送風機について

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送 風 機 に つ い て
空調などに使われる汎用電動送風機(ファン)には、圧力によって区分があり
羽根車の種類で大きく4種類に別けられます。
圧力の区分
・送風機 : 圧力が10kPa以下のもの(圧力比が1.1未満)
・ブロア : 圧力が10kPa以上のもの(圧力比が1.1~2.0以下)
・圧縮機 : 圧力が0.1MPa以上のもの(圧力比が2.0以上)
羽根車の種類と特徴
羽根車名称
特
徴
シロッコ
一般的に多翼ファンとも呼ばれ、送風機の代名詞のよ
うに言われています。小型でも一定の風量が得られエ
アコンなどの送風などにも採用されています。
ターボやエアホイルなどに比べると効率が低く騒音
も比較的高くなります。汚れると掃除が困難。
タ ー ボ
回転方向に対して羽根を後ろ向きして抵抗を減らし
ています。効率が良く騒音も低い。風量、静圧とも広
範囲に使用できます。
形
状
ターボファンの一種で、羽根の形状をより効率的にし
エアホイル ている。最も効率が良く、特に騒音は大幅に低くなり
ます。
プレート
ターボやエアホイルに比べて効率は劣りますが、羽根
車の構造がシンプルで、粉塵や粉体を含むものまで対
応できます。掃除が容易。
注 記)上記資料は「昭和電機株式会社」のWEBサイトから引用しています。
一般的に、焙煎機に装備されている送風ファンのタイプは、
「送風機」の部類に
該当します。
コーヒー豆の焙煎は、排気にチャフなどの粉塵が含まれるので、マイスターの
送風機には焙煎用、冷却用共に「プレートタイプ」を採用しています。
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マイスター5に搭載している焙煎用の送風機
メーカー : 昭和電気株式会社
電動機仕様
保護方式 : 全閉外扇形
出
力 : 0.1kw
送風機仕様
風
量 : 6.0㎥/min
静
圧 : 0.85kPa
極
数
相
電
圧
電
流
周 波 数
絶 縁 種
吸入温度
ケーシング
羽根車形式
羽根車材質
軸
吐出方向
:
:
:
:
:
:
2極(POLES)
3(3Φ)
200V
0.8A
60Hz(固定)
F種
:
:
:
:
:
:
250℃(耐熱仕様)
ADC12
プレート式
SS400
S45C
上部水平
マイスターに搭載している焙煎用の送風機を駆動させているモータは2極仕様
です。一般的に汎用交流誘導モータは4極仕様のものが多い。
モータの極数(POLES)とは
電動機の中に出来る磁極(電磁石)の数を言います。
「N極」と「S極」が一対
あれば2極、二対あれば4極です。基本的に偶数。一般的に汎用の小型交流誘
導モータは4極のものが多い。極数が多いほどトルクは強くなります。
交流誘導(インダクション)モータの特性
交流誘導モータの回転数は、電気の周波数に拘束されます。発電所から電線を
通して送られてくる電気は「交流」です。交流には周波数があり日本では電力
会社の供給約款で「東日本を50Hz」「西日本を60Hz」に別けています。
交流誘導モータの同期回転速度「Ns」は次式で表されます。(無負荷の場合)
Ns =(120×F)÷ P
P : モータの極数
F : 電源周波数(Hz)
120 : 定数
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交流誘導モータは、送風機だけではなく、釜を回転させているモータについて
も同じ事が言えます。東日本と西日本で回転数が2割(50Hz:60Hz)
違うという事は、同じ容量のモータを使っても仕事量が2割違うという事です。
焙煎機の釜に熱を入れているのは、送風機による送風によるものです。従って、
同じ焙煎機でも、同じ火力、同じダンパー開度で操作しても、東日本と西日本
では釜に入る熱量が違います。
これを火力やダンパーを駆使して、その現場環境に最適な調整をするのですが、
従来の焙煎機のように機械式のダンパー1 個で排気を安定させるのは至難の業
です。
気体はダンパーを閉めて口径を小さくしても、元からの排気力(吸引力)を落
さない限り、流速だけが上がって結果的に変化の無い風量を送ってしまいます。
一般の交流誘導モータは、電源をONにすると常にフルパワーで作動します。
排気量が一定にならないという事は、釜に入って来る熱量も安定しないという
事なので、焙煎がブレる原因になります。送風機の排気性能はモータの回転数
に依存しています。
仮に、東日本で使用していた焙煎機を西日本で引き取った場合、一般的な4極
モータは1500rpm が1800rpm で回転します。従って、釜に入る熱量が
違って来ます。また、釜や冷却のモータも同じなので攪拌状況や冷却力も一変
します。ガス種も都市ガスとLPガスとでは圧力の読みが違います。
東日本のデータは、そのままでは西日本で水平展開できません。この逆もあり。
マイスターは、焙煎用の送風機をインバーター制御して、モータの回転を元か
ら可変させて排気の調整をしています。
汎用の交流誘導モータをインバーター制御するためには、家庭用の100V単
相電源ではなく、商業用の200V三相電源が必要になります。
搭載しているインバーターは、100V単相電源を200V三相電源に変換す
る機能も備えていて、使用する周波数は「60Hz」を上限になるように固定
設定しています。
焙煎用の送風機モータは、電源周波数を変える「可変周波数(0~60Hz)」
で回転数を制御しています。
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マイスター2.5に搭載されているインバーター
メーカー : 富士電機機器制御株式会社
標準仕様
標準適応モータ : 0.1Kw
電源系列 : 単相100V
出力電圧 : 3相200V(50Hz、60Hz)
入力電圧 : 単相100V(50Hz、60Hz)
直流制動 : 制動開始周波数0.0~60.0Hz
保護構造 : IP20閉鎖形
表示はモータの回転数に置き換えています。モータが1205rpm であることを
示しています。5k、10kタイプにも同じものが操作盤の中に組み込まれて
いて、出力端子からデータを取り出し、タッチパネルに再表示させています。
インバーターとは
直流の電流を、交流の電流に変換する回路です。家庭用の100V単相交流電
源を、一旦「直流」に変換します。その直流を、また周波数上限を60Hzに
固定した200V三相交流電源に変換して送風機に供給しています。
従って、マイスターの焙煎用送風機は、周波数に関係なく、全国どこでも同じ
設定、同じ操作が可能です。
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また、送風機のモータは全ての機種で2極仕様なので、計算上は4極モータの
2倍の回転数で作動しています。同期回転速度「Ns」は
(120×60Hz)÷ 2極 = 3600rpm(4極は1800rpm が上限)
実際の負荷時は滑りや機械効率などがあるので、3400rpm(メーカー値)。
焙煎の排気には、ここまで高速回転させる必要が無いので800~2000rpm
を実用稼動範囲に設定しています。
それでも4極モータに比べ、より広範囲により確実に作動させる事が出来ます。
冷却側はインバーターしていないので、フルパワー3400rpm で稼動します。
絶縁種は、「F種」に設定しています。
絶縁種とは
モータ巻線の耐熱グレードをいいます。モータに電流を流すと電気損失による
発熱で温度が上昇し、数時間経過すると一定の温度に達します。モータと周囲
の温度との差を「温度上昇」といい、この値が高く成り過ぎると絶縁物の劣化
を早めたり、焼損する恐れがあります。
温度上昇と電動機寿命の関係は、巻線に使われる絶縁材料によります。通常は、
10~20年の使用に耐えるように設計されていますが、使用温度が高くなれ
ば寿命を短縮するので、絶縁クラスの適正が求められます。
一般的な汎用モータは、何も指定しなければ「E種」が多い。
絶縁種の分類
絶縁クラス
巻線絶縁材料許容最高温度
A
種
105℃
E
種
120℃
B
種
130℃
F
種
155℃
H
種
180℃
焙煎機のように、比較的周囲の温度が高くなる状況で駆動させる場合は、高め
の設定が望まれます。
また、温度で通電を開閉する「サーマルプロテクタ」という安全装置も併設し
ています。保護方式は「耐熱仕様の全閉外扇形」です。
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サーマルプロテクタとは
モータが何らかの異常事態によって巻線の温度が著しく上昇した時、設定温度
以上になると自動的に通電を遮断し、回転を止めて焼き付きを防止し、温度が
下がると通電を再会するという安全装置です。
全閉外扇形(ぜんぺい がいせん がた)とは
いかなる方向からも水滴や塵芥などが入る開口部をなくした全閉型とした上に、
回転軸に羽根(外扇)を取り付けて外被表面を自冷する形式をいいます。
耐熱仕様は、モータとケーシングの間にも羽根を装備してモータへの熱伝導を
遮断する構造になっており、標準的な仕様とは区別されます。
耐熱仕様
の外扇
自冷用の外扇あり
外扇なし
記)大和鉄工所
出 展 (参考資料)
・昭和電機株式会社 WEBサイト
岡
崎