アナリスト向け会社説明会※1

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アグロ
井上
カネショウ
智広
(イノウエ
トモヒロ)
アグロ カネショウ株式会社専務
原発事故を乗り越え、東証第 1 部へ昇格
◆会社概要
当社は昭和 26 年、先代社長が創業し、農薬専業メーカーとして農家密着型経営を続けており、現在の自己資
本比率は 61%である。東日本大震災に伴う原発事故により福島工場を閉鎖するという大きな打撃を被ったが、農
家はじめ株主、取引先からの支援、社員の奮闘などにより業績が回復し、昨年 9 月 19 日、東証第 1 部への上場を
果たすことができた。
直近 5 年における利益の推移をみると、経常利益は原発事故のあった平成 23 年に減少したものの、順調に利
益を回復し、平成 26 年は過去最高益を更新した。当期純利益は、福島工場の減損処理を行った平成 23 年に 2
億 80 百万円の赤字となったが、その後は堅調に推移している。
配当金については長期的な安定配当を継続している。平成 23 年は 20 円を予定していたが原発事故の影響で
10 円とさせていただいた。その際の株主からの励ましの言葉は、その後の復興において大きな原動力となった。
平成 26 年度は普通配当 20 円、上場記念配当 7 円の計 27 円とする予定である。
◆福島工場被災に関して
福島工場は福島第一原発から約 1 キロ南の海沿いにある。地震・津波の影響は軽微だったが、放射線汚染レ
ベルが非常に高く、やむなく工場を閉鎖した。農薬の在庫が約 250 トン、金額にして 5 億円相当あり、これが海に流
出する二次災害を防ぐため流出防止ブロックを設置した。汚染された農薬は放射線レベルが下がってから焼却処
分することになるが、それまで当分の間は多額の費用が必要であろうと思われる。
一方、原発事故のあった年にドイツのバイエル社から結城市にある中央研究所を買い受け、一部を茨城工場と
した。これにより、生産能力の強化、研究開発力の強化が進み、被災後の復旧に大変役立った。
震災前は福島工場で 40%を生産していたが、震災直後は 96%程度まで委託生産となった。現在は茨城工場で
25%を生産しているが、大規模な工場にしなかったのは、生産拠点の一極集中を避け、リスクを分散させるためで
ある。
◆当社の特長
当社の特長は、果樹・野菜向けに特化していること、農家密着型経営であること、研究開発や海外展開におい
て更なる挑戦をしていることの 3 点である。
当社の昨年の連結売上高 136 億円のうち約 80%を果樹・野菜向けが占めている。栽培面積では水稲が圧倒的
に多いが、水稲は減反の影響により不安定で、農薬会社間の競合も激しい。一方、果樹・野菜は栽培面積が安定
しており輸出競争力も強く、非常に有望な市場と言える。また、果樹・野菜は農薬を使わないと病害虫の影響を受
けやすく、減収幅が大きい。無農薬野菜や有機栽培野菜などもあるが、農産物の全栽培面積約 400 万ヘクタール
に対してそれらの栽培面積は約 4,000 ヘクタールで、0.1%程度にすぎない。農薬は、登録から販売まで大変な時
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間をかけ、約 200 項目の試験で安全性を確認するため、正しく使えば安全なものであると確信している。
また従来は、戦後の農業生産を向上させるため、JA 全中を頂点に JA 全農、地域農協を経て一般農家を裾野と
する統制経済のピラミッドがあり、農家に対し手取り足取りの指導・監査を行ってきた。しかし戦後 60 年を過ぎ、こ
の構図が農家の競争力・意欲の低下、農業衰退の一因となってきている感がある。安倍政権の農業改革により将
来的にはこの体制が崩れ、日本の農業の成長性は高まると期待している。当社はこのようなピラミッド型の統制経
済ではなく、農家に密着して農家経営に貢献することが重要だと考えている。卸商・小売店・JA 等のみに任せるの
ではなく、全国 70 名の TCA(テクニカル&コマーシャル・アドバイザー)が足繁く農家を訪問し、農家の意見も聞き
取りながら相談に乗っている。農家と卸商・小売店・JA と当社が互いに結び付くこの形を、当社では「トライアング
ル作戦」と呼び、現在の安定的経営を支えるものであると考えている。
また、当社の売上の約半分は土壌消毒剤であるが、各農家の土を分析し、土壌の化学・物理的要因や病害虫
要因を診断して、どのような土壌消毒剤や肥料を使ったらいいかアドバイスを行っている。これは今年スタートした
ばかりのビジネスであるが、農家へのサービスの一環として展開していきたい。
バイエル社から買い受けた結城研究所は生物研究所とし、化学研究所である所沢研究所とともに研究体制を
強化している。新規剤の開発にあたっては、基礎研究のほか、実用試験に 5~6 年、登録・上市に 2~3 年かかる
が、現在開発中のものは平成 32 年、平成 35 年にそれぞれ上市できる計画である。また、買収剤としては約 11 年
前にドイツ BASF 社から土壌消毒剤を買収し、平成 26 年には同じく BASF 社からペイオフという害虫防除剤を買収
している。今後も果樹・野菜向けの有望な買収剤があれば、積極的に導入していく。
現在の世界の人口は約 70 億人で、2050 年には約 93 億人になると予想されており、食糧増産が重要な課題と
なっている。耕地拡大はあまり期待できず、病害虫等による減収や、干ばつ・高温・冷害・塩害といった異常気象に
よる減収も多発しており、農薬の必要性は今後いっそう高まるとみられる。市場をみても、農業生産額の上昇に伴
って農薬販売量も増加しており、特に、アジア、中南米、北米での伸びが大きくなっている。当社もこういった地域
を重点的に今後の海外展開を進めていきたいと考えている。当社の海外拠点は現在、欧州とアジアのみであるが、
将来的にはもっと拠点を増やしていきたい。
ヨーロッパ支店はヨーロッパで農薬の登録を取るため、1999 年、ドイツに設立した。ベルギーには KST(カネショ
ウ ソイル トリートメント)があるが、これは 2003 年に三井物産と合弁で設立した会社で、土壌消毒剤の世界市場
への拡販を行っている。アジアにおいては、2012 年、韓国のソウル市に AKK(アグロ カネショウ コリア(株))を設
立し、生産販売管理、TCA 活動などを行っており、将来的にはここを起点としてアジアに向けた技術普及をしてい
きたいと考えている。
当社は現在約 60 カ国で登録・販売を行っており、主な商品は土壌消毒剤のバスアミド、D-D、ネマキック、害虫
防除剤のカネマイト、除草剤のモゲトンなどであるが、これらの更なる拡販や新商品投入を積極的に展開してい
く。
なお、利益については、株主と、研究開発のための内部留保、会社発展の原動力となる社員への 3 分割を基本
としている。農薬に対しては否定的な意見もあるが、当社は農薬専業メーカーとして誇りを持ち、安全性を追求して
農業生産を上げるための貢献をしていきたい。
◆平成 26 年 12 月期決算概況
取締役経営企画本部長 角田俊博
連結業績は、売上高 136 億 82 百万円、営業利益 22 億 67 百万円、経常利益 23 億 30 百万円、当期純利益 16
億 67 百万円となった。主要剤である土壌消毒剤のネマキック、D-D 剤の国内販売、欧州における D-D 剤の販売
が好調で、また、北米、メキシコではダニ多発によりカネマイトフロアブルが伸長し、売上高は前期比 2.5%の増収
となった。
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営業利益においては、売上原価低減の推進に加え、KST での買収剤、バスアミド・D-D 剤ののれん償却が終了
し、販売費および一般管理費が大幅に減少したため、前期比 118.1%の大幅増となっている。経常利益は平成 25
年 12 月期に多額の為替差益が計上されており、今期はそれがないため、前期比 21.8%の伸びに留まっている。
当期純利益は、原発事故関連で東京電力からの損害賠償、経済産業省から茨城工場への国庫補助金の計約 8
億 20 百万円を特別利益として計上したため、前期比 23%増の 16 億 67 百万円となった。これは史上最高益であ
る。
平成 27 年 12 月期の連結業績予想は、売上高 141 億 48 百万円、営業利益 9 億 46 百万円、経常利益 11 億 83
百万円、当期純利益 6 億 39 百万円とする。売上高においては、引き続き土壌消毒剤のバスアミド微粒剤やネマキ
ック粒剤、除草剤のカソロン粒剤等が堅調に推移すると見込まれ、また、ドイツ BASF 社からペイオフ剤を買収した
こともあり、前期比 3.4%増を予想している。
売上原価率は前期並みと見込んでいるが、新規剤の委託試験費や既存剤の欧州における登録の維持・拡大
経費などにより合計約 15 億円を予定しており、研究開発費だけで前期比約 12 億円増となるため、営業利益は大
幅に減少するとみられる。経常利益、当期純利益についても同様であるが、研究開発投資は将来の成長のため
必要だと考えている。
◆質
疑
応
答◆
研究開発についてもう少し詳しく教えてほしい。
開発中の新規剤 A 剤は害虫防除剤で、実用化試験 2 年目であり、平成 32 年上市の予定である。B 剤は果樹・
野菜向けの病害防除剤(殺菌剤)で、今年から実用化試験に入り、平成 35 年上市を予定している。
海外展開について、今後の海外売上比率や重点地域を伺いたい。
来年度の海外売上比率は 26.5%を想定しているが、近い将来に 30%、将来的には 40%程度まで高めていきた
いと考えている。地域的には、現在はヨーロッパ中心であるが、昨年、ダニ防除剤のカネマイトがアメリカで爆発的
に売れたので、アメリカ・中南米にも注力していきたいと思う。
今後の研究開発費について伺いたい。
平成 27 年度は新規剤や既存剤の委託試験費等で計約 15 億円を予定しているが、これは例外的なものである。
一応、研究開発費は売上の 10 分の 1 程度を目安としているが、開発の状況によって多少変動する可能性がある。
回収期間は薬剤によって異なり、ダニ剤は 3 年程度、土壌消毒剤は比較的長い償却期間で算定している。
(平成 27 年 2 月 13 日・東京)
*当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。
http://www.agrokanesho.co.jp/ir/pdf/ir/150213ir_explain.pdf
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