RECAI Renewable Energy Country Attractiveness Index (再生可能エネルギー国別魅力指数) インドの台頭 これまでも野心的な水準であった太陽光発電の目標数値をさらに 5倍 に引き上げるなど、大規模な政策改革を発表したことにより、インドの 再生可能エネルギー市場はここ数カ月間で一躍脚光を浴びています。 Piyush Goyal エネルギー相が、RECAI との独占インタビューに応じ、イ ンドに投資すべき理由と EY 指数のトップの座を獲得するための計画に ついて語っています。 アフリカの電化 サハラ以南のアフリカ地域(サブサハラ)が空前の成長を遂げており、 海外からの投資先としての地位を急速に確立しています。国を超えた地 域としての連携により、同地域固有の課題と機会を理解することの重要 性がかつてないほど増している理由について、パワー・アフリカ・イニ シアティブのコーディネーターを務める Andrew Herscowitz 氏が語っ ています。 明解な法案 長期エネルギー戦略と電力購入インセンティブ制度に関する政治的・ 法的透明性が向上したことにより、インド、フランス、チリ、メキシコ、 ポーランドなどが順位を上げています。また、エジプトは 2年ぶりの トップ 40入りとなりました。 第43号 2015年3月 2015年 3月 編集長の ごあいさつ Renewable Energy Country Attractiveness Index(再生可能エネルギー国別魅力指数) 2 編集長のごあいさつ 3 At a glance ... 4 サマリー 6 特集 : インド : 1,000億米ドルの機会 ? RECAI 編集長 Ben Warren 多様化の勝利への道。原油価格の下落が再生可能エネルギー市場に及ぼ す影響について、さまざまな憶測が新聞紙上をにぎわせています。しかし、原 油価格と再生可能エネルギー市場はトレードオフの関係にあると短絡的に結 び付けたり、短期的な価格変動と長期的な目標を混同して考えるべきではあ りません。多様なエネルギーミックスを通じて安全で低コストのエネルギー を獲得することの重要性を裏付ける経済的、社会的、環境的ファンダメンタル ズがますます顕著になっており、再生可能エネルギーか化石燃料かの二者択 一ではなくなってきています。 多様化とエネルギー安全保障というテーマについては、インドとサブサハラ (サハラ砂漠以南のアフリカ)地域で進行中のエネルギー改革に関する特集記 12 EY 指数 13 日本 15 EY の事業内容 事でも取り上げています。インドの Piyush Goyal 大臣(電力省、石炭省、新エ ネルギー・再生可能エネルギー省の 3省庁を担当)は、RECAI との独占インタ ビューにおいて、再生可能エネルギーとその他のエネルギーが共存すること の重要性について強調しています。また、国内企業に対して競争と支援の健全 なバランスを保ちながら、長期的に最もコスト効率に優れた技術とソリュー ションを特定する必要があるとも述べています。 ey.com/recaiにアクセス さらに Goyal 大臣は、インドが海外の投資家や開発業者にとって魅力的な市 場であるためには、民間企業の関与と広範な改革が不可欠だと指摘していま す。アフリカに焦点を当てた特集記事では、パワー・アフリカ・イニシアティ 編集担当 ブのコーディネーターを務める Andrew Herscowitz 氏が、官民連携を通じて 投資の障害を取り除き、各市場のエネルギーニーズに応じた解決策を講じる Klair White RECAIエディター + 44 161 333 2734 [email protected] Phil Dominy RECAIシニア・アドバイザー + 44 139 228 4499 [email protected] Ben Warren RECAI編集長 + 44 20 7951 6024 [email protected] Matt Rennie RECAIリーダーシップ スポンサー + 61 7 3011 3239 [email protected] ことの必要性について言及しています。 化石燃料か再生可能エネルギーかという古色蒼然(そうぜん)とした議論をい つまでも続けるわけにはいきません。原油価格の下落により、コスト削減を継 続的に推し進め、再生可能エネルギーのより幅広い利点に目を向けることを 迫られているのかもしれません。しかし、原油価格が 1バレル当たり 50米ド ルまで下がり、天然ガスの復活が最盛期を迎えようとしても、風力発電、そし て最近では太陽光発電も助成金に頼ることなく、同等の低コストを達成して います。また、風力と太陽光の発電技術コストは今後数十年でさらに低下する と予測されています。化石燃料のコストも同様に下がり続けるでしょうか ? 重要なのは、連携と透明性を重視し、各市場でエネルギー源の最適なバランス の達成を目指すこと、競争を促進し、需要管理と市場改革を通じて技術革新を 推し進めること、そして、継続的にコストを削減し、再生可能エネルギーと従 来型エネルギーの共存を実現することです。原油価格の一時的な変動に気を 取られることは避けなければなりません。 Ben Warren グローバル・パワー&ユーティリティ担当コーポレート・ファイナンス・リーダー 2 At a glance ... インドは野心的な目標設定と市場改革により、海外からの投資を呼び込んでいます。 一方、サブサハラ地域では、官民が連携して投資の障害を取り除いており、新たな機会が 生まれています。 主な指数変動 インド ()= 前回の順位 フランス 英国 7 (8) 5 (6) 8 (7) チリ 韓国 スウェーデン メキシコ モロッコ フィリピン 11 (12) 12 (11) 20 (21) 23 (24) 27 (28) 32 (34) エジプト 初登場 エネルギー 前提 政策改革 民間の取組み 取引A 障壁X 解決策Y GDP 6億人 電力のない 生活を送る アフリカ人の 数 Power Africa エネルギー相の 独占 インタビュー 信頼で き 購入者 る 10億 サブサハラ地域の 電力業界には 2040年までに 障害の特定と排除 腐敗 Piyush Goyal $ 官民の架け橋 IPP PPA PPA 四半期の展開 $ 15GW 年の 200億 米ドル 東アフリカの 地熱発電 潜在容量 15 25 認識 リスク 保証 54の市場 世界で最も汚染のひどい 都市ワースト ギー エネル 需要 20のうちの13 を占める 格 取価 な買 価 安 1兆2,500億 米ドル の新規投資が必要 インフレ インド の機会? 24/7 インド全体に 常時電力供給 100GW 60GW 2022年までに 25 e a ak di M n In i 1,000億米ドル インド 急上昇 「不調」 な地域 ロシア 失速 サウジアラビア 再び停滞 20年の PPA の太陽光発電所 =22GW エジプト 目覚める メキシコ 計画を策定 投資環境の 改善 超の人口、 中産階級の 増加 「好調」 な地域 再供給 南アフリカ 送電網危機 3 サマリー 本号の概要 連携、競争、資本 最適な投資先 本号の特集では、インドとサブサハラ地 インド初の国際再生可能エネルギー投 域で進行中のエネルギー改革の動向に 資家会議の開催を数週間後に控えたと ついて取り上げます。 ころで、電力省、石炭省、新エネルギー・ 両地域はそれぞれ独自の課題と機会を 抱えていますが、官民連携を通じてプロ ジェクトや投資の障害を特定し排除す ること、そして多額の資本を調達して電 化計画を促進することが共通のテーマ 再生可能エネルギー省の Piyush Goyal 大臣が、インドのエネルギー目標、課題、 そして同国が最適な投資先である理由 について語ってくれました。 ま た Goyal 大 臣 は、2019年 ま で に パワー・アフリカは、同地域でエネル ギープロジェクトを推進する際の障害 を取り除くために積極的に活動してい ます。商業的魅力と持続可能性を備え たクリーンエネルギー投資市場を構築 する上で同プログラムの資本コミット メントと現場取引アドバイザーが果た す役割について、Herscowitz 氏が話し てくれました。 現状認識 となっています。これらの成長市場は、 RECAI ランキングの 1位を獲得するこ 潤沢な資本流入の兆しをすでに示して とを誓った上で、健全な競争、国内サプ います。そのため、投資家や開発業者は ライチェーンの統合、より豊富な燃料供 効果的に競争を進め、市場での存在感を 給、送配電投資の増加などの必要性につ 確立する必要があります。 いて率直に述べてくれました。 また特集記事では、実際のリスクと認識 RE-Invest 2015会議以降の目標につい されているリスクを区別することの重 ては、民間と協力して政府に期待される 要性について、そして確実性と多様性に 役割に関する理解を深めて、業界全体で 富むエネルギー市場を構築して外国企 容量導入と投資を加速することを最優 業を呼び込むために政府が進めるべき 先に挙げています。また、インド政府は 困難な改革について取り上げます。 民主主義、人口動態、需要に重点を置い 基盤の構築 て、エネルギー改革のための強固な基盤 2014年のクリーンエネルギー投資額 を築いています。 が 895億米ドルという記録的水準に達 アフリカの電化 など、好調を見せた中国がトップの座を サブサハラ地域に焦点を当てた特集記 発電目標は未達成に終わったものの、野 現在、世界のエネルギー市場は変動期を 迎えています。世界的な電力大手各社 は、目標の優先順位を定め、ポートフォ リオを見直し、エネルギー改革を生き抜 くための決断を迫られています。それ を証明するかのように、最近は M&A 活 動や企業再編が活発化しています。 し、24GW 近くの風力容量を追加する 事では、同地域を単一の市場と見なすの ではなく、各国固有の課題を把握するこ と、そして官民が協力して共通の障害を 取り除くことの重要性を取り上げてい ます。 パワー・アフリカ・イニシアティブの コーディネーター、Andrew Herscowitz 氏 と、Symbion Power の CEO、Paul Hinks 氏は、独占インタビューにおいて、 実際のリスクを把握し、各種リソースを 活用してそのリスクを軽減することの 重要性について語ってくれました。これ は、政府と国際投資コミュニティに対す る重要なメッセージとなっています。 4 維持しています。14GW という太陽光 心的な 2020年目標を改めて掲げ、分散 型太陽光発電の促進対策を定め、洋上風 力発電への取組みを刷新したことで、今 後 12∼18カ月間のための堅調な基盤 が整いました。 米国では、2016年までに多くの州で太 陽光発電がグリッドパリティ(既存電 力のコストと同等になる)を達成する と予測されています。また、風力発電プ ロジェクト向けの税控除(Production Tax Credit、 「PTC」 )が 1年間更新され、 2014年に遡及的に適用されます。その 結果、すでに回復の兆しを見せている再 生可能エネルギー業界がさらに活性化 すると期待されています。加えて、オバ スウェーデンは順位を一つ上げていま マ大統領による野心的な気候変動対応 す。一方、不透明な政策に長らく悩まさ 計画が政策支援や投資の追い風となっ れてきたポーランドは、現在のグリー ています。ただし、共和党は強く反発し ン証書制度に代わって競争入札を導入 ており、また洋上風力発電の見通しには する新法案に向けて、ようやく一歩前 好悪材料が入り交じっているため、前途 進しました。 は多難です。 アジアの野心 日本は 3位を保っています。太陽光発電 に過度に偏ることを抑制するために、固 「FIT」 ) 定価格買取制度(Feed-In Tariff、 や送電網への接続を厳格化した影響が 市場に浸透しています(13ページの記 英 国 は、新 た に 導 入 し た 差 額 契 約 「 CfD 」) (Contract for Difference 、 制度が、新規プロジェクトへの投資を呼 び込み、開発支出を引き出すためには確 実性に欠けるとの懸念から、8位に下が りました。イタリアでは、新規太陽光発 電プロジェクトが FIT 制度の対象外に なると見られているため、16位に下が 事を参照) 。 りました。 インドは、政策支援の高まりと投資環境 の改善によって投資とプロジェクトが 上昇 活性化していて、5位に上昇しています チリ、メキシコ、モロッコは引き続き順 。 (6ページの特集記事を参照) 一方、 大胆な排出権取引制度 (Emissions 位を上げており、早くも再生可能エネル ギー投資の主要市場となっています。 Trading Scheme、 「ETS」)の縮小を発 チリで開催された電力競争入札にク 表した韓国と、汚職疑惑や送電網関連 リーン・エネルギー・プロジェクトが初 の課題を抱えるタイは順位を下げてい めて参加したことで、同国のプロジェク ます。 トパイプラインがより充実すると考え られています。一方、メキシコでは、新 ヨーロッパのけん引力 本号では、フランスが 7位に、スウェーデ ンが 20位に、ポーランドが 28位に上昇 するなど、ようやくヨーロッパにも前向 きな動きが見られるようになりました。 フランス市場は長らく停滞していまし たが、エネルギー移行法案の進展によっ てようやく一定の確実性が生まれてい ます。また、競争入札の活発化により、 健全なプロジェクトパイプラインも再 び確立しています。 たなエネルギー移行法案が、野心的な再 生可能エネルギー目標を達成するため の詳細なロードマップを定める見込み 一方、エジプトは、2013年 5月以来と なる 2回目のランキング入りを果たし ています。同国は、政情不安によってイ ンフラ投資とプロジェクト活動が低迷 していたため、ランキング外となってい ました。しかし、電力買取制度の確立、 野心的な目標、大規模プロジェクトに 対する需要により、順位を 39位に上げ、 再びランキング入りとなりました。 です。モロッコは、ワルザザートの CSP プロジェクトの進展により、2020年の 容量目標に向けて着実に進んでいます。 大国の動き サウジアラビアは 37位に、ロシアは 40 位に順位を下げています。いずれも野 心的な目標を掲げ、リソースが豊富で魅 力的で大規模な市場ではあるものの、再 脱原発を進めて 100% の再生可能エネ 生可能エネルギーの導入を促進する対 ルギー発電を目指す新計画を発表した 策に欠けています。 5 インド 1,000億米ドルの 機会? インド初のグローバル再生可能 インドは現在 RECAI で 5 位 エネルギー会議に先立って行わ にランキングされています。 れた独占インタビューにおいて、 1 位になる方法とその時期に 電力省、石炭省、新エネルギー・ ついてお聞かせください。 再生可能エネルギー省の Piyush 2019年までに 1位になるつもりです。そのた Goyal 大 臣 は、RECAI エ デ ィ くれたのです。このようなメーカーは世界中ど こを探してもいないでしょう。インドの太陽光 機器メーカーは、 「Make In India」キャンペー ンのために要請を撤回してくれました。これに より、太陽光発電の導入目標に向けて勢いがつ めの明確かつ実現可能な計画を整備しており、 くと考えています。 タ ー Klair White と EY イ ン ド 実践的なアイデアを現場で導入しています。 さらに、太陽光発電の電力購入者として、豊富 担当再生可能エネルギー・アド インドには 2022年までに 20GW の太陽光電 な資金力を持つ企業が控えています。透明性 バ イ ザ リ ー・ リ ー ダ ー Rupesh Agarwal に対して、自身の課題、 目標、そして RECAI ランキング について語ってくれました。 力を導入するという目標がありましたが、それ を 100GW に引き上げました。個人的にはこれ を 2020年までに達成することを目指してい ます。大きな障害となっていたのが、太陽光機 器に対する反ダンピング税でした。そこで、 「イ ンド政府は国際的な枠組みの中で可能なあら ゆる措置を講じて太陽光機器メーカーと業界 を確保した入札プロセスを通じて、AAA 格付 けの企業が電力購入者となります。その結果、 透明性が実現するだけでなく、プロジェクト中 止のリスクも軽減されるため、出資する銀行に とっても、投資家にとっても安心です。また、 訴訟の取下げ、裁判所が判決を下すまでの期間 の短縮、ビジネスプロセスの大幅な簡素化を通 を支援する。しかし、世界最高水準の技術を活 じて、システム全体の透明性を向上させます。 用して、大規模な太陽光発電を導入し、市場を 100GW の導入目標の一環として、屋上太陽光 拡大することが、国内メーカーの最善の利益に なる」と、国内メーカーに説明して、理解を得 ることができました。その結果、メーカー各社 は、反ダンピング税の要請を撤回し、政府の取 組みを支持してくれるようになりました。こ れは一つの前例となります。 2014年 5月 22日、つまりナレンドラ・モディ 首相が就任する 4日前、商工省は米国や中国な どに対して反ダンピング税を課す決定を下し 6 恩恵を受けることを辞退し、競争の中で優れた 技術力を養うことが国益にかなうと認識して 発電にも注力しており、40GW 前後を目指して います。これについては、土地や送電関連の課 題を最小限に抑えることができ、消費者向けの kWh ベースのコスト競争力をすでに獲得して います。また、全国 19カ所で 20GW∼25GW の大規模太陽光発電所を建設中です。収益力 の高い複数の企業が、太陽光発電に参入する財 務上の利点に注目しています。今後 5年間で、 再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電に、 ていました。しかし国内メーカーは、自分たち 1,000億米ドルを投資していくことになると に有利な判決を下されたにもかかわらず、その 確信しています。 太陽光発電以外についても お聞かせください。 2012年にいくつかの優遇措置が打ち切られた ため、風力発電はほとんど停滞しかけていまし た。2014年予算ではまずこの対応に着手し、 2014年 7月 10日に風力発電プロジェクト向 けの加速償却制度を再導入しました。 また、太陽光と風力の両発電分野において、国 内製造の経済性を損ね、 「Make In India」精神 に悪影響を与えていた複数の輸入税を予算案 で修正しました。今後の予算案においても、さ らに修正していく可能性があります。 技術コストの低下が過度な低 価格入札につながり、プロ ジェクトの実現性が損なわれ るとの懸念から、競争入札か ら固定買取価格への移行を 求める声が上がっている点に ついてはどのようにお考えで しょうか ? それは、業界内の特定の業者が FIT を利用した いがために行っている非常に説得力に欠ける 主張です。FIT にも問題があります。例えば、 さらに、廃熱利用にも取り組んでいますが、現 ソーラーパネルの価格はメガワット当たり 在はまだ計画を策定している段階です。コスト 100万∼200万米ドルと非常に広範囲に及び を下げることができれば、蓄電システムは画期 ます。そのような市場において、どのように買 的な存在になるでしょう。これについては、現 取価格を決定すればいいのか ? 機器の品質、 在 6つのプロジェクトを同時に進めています。 出力の品質、公正な価格などをどのように評価 その中の一つが、IIT Jodhpur と共同で実施し すればいいのか ? それらを決定するのは必ず ている太陽熱プロジェクトです。この太陽熱プ しも政府の役割ではありません。また、FIT を ロジェクトは、東側の特別州や境界州など、送 導入すれば、事業コストが地域ごとに異なる点 電網の導入が困難な遠隔地に最適なソリュー が問題となります。従って、競争原理に従うの ションとなる可能性があります。オフグリッド が最良の方法だと考えています。入札の最終的 やマイクログリッドの課題を解決していくこ な責任は各企業にあること、そして競争入札が とはできますが、そのためにも太陽熱発電が重 最も公平な方法であることを企業も理解して 要な役割を果たすことになります。 くれるはずです。プロジェクトの実現性を損な 2019年までに国内のすべての家庭・企業・産 業に電力を常時供給できるよう、太陽光、風力、 水力、廃熱利用などのさまざまな併用発電を うほどの低価格で入札するような無分別な企 業が出てきたとしても、そのリスクとコストは その企業自体が負担することになるのです。 検討しています。これが、我々が発表している ミッションであり、インド国民との約束です。 2022 年までに 200GW 近く の再生可能エネルギー容量を 導入するという目標は野心的 すぎるとの声もあります。本 当に達成できるのでしょうか ? エネルギー消費量全体に占める再生可能エネ ルギーの割合という観点から目標を捉えてい ます。現在、年間発電量 1兆 kW のうち、再生可 能エネルギーは 550∼600億 kW です。これを 約 15% に引き上げることが目標です。今後 5年 間でエネルギー消費量は 1兆 kW から 2兆 kW に 増 加 し ま す。2兆 kW の 15% と い う こ と は 3,000億 kW です。つまり、今後 5∼6年間で 5 倍増を目指す必要があります。確かに野心的な 目標ではありますが、モディ首相は野心的な目 標、スケジュールの厳守、誠実な実行を信念と する人です。従って私も目標の達成には自信を 持っています。 大規模な「Make In India」 キャンペーンが大きな話題と なっていますが、再生可能エ ネルギー業界の国内サプライ チェーンをどのように構築す る予定なのか、具体的にお聞 かせください。 数字で見るインドの 再生可能エネルギー目標 1,000 億米ドル 今後5年間の再生可能 エネルギー投資額 100GW 2022年までの太陽光容量 (2014年末=3.3GW) 60GW 2022年までの風力容量 (2014年末=22GW) 500億米ドル 送配電への投資額 す。これは国際的な枠組みにおいても許容され た方法です。このような各種措置を通じて発注 の流れの可視性を高めることができ、国内メー カーを最初の数年だけ後押しすればその後は軌 道に乗ると期待しています。2年後に再びこの インタビューを行うことになれば、今度は逆に 海外サプライヤーに対する特別扱いや優遇が必 現在は太陽光発電に必要なコンポーネントの 要なのではないかという話にきっとなっている 製造に多くの関心が集まっています。風力に関 でしょう。 してはすでに国内製造が盛んですが、太陽光に 関してはサプライチェーンが整備されていな いことが問題でした。そのため、国内で製造を 行う数少ないメーカーは輸入コンポーネント に頼るしかありません。海外サプライヤーによ る差別価格戦略も国内メーカーを苦しめてい ます。 そこで、下流の統合を奨励して、国内のサプラ イチェーンを拡大しています。政府、例えば国 防省が、太陽光発電を購入する場合は、国内メー カーを優遇することで下流の統合を促していま 7 これだけ野心的な目標を達成 するためには多額の資本が必 要になります。国内に資本を 呼び込むことに成功していま すか ? 現在の国際投資環境においては、投資先が非常 に限られています。世界を見渡しても著しく成 長している地域はありません。中国を見ても、 すでに一定水準の繁栄を達成しています。賃 金も上昇したため、中国で製造を行う経済上の メリットも低下しています。中国は太陽光機 器製造産業に多額の投資を行いましたが、その 投資を最大限活用できているとは思いません。 一方、インドの市場はまだ初期段階にありま す。政府は現在、 利益性の高い買電契約(Power Purchase Agreement、 「PPA」 )を提供してい ます。また、屋上太陽光発電にも注力しており、 公共機関による大規模な買取も増えています。 加えて、経済的利益とエネルギー安全保障を確 保するために、数多くのインド企業がこの分野 に参入しています。これらの点を考慮すると、 資本不足を心配する必要はないと確信してい ます。インドの再生可能エネルギー業界に投資 する経済的合理性が非常に高くなっているた めです。 これは私自身、さまざまな形で実感している こ と で す。2月 15日 に 開 催 さ れ る RE-Invest 2015会 議 * で は、イ ン ド の 再 生 可 能 エ ネ ル ギーへの投資を検討している組織から確約を 得ることになるでしょう。実際、国内外の組織 から約 8万 4,000MW 分の確約をすでに得て います。現在の悩みは、RE-Invest 会議への参 加を希望する国、開発業者、投資家の数があま りに多いことです。セッションの数には限りが あるため、すべての希望者を参加させるわけに はいきません。会議に参加して、再生可能エネ ルギーにおいて自分たちが取組んでいること についてプレゼンをする機会を与えてほしい と、世界中の政府高官や企業代表者から電話が 殺到しています。多くの国がそれだけの関心 をインドに寄せているのです。インドは現在、 多くの注目を集めており、最適な投資先となっ ています。これだけの経済的信頼感を呼び起 こす指導者は、ナレンドラ・モディの他にはい ません。 インドが最適な投資先である というメッセージを発信する ことの他に、RE-Invest 2015 会議ではどのようなこと を達成したいとお考えですか ? インドが抱える課題、障害を取り除くために採 用すべき方法論、投資家が求める国家レベルの 取組み、最高水準の技術、太陽光発電所の運営 方法、風力発電業界の継続的な支援方法など について学びたいと考えています。インドに は現在、数千の風力プロジェクトがあります。 2MW、または場合によっては 5MW までアップ グレードすることも可能です。そのため、土地 の確保に悩まされることもありません。既存の 風車を大容量タービンに交換するだけで、風力 発電量を 3倍、または 10倍に増やすことも可能 です。 この分野については学ぶべきことがたくさん あります。そして、RE-Invest 2015は再生可能 エネルギー業界のすべての利害関係者が一堂 に会する絶好の機会となります。モディ首相は RE-Invest 2015を 2月 15日 * に開催すること に合意しました。この会議では、グジャラート 州、マハラシュトラ州、ラジャスタン州、タミル ナドゥ州など、再生可能エネルギーに重点的に 取り組む各州との分科会セッションを実施し ます。さらに、風力、太陽光、廃棄物、バイオエ ネルギー、水力の各分野の利害関係者とのセッ ションも開催し、より良い方法を求めて情報収 集を行います。 大臣は 5 年以内に国内での ディーゼル発電機の使用を廃 止すると宣言されていますが、 廃止の妨げとなる障害をいく つか挙げるとすると何でしょ うか ? また、それらを克服で きるでしょうか ? 5月 30日に激しい嵐が起き、デリーでは電力イ ンフラが重度の機能停止に陥りました。送配電 網は、あらゆるエネルギープログラムにおいて 成功の鍵になると実感しました。 従って現在は送配電網の整備に非常に力を入 れており、今後 5年間で 500億米ドル近くの資 金を投じることになります。そのうちのおよそ 180億米ドルを投じて政府出資プログラムを 実施し、州による配電フィーダーの分離支援、 屋上太陽光発電またはその他のオフグリッド・ マイクログリッドソリューションの促進、サブ 送配電網の強化、変圧器の刷新および消耗した 変圧器の交換、可能なすべての都市での地下配 線の敷設を行います。これらはいずれも何年も 前にやっておかなければならなかったことで す。従って、今後 2∼3年は送配電網に注力し て、電力の損失や盗電を削減します。 同時に、燃料の国内製造を大幅に増やすこと、 または少なくとも燃料供給を短期的にでも増 やすことで、インドのエネルギー安全保障を強 最大の課題はもちろん送配電網です。電力を途 化する必要があります。この分野についても政 切れることなく全国に送電できるよう、需要が 府はすでに積極的に動いています。最高裁判所 大幅に拡大する前に十分な資金を国内送電網 は、長年にわたって適切に活用されてこなかっ に投資する必要がありました。このことは私が た 204の石炭鉱区を取り消しました。石炭鉱区 * インタビューは 2015年 1月 19日に実施 8 大臣に就任してすぐに把握しました。2014年 重視し、責任を全うする、決断力に優れたリー ダーシップがあります。このようなことに加 え、より高い生活水準を求める 10億の人々と 向上心あふれる 5億人超の中産階級という人口 動態を踏まえると、他にはない大きな電力需要 が生まれます。 インドは環境に対する責任、とりわけ二酸化炭 素排出量に対する懸念も認識しています。再生 可能エネルギーに注力するこの新たな取組み は、誠実な信念に基づくものです。モディ首相 には信頼に値するリーダーシップがあります。 そして政府が現在作成している枠組みには利 益性があります。 従って、インドはあらゆる投資家が求める三つ の重要な要素を備えています。現在、インド以 上に優れた、または安全なビジネス機会は世界 中のどこを探しても見つからないと思います。 投資家にはぜひ、発展途上国から先進国へと変 わりつつあるインドに投資し、利益を上げてほ しいと考えています。その過程に携わってくれ る方なら誰でも歓迎です。 が適切に利用されることで、国営の Coal India Ltd. が今後 5年で石炭製造を倍増できるよう、 厳密なスケジュールや期限を設けて積極的に 動いてきました。 加えて、さまざまな理由により中断していたプ ロジェクトをすべて整理しています。具体的に は、大規模・小規模水力プロジェクト、そして Rupesh Agarwal 再生可能エネルギー・ アドバイザリー・リーダー ̶ インド + 91 98117 93990 [email protected] 燃料供給不足を理由に中断している一部のガ ス・石炭発電所です。特にガスはエネルギー効 率に優れた電力源としてだけでなく、ピーク時 の負荷に対応するための運転予備力としても 非常に高い価値を有しており、送電網の周波数 を改善して安定性を確保することができます。 なぜインドなのでしょうか ? そしてなぜ今なのでしょうか ? モディ首相の最近の発言にもあった通り、イン 、つまり、Democracy(民 ドが現在、三つの「D」 ・Demand 主主義) ・Demography(人口動態) (需要)を提供できているからだと思います。 インドには民主的な法治国家としての安心感 があります。正直で誠実な国家運営を行う政権 があります。そして、口先だけの約束や書類作 りに終始することなく、迅速に行動し、結果を 9 インド: 可能性に満ちた世界? エディターの視点 野心的な再生可能エネルギー目標、同国初の ることができるのかについて議論が繰り広げら グローバル再生可能エネルギー投資家会議、 れています。しかし、より大きな経済的・政治 注目度の高いバラク・オバマ米国大統領の訪 的文脈の中で評価することも重要です。例えば、 問、そして国際気候変動会議に関するさまざ 政府は、ガバナンスと透明性の向上、インフレ まな憶測により、ここ数カ月間、インドのエ の抑制、海外投資の促進、 「Make In India」キャ ネルギー業界に注目が集まっているのは間違 ンペーンによる国内製造の活性化などを通じ いありません。RE-Invest 2015会議の数週 て、国内ビジネス環境の整備に注力しています。 間前にデリーを訪れた私は、インドのエネル これらの措置により、プロジェクト開発や投資 ギー環境を一変させ、現政府の功績を左右す 関連の障害が取り除かれ、再生可能エネルギー る可能性のある状況を、世界中のメディアが 業界が直接活性化するだけでなく、他の業界で さまざまなデータを駆使して報じる中で、そ も富や雇用が創出され、さらなるエネルギー の熱気を直接体験することができました。 需要が生まれます。また、国内石炭製造の倍 インタビュー 2019年 ま で に デ ィ ー ゼ ル 発 電 機 を 廃 止 し、全国規 模の 常時電 力 供給 を 実現 す る。 増計画も重要なインフラ投資(石炭輸送 <fuel linkage>)を改善するための推定 10億米ドル の鉄道拡張投資など)の引き金になります。 優先順位 2月の訪問では好意 的な印象を受けたも のの、2015年後半に パリで開催される気 Klair White RECAI エディター 候変動会議(Cop21) の前に、インドが拘束力のある排出削減目標 を設定する可能性は低いと考えています。モ ディ首相はすでに環境目標を達成するために 経済成長を犠牲にすることはないと明言して おり、排出削減目標を設定する代わりに、再 生可能エネルギー容量を拡大して、汚染につ ながる化石燃料を削減することを優先してい ます。これが最終的に狙い通りの結果を生み 出すことになれば、誰もモディ首相の判断を 2022年までに 1,000億米ドル超を投じて、 国際的な関心 責めることはできないでしょう。それでも、 100GW の太陽光発電と 60GW の風力発電 英国メガソーラー投資会社の SunEdison は 1 を導入する。これらの目標を言い表すには野 月、インドの Adani Enterprises 社と協力して して排出削減目標を設定するよう求める圧力 心的という言葉では不十分かもしれません。 ソーラーパネル工場に 40億米ドルを投資する しかし、Goyal 大臣とのインタビューを終え と発表しました。これは、インドの再生可能エ て明らかになったのは、インド政府が国内外 ネルギーに対する期待がすでに成果となって表 のエネルギー業界や投資家コミュニティとの れていることを示しています。 やり取りを通じて、目標達成の障害とそれを 取り除くための有効な手段について理解を深 めることに本腰を入れて取り組んでいるとい うことです。 大局的な視野 オバマ大統領のデリー訪問も、国際社会がイン 気候変動会議が近づくにつれて、インドに対 は続くでしょう。 期待 こ こ で 再 び、1,000億 米 ド ル の 投 資 に 話 を戻します。わずか 8年で本当にインドは 200GW 近くの再生可能エネルギー容量を導 ドの成長に高い関心を持っていることの表れと 入できるのでしょうか ? インドの現状やビ いえるかもしれません。オバマ大統領は、イン ジネス慣習を踏まえると、かなりの難題であ ドの野心的な太陽光プログラムへの財政支援 ることは間違いありません。しかし、Goyal (再生可能エネルギープロジェクトへの米国貿 大臣とのインタビューを終えて、活気にあふ 易開発庁による 20億米ドルの支援など)に加 れた、スモッグの多いデリーの街に足を踏み 上述の野心的な目標により、インドの再生可 え、空気汚染問題への対応についても、モディ 能エネルギー業界がそれだけの急成長を遂げ 出した際、私は希望を感じずにはいられませ 首相への協力を約束しました。 んでした。投資を呼び込んで、インドのエネ ルギー業界に、そして国民の生活に変革をも たらすための、この新政府の誠意・熱意・確 固たる自信には大いに感銘を受けました。 政府が障害を特定して、それらを速やかに取 り除いてくれる。投資家が実際のリスクと知 覚されるリスクを慎重に区別してくれる。電 化が進めば自己強化型の成長サイクルが実現 することに気づき、エネルギー業界が協力し て強固なプロジェクトパイプラインを構築し てくれる。現在電力のない生活を送る何百万 人ものインド国民と、向上心にあふれる中産 階級に、再生可能エネルギーの未来が待ち受 けている。こういったことが現実になること を期待しましょう。 そのような世界では、あらゆることが可能な のです。 10 最新のGDP予測、海外直接投資、そしてEYの魅力度調査: インド2014年報告書からの抜粋によると、 インドのビジネス環境および投資環境は改善している。 EYの魅力度調査: インド2014年報告書のダウンロードや、同地域に関するEYのその他 のビジネスレポートにアクセスするには、emergingmarket.ey.comをご覧ください。 強み 課題 • 現地の労働コスト • 国内市場 • ビジネスおよび経営に関する教育 • スキルを有するサービス人員 • 現地の労働スキル • 電気通信インフラ • 輸送・物流インフラ 51.2% バンガロール 37.8% ニューデリー/NCR 37.4% チェンナイ 14.6% プネー 13.1% チャンディーガル 10.7% 8.0% 377 インド 348 360 343 4.0% 3.0% 米国 2.0% ブラジル 1.0% - 2013 2014 2015e 日本 2016e 2017e 2018e 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 出典: 世界経済見通し、IMF、2014年9月 0.7% まったく そう思わない 思う ケニア 5.0% 10.2% そう思わない 21.4% 強くそう思う 466 中国 7.0% 製造業に対する期待 インドは技術的に高度な製造業に移行していると思いますか? 60% そう思う インドにおける海外直接投資の年間合計額 (億米ドル単位) 国レベルの実質GDP成長率 (年間) • 事業容易性 • 労働法の柔軟性 調査回答の割合 ムンバイ • 法人税 インド 認識 最も魅力度の高い都市 6.0% • 法的・行政的環境 7.7% 思わない どちらとも いえない インドでの予定投資 インドで予定しているビジネスは何ですか? インド市場向けの製造業とサービス業 42.5% グローバル市場向けの製造業 30.8% 営業所 14.8% 本社 5.0% 研究所・設計施設 5.0% オフショアリングとアウトソーシング 4.4% 倉庫と物流センター 3.4% 教育とトレーニング 1.6% その他 2.1% 未回答 13.0% 出典: インド産業政策推進局 インドにおける今後の海外直接投資分野 今後2年間でインドに最も多くの海外投資を呼び込むことになると思う ビジネス分野はどれですか? テクノロジー・ メディア・電気通信 29.9% インフラ インドの投資環境を改善するための優先対策 インフラ開発 42.0% 効果的な法の支配 11.3% 42.0% 官僚主義の解消 31.8% 工業 11.2% ビジネス規制の透明性の強化 18.6% 小売 8.6% 規制ポリシーの一貫性の向上 11.0% 自動車 8.4% 企業の法的・財政的負担の軽減 ライフサイエンス 4.7% 土地買収と利用権取得の緩和 ビジネスサービス 3.8% 労働法の改善 12.2% 消費財 3.3% 労働スキルの改善 11.6% 金融サービス 2.6% 資本へのアクセスの促進 エネルギー 2.0% 金属鉱業 1.8% 物流 1.1% 11.3% その他 2005∼2014年のインドにおける代替・再生可能エネルギーに 対する海外直接投資 (百万米ドル単位) 年別 投資元別 投資先別 156 米国 2,924 グジャラート 1,027 2006 831 英国 934 カルナータカ 938 2007 728 フランス 644 タミルナドゥ 825 2008 802 スペイン 630 デリー 622 439 マハラシュトラ 583 372 ラジャスタン 461 2009 1,564 ドイツ 867 デンマーク 2011 1,234 香港 244 アンドラプラデーシュ 562 ベルギー 239 ヒマーチャルプラデーシュ 2013 174 韓国 200 ウッタラーカンド 2014 484 その他 776 その他/未回答 1,927 合計 7,401 7,401 合計 7,401 出典: fDi Markets、 2014年12月 9.9% 製造要素の高度化 8.0% 税制全体の改善 21.8% 海外直接投資の制限の緩和 12.8% 研究開発と技術革新の促進 9.7% なし 5.4% 2020年のインド Rajiv Memani 28.6% EYインド ̶ 理事長 + 91 124 6714111 [email protected] トップ3の経済成長国 418 2012 合計 8.7% 「インドは2020年にはどうなっていると 思いますか?」に対する回答の割合 2005 2010 ビジネス環境の強化 400 200 23.6% トップ3の製造業国 5.2% より勢いのある国に 追い抜かれている 別段の記載がない限り、データはEYの魅力度調査: インド2014年報告書から出典。 11 EY指数 2015年3月時点のRECAIスコアおよびランキング 技術要因 順位 前回の 順位 スコア 陸上風力 洋上風力 太陽光 集光型 太陽光 バイオマス 地熱 水力 水力および 海洋エネルギー 16 1 (1) 中国 75.6 1 2 1 3 1 13 1 2 (2) 米国 73.3 2 8 2 1 2 1 3 9 3 (3) ドイツ 66.3 3 3 4 27* 8 8 10 27 4 (4) 日本 64.5 13 9 3 27* 3 3 4 10 5 (6) インド 62.1 6 17 5 5 15 14 6 11 6 (5) カナダ 59.8 4 11 12 23 13 18 5 6 7 (8) フランス 58.9 9 7 8 27* 9 15 15 5 8 (7) 英国 58.5 8 1 10 27* 5 19 24 2 9 (9) ブラジル 56.7 5 25 11 9 4 32 2 24 10 (10) オーストラリア 56.0 18 18 7 6 20 11 25 12 11 (12) チリ 55.3 26 22 6 2 21 10 17 14 12 (11) 韓国 55.0 23 12 13 24 12 28 16 3 13 (13) オランダ 54.0 12 5 23 27* 10 24 32 30 14 (14) ベルギー 53.9 25 4 17 27* 11 21 29 31* 15 (16) 南アフリカ 53.2 19 28 9 4 33 35* 18 19 16 (15) イタリア 51.9 24 21 15 11 14 7 14 23 17 (17) デンマーク 51.8 14 6 29 27* 16 35* 36 17 18 (19) トルコ 51.5 11 24 28 14 34 6 9 20 19 (18) ポルトガル 51.1 22 20 25 18 24 17 20 7 20 (21) スウェーデン 51.0 10 13 35 27* 7 26 12 13 29 21 (20) タイ 50.1 31 39 14 25 17 29 35 22 (24) メキシコ 49.9 17 30 19 19 31 9 30 21 23 (23) 台湾 49.2 29 16 16 22 25 20 21 26 24 (22) スペイン 49.1 28 26 20 10 27 34 34 15 31* 25 (25) オーストリア 48.0 21 39 26 26 18 22 13 26 (26) ペルー 47.9 37 27 22 16 29 12 7 31* 27 (28) モロッコ 47.2 27 34 21 7 38 35* 39 31* 28 (29) ポーランド 46.9 20 19 34 27* 19 16 23 31* 29 (27) イスラエル 45.8 39 37 18 8 37 35* 28 22 30 (31) アイルランド 45.7 7 14 40 27* 22 33 31 1 31 (30) ノルウェー 45.6 16 15 38 27* 28 27 8 8 32 (34) フィリピン 45.4 33 29 30 21 26 5 19 4 31* 33 (33) ギリシャ 45.1 34 35 27 15 35 23 38 34 (36) ケニア 44.8 32 33 32 17 30 4 26 28 35 (32) ルーマニア 44.5 30 31 33 27* 32 25 27 31* 36 (37) フィンランド 44.3 15 10 39 27* 6 35* 33 31* 31* 37 (35) サウジアラビア 43.8 36 38 24 12 39 30 40 38 (39) インドネシア 41.8 40 32 31 20 23 2 11 18 39 n/a エジプト 40.4 35 36 36 13 40 35* 37 31* 40 (38) ロシア 40.1 38 23 37 27* 36 31 22 25 *同順位 12 国 RECAI 日本 ハイライト •• 電力会社が送電網接続への受入れを一時停止したこと で、送電網接続と FIT 制度が改正される。 •• また、再生可能エネルギー助成金の見直しにより、太陽 光プロジェクト向け FIT は削減される公算が大きい。 •• 原発推進派の首相が再選したのに加え、2013年度の 燃料コストが 3.8兆円以上増加したことで、原発回帰 の可能性が高まる。 •• 大規模太陽光発電のための土地が限られているため、 洋上風力プロジェクトや土地活用関連の技術革新に注 目が集まる。 保留。2014年後半、国内の主要電力会社 5社が、新規太陽 光プロジェクトによる送電網への接続受入れを一時停止し たことで、FIT 制度と送電網接続の制御を改革するための一 連の措置が講じられています。電力会社は申請の多さに対応 しきれていません。2012年に有利な FIT が導入されて以来、 72GW を超える再生可能エネルギー容量が承認されてきまし た。しかし、プロジェクトの多くはいまだに発電を開始して いません。 主導権。これに対応するため、経済産業省は、電力会社が主 導権を握れるように出力制御ルールを改正しました。例えば、 再生可能エネルギー供給業者が開始日に間に合わなかった場 合や契約締結から 1カ月以内に接続工事費が入金されなかっ た場合、電力会社は業者の送電網への接続枠を解除できます。 •• 日本最大の太陽光プロジェクトの資金調達が完了した また、供給が需要を上回った場合、電力会社は年間最大 30日 ことは、長期ノンリコース融資に対する意欲の高まり まで、補償を支払うことなく、再生可能エネルギー電力の購入 を示唆している。 を停止または削減できます。これは、以前は 500kW 超のプロ ジェクトにのみ適用される規則でした。さらに、供給と需要を より正確に反映するため、無補償条項の最大期間は日単位で 現地オフィスの連絡先 谷山 邦彦 [email protected] 沢味 健司 [email protected] はなく、時間単位で計算されます。開発業者は遠隔制御システ ムを設置して、出力を終日調整する必要があります。 一方、FIT の資格基準に関する規則も変更されました。開発業 者は、単に接続を申請するのではなく、送電網接続契約を事前 に締結しなければなりません。また、プロジェクト承認後は、 太陽光発電所の建設で使用するコンポーネントを自由に変更 することができなくなりました。 FIT の失速。これらの措置に加え、FIT 価格も現在見直され ており、2015年 4月 1日から新価格が適用されます。太陽光 発電向け FIT は、制度導入以来、毎年下落が続いています。ブ ルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスの推定による と、運営コストと保守コストの低下を受けて、FIT 価格は最大 18% 下落する可能性があります。 13 ランキング (抜粋) RECAI合計 第43号 第42号 4 4 10 陸上風力 13 洋上風力 9 9 太陽光 3 3 27* 27* 集光型太陽熱 バイオマス 3 2 地熱 3 3 水力 4 4 海洋 10 12 長期的視野。日本政府は現在の法律に基づいて、少なくと 浮体式太陽光発電は国内だけでも 38.8GW 規模に発展する可能性が あります。 規制上の課題。日本の風力発電は大きな潜在能力を秘 も 3年ごとに FIT 制度の審査を行い、2021年 3月までに全面 め て い る も の の、環 境 影 響 評 価(Environmental Impact 見直しを行う必要があります。そのため、審査委員会は FIT Assessment、 「EIA」 )が長期にわたることや国際標準を上 助成金の廃止または段階的廃止の方法を議論するのではな 回る厳格な技術仕様(台風や雷に対する保護など)が課題と いかとの憶測も出ています。しかし、出力制御ルールの厳格 なっています。日本風力発電協会によると、2014年に設置 性や FIT 制度の不透明性が高まれば、短期的に投資家の信頼 された陸上風力発電容量はわずか 150MW にとどまってお を失います。また、業界基盤の強化と安定した供給のために り、88のプロジェクト(合計およそ 6.2GW)が EIA のプロセ は、 (申請後の不稼働)施設の合理化や実行不可能なプロジェ 。 スにとどまっています(2013年 10月時点) クトの排除が必要不可欠となります。すでに中国との競争 に苦しんでいる日本の太陽光機器業界への影響を考えると、 FIT が極端に削減される可能性は低いでしょう。また、新し い削減規則が遡及的に適用されることはなく、太陽光以外の 発電による FIT が変更されることもないでしょう。 方針の設定。2014年 12月の選挙で安倍晋三首相が再選 を果たしたことで、全体的なエネルギー戦略の先行きが不 透明になっています。安倍首相は安全性の確保を条件とし た原発推進派です。また日本政府の試算によると、各地域の 電力会社が 2013年度に支払った燃料コストは、2010年度 創造性。それでも、山がちで人口密度が高いことから、日本 と比較して 3兆 6,000億円増加しています。これは輸入に には利用可能な土地が限られています。そのため、さらなる 依存する LNG の高いコストが原因です。その結果、反原発 大規模太陽光アレイが開発される可能性は低く、屋上太陽光 の世論を押し切り、原発再稼働の気運が高まる可能性も考 や汚染地活用に注目が集まっています。最近の政府調査によ えられます。 ると、埋立地を活用することで約 7.4GW の太陽光容量を設 置できることが明らかになっています。そして現在、そのよ うなプロジェクトに対して、より有利な助成金を提供するこ とが検討されています。浮体式太陽光発電も話題となってお り、2014年 9月には世界最大となる 2.9MW の施設の建設が 開始されました。同プロジェクトを支援する京セラと東京セ ンチュリーリースによると、浮体式太陽光発電は国内だけで も 38.8GW 規模に発展する可能性があります。 洋上風力の勢い。利用可能な土地が限られている日本 では洋上風力業界に注目が集まっています。2014年に有利 な FIT が導入されたことでその傾向がより顕著になっていま す。現在 11カ所で推定 900MW の着床式洋上風力容量が開 発中となっています。ソフトバンクは、日本初の商業規模洋 上プロジェクトとなる 100MW の風力発電所(鹿島)の建設 を予定しています。また、日立造船をはじめとするコンソー シアムが約 1,000億円を投じて、新潟県沖に 220MW の風力 発電所を建設することが発表されたことも追い風となりそ うです。一方、冬の過酷な気象条件と追加試験のため、福島プ ロジェクト(1GW)の一環である三菱の SeaAngel 洋上風車 (7MW)の設置が再び延期となっています。 一方、日本政府の再生可能エネルギー方針も依然として曖昧 です。2014年に発表された国家エネルギー計画では、具体 的な技術目標を設定することなく、以前の目標(水力を含む 再生可能エネルギーの割合を 2020年までに 20% とする)を 上回ることを目指すと述べるにとどまっています。また、安 倍首相が党内の反対を押し切って、待望のエネルギー市場の 自由化を促進できるかどうかも現時点では不透明な部分が あります。 ノンリコース。このような不確実性は残るものの、金融 業界は日本の再生可能エネルギーの拡大を歓迎しているよ うです。2014年後半には、現時点で日本最大の太陽光プロ ジェクトとなる瀬戸内 Kirei 太陽光発電所(221MW)の資金 調達が完了しました。国内大手銀行 3行を幹事銀行とし、約 30行の小規模地域金融機関が参加したシンジケートローン を通じて、約 900億円を調達しています。この取引は、日本 の金融機関が海外開発業者にノンリコース融資を行う意欲 が高まっていることを示しています。これまで、資金調達は 日本の再生可能エネルギー市場に参入する際の大きな障壁 でした。また報道によると、Goldman Sachs が日本の太陽 光企業のために低価格の A 格付け債券を組成しています。資 金調達方法の多様化により、さまざまな再生可能エネルギー プロジェクトが国内で誕生する可能性があります。 14 EYの事業内容 EY は、ポリシー・金融・トランザクションの統合サービスをエネルギー・ライフ・サイクル全体にわたって提供 しています。EY が提供するサービスは、複数の技術および地域を対象とし、エネルギー専門家のグローバルネット ワーク、世界中の投資家とのつながり、そしてグローバルなプロジェクトの経験に裏打ちされています。 需要 企業 政府機関・多国籍組織・公共部門 ポートフォリオ戦略やエネルギー ミックス最適化戦略(資金調達 など)の開発・実施を支援 官民パートナーシッププログラムの戦略・ 設計・実施 Energy 価値と信頼をもたらす強固な エネルギー戦略および プログラムの作成・実施を支援 $ strategy 大企業の主要な エネルギービジネス リスクへの対応を 支援 ビジネスにおける エネルギーリスク 戦略 • 事業の中断 • 価格変動管理 • 規制へのコンプ • 診断 • 設計 • 実践 • 持続 ライアンス エネルギーサービス 供給 企業金融 インフラ金融 企業のサプライチェーンおよび エネルギーサービス関連の取引と投資を 支援する資金調達・買収・売却サービス エネルギーインフラ取引のための一次的・ 二次的資金調達(戦略、資金調達、買収、売却) 最 買い手側・ 売り手側 アドバイザリー 開 調 資 金 アップストリーム・ ダウンストリーム・ トランザクション 送電 融 再 投 資 達 価値を高める 方法を把握 発 構 資産・資本の ライフサイクル 全体にわたって サービスを提供 資 築 EY は資本計画で 用 護 化 適 保 発電 運 €€ EY のエネルギートランザクションおよびアドバイザリーサービス • 税務デューデリジェンス・組成 • 財務・事業デューデリジェンス • 格付けおよび負債アドバイザリー • 査定およびビジネスモデリング 15 EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EY について EY は、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野 における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中 の資本市場や経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホル ダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすること で、構成員、クライアント、そして地域社会のために、より良い社会の構築に貢献し ます。 EY とは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワーク であり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組 織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社で あり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。 新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、EY メンバーファームです。全国に拠点を持つ日本最 大級の監査法人業界のリーダーです。監査および保証業務をはじめ、各種財務アド バイザリーの分野で高品質なサービスを提供しています。EY グローバル・ネット ワークを通じ、日本を取り巻く経済活動の基盤に信頼をもたらし、より良い社会の 構築に貢献します。詳しくは、www.shinnihon.or.jp をご覧ください。 EY 新日本サステナビリティ株式会社について EY 新日本サステナビリティ株式会社は、EY メンバーファームです。企業や社会の 持続的成長を支援するサステナビリティ分野の専門サービスを提供しています。環 境問題や社会問題など幅広いテーマにグローバル規模で取り組むことで、より良い 世界の構築に貢献しています。詳しくは、http://sustainability.shinnihon.or.jp/ をご覧ください。 © 2015 Ernst & Young ShinNihon LLC. All Rights Reserved. 本書は一般的な参考情報の提供のみを目的に作成されており、会計、税務及びその他の専門的な アドバイスを行うものではありません。新日本有限責任監査法人及び他の EY メンバーファーム は、皆様が本書を利用したことにより被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いません。 具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家にご相談ください。 本書は SCORE no. DX0295の翻訳版(要約)です。 ED None EY Japan クリーンテック・チーム www.eyjapan.jp/misc/contact-us 新日本有限責任監査法人 柏木 健志 EY 税理士法人 服部 孝一 EYトランザクション・アドバイザリー・ サービス株式会社 須田 聡一朗 EY アドバイザリー株式会社 根岸 博生 EY 新日本サステナビリティ株式会社 沢味 健司
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