した評価の結果、ソフト対策単
点の1方向が容量超過する状況にあった。さらに、交通
独である程度までの問題解決が可能と評価された。さらに
量の増加後においては、3方向が容量を超過する結果と
ソフト対策とハード対策を組み合わせることで、より高い
なった。早急な対応が望まれるところであるが、距離の
対策効果を得ることが出来るとの評価に至った。
短い交差点間において、図 1 の赤矢印で示すクランク状
の動きをする車両が多く、両交差点が互いに影響しあう
5.結論
ため、交差点需要率の算定のみでは把握することができ
ミクロ交通シミュレーションは、考えられる対策案を模
ない問題も発生しているものと考えられた。加えて、交
擬的に再現し、時間や費用を最小限に押さえながら検証を
差点①が 160 秒、交差点②が 130 秒と信号サイクル長が
進めるためのツールとしての活用が可能と考えられた。
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