戦略的会計システムの構築へ向けて

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アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)
戦略的会計システムの構築へ向けて、
Oracle EBS 導入で経理事務 BPR を実現。
チェンジマネジメントによる意識改革が成功へと導く。
2000年、アフラックでは新経理システム構築のプロジェクトがスタートした。
それは単なるシステムの構築ではなく、同時にBPRを実現するというものであった。
2003年、フェーズⅡがスタート。これは当時ではまだ一般的ではなかった経費のキャッシュレス化を目指したもので、
対象ユーザーは全社員(当時約3,000人)。現場への浸透は困難を極めた。成功の鍵は意識改革をも促す、チェンジマネジメン
トチームの働きだった。
アフラック
経理部部長
アフラック
経理部経理企画課長
アフラック
マーケティング戦略企画部
マーケティングシステム
企画課長
アフラック
経理部経理企画課副長
アフラック
経理部経理課主任
日下部 淳氏
大津 智佐氏
茂木 崇宏氏
中森 靖大氏
秋山 香織氏
オラクル EBS による
2000 年にスタートしたプロジェクトは
一般会計システムなどの基盤構築を終
ERP パッケージの活用
え、2003 年、フェーズⅡの段階へと移って
システム構築に際しては「ERPパッケー
いった。いよいよ全社を巻き込んだBPR
ジのベストプラクティスを活用」する方針
今回の「戦略的会計システムの構築」
に着手するこのプロジェクト最大の難関
が打ち出された。すでにフェーズⅠの一般
は、単に以前のシステムが老朽化したこ
を迎える大きなステージだ。
会計システムのERP パッケージにはオラ
とによる再構築ではなく、BPRも同時に
フェーズⅡの目的は3つ。ひとつは、経
クルが使われていた。
推進するプロジェクトだった。
営 陣 が 求 めている経 理 情 報をタイム
そして、
フェーズⅡでのプロジェクト
・パー
「経理部として経営管理上求められる
リーに取り出せるような「経営者情報の
トナーとして選ばれたのがアビームだった。
機能は何か、また、日々の経理業務をどう
充実(管理会計的付加情報の取得)」。
コンサルティングファームとしては、会計系
変革すれば、現場スタッフが本来業務に
“ 経 営 陣のスピードある意 思 決 定 ”を
のERP 分野で多くの実績を持っていたこ
専念できるのか。それらを追求した結果、 サポートするためである。
とが強み。経理業務プロセスの見直しの
BPRを伴う新しいシステムの構築が必要
そして、現場スタッフの経費立替の業
ためには、会計の専門知識も有するパー
不可欠だと思ったのです」と、当時の経
務プロセスなどを変革する「業務効率
ト
ナーが必要だったのだ。加えて、システ
理部副部長でプロジェクトマネージャーで
化による本来業務へのリソースシフト」。
ム開発を担当する複数の業者によるコラ
あった日下部淳氏※1は振り返る。このプロ
それは
“価値の創造”
を生む。
ボレーション、ユーザーである全社員への
ジェクトは経理部自らが立ち上げた、いわ
3つめは内部統制上の観点からも重要
トレーニングなど総合的なコンサルティン
ばボトムアップによるムーブメントでもあっ
となる「誤りや不正を発生させない仕組
グ能力が必要とされた。
た。
みの強化」。
“リスク管理態勢の強化”は、
システム開発は大規模なプロジェクト
これからの時代なくてはならない。
に対応するため、汎用性の高いオラク
※1
:現経理部部長(2009年1月取材時)
ルEBSを活用した。
「買掛・未払管理(A
新システムの構築は
ボトムアップによる
ムーブメント
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フェーズ Ⅱ の目的と具体的施策:システム構築とBPRで相乗効果を狙う
システム構築とBPRを同時に実施し、相乗効果を上げる
基本方針
ERPパッケージのベストプラクティスを活用する
変えるべきプロセス・変えてはならないプロセスを見極める
目的
業務効率化で
本来業務へのシフト
↓
「価値の創造」
達成目標
BPR/Change Management
・各種制度の廃止・改善で効率化
・業務プロセスの簡素化・効率化
・新勘定設定と経営情報のインプット
経営情報の充実
↓
「スピードある意思決定」
IT の活用
・オペレーションシステム化・自動化
・検証業務のシステム化・自動化
・承認プロセスのオンライン化
誤りや不正を発生させない
仕組みを強化
↓
「リスク管理態勢の強化」
・D/B化・EUC化
(データの一元管理と有効活用:
検査業務/債権・債務管理/収益管理他)
・レスペーパ化
具体的施策
・小口現金制度廃止
・仮払制度廃止
・法人カード制度の改善
・旅費日当制度の簡素化【w/人事】
・経費使用ルールの明確化
・経理事務教育体制の確立
・添付資料の標準化【w/関連業務主管部】
・調達/支払業務の統合(集中)化【w/総務他】
・支払権限による業務体制見直【w/総務他】
・出張申請/精算プロセスの効率化【w/人事】
・AS管理カード/営業週報/経費精算フローの改善【w/営業本部、MK他】
・事業費体系の見直
(財務/税務/管理会計目的別に整理)
(チャネル、
商品、アクティビティ等データ取込)
・経費立替精算モジュールの導入・活用
・買掛/売掛管理モジュールの導入・活用
小口現金廃止や法人カード改善などキャッシュレス化を目指したBPRとシステム構築は、
それぞれ具体的な成果を生み、
高い評価に
繋がった
(最終ページ参照)
P)」、
「売掛・未収管理(AR)」、そして別
の経費管理システムによる「経費立替精
算
(EXP)
」の3つを導入。
さらに照会画面
を充実させ、ユーザーが加工しやすいよ
う設計したこともこのプロジェクトの特徴で
あった。
業務改革と意識改革
チェンジマネジメント
を重視
ていたため、全国 90 箇所ほどの拠点すべ
てが現金を持ち、大きな潜在的リスクとも
なっていた。BPRの重要なポイントだ。
今では当たり前のように機 能している
BPRの具体的な内容は、小口現金制
キャッシュレスも当時の現場スタッフにとって
度の廃止、仮払い制度の廃止、法人カー
は、これまでのやりかたとはガラッと変わって
ドの改善、旅費日当制度の簡素化など。 しまうこと。システムの変更のみならず、全
つまり、目指したのはキャッシュレスだっ
社員にかかわるプロセスと制度の変更な
た。経理業務の効率化はもちろん、常に
ので、当然、一時的に混乱が生じることは
現金を用意しなくてすむという、現場スタッ
避けて通れない。この混乱を回避するため、
フの利便性にもつながる。また、当時は現
今回のプロジェクトではチェンジマネジメント
金による立替の精算や仮払いが行われ
Project Organaization
グループという、プロジェクトの広報および
現場でのシステム利用のトレーニングなどを
行う専門のチームを作った。
ステーク
PMO
ホルダー
プロジェクトスポンサー
プロジェクトの広報は、社内のネット掲示
執行役員
マネジメント
板、
放送システム、社内報など社内広報シ
ステアリング・コミッティ
(各統括部門)
ステムをフル活用して進められた。それと同
プロジェクトオーナー
経理部長
(当時)
時に直接ユーザーとなる管理職及び一般
社員への説明会が全国各地で行われた。
プロジェクトマネージャー
また、それらは、チェンジリーダーとなるべき
経理部 日下部(当時)
ABeam
プロジェクトメンバーに対する人材育成の
プロジェクトマネージャー
PMOサポート
側面も担っていた。
サポート
(情報システム)
AFLAC/ ABeam
チェンジマネジメントのリーダーを務めた
のが当時アカウンタン
ト( 主任 )であった大
コミュニケーション
BIZグループ
TECHグループ
チェンジマネジメント
※2
グループ
津智佐氏 。
「各種コミュニケーション活動
経理部 日下部
(兼)
情シス2 茂木
収益管理部 大津
(各部門代表)
ABeam
NTTコムウェア
ABeam
を通じて、なぜ今 BPRを伴うシステム導入
が必要なのか、変革の本来の目的を理解
してもらいました。企業成長に必要な意識
BIZ各チーム
TECH各チーム
改革ができたと思います。アビームさんには
コミュニケーション・トレーニングの基本計画
からトレーニング実施マニュアルや新プロセ
TECH各チームを統括するNTTコムウェアほかB
I
Z各チームとも密接な連携を図るため、
アビームがリーダーシップをとってコミュニケーションに努めた
アフラック様では、
チェンジマネージメントに積極的に取り組み、営業役員や各部門に説明を頻繁に実施したほか全国を回り、支社長及び担当者に直に説明を行った。
さらにビデオニュースやネット掲示板、情報共有ツールなど、社内の媒体を駆使して情報の提供を行うことで、現場の協力を取り付けることに成功した。
1/2003
2
3
分析/計画
4
【分析・計画】
全体スケジュール
6
【基本設計】
詳細要件検討
CRP
Add-On設計
▼ 現行業務、システム調査
▼ 要件定義
要件定義
プロトタイプ
FiT&GAP分析
追加開発・・・・
5
7
8
設計/開発/導入
9
10
【開発】
Add-on
設計開発
外付け開発(マスタ連携など)
▼導入計画策定
導入計画策定 ▼詳細スケジュール決定
詳細スケジュール決定
トレーニング設計
トレーニング開発
マニュアル作成
(ドラフト)
11
1/2004
テスト
2
3
移行
4
5
フォロー
▼開発完了
開発完了
【テスト】
IT
ST
UAT
トレーナーの養成
マニュアル作成
(最終化)
【移行】
データ移行
業務移行
▼
本番稼動
エンドユーザー
トレーニングの実施
トレーニング
実施準備
Chenge Management
Communication Plan
コミュニケーション
計画実施準備
具体的施策
営業役員
営業本部(支店長)
営業事務リーダー
オペレーション統括本部
コーポレート部門
内部管理部門
12
■ 各部門定例会議にて説明
■
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■ 情報提供・更新
ウィークリーニュース(映像)
会社掲示板(Web)
部門(支社)長メール
アンケート・ヒアリング
NOTES DBフォーラム
■ 説明会などのコミュニケーションセッションを実施
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ス業務マニュアルの作成までサポートして
もらいました」
また、管理職への説明に全国を回った
日下部氏は「時に現場から意見されること
もありましたが、現場を知るよい機会にな
りました」と当時の苦労を語る。
※2
:現経理部経理企画課長
(2009年1月取材時)
新たな課題が浮上
稼動は1カ月延期に
2003 年にスタートしたフェーズⅡは順調
に進んでいたかに見えたが、各現場への
ヒアリングなどの結果、3つの課題が浮上
してきた。
ひとつは四半期決算へ向けての通常
業務への影響の回避。移行に伴う旧シス
テムの停止など、通常業務への支障をき
たす場合があるという。
2つめは、急激な事務移行による現場
の混乱の回避。抜本的なプロセス、シス
テムの変更なだけに現場の負担を考えれ
ば無理はなかった。
そして、経費立替精算(EXP)システム
のテスト後、新たな課題が発生し、仕様
変更を必須とした機能改修と、改修後の
再テストの期間を考慮する必要がでてき
たのだ。
経費立替精算(EXP)については、ア
ビーム以外のシステムを担当するパート
コミュニケーション活動およびステークホルダーの参画
■
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ナー会社が数社参加していた。それだけ
に全体の統制や調整に時間がかかった
のだ。そのTECHグループを取りまとめ
たのが当時情報システム開発二部シニア
システムエンジニア(副長)の茂木 崇宏氏※3。
「それぞれパートナーシップを発揮してシ
ステム構築をしてもらいましたが、数社が
集まるとどうしてもコミュニケーションのず
れは生じてしまいます。アビームさんには、
システムテストなどを含め、リーダーシップ
を発揮して、
うまくチームをまとめてもらいま
した」。その結果、これらの課題を回避す
るため、稼動時期は1カ月ほど延期するこ
とになった。
※3
:現マーケティング戦略企画部、
マーケティングシ
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アビームに対 す る
評 価と期 待
「かなりシビアな要求を行いましたが、
それに対し真摯に対応してくださいま
した。人材もフレキシブルに送り込ま
れ、
アビームという会社として、
このプ
ロジェクトをバックアップしてくださいま
した。ユーザー部門としてのオーナー
シップ、経営のリーダーシップ、
アビー
ムさんを含むIT部門とのパートナー
シップがうまく機能したと言えます」
(経理部部長 日下部 淳氏)
ステム企画課長(2009年1月取材時)
「当時はアビームさんの成果物に対
約1年4カ月でフェーズⅡは完了し、
システ
して当たり前だと考えておりました
ムは稼動。
そこから、
約3カ月はヘルプデス
が、その後、いくつかのコンサルティ
クを作り、現場からの問い合わせに対応
ング会社と仕事して、
はじめて品質
した。稼動後、約5年たった現在もシステ
の高さに気がつきました。
とくにオペ
ムはバージョンアップを重ね、
進化している。
レーシ
ョ
ンマニュアルなどは、
他のシ
システム稼動後に配属になった現経理部
ステム開発の時にも参考にな
り
ます」
経理課主任、秋山 香織氏は「ユーザー
(経理部経理企画課 副長、
中森 靖大氏)
がシステムを使用する際、入力項目の数
や入力のタイミングなど、
まだまだ改善の
余地はありますが、
順調にシステムは機能
しています」
と現在の状況を語った。
Financial Service Corporate Finance
全体スケジュールと Change Management(Communication Plan)
システム導入による定量効果明細
達成率
(工数)
ファクター
測定方法
経理部におけるAP/AR業務
AP/AR
① システム
システム稼動後 1 年ほどの時点で、今
導入効果
62%
全社経費概算、経理・検査・監査業務等
E-NAVI(Expense)
回のプロジェクトの効果測定が行われて
88%
② BPR 効果
小口現金配備の廃止等
営業本部小口管理業務、経理・検査・監査業務等
いた。
「会計システムはインフラ整備や
93%
規程/ルール等の簡素化
経理事務指導、問合対応業務等
今回のようにリスク低減のためのBPRを
14%
請求支払いの統合
(集中)
化
取引先支払い作成・検証・管理業務等
伴うものなどさまざまなケースがあり、経
済的な効果だけで、成果を判断するのは
システム導入による定性効果明細
難しいと思います」と日下部氏。それでも、
ファクター
効果
実績
システム導入によって、短縮された時間
−小口現金廃止
⇒ 不正・横領の潜在的リスク削減
を人件費に置き換え、システム導入効果、
⇒ 経理処理の適正化
(形状・支払・証憑保管)
リスク管理態勢の強化
誤りや不正を発生させない
−各種制度変更
⇒ 制度不正利用リスク回避
BPR 効果を定量分析した。どれも高い
予定
仕組み強化
−承認ワークフロー化
⇒ 不正承認回避
1
通り
(事前予防的/事後発見的統制の強化) −情報のデータ化・EUC環境基盤充実
⇒ 検査・監査業務対応性向上
達成率をはじき出すことができたという。
−支払データ照会権限コントロール付与
⇒ 情報漏洩防止
そして、もっとも重要だという定性分析。
−セグメント情報入力データ化
当初かかげた目標に対して、何を行いど
経営情報の充実
予定
−報告書等紙起票からデータ入力への変更
スピードある意思決定を支援
2
通り
う達成されたか。数字には決して表れて
⇒ EUC環境基盤と戦略的会計システム基盤の確立
(戦略的会計システムへの布石)
はこない、プロジェクトの成否を問う評価
−業務統合・集中化
⇒ 全社的課題・問題点の可視化
予定
−システム稼働時間の拡大
⇒ ユーザ利便性の向上
3
その他
だ。目標は予定通り達成した。そして、効
通り
−システム照会期間の延長
⇒ ユーザ利便性の向上
果測定レポートの最後には特記事項とし
て右掲の内容が記され、今回のプロジェ
クト成功の自負が伺える。
特記事項
71%
●
●
●
● BPR(業務改革)
とシステム構築(EPRパッケージ導入)の一体化による効果
アビームのメンバー
アビームコンサルティング
株式会社
金融統括事業部
マネージャー
「あるべき姿と現行業務プロセスの再検討により「変えるべきプロセス」と「変えてはならない
プロセス」を見極め、
アドオン開発に関しては最小限にとどめることを基本方針とし、
EPR パッケー
ジとベストプラクティスを基に業務プロセスを変革。BPR とシステム構築を同時に行うことにより
IT 投資への相乗効果をあげた。同業他社に多く小口現金が残っている中で、キャッシュレス化を
実現、プロセス変革事例を通した先進性のブランドイメージを強化する一因にもなった」
● チェンジマネジメントの重視(業務改革と意識改革)
遠藤 智史
「全社的に影響を及ぼすプロセス・制度およびシステムの変更であり、その変化への抵抗をチェ
ンジマネジメントにて抑制した。関連部門からの協力を取り付けるべく事前説明・コミュニケー
ション方法等、部門の枠を超えて積極的に活動したことにより、複数の課題を同時に解決に向
かわせた。実体験を通して、チェンジリーダーとなる人材育成(プロジェクト推進部門)、企業
成長に必要で重要な意識改革・変革へのマインドが全社的に強化された」
ユーザーカルテ
会社概要
会
社
名
所
設
社
拠
在
地
立
数
数
員
点
American Family Life Assurance Company of Columbus
(アメリカン ファミリー ライフ アシュアランス カンパニー
オブ コロンバス)日本支社
略称 アフラック
(アメリカンファミリー生命保険会社)
〒 163-0456 東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル
1974年
3,533名(2008年3月末)
うち男子1,699名 女子1,834名
81拠点(2009年1月現在)
*本リーフレットに掲載の情報(企業情報・部門名・タイトルなどを含む)は、初版制作時のものです。
マーケティング部
Case Study
Financial Service
Corporate Finance
Tel : 03-3501-8355
www.abeam.com/jp
2009 年 5 月初版発行
2012 年 8 月改訂
本資料の無断転載・複写を禁じます
Copyright © 2012 by ABeam Consulting Ltd. All rights reserved.
Financial Service Corporate Finance
効果測定による
プロジェクト成功の証