日本列島の確率降水量と確率土壌雨量指数

A05
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
日本列島の確率降水量と確率土壌雨量指数
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齋藤 仁 1,2,3,松山 洋 3
関東学院大学 経済学部, 東京大学 空間情報科学研究センター,3 首都大学東京 都市環境科学研究科
Email: <[email protected]> Web: <http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/~saito/>
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(1) 動機: 解析雨量(レーダー・アメダス解析雨量,気
象庁)は,日本列島における詳細な降水分布や豪
雨による災害防止を目的に,1988 年 4 月より運用
されてきた.これまでに 25 年以上蓄積された解析
雨量を用いることで,確率降水量の算出も可能とな
ると言えるが,詳細な検討は少ない.本研究では,
豪雨災害への応用を想定し,解析雨量を用いて,
高解像度(5 km グリッド)の確率降水量と確率土壌
雨量指数のデータセットを作成した.ここでは特に,
大雨特別警報で用いられる,再現期間 50 年の確
率 1 時間降水量と確率土壌雨量指数,およびその
推定誤差について議論する.
(2) 方法: 1988 年 4 月~2013 年 12 月(26 年間)の解
析雨量(毎正時 1 時間降水量)を用いた.対象とし
たのは,23 年以上のデータが得られる地域である.
解析雨量の空間解像度は 5 km から 2.5 km(2001
年 4 月),2.5 km から 1 km(2006 年 1 月)と変化し
ているため,2001 年 4 月以降のデータを 5 km へと
再編集した(Urita et al., 2011, HRL).次に,得られ
たデータに対して,均質性を検定した(Wijngaard
et al., 2003, IJC).そして,1~72 時間降水量と土壌
雨量指数の年最大値から L-moments(Hosking,
2015, R Package)を求め,任意の再現期間の確率
値データセットを作成した.その際には,一般的に
用いられる Gumbel 分布と一般化極値(GEV)分布
を適用した.また Jackknife 法を用いて,推定誤差
(ジャックナイフ幅)を評価した.
(3) 結果: 日本列島における再現期間 50 年の 1 時間
降水 量は , 17.0–158.0 ( 平均 68.2 ± 1.1–51.1 )
mm/h (Gumbel 分布,図 1a),16.8–186.4 (平均
69.6 ± 0.8–84.9)mm/h(GEV 分布,図略)である.ま
た再現期間 50 年の土壌雨量指数は,82.1–638.6
(平均 226.9 ± 3.7–93.0,Gumbel 分布,図 1b),
68.6–705.0(平均 221.8 ± 2.4–183.0,GEV 分布,図
略)であった.
これまで AMeDAS データを用いて確率降水量が
計算されてきたが,解析雨量を用いることで,高解
像度(5 km)の確率降水量と土壌雨量指数の分布を
検討可能と言える.特に,大雨の頻度が高い西南日
本の太平洋岸において,その詳細な空間分布が明
らかになる.今後,推定誤差を考量した上で,災害
対策へ応用することが重要である.本研究は予察的
なものであり,今後より詳細な解析雨量の検証と,推
定誤差の検証が必要である.
(4) 謝辞: 本研究は,日本学術振興会科学研究費補
助金(15K16287,26282080),および平成 24~27
年度首都大学東京高度研究により実施した.
図 1: Gumbel 分布を用いた再現期間 50 年の確率 1 時間降水量(a)と確率土壌雨量指数(b),
及びジャックナイフ幅(Jackknife SD.)
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