CAVEシ ステムを用いた仮想空間の実現とその活用

成 瞑 大 学 理 工 学 研 究 報 告
J.Fac.Sci.Tech.,SeikeiUniv.
Vol.52No.1(2015)pp.21-26
CAVEシ
和 田
直 哉*1,小
ス テム を用 いた 仮 想 空 間 の 実 現 とその 活 用
池
淳*2,宮
川
紘 輔*3,杉
浦
智 之*4,鈴
木
康 大*4,川
原
亮 輔*4
RealizationandUtilizationofVirtualRealityEnvironmentwithCAVESystem
NaoyaWada*1,AtsushiKoike*2,KousukeMiyagawa*3,TomoyukiSugiura*4,KoudaiSuzuki*4,
RyousukeKawahara*4
ABSTRACT:Inthispaper,aninstallationofourCAVEvi血alrealitysystemanditsapplicationis
described.ACAVEsystemisbasedonimmersiveprojectiontowallsandfloors.Itcanproducevirtual
realityenvironmentsbyshowingstereo,immersiveandinteractiveviewtousers.Thehardware
configurationofourCAVEsystemconsistsoftriplescreenstereopr()jectionandaPCcluster.The
applicationdevelopmentisperformedwithCAVELibAPIandOpenGL.Thevirtualrealityenvironment
realizedbythissystemisutilizedforintUitiveeducationandreconstructionof3Dhumanmodel.
KeywordsCAVEsystem,VirtualReality,ImmersivePr()jection,ImageProcessing
(ReceivedMarch17,2015)
1.は
じめ に
距 離 と焦 点 調 節 の 不 一 致 に よ る 奥 行 き 精 度 の 不 一 致 や 眼
精 疲 労 が 指 摘 さ れ て い る4).加
近 年 の コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ ッ ク ス 技 術 の 進 歩 に 伴 い,
仮 想 現 実 は さ ら に 高 度 に,か
つ 身 近 な も の に な りつ つ あ
る.仮
ー ザ が そ の 世 界 に どれ だ け
想 現 実 に お い て は,ユ
え て 没 入 型 のHMDで
分 の 体 を視 認 す る こ と が で き な い た め,仮 想 空 間 と の イ ン
タ ラ ク シ ョン を 行 う際 に 不 利 と な る こ とが 想 定 され る.
没 入 型 デ ジ タ ル 空 間 を 再 現 す る も う1つ
入 り込 ん だ よ うに 感 じ る か,と い う没 入 感 が 重 要 と な り,
フ ェ ー ス
没 入 感 の 高 い 仮 想 空 間 に お け る 教 育 ・エ ン タ テ イ メ ン ト
Environment)が
な ど の ア プ リケ ー シ ョ ン は,人
ん だ 空 間 の 中 に ユ ー ザ が 入 り,ス
間 に 対 し よ り高 い 効 果 を
この 没 入 型 の デ ジ タル 空 間 を再 現 す るた めの 主 なイ ン
タ フ ェ ー ス と し て は,現 在 大 き く分 け て2種
で あ る.HMDと
類 が 存 在 す る.
は ヘ ッ ド マ ウ ン ト デ ィ ス プ レ イ(HeadMounted
Display:HMD)で,デ
の主なイ ンタ
と し てCAVE(CaveAutomaticVirtual
あ る5)6).CAVEと
は 多 面 ス ク リー ン で 囲
ク リー ンに 立 体視 用 の
ス テ レオ画 像 を投 影 す る こ とで没 入 感 を 与 え るシ ス テ ム
持 つ こ と が 期 待 さ れ て い る.
1つ
は自
違 い ユ ー ザ は 自 分 の 姿 を視 認 す る こ と が
で き,疲 労 も 抑 え ら れ る.CAVEの
問題 点 と して 装 置 が 大
変 に 大 規 模 に な っ て し ま う こ と が 挙 げ ら れ る が,今
ィス プ レイ装 置 を メガ ネや ヘ ル メ ッ
我 々 は こ のCAVEシ
ス テ ム を 導 入 し,さ
ま ざ ま な仮 想 空
トの よ うな 頭 部 の デ バ イ ス に 搭 載 し,人 間 の 眼 前 に 映 像 を
間 を 作 成 し て そ の 効 果 を 評 価 し た.以
投 射 す る も の で あ る.視 界 を完 全 に 覆 う こ と で よ り仮 想 空
入 し たCAVEシ
間 へ の 没 入 感 を 高 め られ,近
成 とそ の研 究応 用 例 に つ い て紹 介 す る。
年 で はPCイ
ン タ フ ェー スや
回
降の章では今回導
ス テ ム の ハ ー ドウ ェ ア ・ソ フ ト ウ ェ ア 構
ゲ ー ム な どの 分 野 に お い て 様 々 な 製 品 が 開 発 され て きて
い る1)2)3).し か し な が ら,HMDに
*1:理
工学部情 報科 学科
*2:理
工学部情報科学科
*3:理
工学 研 究 科
*4:工
学部情報科学科
お い て は 輻 較 に よ る提 示
助 教(wada@stseikei
教 授(koike@st
博 士 前 期 課 程2年
学 部4年
2.CAVEシ
.ac.jp)
CAVEシ
.seikei.ac.jp)
ステムの概要
ス テ ム と は1992年
に 米 国 イ リ ノ イ 大 学EVL
(ElectronicVisualizationLaboratory)が
生
開 発 し,そ
の 後,
世 界 各 国 の 大 学 ・研 究 機 関 ・企 業 等 で 設 置 ・利 用 さ れ て
生
い る 立 体 視 表 示 シ ス テ ム で あ る.多
一21一
面 ス ク リー ン で 囲 ん
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
Vol.52No.1(2015.6)
3DGI日sses
F
Trackin{
ヨ
㌔ ¶榊一
憩
sensor
Screen一
ls
附端
∫
図1CAVEシ
ス テ ム の 外観
図2液
晶 シ ャ ッ タ メ ガネ
だ 空 間 に,立 体 的 にCG映 像 を表 示 させ て 仮 想 現 実 を体 験
す る こ とが で き るの で,没 入 感 の 高 いVRシ ス テ ム とな っ
に 投 影 し て い る.一
て い る.
ネ に は,メ
ガ ネ の眉 間 の部 分 に 赤外 線 受 光 部 が 付 け られ
て い て,プ
ロ ジ ェ ク タ と の 問 で 同 期 を と りつ つ レ ン ズ 部
本 稿 にお い て 使 用 したCAVEシ
示す.一 般 的 にCAVEシ
ス テ ム の 外 観 を 図1に
ス テ ム の利 用 空 間 は3∼6面
の シ ャ ッ タ を 開 閉 し て い る.そ
のス
ク リー ン に覆 われ て い る.こ の 中 にユ ー ザ が入 り,図2に
左 目用,右
示す 液 晶 シ ャ ッタ メガ ネ を装 着 す る.そ して周 囲 の プ ロジ
な り,こ
るこ とで,ユ ーザ の 周 囲 に仮 想 的 な 空 間 を実 現す る.
の 視 差 を 利 用 し て 立 体 画 像 を 表 現 す る.
ン(WS)と,各
ン トラ 予 測 符 号 化
本 稿 にお け るCAVEシ
示 す 各 プ ロジ ェ ク タへ の レ ン
の ス レー ブ 用 ワー クス テ ー シ ョ
ス レ ー ブ を 制 御 す る1台
の マ ス タ ー 用WS
に よ っ て ア プ リ ケ ー シ ョ ン の 制 御 が 行 わ れ て い る.マ
タ ー 用WSに
3.1イ
,図3に
ダ リ ン グ を 制 御 す る3台
ー ドウ ェ ア 構 成
の た め ユ ー ザ の左 目に は
目 に は 右 目用 の 画 像 が そ れ ぞ れ 見 え る こ と に
一方制御部 では
ェ ク タ か らス ク リー ンに 向 けて 立 体 視 用 の 画 像 を投 影 す
3.ハ
方 ユ ー ザ が か け る液 晶 シ ャ ッ タ メ ガ
ス
は さ ら に ユ ー ザ や コ ン トロ ー ラ の 位 置 を 測
定 す る た め の ト ラ ッ キ ン グ シ ス テ ム が 接 続 さ れ て い る.
こ の シ ス テ ム は,強
ス テ ム のハ ー ドウ ェ ア部 の 構 成
力 な 電 磁 波 を 発 し てCAVEの
フ ィー
ル ド内 に お け る ト ラ ッ キ ン グ セ ン サ の 場 所 を 測 定 す る.
図 を 図3に 示 す.ハ ー ドウ ェア 部 は 大 別 して 実 際 に画 像
が 表 示 され る投影 部 と,動 作 を制御 す る制 御 部 の2つ で
トラ ッ キ ン グ シ ス テ ム の 写 真 を 図4に
構 成 され る.ま ず 投 影 部 は,正 面 ・側 面 ・床 面 の3面 で
グ セ ン サ に は コ イ ル セ ッ トが 内 蔵 さ れ て い て,ト
構 成 され るス ク リー ン と,各 面 に 投 影 す るプ ロジ ェ ク タ
ミ ッ タ か ら は 強 力 な 電 磁 波 が 発 せ ら れ て い る た め,誘
3基 か ら成 る.正 面 ・側 面 用 の プnジ
ェ ク タは ス ク リー
電 流 の 測 定 に よ り セ ン サ の3次
示 す.ト
ラ ッキ ン
ラ ンス
導
元位 置 を 特 定 す る こ とが
ンの 裏 面 か ら,床 面 用 の プ ロジ ェ ク タ は天 井 に設 置 され,
可 能 と な る.制
鏡 面 反射 に よ り床 面 に 投影 が 行 わ れ る.こ れ らの プ ロ ジ
ア ナ ロ グ 信 号 デ ー タ の デ ジ タル 変 換 や 複 数 の チ ャ ネ ル の
ェ クタ は 立 体 視 の た め に ア クテ ィブ シ ャ ッ タ方 式 を採 用
コ ン ト ロ ー ル が 行 わ れ る.ト
して い て,実 際 に は 左 目用 の 画 像 と右 目用 の 画 像 を交 互
が 着 用 す る シ ャ ッ タ メ ガ ネ の1つ
■
投影部
■
■
、
ノ唖■
■
■
■
制御部
■
、,
ス クリー ン
プ ロジ ェクタ
ス レー ブWSト
■
■
ン ドと呼 ば れ る
■
■
■
■陶
マ ス ターWS
-
ス レー ブWS
と,ワ
-
プ ロジ ェクタ
ロ
ス クリー ン
ラッキ ン グ
ポ イ ンタA
ス レー ブWS
-
プ ロジ ェクタ
ランスミッタ
、
図3CAVEシ
ス テ ム の ハ ー ドウ ェ ア 構 成
一22一
(ワ ン ド用)
,
、
ポ イン タB
/1ト
-
(メガ ネ 用)
缶11布
印ユ ニ ツ ト
-
ロ
ス クリー ン
■
ラ ッキ ン グセ ンサ は ユ ー ザ
、 -
1ロ
'■
御 ユ ニ ッ トに は 電 源 が 内 蔵 さ れ て い て,
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成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
コ ン ト ロ ー ラ に 付 け ら れ て い て.こ
れ らの 位 置 の 変 化 に
画 像 を 追 従 さ せ る こ と が 可 能 と な っ て い る.加
決 す る に は,3次
えて ユ ー
元情 報 の 軸 変換 な ど多 くの 専 門 的 知識
が 必 要 と な る た め,こ
れ は 開発 者 に とっ て 大 きな負 担 と
ザ は ワ ン ドを 用 い て ア プ リケ ー シ ョ ン 内 に お い て 操 作 を
な る.そ
ス テ ム を 用 い た ソ フ トウ ェ ア の 開
行 う こ と も で き る.
発 用 イ ン タ フ ェ ー ス と し て,Mechdyne社
こ でCAVEシ
に よ りCAVELib
と い うAPIが 開 発 され て い る.CAVELibは
4.ソ
フ トウ ェ ア 構 成
抽 象 化 し,開
発 者 が 容 易 に イ ン タ ラ ク テ ィ ブ な3次
間 を 作 成 す る こ と を 可 能 と す る.我
4.1CAVEIibを
用 い た ア プ リケ ー シ ョ ン開 発
本CAVEシ
OpenGLお
ス テ ム の ワ ー ク ス テ ー シ ョ ン は,Windows7
よ びGLUT,そ
VisualStudio2010を
の 環 境 に お い て 構 築 さ れ て い る.よ
っ て 我 々 の ソ フ トウ
ェ ア 開 発 環 境 も 基 本 的 に はWindowsの
そ れ に 準 じ る.3D
前 述 の 問題 を
元空
々 は こ のCAVELibと
して プ ロ グ ラ ミ ン グ環 境 と して
併 せ て 開 発 環 境 と し,C++を
プ ログ
ラ ミ ン グ 言 語 と し て ア プ リ ケ ー シ ョ ン の 開 発 を行 う こ と
とす る.
グ ラフ ィ ッ クス を コ ン ピ ュー タ上 で 再 現 す る開 発 環 境 と
し て は,オ
OpenGLの
ー プ ン ソ ー ス のOpenGLが
有 名 で あ る.ま
た
4.2trackdを
拡 張 ラ イ ブ ラ リ で あ るOpenGLUtilityToolkit
(GLUT)は,複
本CAVEシ
用 い た 位 置 トラ ッ キ ン グ
ス テ ム の 位 置 トラ ッ キ ン グ を 制 御 す る の が
trackdと 呼 ば れ るMechdyne社
数 ウイ ン ド ウや 種 々 の デ バ イ ス へ の 対 応,
の ソ フ ト ウ ェ ア で あ る.
基 本 図 形 の 生 成 機 能 と い っ た 便 利 な 機 能 を 追 加 す る.し
trackdの パ ッケ ー ジ はtrackdServerとtrackdDaemonの2つ
か し な が らCAVEシ
の ア プ リ ケ ー シ ョ ン,そ
境 に お い て3Dグ
し た3次
ス テ ム の よ うな マル チ ス ク リー ン環
ラ フ ィ ッ ク ス の 投 影 を 行 う際 に は,投 影
オ ブ ジ ェ ク トライ ブ ラ リ と して コ ンパ イ ル され た様 々 な
元 物 体 に つ い て ス ク リー ン と ス ク リー ン の 間 で
一
ず れ は な い か,時
モ ジ ュ ー ル で 構 成 され て い る.trackdServerは
間 の 同 期 は とれ て い るか とい った 様 々
用 い られ,trackdDaemonは
!
有 メ モ リ との 問 で デ バ イ
ス デ ー タ の や り と り を 行 っ た りす る た め に 用 い ら れ る.
7 〆
→
,.■ 一
液 晶 シャッタメガネ
そ れ に よ り接 続 さ れ た 機 器 か
らデ ー タ の 収 集 を 行 っ た り,共
!
、
トラ ッキ ン
グセ ン サや コ ン トロール デ バ イ ス との 通信 を開 くた め に
な 点 に 注 意 を 払 う必 要 が あ る 。 本 来 こ の よ うな 問 題 を 解
一d『
し て デ バ イ ス サ ポ ー ト用 に 共 有
∼
■
共 有 メ モ リ 上 の デ ー タ はCAVELibに
リ ケ ー シ ョ ン やtrackdか
よ り開 発 さ れ た ア プ
らア ク セ ス 可 能 で あ る.
し
トラッキ ングセンサ
ム\
〆'=ニ
5.CAVEシ
ー-
(
ステムの活用
本 章 で は こ れ ま で 紹 介 したCAVEシ
P
3DGuidαZicc
ス テ ム の応 用 例 と
して,臨 場 感 通信 に 関す る研 究 へ の 活 用 や 教 育 分 野 に お
一 .一
■
け る3つ の研 究応 用 例 を示 す.
5.13次
元 人物 モ デ ル の復 元
遠 隔拠 点 間 で ビデ オ 会議 を行 う際 に,双 方 の 参加 者 が
あ た か も同 じ空 間 を 共有 して い る よ うな感 覚 を味 わ え る
テ レプ レゼ ン ス シ ス テ ム で は,等 身 大 の 人 物 の 映 像,及
び周 辺 設 備 の位 置 の設 定 を 詳 細 に行 うこ とで,従 来 よ り
も実 際 に そ の場 で会 議 を行 っ て い るか の よ うな感 覚,臨
A鰹 鯉 噌
場 感 の あ る通 信 が 可能 とな る.我 々 は 人 物 の3次 元 形 状
モデ ル の再 現 に着 目 し,運 動 視 差 を 再 現 す るた め に 従 来
』.}Range榔mi盤er
手 法 よ り も簡 易 か つ環 境 に左 右 され ず に 人 物 の3次 元 形
トラン ス ミッタ
状 モデ ル を復 元す る手 法 に つ い て提 案 した.こ
は この3次 元 人 物 形 状 モ デ ル をCAVEに
まず3次 元 形 状 デ ー タ を 読 み 込 み,CAVELibを
図4ト
ラ ッキ ン グ シス テ ム の 外 観
こで 我 々
お い て 再 現 す る.
用いて各
デ ィス プ レイ に 立 体視 に 対応 す る よ うに描 画 し,ト ラ ッ
一23一
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一
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●
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凄
藤
ら
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G
弓
●o'噌
9`
図5ト
ラ ッキ ン グセ ンサ に追 従 した3次 元 人 物 形 状 モ デル 描 画
キ ング セ ンサ の位 置(ユ ー ザ 位 置)に 合 わせ て描 画位 置 ・
大 き さは 実 際 に は 非 常 に 大 き く,再 現 す るに は視 認 可 能
向 き が 変 更 され る よ うに 処 理 を行 っ た.描 画 結 果 を図5
な距 離 設 定 が 足 りず 十分 に そ れ らの 点 を伝 え られ な い こ
に 示 す.立 体 と して人 物 モ デ ル を認 識 させ る こ とに よ り,
とが 問題 と して挙 げ られ た.今 後 は視 点 の移 動 を よ り自
テ レプ レゼ ンス シ ス テ ム に 適 した よ り臨 場 感 の あ る環 境
由 な もの と し,距 離 や 大 き さの 関係 に つ い て よ りユ ー ザ
の 作 成 が 可 能 とな っ た.
に わ か りや す い形 で伝 え る こ とが必 要 と考 え られ る.
5.2多
5.3海
視 点 型 太 陽 系VRシ ス テム
近 年 日本 の 初 等 教 育 に お い て,天 文 分 野 で の 理 解 度 の
洋 生物 の外 観 観 察教 材
本 研 究 で は 直観 的教 材 の 対象 と して海 洋 生 物 の 外観 に
低 下 が 問題 とな っ て い る.こ の 問 題 に 対 し直 観 的 な 教 材
着 目す る.ま
の 必 要性 が 言 及 され て き て い るが,従 来 型 の 曲面 ス ク リ
ブ ジ ェ ク トを 作 成 す る.こ
ー ン を用 い たVR教 材 に お い て は 教 育 効 果 の 確 認 が 元 々
を 作 成 す る た め,地
視 点移 動 能 力 を ほ とん ど持 た な い 者 に 限 られ て い た.こ
と エ レベ ー シ ョ ン グ リ ッ ド表 現 を 使 用 す る.マ
れ に対 して よ り没 入 感 の 高 いVRシ ス テ ム の 構 築 を 目指
ロ集 合 は フ ラ ク タ ル 図 形 で あ り,ど
す.ま ずOpenGLを
し て 平 坦 な 線 が 現 れ る こ と は な く,自
用 い て 球 状 モ デ ル を構 築 し,テ クス チ
ず 仮 想 世界 の 環境 構 築 と して海 底 の 地 形 オ
こで は ラ ンダ ム な 表 現 の 地 形
形 モ デ リ ン グ に は マ ン デ ル ブ ロ集 合
ャ マ ッ ピ ン グに よ り画 像 を 貼 り付 け惑 星 モ デ ル とす る.
あ ち こ ち に 現 れ る.し
次 に 各 惑 星 や 月 に 自転 と公 転 の 設 定 を付 け加 え,地 球 に
己 相 似 的 な 図 形 と 異 な り,完
視 点 を設 定 してCAVEシ
無 く,全
ス テ ム上 に て 動 作 させ る.完 成
か し,マ
ンデ ル ブ
ん な に 拡 大 して も決
己 相似 的 な 図 形 が
ン デ ル ブ ロ集 合 は 他 の 自
壁 に 同 じ形 の も の は1つ
て 微 妙 に 異 な っ て い る.こ
も
の 特性 を用 い て ラ ン
した 太 陽 系VRシ ステ ム の動 作 の様 子 を 図6に 示 す.教 育
ダ ム な 地 形 作 成 に 用 い る こ と と す る.ま
た エ レベ ー シ ョ
効果 に つ い て確 か め るた め,外 観 や 速 度,位 置 関 係 に関
ン グ リ ッ ド(ElevationGrid)表
面 メ ッシ ュ を基
す るテ ス トを被 験者10名
本 と し て 高 さ情 報 を 変 え る こ と で 地 形 図 な ど を 表 現 す る
に対 しVRシ ス テ ム の 体 験 の 前
後 に そ れ ぞ れ行 っ た.そ の 結 果 正 答 率 は30%か
モ デ リ ン グ 手 法 で あ る.こ
ら76%に
上 昇 し,教 育 効 果 の 改 善 を 確 認 で きた.同 時 に行 った ア
現 は,平
れ らの 手 法 を 用 い て 作 成 した
海 底 の 地 形 オ ブ ジ ェ ク トを 図7に
ンケ ー トの 結 果,没 入感 に 関 して は 非 常 に高 い 評 価 が 得
次 に 魚 の3Dオ
ブ ジ ェ ク トの 作 成 に は,視 覚 的 教 材 の 没
られ た 一 方,情 報 量 が 十 分 で な く文 字 情 報 に よ る解 説 が
入 感 を 高 め る た め,ク
必 要 との 意 見 も見 られ た.ま た 太 陽 系 の 惑 星 間 の 距 離 や
体 を,3Dモ
オ リ テ ィ の 高 い フ リー モ デ ル 計7
デ リ ン グ 素 材 を 販 売 し て い る サ イ ト
巨
TurboSquid7)か
o
示 す.
ら ダ ウ ン ロ ー ド し使 用 す る.3Dオ
辱
トの 形 式 と し て はobj形 式 を 選 択 す る.こ
ブ ジェク
の 形 式 の3Dオ
ブ ジ ェ ク トは 以 下 の フ ァ イ ル で 構 成 され て い る.
・objフ ア イ ル
幾 何 形 状 の デ ー タ を 取 り扱 う.マ
し て い る フ ァ イ ル 名,頂
●
法 線 情 報,マ
点 のX値,Y値,Z値,UV値,
テ リ ア ル 名 が 書 か れ て い る.
・mtlフ アイ ル
「
材 質 デ ー タ を 取 り扱 う.マ
光,鏡
、
図6太
テ リア ル 情 報 を格 納
噛
面 反 射 光,鏡
テ リ ア ル 名,環
境 光,拡
散
面 係 数 の 値 が 書 か れ て い る.
・png画 像 フ ァ イ ル
陽 系VRシ ス テム の 動 作 の様 子
物 体 の 表 面 の 質 感 を 表 現 す る た め に 貼 り付 け るpng形
一24一
Vol.52No.1(2015.6)
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
生態 に 関す る 学 習 を想 定す る.仮 想 空 間 上 の 指 定 した位
り
直
謹
".Lth塚'1",1-,
触
・ 処1賢演
誌:
置 に ユ ー ザ の視 点 が入 る とア ニ メ ー シ ョ ンが行 わ れ る ほ
か,必 要 に応 じた文 字 情 報 が 画 面 上 に 図9の
轟
・
ヨ ∼艦 ノ野
リ
.動
1『
声1・
よ うに 提 示
され る.こ の文 字情 報 は 画像 デ ー タ で あ り看 板 の よ うな
もの で あ る.常 に ユ ー ザ に 正 対 す る よ うに 回 転 が行 わ れ
て い る た め,ユ ー ザ が ど こに い て も文 字 情 報 を正 面 か ら
読 む こ とが 可能 とな っ て い る.こ の た め の 変 換 技 術 を ビ
ル ボ ー トと呼 ぶ.ビ ル ボ ー ドを行 うに は,画 像 が 常 に 参
加 者 視 点(カ メ ラ)を 向 い て い る必 要 が あ る.
カ メ ラ に 関す る もの は ビ ュー座 標 変換 が 決 め て い る.
図7海
ビュ ー座 標 変 換 行 列 に は,カ メ ラの 向 き,場 所 の 情 報 が
底 の 地 形 オ ブジ ェク ト
含 まれ て い る.こ れ を モ デル 座 標 変換 に使 用 す る.個 々
の モデ ル に は原 点 を 中 心 と した座 標 系 を 持 つ,こ れ が モ
デ ル 座 標 系 で あ る.
、げ 三
当
噸
'
藍
D
、
二」監 二.
〆
圏
トーー 1
]p
◆
鞠
鴇
∴
薦 鰹 惹翼 ㌧一 ・
ヨ
励
ぐ
図8海
∵ ・受
図9直
洋 生 物 の 視 覚 的教 材 を用 い た実 験 風 景
式 の 画 像.
例 え ば,カ
観 的 コ ン テ ン ツ と文 字 情 報 の融 合
メ ラ が あ る 座 標(X,y,Z)に
あ り,画
像 のあ
有 効性 評価 の た め の 対 照 実 験 で は,5名
ず つ の2グ ル
ー プ に 対 し一 方 に は 作 成 した 視 覚 的 教 材 を,も う一 方 に
る 原 点 を 見 て い る 時,ビ
ル ボ ー ドを 行 うに は 画 像 が カ メ
は 紙 に よ る資 料 で 学 習 を 行 わ せ,同
原 点 を 見 る ベ ク トル と 逆 の ベ ク トル を 持 た な い と い け な
ラ の 方 を 向 い て い な け れ ば な ら な い.つ
じ内 容 の 理 解 度 テ ス
ま り,カ
メ ラが
トを行 っ た.実 験 の 様 子 を 図8に 示 す.そ の 結 果,魚 の
い と い う事 で あ る.そ
大 き さな ど直観 的 な 内 容 を 問 う問 題 に つ い て は 作 成 した
ら カ メ ラ へ の ベ ク トル を 取 り出 す.次
教材 を利 用 した グル ー プ の 正 答 率 が 上 とな り,学 習 効 果
れ て い る 回 転 と 逆 の 回 転 を 加 味 す る.回
が 示 され た.反 面,魚
ル ボ ー ド用 の 変 換 行 列 か ら 逆 行 列 を 作 り使 用 す る.逆
とそ の名 称 を結 び 付 け る よ うな 文
字 情 報 が 重 要 とな る問題 に お い て は 改 善 が 見 られ な か っ
列 を 使 う の は,例
た こ とか ら,双 方 の 情 報 の 必 要 性 が 示 され る結 果 とな っ
て い る 時,ビ
た.
に45度
こ で カ メ ラ か ら で は な く,画
え ば カ メ ラ がY軸
像か
に カ メ ラに 与 え ら
転 は 取 得 した ビ
を 中 心 に45度
ル ボ ー ドを 行 うに は 図10の
行
回転 し
よ うに 逆 方 向
回 転 し て い る必 要 が あ る か ら で あ る.こ
の よ う
に す る と画 像 が 常 に カ メ ラ を 向 い て い る ビ ル ボ ー ド を 作
5.4文
字 情 報 の 提 示 と ビル ボ ー ド
成 す る こ と が 出 来 る.
前 項 の応 用 例 か ら,直 観 的 な コ ンテ ン ツで あっ て も教
育 効 果 を 向 上 させ るた め に は 文 字 情 報 が 必 要 で あ る こ と
が 分 か る.こ こで の 応 用 例 は 直観 的 コ ンテ ンツ と文 字 情
報 の 融 合 に 関 す る もの で あ る.
ま ず シ ナ リオ と して,古 代 の 恐 竜 テ ィ ラ ノサ ウル ス の
一25一
Vol.52No.1(2015.6)
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
5)C.Cruz-Neira,D.J.Sandin,T.A.Defanti:``SurroundScreenProjection-BasedVirtualReality:TheDesignand
建
一45度
ImplementationoftheCAVE",Proc.ofthe20thannual
conferenceonComputergraphicsandinteractive
techniques,pp.135-142,(1993)
6)小
木 哲 朗"没
開",ヒ
入 型 デ ィ ス プ レイ の 特性 と応 用 の 展
ュ ー マ ン イ ン タ フ ェ ー ス 学 会 論 文 誌,Vol.1,
No.4,pp.43-49,(1999)
7)3DModelsforProfessionals:TurboSquid
http://wwv航turbosquid.com/index.cfhl
+45度
8)瀬
戸 崎 典 夫"多
視 点 型VR教
的 な 活 用 に 関 す る 研 究"九
9830号,(2009)
図10ビ
6.ま
ル ボ ー ドの 原 理
とめ
本稿 で は 没 入 型 デ ジ タ ル 空 間 を再 現 す るた めの イ ン タ
フ ェー ス と してCAVEシ
ス テ ム を取 り上 げ,導 入 した シ
ス テ ム の構 成 と研 究 応 用 例 に つ い て 紹 介 した.応 用 の 中
で 行 わ れ た ア ンケ ー トで は 没 入感 に 関 して 高 い 評 価 を受
け る一 方 で,文 字 情 報 な どの 必 要 性 も言 及 され,仮 想 空
間 を 活 用 した 理想 的 な コ ンテ ンツ に 関 す る知 見 が 得 られ
た.今 後 は3次 元 物 体 モ デ ル や そ の ア ニ メー シ ョン,視
点移 動 な どを さ らに 洗 練 化 し,ユ ー ザ や コ ンテ ンツ 作 成
者 の 意 図 が よ り仮想 空 間 に 反 映 され や す い 環 境 の 構 築 が
必 要 とな る.ま たHMDで
は不 可 能 な,CAVEな
らで は の
特性 を 活 か した研 究 に つ い て もア イ デ ア を創 出 す る必 要
が あ る.例 え ば 複 数 人 に よ る協 調 作 業 は そ の ニ ー ズ の 一
端 とな る もの で あ る.
参考文献
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Antonov:``HeadtrackingfortheOculusRift",IEEE
IntemationalConferenceonRoboticsandAutomation
(ICR」 へ.),pp.187-194,(2014)
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3)H.Moustafa,H.Kenn,K.Sayrafian,W.Scanlon,Y
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4)畑
田 豊 彦"疲
経 エ
レ ク
れ
な い 立 体 デ
ィ ス プ
レ イ
を 探
る",日
ト ロ ニ ク ス,pp.205-223,(1988)
一26一
材 の 開発 お よび 効 果
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