ITER及びJT-60SAに向けた大電流 負イオンビームの長パルス化

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ITER及びJT-60SAに向けた大電流
負イオンビームの長パルス化の進展
2015/3/4~6
若手科学者によるプラズマ研究会
日本原子力研究開発機構
錦織 良、平塚 淳一、 NB加熱開発グループ
中性粒子入射装置
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Neutral Beam Injection (NBI)=中性粒子入射
1)中性の(重)水素ビームでプラズマを加熱する
2)プラズマ中に電流を流す(電流駆動)
負イオン源の必要性
中性化効率のビームエネルギー依存性
ITER NBI
残留イオン
ダンプ
中性化
セル
加速器
中性化効率 [%]
100
80
負イオンビーム
60
ITER NBI
40
正イオンビーム
20
0
101
102
102
ITER要求
=1 MeV, 16.5 MW, 3600 sec
負イオン源
40 A (200 A/m2)
103
103
D
ビームエネルギー [keV]
中性化効率(1 MeV)
正イオン~0% 負イオン~60%
H
多孔多段加速器による長パルス負イオン源の開発
1.8m
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2.3m
負イオン生成部
多数の孔から
ビーム引出
目標
 500 keV
 130 A/m2
 100 sec
多段加速部
目標
 1 MeV
 200 A/m2
 3600 sec
2m
2m
<JT-60負イオン源>
<MeV級加速器>




 日本が調達するITER用加速器を模擬
 5段の加速器
 高エネルギー、大電流密度
=高パワー密度&長パルス負イオン加速
実機JT-60SA用負イオン源
3段の加速器
1.1×0.45 m2大面積引出領域
大電流&長パルス負イオン生成
JT-60SAやITERの要求を満たす負イオン源の実現を目指し共通課題に向けた開発を実施
共通課題に向けた対策
共通課題
大電流ビームの…
1.高エネルギー化
2. 長パルス化
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耐電圧改善
負イオン源の耐電圧を決める
パラメーターは明らかになってきた
(例:電極孔、電極面積、支持枠の角、
段数支持枠の重ね合わせ…)
→高エネルギー化に向けた見通しは立った
負イオン定常生成
→電極の温度制御
電極熱負荷低減
→ビームの偏向制御
大電流負イオン生成を特徴とする
JT-60負イオン源で開発を実施
高パワー密度の負イオン加速を特徴とする
MeV級加速器で開発を実施
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JT-60負イオン源
電極の温度制御による負イオン定常生成
Cs添加による負イオンの表面生成
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Csノズル
Csノズル
Cs0
JT-60負イオン源
負イオン生成部
アークチャンバー
プラズマ
アークチャンバー
表面生成
0
H+ H
H-
Cs
Cs
H- 表面生成
Cs
H- Beam
プラズマ電極(PG)
Cs
引出電極
加速電極
表面生成
プラズマ中の原子やイオンが電極表面から電子を受け取り負イオン化する過程
生成効率を上げるためにCsを導入、PG表面にCs層を形成
⇒PG表面の仕事関数を下げることで、電子を与えやすくする
電極温度制御の必要性
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従来、断熱したPGを用いて生成
効率が高い温度領域で運転
20
15
10
低 ← 高 → 低
PG温度 [℃]
負イオンの生成効率 [mA/kW]
負イオン生成効率 ⇔ Cs層の厚み ⇔ PG温度
最適領域
従来
生成効率
JT-60SA
負イオン電流値
∝Cs層の厚み
5
パルス幅
0
0
50 100 150 200 250 300 350 400
PG温度 [℃]
運転時間が<30秒だったため、
高い電流値を実現できていた
>30秒では過度な温度上昇による負イオン電流の減少=温度制御が必要
PG温度制御システムの原理実証
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PG温度 [℃]
200℃の高温流体(GALDEN)をPG内部に循環させ、
 負イオン生成に適した高温に加熱
温度を制御できるPGの開発
 プラズマによる入熱を除去
従来型 PG
高温流体を循環
従来型PG
冷却構造なし
6mm
原理実証用PG
電極内部にGALDEN流路
負イオン
電流密度 [A/m2]
原理実証用 PG
パルス幅 [s]
 PGの温度制御に成功
 JT-60SAの要求電流密度である120~130A/m2の100秒維持を実証
GALDEN
温度制御型PGの開発
負イオン
電流値 [A]
0.45 m
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PG温度
チャンバー壁温
負イオン電流値
100 Sec
パルス幅 [s]
PGの温度制御により、大電流負イオンの100秒生成に成功
今後に向けて
壁温上昇に伴い蓄積したCsや不純物が壁から放出して負イオン生成に影響
⇒ 壁温のコントロールはさらなる長パルス(>100 秒)への課題
チャンバー
壁温 [℃]
1080 孔
PG温度 [℃]
新型PGによる大電流負イオンの長時間生成
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MeV級加速器
ビームの偏向制御による電極熱負荷低減
ビーム偏向制御の必要性
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ビーム引出部
負イオン
生成部
ビーム引出部
eN
イーター:
2m
加速電極
フィルター磁場
Bx
フィルター磁場
By
S
PG近傍の電子
PG 密度を下げる
引出
電極
電子抑制磁場
引き出された
電子を除去
電子抑制磁場
X
H- ビーム
(3×5)
1.8 m
負イオンビームは…
• 電子を除去するための磁場により偏向
• ビーム同士の空間電荷により反発
ビームの一部が電極と衝突
↓
熱負荷増大
↓
長パルスに向けて
ビーム偏向制御が必要
ビーム偏向の補正方法
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ビームは電極が作る等電位面に対して垂直の力を受ける
• ビームが偏向した直後
で補正するために直後の偏向補正電極に孔軸変位
• エネルギーが低い領域
フィルター磁場
H-
Y
Bx
PG
H-
引出電極
偏向補正
電極
等電位面
δ=0.5 mm(3Dビーム解析を反映)
補正前
加速後のビームの偏向角 [mrad]
Y
Bx
10
補正前
8
6
4
5 mrad
補正後
2
目標
0
0
200 400 600 800 1000 1200
ビームエネルギー [keV]
補正後
→電界レンズの収差で偏向を補正
偏向補正による5 mradの改善
ビーム偏向制御による長パルス化の進展
補正後
補正前
Y
X
全熱負荷/入射パワー [%]
加速器2.5 m下流のCFC標的に
ビームを照射した際のIR画像
50
補正前
40
100000
2
パワー密度×パルス幅
[MJ/m2]]
density * Pulse duration[MJ/m
Power
←ビーム引出領域
(3×5)
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1 MeV,200 A/m2, 60 s(目標)
10000
683 keV, 100 A/m2, 60
s
1000
100
10
1
2010
882 keV, 130 A/m2, 9 s
980 keV, 185 A/m2, 0.4 s
2011
2012
2013
Year
2014
2015
Year
30
20
10
補正後
0
0
2
4
6
偏向角 [mrad]
8
偏向制御により熱負荷が低減
→高パワー密度負イオンの長パルス化に成功
→冷却性能の改善等により電源限界の60秒まで進展
現目標へ見通しが立ったので、今後更なる長パルスへ
まとめ
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ITER及びJT-60SAに向けた大電流負イオンビームの
長パルス化おいて以下の成果を得た
負イオンの定常生成について
• プラズマ電極(PG)の温度を制御するシステムを開発した
• JT-60負イオン源において15 Aの大電流負イオンの
100秒生成に成功した
負イオンの長時間加速について
• ビームの偏向を補正することで電極の熱負荷を低減した
• MeV級加速器において683 keV、100 A/m2の高パワー密度
負イオンの加速時間を電源限界の60秒まで進展した
得られた成果はJT-60SAやITERの負イオン源の設計に反映