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建 築 と 社 会 2015.07
中之島フェスティバルタワーにおけるサステナブル建築への取り組み
■すいせん者
丹羽勝己
㈱日建設計 エンジニアリング部門
設備設計グループ
設備設計部部長
0.015
0.014
0.013
0.012
0.011
0.010
0.009
0.008
0.007
0.006
0.005
0.004
外気冷房
取入条件
5
15℃
10
19℃
0.002
0.001
0.000
26℃
20
15
0.003
一般的な
自然換気
取入条件
25
30
35
乾球温度[℃]
(夏26℃,
60%上限とした場合)
図- 1 外気冷房有効範囲
外気
(利用していないEVホール)
●超高層ビルでの外気冷房
自然エネルギーを利用した空調シス
テムとして「自然換気」や「外気冷
房」が挙げられるが、
「自然換気」は
外壁に面した部分に開口を設ける必
要があり、超高層建築においては建
設投資という意味での費用対効果が
得られにくく、採用が困難である。
また、外気冷房に比べ、実施できる
期間が短く、室内環境にバラつきが
生じる可能性も高いため、空調機を
稼働させる事も多い。
一方、
「外気冷房」は外気取入れのた
めの動力は必要となるが、安定した
空調が可能で、適用可能な期間も比較
的長いため、外気冷房を採用する事と
し、建物機能上必要となる便所排気の
ボイドと、デッドスペースとなる通
過階のEV乗降ロビーを給気ボイドと
して有効活用した(図- 1 ,図- 2 )。
●省エネと室内環境維持の両立
省エネルギーのために室内環境を犠
牲にしてしまうと、居住者が愛着を
持てなくなり、長く使われる建物に
はなりえない。室内環境と省エネル
ギーの両立のためには、空調ゾーニ
ングの細分化、制御が必須となる。
空調機ファンインバーター制御も有
効ではあるが、インバーター制御の
最低値には限界があるため、空調機
自体を細分化し、ファン容量を小さ
くすることで、インバーターの効果
を最大限発揮することが可能となる。
室内制御に関しても、負荷形態の異
なるペリメーターとインテリアに分
けた風量制御での室温度の均一化や
人感センサーでの外気風量制御を行
うことで、省エネルギーを図ること
ができる。本建物では 1 フロアに空
調機を20台、ゾーニングを空調機毎
に 2 系統とし、40ゾーン/階の制御を
行うこととした(図- 3 )。
●居住者の省エネへの関与
居住者が「興味を持つシステム」とする
ため、入居テナントに経済的なメリッ
トがある空調課金方式を変更した。
従来の空調課金はコアタイム制が多
く、コアタイムから逸脱した早朝や、
残業時の空調については、稼働時間
によって課金されることとなってい
る。しかし、空調料金を月総時間制
とすること、例えば昼休みに空調停
止をした場合、停止時間分を早朝や
残業時の空調運転時間に充当できる
等のシステムとすることで、居住者
が空調運転停止に積極的に関与、意
識できる環境とした(図- 4 )。
建物外観
7.2m
●可変する外皮性能
当該敷地は 2 本の川及び幅員の広い
前面道路の 3 方が開放されており、
都心には珍しく景観に恵まれた環境
下にある。
室内環境をより良好にするため、
Low-Eガラスではなく、シングルガラ
スによるエアフローウィンドウを採
用する事とし、環境と省エネルギー
の両立を図った。
通常、エアフローウィンドウは 2 重
ガラス内に溜まった熱気や冷気を強
制的に排出する事で断熱性能(熱貫
流抵抗値)を高めているが、中間期
や日射が生じていない時間に関して
は、断熱性能が高いために内部での
発熱が外部へ放熱できない状況が発
生している。
一般的に、
「外皮性能が高い=内部へ
の負荷が少ない」というところのみ
着目されるが、実際の運用状況にお
いては内部でも発熱が生じており、
除去する熱量が多くなっていること
も考慮しなければならないと考える。
エアフローウィンドウの断熱性の肝
である排気を停止し、意図的に外皮
性能を低下させることで、外気への
放熱が促進し、空調動力・熱量、エ
アフロー排気ファン動力の削減が可
能と考えられる(図- 5 )
。
実測結果より、冬期においては日射
が生じている時間帯は排気を行って
いる方が一次エネルギーは低いのに
対し、日射が生じなくなった時間に
おいては排気を行わない方が小さく
なっている(図- 6 )
。
また、排気有無による窓表面温度は、
日射が生じている時間帯では約6℃の
温度差が発生しているが、日射が生
じていない場合は1℃程度の差しか生
じていない(図- 7 )。
排気
(エコボイド)
図- 2 外気冷房ルート
VAV
VAV
人感センサ
外気停止
室温維持
又は緩和
テナント
オフィス
室内空調機
外気処理空調機
図- 3 オフィス空調システム
従来:コアタイム制
本施設:月総時間制
コアタイム
月
月
1日
1日
10日
10日
20日
20日
貸料に含まれる
空調時間
時間外空調
30日
8:00
19:00
時刻
30日
8:00
19:00
時刻
図- 4 空調課金システム
在室時
不在時
排気
排気
夏
外気
排気
日射なし
冬
排気
排気
冬
外気
排気
日射なし
外気
春・秋
外気
日射なし
外気
日射なし
夏
外気
春・秋
外気
外気
外気冷房時
外気冷房時
排気
日射なし
春・秋
排気
日射なし
外気
春・秋
二重ガラス内排気の方が
望ましい時がある
外気
図- 5 アクティブスキン概念図
熱量
一次エネルギー量
1月11日
(金)
排気あり
1月11日
(金)
排気あり
1月16日
(水)
排気なし
1月16日
(水)
排気なし
300
140
250
120
200
100
150
80
100
60
50
40
20
0
-50
8
9
0
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 時刻
図- 6 一次エネルギー量
●今後の展望
アクティブスキンの効果については
期間・時刻や方位について限定的で
はあるが、有効であることが分かっ
た。しかし、日中でも排気を可変さ
せる必要があり、制御システムとし
て複雑になってしまうため、検討
が必要である。フェスティバルタ
ワー・ウエストも建設中のため、改
良を行っていきたい。
ペリメータ
インテリア
61.2m
昼休み停止
■青年技術者のことば
昨今の建築物、特に設備システムは
オートメーション化が進み、省エネ
ルギーの殆どが機器効率やシステ
ム制御で成り立っており、建物管
理者や設備設計者・施工者のみの
閉じられた領域で完結している。
そのため、実際に利用する建物使
用者が介在する事は殆どなく、
「ど
のようなエネルギー」が、「どの
ような個所」で「どれだけ使われ
ているか」を把握する術もなけれ
ば、興味を抱くような仕掛けもな
いのが現状である。
利用者が興味を抱けないと、親し
みを持てないと、居住者・利用者
自身が長く使い続けることや、エ
ネルギー消費を少なくしようとい
う意識をも低下させてしまい、結
果として建物そのものの存在価値
が薄れることとなる。
そのような事から、私は設計を行
うにあたり、ソフト面では利用者
が如何に興味をもち、関与し、親
しみを持つことができるか、ハー
ド面では自然エネルギーを有効利
用できる設備システムを構築でき
るかを熟慮し、建物利用者から親
しみを持たれ、長く使われる建物
を設計していきたいと考えている。
0.016
昼休み
生年月日 1981年12月 2 日
最終学歴 工学院大学大学院
工学研究科
建築学専攻 修了
業務経歴 2006年 ㈱日建アクトデ
ザイン入社
2013年 ㈱日建設計入社
設備設計部門設備設計部
2015年 エンジニアリング
部門監理グループ監理部
●担当した主なプロジェクト
2006年 リゾートトラスト/エクシ
ブ有馬離宮
2007年 中之島フェスティバルタ
ワー
2008年 京都産業大学/生命学部棟
2008年 総武カントリークラブ
2009年 須磨区役所/須磨保育所
2010年 尼崎塚口統合新病院
2012年 近畿大阪銀行本店空調改修
2012年 松江市新体育館
2013年 中之島フェスティバルタ
ワーウエスト
0.017
61.2m
松 島 孝 幸
0.018
)]
A
D
g(
/k
kJ
ピ[
ル
タ
ン
エ
比
絶対湿度[kg/kg
(DA)
]
中之島フェスティバルタワーは、51
年間に渡りたくさんの方に愛された
フェスティバルホールを再生しなが
ら、高層にテナントオフィス、中層
に朝日新聞社が入居した文化・経
済・情報の発信拠点として2012年10
月に完成した。
次世代に渡って愛され続ける「サステ
ナブル建築」を目指して、良好な室
内環境を維持した上で、熱源・ホー
ル・オフィスなどの既存技術を進化
させ、建物の省エネルギー化やヒー
トアイランドの解消を図った。
一次エネルギー量[MJ/h]
青年技術者
設備部門
室内側ガラスへの侵入熱[W/m2]
38
30.0℃
28.7
排気あり
27.5
26.2
11日 13時
11日 18時
24.9
23.6
22.4
排気なし
21.1
19.8
16日 13時
16日 18時
図- 7 窓面温度