Order Picking for the 21st Century

21 世紀のオーダー
ピッキング
音声 vs. スキャン技術
ホワイトペーパー
アーロン・ミラー
Tompkins Associates 主席コンサルタント
TOMPKINS
A S S O C I AT E S
© 2004
21 世紀のオーダーピッキング:
音声 vs. スキャン技術
アーロン・ミラー
Tompkins Associates 主席コンサルタント
•
要旨
サ
プライチェーンにおけるコスト削減は、各種企業
の永遠の課題です。特に倉庫関係者にいたっては、
労務費の削減、生産性と物流精度の向上、および
運用コスト全体での縮小を実現すべく、常に頭を悩ませて
います。オーダーピッキングは、倉庫業務の中でも最も労
力を要する作業のひとつであるため、各社が新技術の投入
による自動化を試みています。紙ラベル、RF スキャニン
グ、デジタルピッキングなどの既存ソリューションは、そ
れぞれピッキングの効率と精度の向上に貢献しましたが、
業者間の競争が高まる中、さらなる効率アップとサービス
向上が求められています。
そこでご紹介したいのが音声技術です。具体的には、
WMS (倉庫管理システム) にリアルタイム接続された、
音声認識機能と音声合成機能を備えたウェアラブルなワ
イヤレスコンピュータです。オーダーピッキング作業を分
析すると、ほとんどの誤出荷はピッキングミスによるもの
で、これらは返却処理によるコスト増につながっています。
これまでのピッキング方法で使用されてきた手持ち端末
や紙ラベルでは、オーダーの処理に時間がかかります。従
業員の入れ替わりや、パート従業員の言語障壁および季節
的増員などによっても生産性は低下し、ピッキングの効率
はお世辞にも良いとは言えなくなります。音声ソリューシ
ョンは、WMS、LMS (労務管理システム)、またはホスト
システムと直接通信することにより、システムと作業員と
の間にシンプルで自然なコミュニケーションを確立し、作
業の速度と精度を向上させます。
既に数多くの企業が、音声方式の倉庫管理ソリューシ
ョンを採用することによって業務の改善とサプライチェ
ーンにおけるコスト削減を実現できることに気付いてい
ます。本書では、以下について説明します。
音声方式の倉庫管理ソリューションによる効率性の向
上は、既存ソリューションを利用した場合と比べ、数値化
できるほど顕著な効果をもたらします。利用者からは、生
産性と精度のみならず、収益をも向上することが報告され
ており、音声方式の有意性が実証されています。目的が労
務費の削減であろうと、業務効率の向上であろうと、はた
またその両方であろうと、倉庫管理および物流業務におい
て速やかに結果を出せるのが音声技術です。
オーダーピッキング:倉庫管理業務の要
オーダーピッキングは、多くの倉庫関係者によって物流業
務における最重要項目として捉えられています。入荷、格
納、保管、梱包、出荷、注文処理、および顧客要求が一点
に集約されるオーダーピッキングは、他のどの業務より資
源を必要とし、また、倉庫業務の中で最も顧客に影響を与
えるものでもあります。
オーダーピッキングは、倉庫関連の直接労務費予算の
4∼6 割を占めます。このため、設備の労働力と、そのオ
ーダーピッキング環境への対応力は、コストと生産力の重
要な経済指標となります。倉庫がどれだけ自動化されてい
ようと、最終的な効率と精度は作業員によって左右されま
す。多くの企業では、倉庫従業員の離職率の高さが無視で
きない現実となっています。新規従業員の獲得および教育
にはコストがかかり、精度と生産性を維持するのも困難に
なります。
企業は、労務コストを抑えながらも精度と生産性を維
持できる手段を求め、まずはオーダーピッキングのコスト
を削減すべくスキャニング、デジタルピッキング、音声技
術などを導入してきました。本書では、二大物流ソリュー
ションである手持ちスキャナと音声の効率性を比較分析
します。
•
音声方式の倉庫管理は、精度と生産性において、
手持ち端末方式やリスト/ラベル方式より優れる。
•
とある企業では、音声方式の採用によって返却率
を 50%削減し、導入初年度で約 130 万ドルもの
節約に成功した。
•
上記の企業は、スキャン方式において必要とされ
る物理的動作がピッキングミスにつながると指摘。
音声方式に切り替えることにより、数量不足が
11%、ピッキングミスが 25%以上削減された。
•
音声ソリューションは、実作業や研修に直接的な
メリットをもたらす。
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倉庫内の各種業務に音声ソリューションを利用す
ることにより、経済面およびビジネス面でさらな
る恩恵を受けることができる。
オーダーピッキングの進化:スキャニング
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新しい技術というのは、事業の成功にとって重要な分野に
おけるほど生まれやすいものです。オーダーピッキングも
例外ではありません。レーザースキャナを採用した画面付
き端末は、これまで幾多もの倉庫で採用されてきました。
スキャナ方式では、ホストシステムによって生成された
「ピックリスト」に基づいて商品を回収します。ピックリ
ストは、位置情報およびピッキング指示と共に、手持ち端
末または車載端末の画面に表示されます。
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21 世紀のオーダーピッキング:音声 vs. スキャン技術
バッテリー式音声コンピューターのみ。両眼と両手が自由
になるため、倉庫内の移動やピッキング作業が楽に行えま
す。
作業員は、棚またはスロットから商品をピッキングす
るにあたり、まず画面上に指示された場所に移動します。
次に、これからピッキングしようとしている商品が正しい
ことを確認するため、対象物に端末を向け、商品バーコー
ド、ケース ID バーコード、位置バーコードなどを読み取
ります。その後、リストに掲載された商品をピッキングし、
端末のテンキーで個数を打ち込み、数量を確認します。作
業員は、これらの作業が終わった時点で、ようやく商品を
パレットやカートンに積むことができます。
弊社では、後述のケーススタディを用意するにあたっ
て、Vocollect 社 (本社:米国ピッツバーグ) の
Talkman®ハードウェア・ソフトウェア統合システムを
評価しました。同社のシステムは、個別に録音した音声テ
ンプレートを使用することにより、倉庫という多様な人材
が働く環境において頻繁に見受けられる言語障壁を解消
します。精確な音声認識を実現するため、各作業員の声は、
それぞれ音声テンプレートファイルとして保存されます。
作業員は、シフト開始時に自分の音声テンプレートを読み
込むことにより、端末を自分の話し方に合わせて調整する
ことができます。音声認識システムは、完全に「言語非依
存」であり、利用者の要件に応じて様々な言語の音声合成
エンジンと組み合わせることができます。
バーコードスキャン方式では、通常 99%に及ぶ精度
を実現することができます。これは、これまでのデータを
手入力する方式と比べ、桁違いに優れた成果です。倉庫内
での精度向上は、サプライチェーン上の問題を減らし、在
庫管理や顧客満足度の向上に貢献します。
しかし、スキャン方式が最善の方式かと言うと、必ずし
もそうとは言い切れません。バーコードの読み取り率は、周
囲環境、照明、汚れ、印刷品質などによって左右されます。
なお、Vocollect 社の音声システムに採用されているテキ
スト読み上げエンジンは、現在26言語で作業員と通信す
ることができます。さらには、Vocollect Voice®では、
作業員が「聞く」言語と「話す」言語を個別に設定するこ
ともできます。また、音声システムに慣れてきたら、作業
スピードを上げることもできます。
スキャン効率を維持するには、すべてのバーコードが規格
通りのサイズおよび形式で、なおかつ状態が良いことが必
須条件となります。また、言うまでもなく、バーコードが
スキャナの読み取り範囲内になくてはなりません。このた
め、商品へのアクセス性が制限され、事業規模が拡大する
につれ待ち時間が増え、生産性が低下します。また、あら
ゆる RF 機器に言えることですが、不十分なアクセス設計
や妨害物による死角も発生しがちです。
音声システムは、既存の WMS、LMS、およびホスト
システムと簡単に統合することができます。また、これら
のソフトウェアを提供しているプロバイダの多くでは、音
声技術を組み込むためのインターフェースを提供してい
ます。システムの実装と設定にかかる時間は、RF システ
ムの実装と大差なく、より短時間で完了することもめずら
しくありません。
倉庫管理に活躍する音声技術
音声技術は、1940 年代の登場以降、様々な業界に影響
を与えてきました。例えば自動車業界では、カーナビや安
全装置に音声技術を導入しています。また、他にも数多く
の業界において、カスタマーサービス、受注システム、テ
レフォンバンキング、情報提供の自動化などに音声システ
ムが利用されています。音声技術は、その発展と共に、よ
り多くの消費者によって日常的なものとして認識される
ようになっています。
音声技術は、その他のピッキングソリューションに対
し、いくつもの優位性を提供します。
•
音声技術は、製造や流通といった、労働集約的かつ工
業的な分野にも浸透してきました。音声方式の採用により、
作業員はより安全に、より精確に、より集中して作業する
ことができるようになりました。例えば流通業界において
は、これまで複数の作業を一度にこなさなければならなか
ったオーダーピッキングに、音声技術という代替手段が誕
生したわけです。音声技術がオーダーピッキングにもたら
す精度、効率、および効果にまず飛びついたのは、大手の
食品流通業者たちでした。激しい競争の中、常に「より少
量でより多くの成果」を追求している食品流通業界では、
収益の向上を図るため、既存のオーダーピッキング手段を
上回る技術が求められていたのです。
作業員は、音声システムを介することにより、WMS、
LMS、または独自ホストシステムと直接通信し、手持ち
端末や紙に記録する必要なく、迅速かつ効率的にピッキン
グ作業を進められます。作業員が身に付けるのはマイク付
の軽量ヘッドセットと、ウエストベルトに取り付け可能な
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能動的かつリアルタイムの作業指示:能動的に指
示出しできるのは、音声技術のメリットのひとつ
です。紙やバーコードを用いた方式では、作業員
が自らの作業ペースを決めることになります。対
して、音声方式では、作業員のペースを定めるこ
とによって生産性を向上させることができます。
各作業員に割り当てられた仕事量は、日常業務の
一環として、施設の無線ネットワーク経由で WMS、
LMS、またはホストシステムから音声端末にダウ
ンロードされます。WMS システムは、オーダーを
「ウェーブ (バッチ等の作業単位)」にグループ分
けし、順番付けすることによって、効率的なオー
ダーピッキングを実現します。倉庫管理者は、ウ
ェーブを管理することで、大量のオーダーを動的
かつ効率的に処理することができます。音声シス
テムは、WMS や LMS と連携して、ウェーブ情報
をピッキング作業員向けに変換します。ウェーブ
情報は、管理者が指示を出した時点でリアルタイ
ムに作業員端末へダウンロードすることもできま
すし、バッチ処理でダウンロードすることもでき
ます。
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21 世紀のオーダーピッキング:音声 vs. スキャン技術
•
ケーススタディ:音声技術の採用による影響
より精確で敏速なピッキング:音声システムでは、
精度保証に「チェックディジット」を使用します。
作業員は、音声パスワードで個々の音声コンピュ
ーターにログオンした後、最初のピッキング位置
へ移動します。作業員は、指定位置に移動した後、
「チェックディジット」と呼ばれる各ロケーショ
ン固有の数字を読み上げます。Vocollect システム
は、チェックディジットが指定ロケーションのも
のであることを確認した上で、作業員にピッキン
グ指示を出します。読み上げられたチェックディ
ジットが、バックオフィスシステムによって把握
されている内容と一致しなかった場合は、間違っ
た場所にいることが作業員に伝えられます。ピッ
キング数量は、正しいチェックディジットが読み
上げられるまで、作業員には伝えられません。な
お、ピッキング数量に関しては、作業員による復
唱確認をシステムの要件として設定することもで
きます。必要数量のピッキング後、システムによ
って次のピッキング位置が指示されます。このよ
うなスムーズなワークフローは、音声方式のメリ
ットの 1 つです。作業員は、音声指示に従うこと
により、集中力を途切れさせることなく、精度と
生産性の向上に努めることができます。
1926 年創業のAssociated Wholesale Grocers
(AWG) 社は、米国最大手食料品卸売業者の 1 つです。カ
ンザス州カンザスシティにある同社最大級の倉庫では、約
93,000m2の床面積を、主として 5 つの区域(乳製品、
乾燥食品、冷凍食品、精肉類、生もの)に分けて使用して
います。同倉庫では、冷凍食品区域を除く全区域において、
1990 年代初頭にスキャナ方式を採用しています。
AWG 社では、合併買収による成長に伴い、精度と生
産性のさらなる向上が求められていました。農産物、乳製
品、精肉類の各区域において、スキャナ方式の成果に対す
る不満を抱えており、全体的な技術改善が必須であること
は明らかでしたが、既存の RF 端末システムをアップグレ
ードせずに成果を向上させる方法がないものかと模索し
ていました。
AWG 社では、1994 年には既に音声システムの存在
を認識していました。Wal-Mart 社や Kroger 社といった
業界のリーダーたちによる導入実績もあり、間接費および
労務費の削減や、生産性および精度の向上といった、音声
システムがもたらすメリットを AWG 社は十分に理解し
ており、冷蔵冷凍倉庫を含む倉庫ネットワーク全体に画一
的に導入可能な技術として期待の目を向けていました。音
声は、RF 技術と異なり、冷蔵倉庫等の低温環境において
も効率が落ちることがありません。情報入力時に手袋を脱
いだり、画面の霜取りをしたり、液晶ディスプレイを解凍
するために RF スキャナを頻繁に脱着したりする必要が
ないのです。また、過酷な作業環境に合わせた高価な RF
装置を導入する必要もありません。
リアルタイムの在庫管理:作業員は、商品の説明や商
品コードなどを始めとする詳細情報を、それぞれ
の商品やロケーション位置について任意に音声シ
ステムに問い合わせることができます。また、音
声システムでは在庫切れ、在庫不足の扱いも簡単
です。ロケーションが空、または数量不足の場合、
作業員はシステムに報告し、補充をうながすこと
ができます。なお、その際には、現在割当てられ
ている作業をそのまま続けて完了させるか、一度
システムに戻し、他の作業員に再割当するかを選
択することができます。音声システムは、在庫管
理においても、明確な優位性を持っていると言え
るでしょう。
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21 世紀のオーダーピッキング:音声 vs. スキャン技術
音声 vs. スキャニング:音声の優位性
AWG 社は、カンザスシティ倉庫にてテスト導入を行
い、音声の導入によって著しい精度向上が図れることが認
められたため、すべてのピッキング業務を音声システムに
移行する決断を下しました。2003 年 1 月、同社は
Vocollect 社の Vocollect Voice® ソリューションを導
入。わずか 2 ヶ月で音声への完全移行を遂行しています。
音声システムの導入は、まず乳製品、次に精肉類と農産物、
続いて冷凍食品、そして最後に、同設備最大区域であり、
60∼80 人の作業員が勤務する乾燥食品といったように、
倉庫の区域別に順番に実施されました。
バーコードスキャン方式は、倉庫業務のニッチ市場を開拓
しましたが、あらゆる場面において最善のソリューション
だとは言えません。多くの設備では、離職率の高さと研修
コストにより、労務費対策が大きな課題となっています。
しかし同時に、WMS、LMS、およびその他の技術の進歩
により、サービスレベルの向上、および各種の改善を図る
ための環境が次々に整っていることも事実です。そして企
業は、高離職率、合併買収や統合による仕事量増加、競争
の激化、そして顧客要求などに対応すべく、より一層の精
度と生産性を求めているのです。
音声技術を採用したソリューシ
ョンは、ピッキングリストと手持ち
スキャナの組み合わせと比べ、より
素早く、より効率的なピッキングを
実現するだけでなく、精度、返品率、
生産性、研修および労務、安全性、
ROI などにおいても、目に見える成
果を残します。
作業精度:ほとんどの企業にとって、
音声システムの導入による最大のメ
リットは、作業精度の向上でしょう。
ピッキングミスによる誤出荷や数量
の過不足は、返品処理のために少な
からぬコストを発生させます。
図 1. AWG 社のカンザスシティ倉庫における、音声技術
導入によるピッキング生産性の向上
AWG 社では、カンザスシティ倉庫に音声システムを
導入することにより、精度が全体で 99.52%から
99.64%に向上しました。これが具体的にどういうこと
かと言うと、年間約 6 千 2 百万ケースを出荷している倉
庫において、正しくピッキングされたケースが 74,000
個増え、その分の再梱包、返品、在庫再登録の手間が省か
れるということです。これは、ケースあたり 20 ドルのコ
ストを想定した場合、年間 150 万ドル近く節約できるこ
とを意味します。
24 時間 3 交代制で運営されている同施設では、現在
常時 170 人程度の作業員が音声システムを同時に使用し
ています。AWG 社では、音声システムを導入することに
より、倉庫内の全区域において生産性が明らかに向上しま
した (図 1 参照)。成果が最も著しかったのは、既存のス
キャン方式から移行した農産物、精肉類、および乳製品の
各区域で、少ない場合でも 8% (農産物区域)、多い場合に
は 15% (乳製品) も生産性が向上しています。
これまで紙のピッキングリストを使用していた乾燥食
品および冷凍食品の各区域でも、生産性が最大 4%向上し
ました。また、バーコードラベルが不要になったことによ
り、直接経費も年間 25 万ドルほど削減されています。
AWG 社では、ピッキング作業員の研修時間についても、
当初予想されていた時間の半分未満という、大幅な短縮に
成功しています。AWG 社は、現在スプリングフィールド
とミズーリの倉庫に音声技術を導入中で、オクラホマシテ
ィの倉庫への導入も予定しています。
(2010 年現在導入
済)
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21 世紀のオーダーピッキング:音声 vs. スキャン技術
音声システムでも、多くのスキャン技術同様、ホストシス
テムとのリアルタイム通信が可能です。すべてのピックが
トラッキングされるため、システム側で在庫を完全に把握
することができます。また、作業員は作業場を離れること
なく通信することができるため、在庫切れや数量不足を即
時に報告し、補充を促すことができます。音声システムの
導入後は、数量不足によってオーダーが未処理になること
はありません。
音声技術による精度の向上は、検品プロセスをすり抜
けてしまったピッキングミスによる返品を大幅に減らし
ます。AWG 社のように、出荷数が多く、取り扱い SKU
数も膨大な企業にとって、返品処理にかかるコストは決し
て無視できません。同社のカンザスシティ倉庫では、音声
システムの導入により返品が半減し、年間 130 万ドル近
いコスト削減が実現されました。
ニューハンプシャー州の
Associated Grocers of New
England 社では、音声技術の採用に
よって返品率が 3/1,000 から
1/1,000 に削減されました。米国
東海岸の大手食料品チェーンである
Price Chopper 社では、音声技術の
導入後、30 日間の返品調整コスト
が 50 万ドルからわずか 1,500 ド
ルに激減しています。また、大手食
料品小売業者である Hannaford
Brothers 社では、音声システムに
よるピッキングで在庫精度が 50%
から 80%に向上し、誤出荷も 3∼
5/1,000 から 0.5∼2/1,000 に低
減しました。
図 2. AWG 社のカンザスシティ倉庫における、音声技術
導入による各種削減効果
生産性:音声システム特有のハンズフリー機能は、導入の
直後から、生産性における大幅な向上を実現します。端末
を操作したり、ラベルを持ち運んだりする必要がなくなり、
オーダーごとの処理時間も削減されます。作業員は、両手
と両目が自由に使えるため、指示を受けた瞬間にピックを
実行することができ、また、より重い商品を持ち上げたり、
複数の商品を同時に持ったりすることもできるようにな
ります。
AWG 社がカンザスシティ倉庫で RF スキャン方式を
採用していた際には、スキャン時に必要となる追加動作が
ピッキングミスを誘発していました。図 2 に示す通り、
音声システムの採用により、数量不足は 11%、ピッキン
グミスは 25%も低下しています。音声システムでピッキ
ングを行う場合、チェックディジットを読み上げるだけで
位置を確認することができ、手を伸ばしてラベルをスキャ
ンする必要がありません。作業員が、端末ではなく作業そ
のものに集中することができるのは、音声システムの最大
の利点です。また、音声システムによって不要な動作が省
かれるため、作業員の集中力そのものも向上します。例え
ばバーコード方式では、作業員は商品バーコードをスキャ
ンした後、ピッキングした数量を端末に入力する必要があ
ります。作業員は、商品ロケーションから目を離し、スキ
ャナに集中しなければならないため、作業をどこまで進め
たか失念しやすくなります。また、間違った数量を入力し
た場合には、在庫情報が不正確になります。音声システム
を使用した場合、常に次の支持が与えられるため、作業員
は集中力や注意力を失うことなく、ピッキング作業そのも
のに専念することができます。
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音声システムが特に威力を発揮するのが、重い不定貫
品を扱っている倉庫です。例えば、AWG 社の精肉類区域
では、パッケージ毎に重量が異なります。スキャニングま
たはラベルによるピッキングでは、作業員はピッキングの
際に商品の重さをスキャナで読み込むか、ピッキングリス
トに書き込む必要があります。これらのデータは、後ほど
事務員に渡され、入力されます。つまり、追加作業が発生
し、人的ミスの可能性も高まるわけです。音声によるピッ
キングでは、作業員は商品の重さを読み上げればいいだけ
なので、そのまま流れを止めることなくピッキングを続け
ることができます。
図 1 に示した通り、AWG 社のカンザスシティ倉庫で
は、音声システムを導入することにより、乾燥食品区域で
の 3%から乳製品区域での 15%に及ぶまで、全体的に生
産性が向上しました。Hannaford Brothers 社でも同様
に、音声システムが当初導入された乳製品において生産性
が 5∼6%向上、その他の分野において 3∼15%の向上
が実現されました。
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21 世紀のオーダーピッキング:音声 vs. スキャン技術
研修/労務:音声技術は、労働力に大きく影響します。運
営が順調な倉庫では、顧客要件を重視しています。ただし、
オーダーのピッキング、入荷、およびその他の処理が正し
く行われるかどうかは作業員次第なのです。
目標
精度
離職率の高い業界からは、音声システムの導入によっ
て従業員満足度が向上したとの報告が寄せられています。
作業員は、最新テクノロジーによる作業内容および作業速
度の柔軟性を歓迎しています。また、音声技術のパーソナ
ライズ機能は、英語が第一言語ではないという作業員が多
い環境にも適しています。これにより、スキャン方式と比
べ、研修が容易になり、作業員はより早く実力を発揮でき
るようになります。また、音声システムの研修は、一般的
なスキャン方式のものよりも短時間で完了します。
スキャニング
作業に集中可
機器に集中可
生産性
両手・両目が自由
手持ち機器
労務
能動的指示
受動的指示
図 3. 音声 vs. スキャン技術
音声:現代に適したピッキング技術
倉庫業務における精度と生産性の向上、および労務費の削
減に努める企業にとって、音声技術が非常に有益であるこ
とは実証済みです。
•
音声ソリューションによって精度と生産性が向
上:作業員は、両手と両目が自由になることと、
能動的な指示により、わずらわしい機器に邪魔さ
れることなく、効率的かつ素早く、また、集中力
を途切れさせることなく、ピッキング作業を遂行
することができます。また、Vocollect 社製品を始
めとする音声システムによって提供されるチェッ
クディジット機能や不定貫対応機能を使用すれば、
ラベルやスキャナを余計に使うことなく、商品の
位置や重量を簡単に確認することもできます。生
産性と精度の向上は、誤出荷率と返品率の低下に
つながり、サプライチェーン全体の効率を向上さ
せます。音声ソリューションを導入した企業の多
くは、テスト導入時には早くもこれらのメリット
を実感しています。
•
音声ソリューションが労務、研修にもたらすメリ
ット:音声技術を導入した企業によって、研修の
成果向上や、ピーク生産力到達時間の短縮が報告
されています。また、音声技術は、多言語環境に
おける言語障壁を取り除きます。音声ソリューシ
ョンを導入することによって離職率が低下した企
業も多く、作業員の習熟度と共に生産性も向上し
続けています。
•
労働集約、大量出荷、多 SKU 業務に最適な音声ソ
リューション:食料品卸業界や小売流通業界では、
ケースピッキングおよびバラピッキングに音声技
術を採用することにより、著しい業務改善を実現
しています。多くの企業では、ピッキング作業だ
けでなく、オーダーピッキングにも音声ソリュー
ションを採用しており、補充、入荷、在庫管理の
分野でも採用が計画されています。
•
音声と RFID の相補的利用:サプライチェーンに
おけるスキャン作業を不要にする RFID は、音声同
様、大変魅力的な技術です。RFID リーダは、固定
型とモバイル型の 2 種類に大別されます。モバイ
ルリーダは、一般的に手持ち端末や車載端末の周
辺機能として提供されます。初期のスキャナがそ
れぞれ 1 種類のバーコードにしか対応していなか
ったように、多くの RFID リーダは、特定の周波数
およびプロトコルにのみ対応しています。業務上、
複数技術の併用が必要となった場合、ウェアラブ
音声方式においては、性能の限界を定めるのは作業員
であって、システムではありません。また、作業員の成績
を毎日数値化することができるため、倉庫管理者は作業評
価の問題を解決しやすくなります。さらに、作業員は割り
当てられた作業の進行スピードを自分自身で調整できる
ため、主体性を持って仕事に取り組むことができるように
なります。
ROI:音声技術を導入した各企業では、他のピッキング技
術による業界水準を大幅に上回る資本回収率を実感して
います。Vocollect 社の製品を導入した場合、通常は 6∼
9 ヶ月で投資を完全に回収することができます。AWG 社
のカンザスシティ倉庫では、投資の回収に 18 ヶ月かかる
と予想していましたが、実際には 9 ヶ月足らずでの回収
に成功しています。
安全性と人間工学:音声のメリットは、ハンズフリー機能
による生産性の向上だけではありません。作業員は、シス
テムと継続的に通信することにより、私語や周辺の雑音に
気を取られることなく、業務に集中することができます。
AWG 社のカンザスシティ倉庫のように、175 名もの作
業員が同時に働く大型施設では、時には 60∼80 人もの
作業員が、パレットジャック等の車両で行き来しながら、
同区域内でピッキングを行います。音声システムは、作業
員に対する邪魔を極力減らし、ピッキング間に集中力が途
切れないようにします。
様々な環境に対応できる柔軟性:音声技術は、対象となる
商品を問わずにピッキング作業を容易にします。防寒具や
手袋が必要となる冷蔵冷凍倉庫において、スキャン方式に
伴う機器操作や書類処理はわずらわしく、困難でもありま
す。ハンズフリーかつワイヤレスの音声システムを使用す
れば、作業員はより重い商品を、より簡単に運べるように
なります。各作業員の音声テンプレートは、実際に作業が
行われる環境で録音されるため、冷蔵冷凍倉庫にありがち
な背景雑音を考慮した調整が行われます。音声端末に採用
されているマイクは両面型で、片面で作業員の声を拾いな
がら、もう片面で周囲のノイズを測定し、通信への影響を
最小限に抑えます。
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音声
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21 世紀のオーダーピッキング:音声 vs. スキャン技術
Tompkins Associates について
ルな音声端末に組み込まれた RFID リーダを使用
することにより、RFID のハンズフリー特性を一層
活かすことができます。作業員は、RFID リーダ一
体型の音声端末で、RFID タグの読み取りを音声で
指示したり、タグに登録された情報を音声として
読み出すことができます。同時に、RFID タグから
読み取った情報を、無線 LAN 経由で WMS システ
ムへ伝送することもできます。
Tompkins Associates 社は、倉庫管理、物流、流通、フ
ルフィルメント、製造、マテハン、運送、在庫管理、およ
び調達を専門とするコンサルティング企業です。弊社では、
ハードウェア、ソフトウェア統合のノウハウを活かし、マ
テハン装置、自動化と制御、WMS、そして訓練された従
業員を組み合わせた、インテリジェント倉庫の実現をお手
伝いしています。DC 設計、倉庫戦略設計、流通機構構築、
運送システム設計、およびサプライチェーン戦略に関して
は、右に出る者はいないと自負しております。
まとめ
自社の倉庫や DC にとって最善なオーダーピッキング手
法の確立は、非常に重要な課題です。一社にとって最適な
ソリューションが、別の一社にとっても最適だとは限りま
せん。ソリューションを評価するにあたっては、事業の現
在および将来のニーズを詳細に分析する必要があります。
精度と生産性の向上、および労務費の削減が目的であれば、
音声技術は有望な選択肢の 1 つです。音声システムを導
入した企業では、99.9%以上の精度や、25%以上の生産
性向上のみならず、離職率の低下や、研修時間の短縮をも
実現しています。そして、最も重要な事実かもしれないの
は、音声ソリューションが通常 1 年以内に 100%の ROI
を達成しているということです。
弊社では、米国ノースキャロライナ州ローリーの本社
に加え、米国各地、英国、およびカナダにも拠点を展開し
ています。
詳しくは、www.tompkinsinc.comをご覧ください。
音声システムは、初出時には目新しさだけが評価され
ることもありましたが、今では倉庫環境において有益性と
耐久性に優れるツールであることが実証されています。生
産性と精度の著しい向上、ピッキングエラーの減少、そし
て最小限の研修時間は、運営コスト削減手段として音声技
術を検討するのに十分な理由です。弊社では、今後より多
くの業界において音声技術の採用が進むと予想しており、
サプライチェーン改善戦略の一環として音声技術の採用
を検討することを、自信を持って推奨いたします。
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TOMPKINS
ASSOCIATES