あすなろ通信 逗葉高校校長だより No.24 平成 27 年 1 月 30 日 忘れ得ぬ生徒たち(5) ~もうひとつの卒業式~ 大変短い 3 学期ですが、今年度のまとめの学期になります。みんなには、ぜひ「繋 ぐ」ということを意識して、過ごしてもらいと思っています。 3 年生は、いよいよ卒業を迎えます。自分の次のステップへと、しっかり「繋げ る」ようにしてほしいと思います。これから受験の人も多いと思います。万全の体 調で臨めるようにしてください。 2 年生は、3 年生のさまざまな想いや取り組みを「繋いで」 、学校の中心として逗 葉高校を引っぱってもらいたいと思います。 1 年生は、4 月には先輩になります。新入生に逗葉魂を「繋いで」ほしいと思い ます。 さて、始業式で、 「私のABC(A:当たり前のことを B:馬鹿にしないで C: ちゃんとやる) 」という話をしました。 「繋ぐ」意識とともに、自分にとっての「当 たり前」を、ぜひ実践してもらいたいと思います。その行動は、きっとあなたにと って、大きなプラスとなって帰ってくるはずです。 「卒業」という言葉を聞くと、毎年必ず思い出す卒業式があります。今回は、6 年かかって高校を卒業した生徒のことを書きたいと思います。 その日は、2 つの卒業式に参加することになっていた。 ひとつは勤めている全日制高校の卒業式で、もうひとつ は以前勤めていた定時制高校での卒業式だった。 日もすっかり暮れ、あたり一面は闇になっていた。他 の人が仕事を終え、帰路につくころから授業が始まる定 時制高校には、卒業式も夜がふさわしいようだった。闇 の中に浮かび上がるように、体育館には明かりが灯って いた。昼間の華やかさが消え、人もまばらになった校内には張りつめたような空気 が流れていた。 卒業生が入場してきた。その学年は 2 年生のときに教えていたので、みな懐かし い顔ばかりだった。その中に、見覚えのない顔がひとつあった。その時は、きっと 他の高校から転校してきた生徒だろう、と思ってあまり気にもとめなかった。 やがて、卒業証書授与になった。4年間の努力がたった1枚の卒業証書に凝縮さ れている。 「高校卒業」という資格のために、雨の日も、風の日も、暗くなってから 毎日学校に通い、仕事で疲れた体に鞭うって努力してきたのだ。心から祝福を送り たかった。 担任が、昔かなり荒れていた生徒の名前を呼んだ。しかし、卒業生の入場のとき、 彼の顔は見ていなかった。その瞬間、転校生と思っていた生徒が「はい」と言って 立ち上がった。彼だったのだ。 彼は全日制高校を1年生の途中で退学していた。定時制で高校生活をもう一度や り直すはずの彼は、試験の日も遅刻をしてきた。チリチリに縮れた髪をしていた彼 には、まだまだ甘さが感じられた。 定時制の高校生活は彼にとって厳しいものだった。働いていた彼は、学校も休み がちで、授業中に寝ることが多かった。当然のように、彼は進級することはできな かった。きっとこのまま学校を去ってしまうのだろうと思っていた。 しかし、彼は学校をやめなかった。なぜ彼が高校卒業にこだわり続けるのか、は っきりした理由は解らなかった。2 度目の 1 年生で担任もかわり、彼に対する要求 は厳しくなっていた。上履きすらまともに履いていなかった彼は、そこからたたき 直された。 この年に、彼の授業担当になった。彼を教えるのはこの時が初めてだった。彼は 疲れていないときは、授業に取り組むものの、疲れているときはいくら起こしても 起きなかった。そして、授業中に携帯電話が鳴るといつまでも話をしているような 状態だった。どんな話をしても「ああ」とか「別に」としか答えようとはしなかっ た。いつまでも自分の殻から抜け出ようとはしなかった。 担任の働きかけもあって、彼は徐々に変わってきた。あるとき、彼の携帯電話が 鳴った。彼は「今、ヤバイから」と、すぐに電話を切った。寝ることも、ずいぶん 少なくなった。あまりしゃべらない彼は、数学でわからないところをプリントに書 いて質問してくることもあった。 この年の終わりに、担任が転勤することになった。1年間、彼に厳しく接し続け てきた担任だった。彼にとっては煙たい存在であったに違いない。しかし、彼は担 任の離任式の日に、担任へプレゼントを贈った。もちろん彼のことだから、ぶっき らぼうに「これ」といって渡しただけだったが。 担任の先生と同じ時期に転勤してしまったので、それ以降彼とは会っていなかっ た。彼はそのときの印象のままで私の心の中にいた。チリチリ頭のぶっきらぼうな 姿のままで・・・。 目の前にいる彼は、やはりぶっきらぼうな印象のままだった。しかし、その表情 はとても落ち着いていた。スーツに身をつつみ、短く刈り込んだ髪は以前とはまる で別人のようだった。悟りを開いたもののような表情に見えた。じっと前を見つめ ている彼の目には何が映っていたのだろう。 卒業式の間じゅう、携帯電話をいじり、ずっとしゃべり続けている生徒がいた。 この生徒にもいつか、彼のように澄んだ目で卒業式を迎えられる日がくることを願 わざるをえなかった。 第 61 回神奈川県高等学校美術展に出品 12 月 2 日(火)~7 日(日)に、神奈川県民ホー ルギャラリーで行われた神奈川県高等学校美術 展において、 本校から 11 点の作品を出品しまし た。2 年鈴木友莉さんの点描絵が、今年 8 月に 行われる神奈川文化フェスタの出展作品として 選ばれました。 演劇部が防犯教室で神奈川県警察本部から表彰 1 月20 日(月)、 地域の小学生を対象とした 「防 犯教室」のこれまでの実績が評価され、演劇部 が神奈川県警察本部生活安全部少年育成課から 感謝状をいただきました。今年度は 11 月 20 日 (木)に、沼間小学校において、万引き防止の紙 芝居を劇に変えて演じました。子どもたちも熱 心に見てくれました。 部長の 2 年 森沙璃奈さん は、 「これからも機会があれば、ぜひ参加して地 域に貢献したい」と語ってくれました。 文化祭の売り上げを東日本大震災の義援金として寄付 9 月に行われた文化祭の収益金の一部を、今年も東日本大震災の義援金として寄 付しました。義援金 47,537 円は、生徒会長の 2 年笠井ひよりさんと、生徒会役員の 2 年相馬美季さんが代表して、日本赤十字社神奈川県支部へ届けました。 体育祭実行委員会が発足 今年度に引き続き、来年度の体育祭も 有志による実行委員会形式で運営を行い ます。2 学期の終業式で生徒会長から呼 びかけを行い、1 年生 2 名、2 年生 5 名の 応募がありました。実行委員長には、2 年の山田直輝君が選ばれました。山田君 は、 「クラスが団結し、楽しく、価値のあ る想い出を作りたい」と抱負を語ってく れました。 これから実行委員を中心に、種目の決定や準備、運営を行っていきます。今から、 来年度の体育祭がとても楽しみです。 バスケットボール部が県新人大会で大活躍 1 月に行われた、神奈川県高等学校バスケットボール新人大会で、日頃の練習の 成果を存分に発揮し、男子がベスト 16、女子がベスト 8 に入りました。この勢いで、 春に行われる関東大会予選を突破し、関東大会への出場切符を手にしてほしいと思 います。 3 年「発達と保育」の授業で桜山保育園を訪問 2 月 2 日(月)、 「発達と保育」を選択している 3 年生 14 名が、1 年間の授業の集大成として、桜山 保育園の園児たちに手作りの紙芝居の発表を行い ます。グループに分かれ、それぞれが工夫を凝ら したお話しを園児たちに披露する予定です。この 授業では、教室での座学だけでなく、週に 1 回実 際に保育園にお邪魔して現場実習を重ねてきまし た。1 年間ご協力をいただいた桜山保育園の皆さ まに、心より感謝申し上げたいと思います。 神奈川県高等学校文化連盟主催の第 3 回ビブリオバトルに参加 1 月 31 日(土)に、神奈川県近代美術館で行われる、神奈川県文化連盟主催第 3 回 ビブリオバトルに、本校から 2 年野口蓮華さん、目黒綾依子さんがバトラーとして 参加します。活躍に期待したいと思います。 卒業式ではみんなで校歌を歌おう 今年度より、始業式や終業式など全校生徒が集まるときには、全 員で校歌練習に取り組んでいます。校歌を歌うことを通して、自分 たちの学校に対する誇りや、愛校心などを高めていきたいと思って います。 2 学期の終業式と 3 学期の始業式では、3 年井上眞奈さんが指揮を、原田幸穂さん が伴奏を務めてくれました。卒業式でも大きな声で校歌を歌いたいと思います。 校章の由来 昭和 53 年 1 月 1 日に制定されました。本校は怒濤逆巻く相模湾に懐かれ、緑豊 かな桜山丘陵に位置しています。校章はここに学ぶ若人の無限の希望と生気を象徴 しています。桜をかたどった五枚の花弁は、五つの教育方針 1.楽しく明るい学校づくり 2.勉学の習慣化 3.心身の健康の増進 4.豊かな情操を培う 5.能力適性の伸長をはかる の実践を表し、中の三つの波浪は教育目標の知徳体の調和的発達を示しています。
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