3つのキーワードと五感で - 職場活性化のコンサルタント「アクティバ研究所」

3つのキーワードと五感で
「活動してよかったと思うサークル」づくりを
五感
ア ク テ ィ バ 研 究 所
藤 川 篤 信
イラスト 服 部 修 司
アクティバ
研究所
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目 次
1.まえがき
2.QCサークル活動とは
2.1 QCサークル活動の目的
2.1.1 人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す
2.1.2 人間性を尊重し、生きがいのある明るい職場をつくる
2.1.3 企業の体質改善・発展に寄与する
2.2 基本理念F流解釈
2.3 「楽」になるということ
2.4 QCサークル活動とは 2.5 QCサークル活動まとめ
3.職場風土としての「3つのキーワード」
3.1 話し合いと共有化
3.1.1 クロダイ釣りの話
3.1.2 気をつけたいこと
3.1.3 話し合いと共有化まとめ
3.2 自主性と支援(ニワトリの話)
3.3 チームワークと個人技
3.3.1 サッカーの話
3.3.2 アジ釣りの話
3.3.3 チームワークと個人技まとめ
4.大切にすべきが間
4.1 キス釣りの話
4.1.1 キス釣りの仲間の紹介
4.1.2 存在感
4.1.3 参画感
4.1.4 連帯感
4.1.5 達成感
4.1.6 満足感
4.2 人の気持ちは五感が混在
4.3 五感のまとめ
5.永続性のある人間関係のために
6.結び
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1.まえがき
私は、1962 年(昭和 37 年)にトヨタ自動車に入社しました。トヨタ自動車は
1960 年に当時のTQC(現在はTQM)を導入し、同時にQCサークル活動
もスタートしています。従って、私とQCサークル活動との関係は私の在籍期
間である 35 年間とその後の 17 年間合計 52 年間は強く・弱く、深く・浅く、
濃く・薄く続いたことになります。特に後半は強く、深く、濃かったように思
います。
半世紀以上の間でQCサークル活動や、企業活動の中から大変多くのことを
学びました。その中で最も大切なことは人間関係であると感じています。特に
QCサークル活動についてはそうだと感じています。QCサークル活動関係の
いろんな資料に接してもその殆どで人間関係が大切であると書かれております。
しかし、人間関係にはどのような要素があって、どのようにすれば良い人間関
係が保たれるのかという事についての判りやすい指針を与えてくれる資料に出
くわしていません。それ程人間関係というのは難しいのだと思います。
学問的に完璧なことはとても述べることはできませんが、QCサークル活動
はいろんな背景を持った人達、いろんな固有技術を持った人達、いろんな考え
方を持った人達、いろんな立場の人達が集まってサークルとして、ある環境で、
ある目標に向かって活動します。そのような場合に、実務的に良い人間関係づ
くりに取り組める考え方(指針)が必要だと考えます。
本来、人は「5つの欲求」(第 2.1.2 図)を持って生まれてきていると思い
ます。しかしこの欲求を満足させたいという想いのままに行動することはあり
ません。欲求が満たされるためには「その気になって」行動を起こさなければ
なりません。「その気になる」背景(条件)が長い企業活動の中で、私が体得
しました人間関係の重要な要素として「五感」であると思います。
一般的に、五感と言えば視、聴、嗅、味、触に関する感覚をいいますが私の
提案する「5感」は「存在感」、「参画感」、「連帯感」、「達成感」、「満足感」の
5つです。これらの「五感」がQCサークル活動の中でどのように効果的な働
きをしているかを説明したいと思いますが、その前に QC サークル活動および
その目的について簡単に復習しておきたいと思います。
QC サークル活動は、経営者、管理者、監督者、QC サークルリーダー、QC
サークルメンバーなど各層の人々が互いに協力し合って活動が成り立つものだ
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と考えています。この小冊子は、中でも、管理者、監督者、QC サークルリー
ダー、QC サークルメンバーの方々が、それぞれの立場で、それぞれの役割に
従って読み解いていただき、QC サークル活動のご理解と活性化に役立ててい
ただきたいと思います。
なお、この資料は、私が平成5年(1993 年)に QC サークル東海支部の幹
事長として社外の QC サークル活動を始めた最初の頃の講演会の資料を基に若
干の加除修正を加えたものです。 関係者の皆さんに少しでもお役にたつこと
を祈念しています。
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2.Cサークル活動とは
2.1 QCサークル活動の目的
QCサークル活動の目的は、第 2.1 図 に示すように「QCサークルの基本」
(QCサークル本部編)に記されています「QCサークル活動の基本理念」の
実現であります。QCサークル活動は目的を達成するための手段であって、Q
Cサークル活動をやることそのものが目的になってはいけないのです。この点
は肝に銘じておかなくてはなりません。
QCサークル活動の目的は「QCサークル活動の基本理念」の実現
QCサークル活動の基本理念
○人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す。
○人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場をつくる。
○企業の体質改善、発展に寄与する。
「QCサークルの基本」財団法人日本科学技術連盟QCサークル本部編より抜粋
アクティバ
研究所
QCC 01・0103
第 2.1 図 QCサークル活動の目的
QCサークル活動を展開するに当たり、明確な目的を何にするかは各企業、
団体で適切に判断され、決定されることが望ましいことですが、基本理念に示
されている内容は共通して重要な事項ではないかと思います。基本理念の一項
目目と二項目目の活動結果が三項目目の「企業の体質改善、発展に寄与する」
につながるものと考えた方が良いと思います。この3項目は企業経営にとって
も大変大きな意味を持つ項目だと思います。
この基本理念の詳細な説明は別の機会に託すとして、ここではそれぞれの項
目について簡単に説明します。
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2.1.1 人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す
人は「能力」というのを生まれつき持っているのではない事に認識を新たに
していただきたいと思います。 生まれつき持っているのは能力ではなく、能
力を十分に発揮したいという欲求(第 2.1.2 図)であります。この欲求によっ
て能力が形成されていくと言うことであります。欲求は誰でも持っています。
従って、この欲求をうまく刺激し続け、欲求を充足し、高めることで能力は
無限に伸びていくと考えてよいのであります。このことは、赤ん坊から幼稚園、
小学生、中学生、高校生、大学生、社会人といったプロセスで能力を形成して
いる様子からも容易に理解し、納得できることだと思います。その他スポーツ
の記録、生産性や効率向上、創意工夫などと言った事柄からも容易に推察でき
ます。要するに人の能力というものは、適切な環境と刺激によって無限に形成
され、伸びて行くものであると言えます。能力がないとか、もうこれ以上伸び
ないとか、と言う前に、それに対する環境と刺激が適切であったか否かを十分
検討する必要があります。
ここで環境と刺激について簡単に触れておきたいと思います。環境の主なも
のは、QCサークル活動に関する方針、位置づけ、推進体制、教育訓練計画、
改善発表の場などです。刺激としては、教育・指導は勿論ですが激励、感謝、
承認、ほめる、相互啓発などがあります。
2.1.2 人間性を尊重し、生き甲斐のある明るい職場を作る
ここで注目したいのは「人間性」という言葉の意味であります。 人間性と
いうのは個体と精神(心)から成り立っているのです。即ち、個体の安全衛生
面の尊重は勿論のこと、人間が生まれながらに持っている欲求(第 2.1.2 図)
も尊重するということであります。
これらの欲求は、総て、自分自身が自主的に、工夫をしながら欲求を満足さ
せるために努力しなければならない項目です。言葉を覚えたり、歩くことを覚
えたり、難しい本が読めるようになったり、何かを考え出すことができるよう
になったり、みんな自主的に、知恵を出して能力を高めた結果です。これらの
活動の結果が存在意義を認められたり、人の役に立ったり、期待されたり、に
繋がるのだと思います。
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別の言い方をすれば自主性や創造性
を尊重した活動であると考えて良い
1.自分が成長したい と思います。 職場は年齢、技術、
2.自分の力を十分に発揮したい 経験、価値観、生活の背景、職場に
3.能力に応じた扱いをしてもらいたい おける立場などそれぞれ異なった条
4.存在意義を認められたい 件を持った人々の集まりです。そし
5.人の役に立ちたい、期待されたい て、それぞれの自主性、創造性を持
QCC 03・2312
っています。だからこそ、それぞれ
の人間性を尊重した活動を仲間と共
第 2.1.2 図 5つの欲求
に進めいくことが「生きがいのある、
明るい職場」作りに貢献すると考えています。「生きがいのある、明るい職場」
とはどんな職場であり、そうするために、どんなことをしなければならないか
についての詳細は別の機会に譲りたいと思います。能力を発揮し、あくなき可
能性の追求を継続し、生きがいのある明るい職場作りをめざした活動が結果と
して企業の体質改善、発展に寄与するものと考えることができます。
2.1.3 企業の体質改善、発展に寄与する。
企業の中で製品やサービスを直接生み出しているのはQCサークルのメンバー
だと思います。また、それらとお客様との間で一番近位置にいるのもサークル
メンバーです。経営上非常に重要な部分だと思います。したがって、サークル
メンバーの能力を高め、関連した仕組みを改善することは企業体質の改善に大
きな部分を占めるものと考えられます。
企業の体質改善と言うことを簡単に説明しますと、変化に強い強靱な体質に成
長すると言うことだと考えてよいと思います。もう少し具体的に説明しますと、
社会全体が激しく変化している現在では職場が持っている各種の標準と社会の
要求との乖離(差)が、しばしば、各分野で発生します。この現状との乖離を
埋める意欲を持ち、目標に向かって「差を縮める」努力ができる体質に成長し
ていくと考えてよいと思います。QCサークル活動を継続的に推進することで
このような体質が得られるともの考えられます。
この基本理念を何度も読み返しているうちに私は“フッ”とある1つの疑問
に突き当たりました。
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基本理念が図 2.2 の左端に示すようになっていることは、すでにご存じのこと
ですし、先ほども若干触れさせていただきました。
この3項目は必ずしも矢印のような関係にあるではなくて、各々独立したもの
ですが個人、職場、企業と各々の単位を示すかのような項目になっています。
すなわち、企業は職場の集まりであり、職場は人(個)の集まり、であります
ので矢印のように関連づけて考えることも可能ではないかと思います。この理
念のこの部分に疑問を感じたのであります。
2.2 基本理念のF流解釈
企業の体質改善、発展に寄与するためには人間性を尊重し、生き甲斐のある明
るい職場を作り、目標に向かって全員が協力することが必要です。
人間性を尊重し、生き甲斐のある明るい職場を作るために人間の能力を発揮し
無限の可能性を引き出し、得られた能力を職場の仲間のために活用することが
必要です。
QCサークル活動の
基本理念
成長・自己実現のサイクル
自己実現
人間の能力を発揮し
無限の可能性を
引き出す
人間の能力を発揮し
無限の可能性を引き出す
(個)
人間性を尊重し
生きがいのある
明るい職場をつくる
(職場)
企業の体質改善
発展に寄与する
(企業)
(らく)
1人1人が 楽 になる
(たのしく)
成 長
継続的改善
人間性を尊重し,生きがいの
ある明るい職場をつくる
企業の体質改善
発展に寄与する
アクティバ
研究所
継続的改善
QCC 01・0114
第 2.2 図 基本理念F流解釈
無限の可能性を引き出すのは職場のためでしょうか。企業のためでしょうか。
私の感じた疑問はこの点であります、そこで私はこのように解釈してみました
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人間性を尊重し、生き甲斐のある明るい職場を作るためには最初に一人ひとり
がこの活動によって「楽(らくに、たのしく)」なることが必要ではないか。
一人ひとりが「楽(らくに、たのしく)」ならないで生き甲斐のある明るい職
場作りが可能でしょうか。一人ひとりが、自分自身が「楽(らくに、たのしく)」
なるために能力を発揮し、無限の可能性を引き出す努力を継続できるのではな
いでしょうか。そして、その能力を仲間のために、職場のために役立てて職場
を活性化し、結果として企業に貢献につながるのではないでしょうか。
上司のためでも、職場のためでも、企業のためでもない、企業を、職場を構成
する一人ひとりすなわち自分自身のためであるに違いないと、いや、そうでな
くてはならないと考えました。
人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出すことで一人ひとりが「楽」(ら
くに、たのしく)なる活動は換言すれば自分自身を高めていく活動、即ち、第
2.2 図 の「成長・自己実現のサイクル」を回し続けることによって得られる自
己実現そのものであるということであります。自分自身を高める活動を、「自
己実現サイクル」を回し続けることが結果として企業体質の改善・発展に寄与
し、社会への貢献に繋がると考えます。勿論自分自身も高め続けていることは
間違いありません。
難しい、格好の良い表現をするのは得意ではありませんので有難味の少ない言
葉かもしれませんが、要は、一人ひとりが「楽」(らくに、たのしく)なる活
動をすることが基本理念を実現し、QCサークル活動の目的を達成することで
あるとも解釈できるのであります。そういった活動の結果が、職場の活性化に
繋がり、企業体質の改善発展に寄与するものであると考えています。
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2.3 楽になるということ
「楽(らくに、たのしく)」なるというと何もしないで怠けてしまうというよ
うに受け取られるかもしれません。ここで「楽(らくに、たのしく)」なると
言うことを少し、ほんの少し考えてみたいと思います。
(らくに)
楽 なるということ
◎会社の仕事を楽にする
(たのしく)
楽にならない現象
やる気のない不活性な職場
ムダ・ムリ・ムラ・不良
目標未達・失敗・非効率
不安全・人間関係の悪さ など
◎私がGolfを楽にプレーする
楽にならない現象
ショットが安定しない
OBが多い
山に登り、谷に下り,
ラフからラフへ、バンカーへ
迷惑かけまいと走り回る
更にスコアを悪くする
楽になるための能力
見つける、解析する、対策する
再発防止する能力、固有技術
管理技術、QC手法、協力協調
役割の明確化と遵守 など
楽になるための能力
足腰をきたえる(基礎体力)
技を磨く(毎日練習)
自己実現
満足感
達成感
努力
固有技術向上
(直す能力)
QC手法向上
(見つける能力)
継続的改善
悪さを見つける、直す
頭を使う(攻略法を考える)
知恵を増やし。工夫する
何もしないで楽になれることはない
自ら行う継続的な努力が重要
アクティバ
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第 2.3 図
QCC 01・0115
楽(らくに、たのしく)になると言うこと
会社の仕事で楽になることを考えます。図 2.3 に示すように、会社の中では
ムダ、不良、手直し、間違い、仕組みが悪くて発生する不能率などといった楽
になれない要因が一杯あります。結果としていやな思いや、やり直し、残業な
どに繋がり決して「楽(らくに、たのしく)」なりません。
これらを解決して「楽(らくに、たのしく)」なるためには、見つける、解析
する(調査する)、対策する、管理を定着させる、反省する、協力協調などと
いった多くの能力が要求されます。
また、職場の仕事を通じて得られる固有技術、QCサークル活動でえられるQ
C手法などを使いこなす能力などが必要になってきます
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固有技術にしろ、QC手法にしろ、何もしないでジットしていて身につくもの
ではありません。積極的に自分から求めて修得し、訓練し、更に高めていくた
めの努力をする必要があります。
プライベートで楽しんでいるいくつかの中のゴルフを楽にやることを考えます。
私などはそうなのですが、とにかく、ゴルフ場にいってスタートした後は、山
に駆け登ったり、谷に降りたり、林の中で苦戦したり、ザックリやってボール
より芝を飛ばしてみたりと決してプロゴルフマッチを見るようにフェアウエー
を悠然と歩いてグリーンを攻めるなんて訳にはいきません。
ゴルフは社交だと言われますが、私にとっては実に孤独なスポーツだと思わざ
るを得ません。
そんなことはどうでも良いのですが、私と同じ職場の人でシングルのハンディ
を持つ人は、ある程度のレベルに達するまでは会社に出社する前に毎朝200
∼300発のボールを打って会社に出社したと私の練習嫌い、即ち、能力形成
の努力不足に警鐘を鳴らしてくれました。ゴルフを楽しむためには日頃からコ
ツコツと積み重ねて磨いた自分自身の技術が必要である.そしてその努力を更
に効果的にするには自分の悪いところを見つけ、対策を考える能力も必要です。
またプロでさえ試合で納得のいかないスイングがあったらゲームが終わり次第、
練習場に飛んでいって納得がいくまで練習し、自分の欲求を刺激し、更に高い
能力形成のために努力すると言われています。
楽(らくに、たのしく)なると言うことは自分自身が努力することです。何も
しないで楽(らくに、たのしく)なることはありません。こういった努力は他
人のためにはできなくても、自分が楽(らくに、たのしく)なるためであれば
努力を続けることができるのではないでしょうか。楽(らくに、たのしく)な
ったときキット達成感や満足感を味わえるに違いありません。
職場において一人ひとりが楽(らくに、たのしく)なる活動には色々あるかも
しれませんが私が知っている限りではQCサークル活動が最適だと考えていま
す。次にQCサークル活動とはどんな活動であろうかと言うことを簡単に説明
します。
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2.4 QCサークル活動とは
QCサークル活動とはどんな活動であろうかと言うことは第 2.4 図に示すよ
うに「QCサークルの基本」(財団法人日本科学技術連盟QCサークル連盟
編)に明確に定義されています。
QCサークルとは、
第ー線の職場で働く人々が
継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行う
小グループである。
この小グループは、
運営を自主的に行い,QCの考え方・手法などを活用し
創造性を発揮し自己啓発・相互啓発をはかり
活動をすすめる。
この活動は、
QCサークルメンバーの能力向上・自己実現
明るく活力に満ちた生きがいのある職場作り
お客様満足の向上および社会への貢献
をめざす。
経営者・管理者は、
この活動を企業の体質改善・発展に寄与させるために
人材育成・職場活性化の重要な活動として位置ずけ
自らTQMなどの全社的活動を実践するとともに
人間性を尊重し全員参加をめざした指導・支援
をおこなう。
QCC 01・0202
アクティバ
研究所
「QCサークルの基本」財団法人日本科学技術連盟QCサークル本部編より抜粋
第 2.4 図 QCサークル活動とは
QCサークルとはどんなグループか、どのように活動を進めるのか、活動の
めざすところはどこか、経営者・管理者はどのように考え、どのように支援
するかなど平易な言葉で明記してあります。詳細な説明は省略します。
QCサークルの編成では、この定義に示されているサークルが圧倒的に多い
のですが職場の状況によっては5種類ぐらいの編成の仕方(詳細は省略)が
あります。構成メンバーの力量にも寄りますが柔軟な考えもできます。
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2.5 QCサークル活動のまとめ
基本理念の実現を目的にして展開するQCサークル活動は具体的にどのよう
に活動すればよいのかということについて第 2.5 図に纏めました。
最初に、QCサークル活動は第 2.1 図で説明しましたように、基本理念の実
現が目的です。何か目的を達成するための手段であり、決してQCサークル
活動を展開することが目的であってはなりません。そして心に刻んでおかな
くてはならないことは、QCサークル活動は自責の活動であって職制活動を
補完する活動、即ち業務そのものであるということです。 ここで言う自責
の活動とは与えられた条件で、自分のできること、自分がしなければならな
いことを創意工夫し、責任持って実行するという意味です。
QCサークル活動は目的を達成するための手段である
QCサークル活動
・質の向上
・原価の低減
・生産性向上
・安全性向上
・モラールの向上
・廃棄・排気低減
・職場運営の向上
・仕組みの改善
・躾の向上
問
題
解
決
活
動
の
継
続
目的
「個」の成長 (人材育成)
職場活性化 現場力の向上 業
績
貢
献
社
会
的
貢
献
この活動は自責の活動であり,職制活動を補完する活動(即ち業務)である
アクティバ
研究所
QCC 01・0116
第 2.5 図 QCサークル活動のまとめ
QCサークル活動とは黒枠で囲ってあるような企業内の活動要素について継
続的な改善活動を推進し、緑枠で囲ってある目的を達成するための努力を続
けていく活動です。その結果が企業の体質改善・発展に貢献しますし、社会
貢献にも繋がります。そういった活動全体(青色の枠で囲った部分)がQC
サークル活動であると考えます。目的のところの3項目は、QCサークル活
動の基本理念を、企業内の活動要素に置き換えて表現してあります。
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勿論、各企業が独自の目標を設定して活動されることは自由でありまして
何らQCサークル活動に影響を与えるものではありません。むしろ、独自の目
標を持って活動されることは歓迎されるべきかも知れません。
自治体における QC サークル活動は第 2.5 図の黒で囲んだ部分の上部3項目を、
質サービスの向上、平等・公平の維持、ムダの低減、処理能力の向上の4項目
に置き換えて考えることができると思います。また、目的の部分の現場力は職
場力という言葉に置き換えて考えればよいのではないかと思います。現場力と
はなにか、高めるために何が必要かなどについては別の機会にお話ししたいと
思います。
QC サークル活動をやれば会社が儲かるといったような雰囲気に接することが
ありますが、それほどのことはないように思います。しかし、QC サークル活
動の目的を達成する継続的な努力の中で発生している効果が会社の利潤に寄与
していることは事実でありますし、かなり大きいと思います。職場が活性化す
るという効果は更に大きいと考えます。
このような、QCサークル活動を進める上で大切なことがいくつかあります
が、QCサークル活動に限らず組織活動における土壌作りの重要な要素となる
のが人間関係と言う要素であると思います。
今回は人間関係の醸成に焦点を当てて、QCサークル活動の大切な要素である
と考えています「3つのキーワードと五感について話を進めたいと思います。 14
3.職場風土としての「3つのキーワード」
QCサークル活動を効果的に推進し、展開するためには活動に適した風土(土
壌)が必要になります。風土作りには以下に示す3つのキーワードがあります。
1. 話し合いと共有化
2. 自主性と支援
3. チームワークと個人技
であります。これらについてはいろんな人からお話を聞いておられることと思
いますが、私の考え方も理解していただきたいと思います。
これらのことは、後述します「五感」を醸成する大切な土壌とも言えるものだ
と思います。これらについて私の趣味や経験を含めてお話ししたいと思います。
最初が「話し合いと供有化」です。これは十分な話し合いによって問題意識を
共有するという意味です。
3.1 話し合いと(問題意識の)共有化
私は魚釣りが趣味でして年間約70回位出かけていましたが、その多くは知
多半島の先端に師崎というところがあり、そこから船を出して三河湾、伊勢湾、
伊良湖水道周辺、神島周辺、鳥羽沖などといった海域で、いゆる船釣りを楽し
んでいます。その船釣りの1つに「クロダイの掛かり釣り」というのがありま
す。
3.1.1 クロダイ釣りの話し
このクロダイ釣りは水深30∼40m位のところでやる事が多いのですが
エサのウタセエビをいかにクロダイが泳いでいる層(これをタナと言うんです
が)に置くかというのが釣果を左右します。ポイントの選定は船頭さんが長年
の経験を生かして案内してくれます。そしてタナはその日の天候、潮時、風向
き、波、水温などで微妙に変化します。そこでクロダイとの話し合いが重要で、
その話し合いの結果がその日の釣果を左右します。
クロダイは多くの場合底から 30cm 位のところ(タナ)を泳いでいると言わ
れています。 エサのウタセエビを鼻掛けにした全長約5m位の仕掛けを降ろ
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し、底をとった後ハリスの長さ分だけ持ち上げてクロダイのタナと思える位置
にエサが来るように仕掛けを手繰り上げます。 タナの取り方によって第 3.1.1
図の様なことが起こります。
一番上の図は仕掛けが底についている状態です。エサが魚のタナより低い位置
にあります。このときは、仕掛が弛んでおり、クロダイがエサをとっても判り
ません。アタリが判らない状態です。仕掛を上げてみるとエサはとられていま
す。クロダイがタナが低すぎるぞと語りかけてくれています。恐らく海の底で
はクロダイがケラケラ笑っているに違いありません。
真ん中の図はエサの位置がタナより高い位置にある状態です。この状態ではア
タリはあるけどハリ掛かりしないという現象が頻発します。仕掛を上げてみる
とエサのエビの目玉の部分のみが残っている場合が多いのです。
食いが渋いだとか食いがたたないだとか、狡いだとか、言い訳をしますが、ク
ロダイがエサの位置が高すぎてうまく食べられんぞと不平・不満を言ってくれ
ているのであります。 そういったクロダイのボヤキを聞きながら、即ち、
クロダイと会話をしながらエサの位置を上げたり下げたりして、タナを探し、
丁度良いタナを探り当てたのが一番下の状態です
アタリが判らず
エサは完璧に取られる
タナが低すぎる
潮の流れ
タナゼロ
アタリは判るが
ハリ掛かりしない
エサは取られる
目の部分だけ残る
タナが高すぎる
潮の流れ
タナ
アタリも判り
気持ちよく釣れる
タナは丁度よい
潮の流れ
タナ
話し合いによるタナの共有化
クロダイの意思表示であると
感じる固有技術は必要
QCC 08・0501 アクティバ
研究所
第 3.1,1 図
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クロダイ釣りの話し
この状態になればアタリもよくわかるしそんなに苦労しなくても、だれでも、
クロダイを釣ることができます。クロダイ釣りは難しいと言われていますが、
この状態なら大変簡単です。これはクロダイとしっかり話し合いをした結果、
クロダイの泳ぐタナと釣り人が予想しているタナとを一致させることができた
からです。即ち、タナを共有することができたわけです。釣果は伸びます
釣り人が道糸の送り込みによる、自分が予想しているタナにこだわって、即ち、
自分からの話しかけだけで、クロダイからの話しかけを聞かなかったら、とて
も丁度良いタナを共有することはできなかったであろう事はご理解いただけた
のではないかと思います。
もっとも、エサのとられ方がクロダイの語りかけだと言うことを知ることが
できるだけの固有技術を持つことが先決です。
換言すれば、どんな小さな変化も相手からの話しかけであると見破って相手の
話を良く聞く耳を持ち、対策を立てねばならないと言うことです。
余談になりますが、このように楽に釣れるようにはそう簡単になれるわけで
はありません。仕掛、エサの大きさ・付け方、タナの取り方、潮の流れの判断、
誘い方、合わせ方等々多くの要因の中からそれぞれ適切な水準を設定できなく
てはなりません。そのために、かなりの投資をして、船頭さんに教わりながら
何年にもわたる努力が蓄積されていることも事実であります。
いわゆる、クロダイを自分が考えたように釣りたいという欲求を刺激しながら
能力を形成していったわけです。具体的には、第 3.1.1 図の上段のケースでは
そうか棚が低すぎるのかとツブヤキがら自分の手の一部を物差しに使って約
15cm もちあげます。中段のケースでは、そうか棚が高すぎるのかとツブヤキ
ながら 15cm 棚をさげます。このような動作を繰り返しながら最下段の状態に
到達します。クロダイとの話し合いで最適な棚を見つけることができたのです。
しかし、今日この小冊子を読まれた皆さんは、QCサークル発表会などで多く
の体験談発表を聞かれその中からご自分に参考になる点を習得されるようにク
ロダイ釣りのノウハウも会得していただいたので、私の努力より遙かに少ない
努力で楽につれるようになることは請け合いです。
17
以上のことを少しまとめてみますと、話し合いというのは当然のことですが、
聞くことと話すことから成り立っています。相手の目を見て話すのです。最も
魚の目を見て話すことはできませんが・・・魚の目を見ているつもりで小さな
信号も見逃さないで何度も話し合うのです。
3.1.2 気をつけたいこと
話し合いと言うことで少し気をつけたいことがあります。
話し合いの中では、話す、聞く、理解する、実行するというステップで物事が
進みますが、これらのステップは一連の動作でありながら、互いに独立してい
るかのように思える現象があります。話をしてから実行まですんなり進むわけ
ではありません。
相手は誰でも、話したから聞いてくれた訳ではありませんし、聞いてくれたか
ら理解してくれたわけではありません、理解したからといって実行してくれる
とは限りません。しかし、話をし、聞いてもらい、理解してもらわなくては実
行という動作に繋がらないことも事実です。最後は実行してもらわなくてはな
りません。
一方、この4つのステップはシャボン玉みたいなもので時間の経過と共に弾け
て消滅することが多いのです。この前にいったではないか、今年の初めにあれ
ほど念を押したではないかなどという言葉を耳にすることがありますが無茶な
話です。相手の聞く環境次第ではシャボン玉のように弾けて消滅してしまって
いるかもしれません。
したがって、重要な事柄については沢山のシャボン玉を飛ばさなくてはなりま
せん。機会を作って何時でも、何度でも問題意識の共有化ができるまで話し合
うことが必要なのです
3.1.3 話し合いと共有化 まとめ
話し合いというのは双方の妥協点を見つけることです。話し合いによって明
確になった考え方の違いによって認識できた「ミゾ」は解消できないかも知れ
ませんが妥協できるところまで小さくできるものと信じます。お互いに妥協点
を探る努力をすることが必要です
18
このとき、大切なことは決裂、破局を迎える一歩手前で「間」を置くことが大
切です。そしてお互いに妥協点を探る努力をすることが必要です。「間」を置
けば双方とも、少し言い過ぎたかな、とか、この点は少し妥協してもよかった
かな、とか、自分自身を振り返ってみる余裕が生まれてきます。そうなるため
には、「間」を取っているあいだに焦点となっているテーマ以外のテーマにつ
いての話し合い、情報交換などを進めたり、仕事を離れて遊びや楽しみの機会
をもつなど、実施すると好結果を得ることがあります。
人を介して説得してもらうというのもあるかもしれませんが、そのようなと
きには経験的に三人で話し合うようにしたほうが好結果が得られるように思い
ます。
話し合い=話す+聞く(目線を合わせて、相手の目を見て)
問題意識、考え方
問題意識、考え方
聞く
話す
話すために聞く
聞く耳を持つことが基本
アクティバ
研究所
QCC 08・0601 第 3.1.3 図 話し合いと共有化(まとめ)
「話す」と「聞く」とがバランスよく行われることで相手の考えている問題点、
意識、考え方を知ることができるし、自分のそれらを知ってもらえることもで
きると言うことを忘れてはならないと思います。 また、お互いの考え方の違
いについても認識し合えるのです。認識の違いについて話し合うことで、いわ
ゆる、問題意識の共有化ができるのです。どちらが欠けても共有化は成り立ち
ません。共有化というのは、聞き、理解し、共感し、自分の考えとして実行で
きる状態です。問題意識が共有化できた活動は人間性を尊重する活動に直結し、
その活動を仲間とともに展開することは生き甲斐のある明るい職場作りに直結
19
するものと考えます。
「目を見て話し合えばキットわかりあえる」
という信念で活動していますので若干くどくなりましたが、全ての活動は話し
合いによる問題意識の共有化が基本になると考えています。
3.2 自主性と支援
第 3.2.1 図は受精卵から鶏になって卵を産むまでの鶏の成長過程を示したも
のです。縦軸が成長度、横軸は日数であります。受精卵を孵卵器に入れたとこ
ろがこの0の点です。
成
長
度
︵
自
主
性
︶ 0
生きようとする
向上しようとする
成長しようとする
欲求(生まれながらに持っている)
受精卵のフラン器
ハシ打ち
へ搬入
⇒ 自主性
そったくが発生
体重 3 Kg位
8日
21日
検卵 (無精卵を除く)
温度36.7∼37.6℃
湿度57%
病気の持ち込み
換気(Co2)
転卵 1回/H
1ケ月
56日
温度(給温) 36℃で死ぬケースもある
温度・換気
ワクチン
約5ケ月
常に注意深い ⇒ 支援
観察
エサ:カロリー粒度(3∼4段階)
喚気(Co2)
100∼110gr/日羽
エサ:粒度
(小) 200 /日羽
持って生まれた欲求に対する刺激
アクティバ
研究所
第 3.2.1 図
QCC 03・2305
自主性と支援
8日目に」検卵を行い無精卵を取り除きます。これを残しておきますと卵が腐
って炭酸ガスを多量に出し、他の卵を危険にさらすからです。卵の殻には1ミ
クロンぐらいの穴が沢山あり炭酸ガスを吸い込むからです。
卵の中はだんだん成長して21日目にはハシ打ちといって自分で卵の殻を破っ
て出てきます。このときの現象は「ソッタク」と呼ばれています。この卵から
20
出てくるまでの21日間は非常に大切で細心の注意を払います。温度は 36.5
∼37.6℃に保持します。
湿度は57%、炭酸ガスのレベルを下げるために十分な換気を行いますし、病
気の感染を防ぐために世話する人自身を清潔に保ち、場内に入るトラックに雑
菌を持ち込ませないために消毒液のプールを通らせるなど細心の注意を払いま
す。一方、転卵といって1時間に一回の割合で卵を動かします。これは卵の中
の黄身が片方によって殻にくっついてしまわないようにするためです。常に成
長の度合いはチェックされます。卵から出てきて一ヶ月は非常に抵抗力が弱く、
給温したり、ワクチンを投与したりして保護されます。エサも粒度の小さい食
べやすいものが与えられます。それから親鳥になって卵を産むまでの間、温度、
換気、病気などに注意を払い、一方では餌は粒度やカロリーを3∼4段階に分
けて与え、成長を促します。 無理して餌を鶏の口に押し込んでも良い結果は
得られません。
この成長の度合いを自主性の成長、環境を支援と考えていただくとQCサー
クル活動の成長過程に大変よく似ていることにお気づきだと思います。即ち、
QCサークルの誕生期に相当しますのが図 3.2.1 のハシ打ちに至るまでの 21
日間は非常に大切です。卵は先を急いで温度を
上げてしまうと 46.3℃で全滅するといわれて
1.情報を提供し
2.動機づけをし
います。
QCサークルの自主性を誕生させるためには
3.行動を促し
時間をかけて注意深い観察が必要です。ヒヨコ
4.褒めて
になった QC サークルの自主性は、まだ、抵抗
5.期待を示す
力は弱く、放任しますとすぐに弱体化し消滅に
至ります。この段階では食べやすいエサ、即ち、
自主性や技量の成長に見合った問題を選ぶため
QCC 01・0108
第3.2.2図 そのきにさせる5ステップ
の支援が必要です。それから先でも成長の度合いを見ながら適当な刺激が必要
です。
自主性とは大変やっかいなもので一度醸成された自主性も長い間放任された
り、押えつけたりするとどんどん後退して消滅の一途をたどります。従って、
常に注意深い観察が必要なのです。
第 3.2.3 図はQCサークル活動における自主性と支援についてまとめたもの
ですが自主性とは人が本来持っている5つの欲求を刺激し育てるものであり、
21
支援とは適切な環境と刺激、注意深い観察のもとで自主性が育ち、発揮される
のを待つことであると考えることができます。
環境とは
自主性とは
・サークル活動に関する方針
環境と刺激を活用し、
自らが考え,判断し、
目標達成に向かう働き。
・サークル活動の位置づけ
・コミュニケーションの充実
問題意識の共有化
・推進体制・仕組み・支援
・教育・訓練計画
・改善・発表の場(時間,場所,道具)
・改善のための技術・技能の充実
支援の考え方 環境を整備し,適切な刺 激をして待つことである 待つ部分
結果を見て
環境整備
結果を見て
適切な刺激 待つ部分
QCC 03・2301
刺激とは
・情報・教育・指導・激励・感謝
・承認・評価・アクション
・具体的に褒め,期待を示す
・コミュニケーションの充実
・相互啓発(自己啓発)
アクティバ
研究所
第 3.2.3 図
QCC 03・2302
自主性と支援まとめ
QCサークル活動に関する環境として特に大切なことは、QCサークル活動
の方針、QCサークル活動の位置づけが明確にされていることは勿論ですが、
十分な話し合いによる問題意識の共有化、及び、発表の場と考えます。また、
刺激としては承認、評価、アクションが大切ですが、特に、QCサークル活動
の計画が承認されたり、活動結果が褒められたりすることは非常に大きな刺激
となります。一方、サークルメンバーを含め全員が自己啓発、相互啓発を積極
的に実行することが必要だと思います。相互啓発はサークルが単独で実行する
ことはかなり困難なので、事務局や管理者の支援が必要です。
次にチームワークと個人技について説明します。
22
3.3 チームワークと個人技
3.3.1 サッカーの話し
A
A
容易にGoalに
近づけない
Goalに容易に
迫ってくる
B
十分近い距離で
カバーリング
B
遠くはなれてて
カバーリングに
なっていない
C
カバーリング(カバーリング)
できる能力
C
Go
al
状況を判断(個人技)して
(判断力、知識、脚力など)
Go
al
QCC 08・1415
アクティバ
研究所
第 3.3.1 図
サッカーの例
この第 3.3.1 図は、今、大変人気のあるサッカーの一番多く発生する場面を
単純化して示したものです。左側の図で、A は攻撃側、B、C は守備側の人で
す。A がボールを持ってゴールに向かっています。B はそれを阻止しようとし
ていますが、A との距離が開きすぎています。守備側の C も B のカバーリン
グには遠すぎます。B は背後を突かれる恐れがあるので A に対して効果的な接
近ができません。A は容易にゴールに向かって攻めてきます。
右の図は、C が B をうまくカバーリングしています。したがって、B は思い切
って A に接近し、守備を固めています。A は容易にゴールに接近できません。
B、C のチームワークが A の攻撃を鈍らせています。
A にボールが渡ったときに B が素早くディフェンスに入りその B の動きを読
んで C は B が十分に接近してBの後ろにスペースを作らせない位置を判断し、
迅速にそれを可能ならしめるポジションに着くことが必要である。
C には A がボールを持ったときの B の動きを読み B に対してどのポジション
に着くべきかの判断力とそれを可能にする脚力が最低限の個人技として必要で
す。その個人技に支えられてチームワークが成り立ちます。
23
3.3.2 アジ釣りの話し
皆んなでコマセを
振っている
ほどほど
釣れている
全体として釣果をのばすために
はチームメイトのこませ速度を
読んで自分のこませの振り方が
皆んなで竿を
上げてしまう
コマセがなくなり
魚が散る
調整できる個人技と全体の釣果
をあげるためにその個人技を役
立てる気配(チームワーク)が
必要
誰か1人でも
コマセを
振っていれば
魚は散らない
QCC 08・0802
アクティバ
研究所
第 3.3.2 図
アジ釣りの例
この第 3.3.2 図は海でアジやサバをコマセカゴを使って釣るときの様子を示
したものです。この釣りでは、多くの人が乗り合わせている乗合船や、少人数
で釣りをやる仕立て船など沢山の釣り船で賑わいます。
この釣りを経験された方は多いと思いますがコマセカゴにアミエビをいれ、擬
餌針を付けた仕掛を海中に沈め、竿を振ってカゴに入れたコマセをまき、その
コマセを食べにきた魚が間違って擬餌針を食ってきます。これをつり上げるの
です。 この図は数多くの釣り船の中の一艘の仕立て船を示すものです。この
船もコマセをまいて、ほどほどつれています。この船の廻りには大型の乗合船
や小型の仕立て船など沢山の船がいます。仕立て船の方は人数も少ないので無
意識で釣っているとたまたまのタイミングで皆が竿を上げてしまうケースが発
生します。真ん中の図です。
このアジやサバはエサを求めて群れをなして海の中を走り回っており、エサあ
るいはエサらしいものを見つけると見境無く食いついてくる習性があります。
皆が竿を上げてコマセが切れる、即ちエサが無くなるとエサを探しながら仕立
て船の周りから離れていきます。
遠くの乗合船の方で聞こえる就餌音につられて乗合船の方に走っていってしま
24
い、仕立て船では釣れなくなってしまいます、
そのため、図のように誰か 1 人でもコマセをまいている人が必要です。自分だ
けの釣りをしているのではなく、仲間のコマセ速度を読み、自分のコマセの振
り方を調整できる“技”は最低限の個人技として必要です。特に、仕立て船で、
少人数の場合は釣果を左右します。結果として、仲間の釣り方をカバーできる
“気配り”というチームワークが発揮され、船全体の釣果は伸びるのです。個
人技としてはほかにもたくさんありますが、全体としての釣果は個人技によっ
て支えられています。
3.3.3 チームワークと個人技 まとめ
第 3.3.3 図はチームワークと個人技についてその概要をまとめたものです。
QCサークル活動で問題解決をする場合の個人技の中に大きく分けて固有技術、
QC手法、問題解決手順がありますが、QC手法や問題解決手順の内、QC手
法は問題を顕在化させたり、主要要因を明確にしたり非常に有効です。問題解
決手順は後戻りしない問題解決の進め方として有効です。
個人技:固有技術・・技術、技能、知識、問題解決能力
コミュニケーション能力
QC手法・・問題の顕在化・絞り込み、要因解析
問題解決の手順・・後戻りしない効率的な問題解決
チームワーク:個人技の効果的な組み合わせ
個人の技術、技能を仲間のために役立てる 自分の決められた守備範囲を守るだけでなく
状況に応じて助け合いなど応用動作ができるまで個人技を高める
高度なチームワークは
高度な個人技で支えられる
個人技は自分自身の努力によってのみ高められる
アクティバ
研究所
第 3.3.3 図
QCC 08・0803
チームワークと個人技 まとめ
しかし、これらでは問題解決はできません。問題解決は固有技術がなければ成
り立ちません。固有技術は技術、技能、知識、等をベースにし、日々の改善活
25
動によって醸成された問題解決能力と共にポータブルスキルとして身についた
ものです。個人技の中で注意が必要なのは問題解決能力で、中でも問題解決し
た後で問題解決時の主要要因について標準化し、守る能力です。QCサークル
活動の発表会などを聞いてもこの部分がハッキリしない例に出くわすことが多
いのは残念です。勿論、社内では確実に標準化し展開しておられることだと信
じていますが・・。
チームワークは自分の技術、技能、知識を仲間のために役立てる事から始ま
ります。そのためには自分の持っているもの、仲間が欲しいと思っているもの
などを話し合いによって相互に知らしめることが必要です。
次に、個人技としてあまり取り上げられていませんがコミュニケーション能
力があります。3つのキーワードのうち最初のキーワードである「話し合いと
「(問題意識の)共有化」とも重複するところが多いのですが個人技としても
大変大切なことであると思います。チームワークについては、目標を達成する
ために最適な個人技の組み合わせは基本的なことだと思いますが、QCサーク
ル活動などで機械的に役割分担をするようでは多くのことを期待することはで
きないように思います。また、最適な組み合わせをしても十分条件を満たして
いるかどうかは疑問になります。そこで、各人が持っている個人技を仲間のた
めに役立てることが重要な要素であると思います。
個人技は自分自身の努力によってのみ高めることができます。また、チーム
ワークはグループ活動の中でのみ高めていくことが可能です。
以上が3つがキーワードでありますが
・ 話し合いと(問題意識の)共有化
・ 自主性と支援
・ チームワークと個人技
をQCサークル活動が活性化していくために大変大切な土壌であると、意識を
強くしていただきたいと思います。
26
4.大切にすべき五感
3つのキーワードはQCサークル活動にとって重要であります。しかし、Q
Cサークル活動は人を対象とした、人による活動です。こういった環境の中で
活動する人々の意識はキーワード以上に基本になるファクターであると考えま
す。人が小集団の中でベクトルをそろえたり、行動を起こしたりする人の意識、
心、感情、気持ちなどは何によって動かされ、何によって方向付けされている
のでしょうか、少し異なった切り口で考えてみたいと思います。
「天涯孤独」という言葉がありますが、この言葉の意味は天の果て、地の果て
までひとりぽっちという意味であります。現代に生きる私たちにとって、とて
も生活できる精神環境ではありません。
私たちの生活は必ずだれかと何人かの人との関係を保ちながら成り立っていま
す。その最小単位がコンビニエンスストアの店員さんかもしれないし、家族か
もしれないし、地域活動のグループかもしれないし、趣味のグループかもしれ
ないし、フォーマルなグループ即ち会社の組織かもしれないし、また、それら
のいくつかのグループにまたがっているかもしれません。
いずれにしても私たちは、たった 1 人ではなくいくつかのグループ、あるい
は小集団の中で生活しております。逆に考えれば、いずれかの小集団に属して
いなければ精神的な安定が得られないような環境で生活していると考えて良い
と思います。私たちが、いずれかのグループに関係し、比較的長く良好な関係
を保ち続けることができるためには、個人とグループの間にどのような条件が
維持されればよいのでしょうか。
キット次に申し上げるような最低限 5 つの条件が維持されているからに違い
ありません。即ち、「五感」であります。五感とは存在感、連帯感、参画感、
達成感、満足感であります。(通常、五感といえば視覚、聴覚、嗅覚、味覚、
触覚を言いますが・・・)
魚釣りの話ばかりで申し訳ありませんが、20 年来続いているキス釣り仲間の
例を引きながらもう少し詳しくご説明したいと思います。ご説明に入ります前
に若干キス釣りの仲間を紹介させていただきたいと思います。
27
4.1 キス釣りの話し
4.1.1 キス釣りの仲間の紹介
1.年齢:45歳以上
2.構成:バラバラ(10年前は同職場)
3.魚釣り経験:20年以上(本部登録なし)
4.熱心度:ほとんど病気
5.開催頻度:1回/年(勿論時間外)
6.義務:万難を排して参加
7.考え方:1)平等(役割分担は進んで分担)
2)割り勘山分け(寝てても割り勘
山分け)
A
長老
B
経験豊富
C
D
E
F
運転ベテラン
時折魚釣りがやりたい
ビール大好き
アクティバ
研究所
QCC 08・1419
第 4.1.1 図 キスつりの仲間
キス釣りの仲間は第 4.1.1 図に示すような、仲のよい5∼6名がメンバーで
す。全員勤め人ですから、釣行は週末の勤務終了後集合して一台の車に乗り合
わせて、若狭湾丹生の釣り宿をめざして出かけます。年齢はばらばらで、個性
的なメンバーですが熱心度はほとんど病気という点は一致しております。
このメンバーの活動を題材にして「五感」を説明したいと思います。
4.1.2 存在感
キス釣りの時期は毎年 6 月の第一週か、第二週に決めております。時期が近
づいてくると計画者(幹事を担当する人)はキス釣りの業務計画書なるものを
立案します。立案に先立って、実施日の候補日をメンバー全員に確認し、第 1
週か、第 2 週に決定します。希望どおり行かない場合は必ず了解を取ります。
しかし適切なリードタイムをとれば、ほぼ計画通り日時を決定することができ
ます。業務計画書にはメンバーの氏名、役割分担などは勿論、日時、釣り場所、
集合場所、スケジュール、経費こまごまと記載します。麻雀のパイまで準備し
28
ます。今時の民宿は麻雀のパイなど持って行くことはないのですが、小さな民
宿ですと泊まり合わせた人達次第で不足することもあるのです。こういった業
務計画書で全員に確認します。
メンバーからも積極的に幹事に電話で連絡して自分
で可能な範囲を申し出ます。また、前日まで、現地
情報、天候、エサ、メンバーの情報など各種の情報
交換を続けます。このようなことを続けていますと
メンバーの誰からともなく不参加者を気遣うように
なります。お互いの存在感が生まれてきた結果だと
思いたまたま今回は参加できなかった人にも次回の
1.グループの一員を明示
2.言葉を掛け合う
3.平等に接する
役割、情報など
4.参加する
自分のできることで
5.発言する
同意する、聞く
6.認め合う
QCC 08・1420
参加を依頼しますし、グループ全体の情報も提供し
仲間を気遣うようになる
ます。この存在感を構成する要素としては第 4.1.2
第4.1.2図 存在感の構成要素
図ようになりますが、特に、2,4,5は大切であ
ると思います。 参加もしないで存在感なんか生まれませんし、言葉を交わし
合えないようでは参加も考えられません。こういった努力を重ねた結果、認め
たり、認められたりするのだと思います。QCサークル活動ではこのグループ
のように好き者の集まりではありませんので、その気になるまでが問題になる
ケースがあります。このときは私の提唱する「その気にさせる5つのステップ」
(第 3.2.2 図)を活用するとよい結果が得られることが多いと思います。
4.1.3 参画感
キス釣りの計画は B さんがやっていました。そ
の時はビール好きで船に若干弱い D さんは何時も
船の上で早々と寝てしまっていました。一昨年は
B さんが忙しく、計画を作る時間が取れなくて、
代わって D さんが計画推進を担当しました。とこ
ろが驚いたことに今までは船の上では早々とビー
1.提案する
2.計画に参加する
3.計画する
4.責任を持って推進する
5.自己のレベルアップ
を感じる
QCC 08・1421
ルを飲んで、寝てしまう D さんがまじめにキス
意識が大きく変わる
前向きになる
釣りをやりますし、途中でビールを飲むこともな
第4.1.3図 参画感の構成要素
いのです。しかも、釣りの技も格段に進歩して数も沢山上げるようになったの
です。今までは釣果もメンバーの中ではよくない方でしたのに、計画し、責任
29
を持って推進するという参画感の構成要素が意識を大きく変え、前向きにさせ
たからに違いありません。
参画感の構成要素は第 4.1.3 図に示しますが特に2,3,4は重要であろうと思
います。こんなに大きく D さんの意識が変わるとは思っても居ませんでした。
目を見張る物がありました。仲間の間でも語り草になりつつあります。
4.1.4 連帯感
次に連帯感ですが、先ほどの業務計画書で役割分担が幹事の独断と偏見(?)
で決まるのですが、メンバーはこれを認め、従います。
車、エサ、ビール、つまみなど各々が割り当てられた役割に対して責任を果た
します。自分の役割と関連した役割を担当した人との連携は密に取り合います。
例えば、調達車両と持ち込み手荷物量などといったことです。ワンボックス車
とセダンの場合では持ち込める荷物の量が違います。こういったことの連絡を
取り合って進めます。出発の前日には釣り宿とも連絡を取り、一連の事項をメ
ンバーに連絡します。行事が終了した時点で、結果を確認します。もし欠席者
があれば欠席者へも必ず連絡します。
役割分担をする前までは出発が近づいてくる
と離脱者が出ることもあったのですが、役割
分担をしてからは途中で離脱することが稀に
なってきました。連帯感の表れであろうと思
います。連帯感の構成要素はこのようになっ
ていますが、特に、1.3.4.7は大切な
項目であろうと思います。5.についてです
1.分担する
2.手伝う
3.仕事の繋がりを持つ
4.責任を果たす
5.責任を果たす支援をする
6.協力し合う
7.結果を共有する
QCC 08・1422
が、職場では、あいつは何時も失敗するなど
仲間とのつながりを意識する
といって批判する声を耳にすることがありま
第4.1.4図 連帯感の構成要素
が批判しても連帯感は高まりません。
経験者や、そのことをよく知っている人が、失敗する要因を先取りして支援し、
自信を持たせ、責任を果たさせることが連帯感を高めるために大切なことであ
ろうと考えます。
30
4.1.5 達成感
私どものキス釣りは出発が退社後で、途中でエサを買って船宿に着くのが夜
になります。少し遅くなった夕食を取りながら、次の日の達成すべき目標、す
なわち、釣るべきキスの数を決めるのです。
過去の実績は勿論みんな判っておりますし、途中のエサ屋の親父さんの話し、
これはいつでも“よく釣れているよ”といいます。多分良く釣れているという
とエサが多く売れるためだと思います。また、民宿のご主人である船頭さんは
だいたい“あんまり釣れんな”といいます。これをいろんな角度から話をしな
がら情報を引き出します。例えば昨年は深場で釣れたけど、今年は深場はどん
な様子かとか、あそこのポイントの様子はどうかなどといった具合です。これ
らの話し合いは私たちの目標設定に役立つことは勿論ですが、どうやら船頭さ
んの気持ちの整理にも役立っているようにも思えます。
いろんな話をし、総合してみんなの合意で目標を決めます。しかもかなり高い
目標にします。今年は 1 人当たり30匹にしました。船頭さんは今年の様子で
は無理だと言いました。
次の日に船を出して釣り始めるのですがキスが調子よく釣れているときは問
題ありません。少し時間が経過し、目標達成が怪しくなってくると誰もがいろ
んな工夫を始めます。少しでも釣果に繋がったと思えることは積極的に情報交
換を行います。例えばこういったことです。
エサの種類、エサの付け方、キスの誘い方、合わせ方、仕掛け、船頭さんへの
働きかけといったことです。私自身エサの付け方は4種類、誘い方も4種類、
仕掛けは長、短2種類、その他ハリの種類・サイズ、穂先の硬軟など多くの条
件の中から釣果の上がる条件を探し出すようにしています。
キス釣りでの情報交換で一番効果があり、釣果に対する寄与率が高いのはキス
の誘い方です。キスという魚は海底からチョット頭を出している虫を目ざとく
見つけて俊敏に飛びかかり、イッキに吸い込んでしまうというエサの取り方を
します。・・・見たわけではありません・・・といわれています。したがって、
エサをいかにおいしそうに見せるかという動かし方が重要要因になります。お
互いに協力し合い情報交換をしあいながら目標を達成するのです。
31
船から上がって数を数えて、目標達
1.高い目標を持ち、達成する
成を確認して大喜びし、苦労を話し
2.困難にめげないで努力する
合うことになります。勿論、何人か
3.創意工夫をする(仕掛け、釣り方)
いればノルマに到達しない人も時に
4.評価される(よいところを褒められる)
QCC 08・11423
はありますが、それにことさら触れ
ることはしません。自発的に「私は
晴れやかな気持ちになる
今日は扶養家族であった」と申告が
第4.1.5図 達成感の構成要素
あるときもありますが、「そんなとき
もあるよ」と軽く流します。達成感の構成要素はこのようですが2,3,4は
大切です。もっとも4については多少仲間内で傷をなめ合っているような所も
ありますが、船頭さんに褒められたりすると一段と達成感を高めます。
4.1.6 満足感
船から上がって一風呂浴びて昼食を取って帰路に着くのですが昼食のお茶で
乾杯、お茶ですよ、ビールではありませんよ、その時から帰りの車の中でもい
ろんな話が出ます。中でも悪かったことは全てみんなの責任として反省し、次
回に反映します。よかった事はできるだけ沢山話します。
食い渋ったときにエサの付け方をこう変えたと
か、誘い方をこんな誘い方に変えたとか、仕掛
けをビーズタイプにしたとか、オモリを軽くし
1.自分自身のレベルアップ
2.進歩を確実に作り出す
3.多くの人に役立つ
たとか、船頭さんに場所替えを提案したとか、
4.多くの人に評価される
船の中で釣りをやりながらお互いに大きい声で
5.新しい知見を持つ
情報を交換し、それを聞いた各人がそれなりに
6.来年は更にアップを!
判断し、自分の釣果に反映させたとか。
QCC 08・1425
あの時のあの情報にヒントを得て釣り方をこう
充実した暖かい気持ちになる
変えて釣果が伸びた.参考になったとか。来年は
第4.1.6図 満足感の構成要素
○○タイプにしてハリのサイズを少し小さいもの
を使ってみたいとか、そんな会話の中から自分の成長や人の役に立ったことを
感じ取ったりします。満足感の要素は第 4.1.6 図に示す内容だと思いますが特
に2,3,5は満足感を高めます。
QCサークル大会のように発表によって多くの人に評価され、認められること
32
は満足感の重要な要素です。残念ながら魚釣りではそれは味わえません。せめ
て釣り雑誌に投稿して皆さんに情報提供するぐらいです。
勿論、仲間内で認められることが満足感を高めるのに役立つことは違いありま
せん。
4.1
人の気持ちは五感が混在
以上が五感でありますが、これら五感は各々独立して存在しているのではな
く、人の心の中ではグチャグチャに混じり合って存在しております。(第 4.2
図) これが何かのタイミングで五感のどれかが強く顔を出してきます。可な
り大きな満足感を味わった直後でも何かほかのグループで全く存在を無視され
たようなことが発生すれば、そのことが非常に大きく顔を出して精神状態は
達成感 連帯感
参画感
満足感
存在感
参画感
参画感達成感達成感
連帯感 存在
満足感
満足感
感
存在感
連帯感
達成感 存在感
満足感
参画感
存在感 達成感 連帯感
満足感 満足感 達成感
連帯感 参画感 参画感
連帯感
五感の内、何かが1つ欠けても気分は晴れない
QCC 08・1427
第 4.2 図 人の心には五感か混在する
ただ事ではなくなります。
また、精神状態が非常に不安定なときでも、恋人や奥さんや子供さんの笑顔を
見るだけでスーット霧が晴れるように満足感が顔を出すこともあります。とに
かく、人の心の中にはいろんな場面の五感が混在していて大変複雑です。
常に、細心の注意を払って五感を大切にした活動が必要です。
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4.3 五感のまとめ
五感についてまとめてみました。サークルだけではなく、管理者もサークル
に対して、第 4.3 図に示すような努力が必要であると言うことです。
サ ー ク ル
管 理 者
言葉を掛け合う
参加する
認め合う
提案する
計画に参加する
責任を持って推進する
言葉をかける
連帯感
分担する
協力し合う
責任を果たす
場を準備する
フォローとアドバイス
責任を果たす支援をする
達成感
高い目標を持つ・達成する
困難にめげないで努力する
評価される
環境を維持する
よい刺激を与える
満足感
成長を認識する
多くに人に評価される
多くの人の役に立つ
環境を維持する
成長したことを的確に評価する
存在感
参画感
認める
自分の考え,職場の問題点など
について話し合う
可能な限り提案を実施
第 4.3 図 五感のまとめ
サークル員の事項については本文中少しばかり説明してきましたので、ここで
は管理者の項目について少しだけ触れたいと思います。
管理者だからといって部下に対して存在感があるとは限りません。まず、まん
べんなく言葉を掛けることからはじめる必要があります。名前を呼んで声を掛
ければ効果的だと思います。次に、自分が持っている職場の問題点など積極的
に話し合い、部下からの提案はできるだけ実施していけば部下の参画感は高ま
ります。本文中でも若干触れましたが部下が責任を果たす事に対して支援する
ことが大切だと思います。部下の成長を見逃さずにみんなの前で褒めることは
管理者に与えられた特権だと思います。
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5.永続性のある人間関係のために
永続性のある人間関係は3つのキーワードで示される活動で醸成される土壌
の上に成り立つことだと思います。この土壌作りの基本は「話し合いと共有化」
であると思います。
聞く耳を持つことが基本 話し合いと共有化 存在感 仲間を意識する・相手
を認める 満足感 参画感 充実した暖かい気持
ちになる 意識が大きく変わり前向
きになる
五感
自主性と支援 チームワークと個人技 高度なチームワークは高度な個
人技によって得られる 達成感 自主性と支援は表裏である 連帯感 仲間とのつながりを
意識する 晴れやかな気持ち
になる アクティバ
研究所
QCC 08・0301
第 6.2 図 永続性のある人間関係のために
この土壌作りの基本は管理者の仕事であると思いますが、サークルの人も積極
的に参加し全体で作り上げていかなければなりません。第 4.2 図でもお示しし
ましたが中でも存在感が一番大事で、サークル員が、サークルリーダーが、監
督者が、管理者が、経営者が、全員がお互いに存在感を確認し合える活動が期
待されます。まず、お互いが声をかけあうことが大事です。コミュニケーショ
ンの基本だと思います。
QCサークル活動、小集団活動は人が対象の活動であり、非常に複雑で終わ
りがありません。特に職場では年齢、技術、経験、価値観、生活の背景、職場
における立場、五感、これらの交互作用など一人ひとりバラバラであります。
このような職場で個人の能力を高め、皆のベクトルを合わせ、一人ひとりが、
そしてサークルが成長を続け、目標を達成するためには 3 つのキーワードとい
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う土壌の上でサークル、管理者、経営者全員が、サークルだけではありません
よ!管理者・経営者もですよ、全員ですよ、各々の立場で五感を大切にし合う
ことが最も必要なことだと考えます。
その結果として、「活動して良かったと思うサークル」作りが約束されるもの
であると固く、固く信じております。
6.結び
QC サークル活動も、その環境となる人間関係も、誰かがとか、QC サーク
ルがとか、頑張れば・・・といった考え方で QC サークル活動も、人間関係も、
双方ともうまくいかないと思います。QC サークル活動を活性化させる基本は、
固有技術の向上だとか QC 手法の充実だとか、問題解決手順の習得だとか、は
もちろん大切ですが、それらよりも良い人間関係を維持する事が大切だと思い
ます。良好な人間関係を維持するためにもっとも大事なことはお互いが、お互
いに対して存在感がもてるように努力し、存在感を維持することから始まると
思います。最終的にはお互いがお互いに対して満足感が得られることが理想だ
と思います。
しかし、人間関係は非常に複雑です。一度満足感を得られても、長く維持で
きることを期待するにはムリがあります。少なくても一番大切な存在感を維持
する努力を怠ってはいけないと思います、そしてそれが満足感につながる努力
を続けたいものです。
完
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参考資料
1.QCサークルの基本 QCサークル本 (財)日本科学技術連盟
2.QCサークル活動 運営に基本 QCサークル本部編 (財)日本科学技術連盟
3.アクティバ研究所 資料集 アクティバ研究所
「活動して良かったと思うサークル」づくりを
平成 5年 3月12日 初版発行
平成27年 4月 1日 二版発行
発行人 藤川篤信
発行所 アクティバ研究所
愛知県岡崎市細川町字鳥が根17-28
TEL 0564-45-2895
Email [email protected]
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アクティバ
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