独自開発の増殖制御型ウイルス医薬の難治癌への医師主導治験

文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム
京都大学
(C8.独自開発の増殖制御型ウイルス医薬
の難治癌への医師主導治験 )
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科・小戝健一郎
研究概要
癌制圧に繋がる革新技術を本邦で開発・実用化するため、基本技術
のm-CRA(多因子で精密に癌特異標的治療する増殖制御型アデノウ
イルス)ベクター作製法を本邦で独自開発した。その技術で第一弾医
薬として開発したSurvivin反応性m-CRA(Surv.m-CRA)は、治療効果
と安全性で競合技術を凌ぐ性能を示した。さらに全身投与可能とする
癌特異性(安全性)を格段に向上させる技術、そして既存技術が対応
できない癌幹細胞も強力に治療できる性能など、革新的がん治療薬と
してのSurv.m-CRAの研究開発を進めた。
当該分野の腫瘍溶解性ウイルスは、世界的には革新的がん治療薬
候補として開発が進められている。知財強固(基本ベクター、医薬(物
質+方法)を国内・国際特許取得)で、既存・競合技術に優位性ある治
療性能・効果、さらに再生医療等製品として早期実用化が期待できる
Surv.m-CRAに関し、実用化に繋がる医師主導治験(第一相)を目的と
して本研究を進めてきた。つまりこれまで、特許調査・対策、GMP製造
・試験、GLP非臨床試験、規制対応・PMDA薬事戦略相談を着実に進
めてきた。また治験実施機関(鹿児島大学)は臨床研究管理センターを
設置し、拠点機関(京都大学)の支援の下、治験実施体制も整備してき
た。これらの成果に基づき、平成27年度、First in humanの医師主導
治験(第一相)を開始予定である。
癌遺伝子治療におけるアデノウイルスベクター医薬の開発の変遷
従来の「非」増殖型アデノウイルス
癌結
節
周囲の
癌巣
局所投与→全身投与へ開発
遺伝子治療
遺伝子「未」導入癌細胞
正常細胞
ウイルスは非増殖
正常細胞
→傷害なし
→ウイルスは非
増殖
→正常細胞を障
m-CRAを
害しない
遠隔転移巣
再発
CRA(制限増殖型アデノウイルス)
溶解性ウイルス療法
単一因子での制御
癌細胞
ウイルスが増殖
癌細胞
→癌細胞のみ殺傷
→ウイルスが
増殖
→癌細胞を殺
傷
腫瘍内へ注射
遠隔転移巣
癌の特異化不十分?
治験実施体制
原発巣
m-CRA( 多因子制御CRA)
遺伝子・ウイルス治療
ADV genome
ADV genome
Promoter A
Mt PromE1A oter B
Mt
E1B
1.増殖制御部
Gene Ther 2005
Promoter C
Mt
Promo- E1A PromSurvivin
Survivin反応性m-CRA
E1B
ter A
promoter
Transgene
2.治療遺伝子部
3.Fiber等,
ゲノム改変
支援機関: 京都
oter B
Survivinは全癌種で高発現、正常組織
で未検出、予後に関与→全癌に適応
日米欧特許取得
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日米特許取得(物、方法の両方で取得)
本m-CRAシーズの革新医薬としての有望性と優位性
本分野(腫瘍溶解性ウイルス)は欧米で有望な革新癌治療薬候補
• ワクシニアウイルス+GM-CSFで末期癌の生存期間を延長(Nat Med 2013)
• ヘルペス+GM-CSFでAmgen社は第III相臨床試験で著明な治療効果
大学臨床研究総
合センター(iACT)
連携
<性能>従来・競合技術よりも安全かつ強力な治療効果
• 高い安全性
医学部・歯学部附属病院
契約
臨床研究管理センター
有田和徳(センター長)
• 臨床開発計画の策定
• 治験薬の準備支援
• 規制対応支援
• 治験実施体制の整備
(SOPの提供、教育
訓練、システム監査
等)
治験管理部門
臨床研究部門
武田泰生(部門長)
武田泰生(部門長)
二川俊隆(治験薬管
上野真一(部門長)
理主任)
• CRC
• IRB事務局
• 治験事務局(文書
管理・契約)
• 治験薬管理
清水章(治験体制整備
支援、PMDA対応等)
高谷宗男(製造販売業
者と協議等)
角栄里子 (治験事務
局業務補佐等)
本m-CRA技術の優位性
治験実施機関: 鹿児島大学
• PM
• 知財・契約
• 文書管理
• 教育
• 研究の計画・立案
治験薬製造
(A社)
治験薬品質・
安定性試験
(B社)
治験実施グループ
(開発全体総括)
CRO: モニタリング、
(ADV) ①風邪等、②発癌性無し、③Integration無し + (m-CRA)
度 高な癌特異性
監査、データマネジメン
ト等の委託
契約
小宮節郎 (治験責任医師)
永野聡 (治験分担医師)
その他の分担研究者
• 高い治療効果
①低用量で治療効果、②競合技術より強力な治療効果、③癌
幹細胞を劇的に治療 • 高い発展性・有望性
①次々と革新医薬を開発、②全身投与可能、③免疫遺伝子で
の相乗的・劇的効果、④再投与化? →転移癌を含む癌制圧の革新医薬へ
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本邦で独自開発したがんへの革新医薬(技術)を、実用化に繋がる医師
主導治験へ繋げるため、前臨床研究と治験実施準備を着実に進めてきた
。平成27年度に医師主導治験を開始する予定である。