情報番号:01081135 テーマ:取引先の危険な兆候と調査のしかた 編著者:弁護士 浅野謙一(上野・浅野法律事務所) (関連情報:01081134∼01081169) Q:危険な兆候はどのような点に注意すれば発見することができますか? の調査の仕方とは? そ A:(危険な兆候の出現) 取引先が破綻する恐れがある場合には、通常、当該取引先は、何とか破綻を 回避しようとして色々な手段を講じます。そうしますと、当然のことながら、 当該取引先は正常な状態のときとは異なる動きをすることになりますので、今 までの動きとの間に変化が見られます。それらの動きを注意深く観察すること によって、取引先の状態を把握することができ、債権保全の点で、当該取引先 の破綻によるリスクを回避できる場合があります。 (金繰りに関して) 資金面の変化としてまず挙げられるのが、手形のジャンプの要請です。色々 な事情があったり、一時的なものであったりするにせよ、当該手形の決済資金 を準備できないことの表明であるといえます。また、手形サイトが長期化して いくこと、あるいはその要請も、決済資金の準備の先送りといえます。 つぎに、資金繰りの悪化に伴い、取引銀行が交替する場合もあります。従前 のメインの銀行からの融資あるいは支援が困難となったために、他の銀行に頼 らざるを得なくなるからです。さらに、当該取引先が有する不動産に設定され た担保の変化によっても、資金繰りの悪化が予測できる場合があります。この 場合、如何なる者が担保権者となっているか、あるいはどの程度、担保が増額 されているかなどによって判断することになります。 (取引に関して) 取引に関しては、取引量の変化が破綻の兆候となる場合もあります。とくに、 取引量の急増などもその兆候となる場合があります。取引量が増えたからとい って安心できない場合がありますので、注意が必要です。なぜなら、破綻が目 前に迫っている場合などには、当該物を他に転売して、当面の現金を捻出する ためだけに(買掛金の支払を考慮せずに)仕入れの量を増やすこともあり得る からです。 また、在庫が急増している場合には、大量の返品を受けている可能性があり *この情報の無断コピーを禁じます。 (株)経営ソフトリサーチ・JRSレファレンス事業本部 1 ます。そして、その急増した大量の在庫を廉価に処分している場合なども、兆 候の一つといえます。 (人的構成に関して) 役員の交代や、優秀な営業マンの突然の退職なども破綻寸前の会社の状況を 反映する場合があります。その他当該会社の財務面での内情を知る者が次々と 退職していくような場合にも、役員や優秀な営業マンの退職と同様、やはり当 該会社に見切りをつけている可能性があるため、これらの従業員の入れ替わり も破綻の兆候となることが多いといえます。 また、従業員の給料の遅延の噂などが社外に聞こえてくる場合も、従業員の 不満が溜まっているということだけにとどまらず、資金繰りが悪化しているこ とを示すものといえます。 (調査方法) これらの兆候を見つけるためには、不動産登記簿、商業登記簿、決算書その 他公開されている資料に頼るだけではなく、実際に当該取引先を訪問し、担当 者等と面談することによって、当該取引先の社内の雰囲気など有形・無形の情 報も収集する必要があると思われます。当該取引先の事業所内の活気の有無な どは実際に訪問してみなければ、収集が困難な情報であるといえるからです。 また、当該取引業界での噂なども有用なものがある場合もありますので、当 該取引先の取引先からの情報の取得にも努めるべきことになります。そのため にも、当該取引先を取り巻く様々な関係を日ごろから、アンテナを広く張り巡 らせておく必要があるということになると思われます。 信用調査に関する興信所等から有用な情報を入手できる場合もあります。 (まとめ) 以上のとおり、今までとは違った異常な動きを見極めるということは、正常 な取引当時との比較検証が必要不可欠であるといえます。それゆえ、普段から、 取引先に対して意識的に観察しておくことがとても重要であるということに なります。換言すれば、破綻の兆候の発見は一朝一夕でできるものではないと いうことになると思われます。取引先の破綻の兆候を見逃さないためには、絶 えず情報を収集しようとする「管理の目」をもって、不断の努力をもって取り 組み続ける必要があるということになります。 *この情報の無断コピーを禁じます。 (株)経営ソフトリサーチ・JRSレファレンス事業本部 2
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