橋梁のノージョイント化に用いた延長床版基部と 背面地盤の相互作用の数値的検討 秋葉 翔太 構造強度学研究室 2015 年 2 月 13 日 § 背景 伸縮装置の役割 • 上部構造の伸縮を吸収 • 平坦性・連続性を維持 伸縮装置の問題点 • 雨水・融雪剤の流入口 • 振動・騒音の発生源 • 交通荷重による損傷 ' $ & % 伸縮装置は橋梁の弱点のひとつである → 伸縮装置をなくしたノージョイント化が望ましい [1/12] § ノージョイント化の例 ジョイント部を連結すると 連結部に大きな応力が生じる (数値解析によっても確認済み) ⇓ 「既設橋梁のノージョイント工法の設計施工手引き (案)」 ダブル埋設ジョイント • 適所にゴム支持を使用 • 特殊な舗装材料で伸縮を吸収 延長床版システム • 床版を土工部側へ延長し • 伸縮装置を桁端から離す 延長床版システムを参考にノージョイント化 [2/12] § 現状のアプローチの課題 既存のノージョイントモデル 胸壁背面を完全拘束 → 胸壁の移動を考慮していない ' 胸壁背面を完全拘束 & ' 胸壁の移動を考慮 $ $ % & % 延長床版の変形・応力を正確にモデル化できていない 本研究 胸壁と地盤の相互作用を考慮し,胸壁の移動を現実的に表現 [3/12] § 解析モデル · · · 長篠大橋 (2 ヒンジ上路アーチ) をモデル化 • 解析方法: NX Nastran の線形弾性解析 床版:ソリッド要素,主桁・シェル要素,鉄筋・主構造:梁要素 • 許容値:安全性の基準の目安 (越えても問題はない) 圧縮側 11.0 MPa (設計基準強度 30 MPa の RC の許容曲げ圧縮応力度) 引張側 87.5 MPa (許容ひび割れ幅算定式から求めた鉄筋強度) • 荷重:活荷重 (B 活荷重) + 死荷重 + 温度荷重 (±25 ˚C) ' L 荷重載荷位置 $ 橋軸直角方向 (対称載荷) 10.4m 80m 11m 橋軸方向 (半載・全 9 パターン) 有限要素モデル & % [4/12] § 地盤の作用のモデル化 • 地盤を考慮する場合 • 地盤を考慮しない場合 ⇒ 境界条件で表現 胸壁各面の水平線形ばねで表現 (背面・前面のばねは圧縮のみ作用) 道路橋示方書に示される 地盤反力係数 を元にばね剛性を決定 • 水平地盤反力係数 kh (背面・前面) • せん断地盤反力係数 k s (底面) [5/12] § 地盤の作用を考慮したノージョイント化の影響 地盤の作用を考慮した場合の主応力を 地盤の作用を考慮しない場合と比較 (圧縮側: 11 MPa,引張側: 87.5 MPa) A 点に生じる圧縮主応力 ' 最大圧縮主応力が30 %低減 & $ ' C 点に生じる圧縮主応力 最大圧縮主応力が5 %低減 & % $ % • 地盤の作用を考慮することで,床版の圧縮主応力が低減 • 主桁端部付近では,許容値を上回る圧縮主応力が生じた → やや高強度なコンクリート (許容曲げ圧縮応力度 13 MPa 程度) を用いる [6/12] § 地盤の作用の強さ 胸壁の境界条件が床版の応力に与える影響が明らかになった { さらなる疑問 • 胸壁の高さは影響するか? • 地盤の剛性の違いはどのように影響するか? ' $ 1) 胸壁高さの検討 胸壁高さを変更し,床版の応力や 端部の変位に与える影響を調べる & % ' $ 2) 地盤の剛性の検討 地盤の剛性が大きい場合, あるいは剛性が小さい場合の 床版の応力や変位への影響を調べる & % [7/12] § 胸壁高さの影響 (温度上昇時) 胸壁高さを変更 (H = 2, 4, 6, 8 m) A 点の最大圧縮主応力 (+25˚C) A 点の圧縮主応力分布 (H = 8 m) ' & H = 2 m の場合の 2.39 倍 $ % 胸壁が高いほど圧縮主応力が増加 → 胸壁頂部の変位・回転が関係 胸壁を高く設定する場合,胸壁の剛性を大きくする必要がある [8/12] § 胸壁高さの影響 (温度低下時) 胸壁高さを変更 (H = 2, 4, 6, 8 m) 胸壁端部の水平変位 (−25˚C) 胸壁が高いほど水平変位が減少 H = 8 m の場合 胸壁端部水平変位: 4.6 mm (H = 2 m の場合の 0.71 倍) 胸壁が高い ⇓ 根入れ深さが深くなることで 地盤の押し返しが強くなる 胸壁高さが低いほど,舗装のひび割れ等が生じる可能性が高くなる [9/12] § 地盤の剛性が大きい場合 剛性の大きい地盤 → 地盤反力係数 k = ∞ (橋軸方向固定) ' A 点周辺の圧縮主応力分布 $ 温度低下時,胸壁側に大きな圧縮 ⇓ 胸壁前面が拘束されることで 床版収縮時にせん断が生じる & 許容値: −11.0 MPa % 剛性の大きい地盤を使用する場合 胸壁隅角部周辺の補強等の対策をする必要がある [10/12] § 地盤の剛性が小さい場合 剛性の小さい地盤 → 地盤反力係数 k = 0 (橋軸方向自由) B 点周辺の圧縮主応力分布 ' 温度低下時,延長床版下面に やや大きな圧縮主応力 ↓ 胸壁前面の拘束がなくなって 延長床版の曲げ変形が大きくなる $ 胸壁端部水平変位: 13.2 mm 温度低下時,大きな水平変位 & 許容値: −11 MPa % 剛性の小さい地盤を使用する場合, 延長床版の鉄筋量を増やして変形を抑える必要がある [11/12] § 結論 • 胸壁と地盤の相互作用を線形ばねでモデル化することで,地盤が ノージョイント化に与える影響が定量的に明らかになった. • 胸壁高さや地盤の剛性といったパラメータが,床版の応力や変 位に与える影響が明らかになった. • 床版の一部には許容値 11 MPa を上回る圧縮応力が生じたが,より 高強度なコンクリート (圧縮応力度 13 MPa 程度のもの) を使うこと で,ノージョイントモデルを安全に供用できることを示した. [12/12] § 地盤反力係数算定式 · · · 道路橋示方書 IV 下部工編 1) 水平地盤反力係数 kh (kN/m3) √ −3/4 BH 1 kh = αE0 0.3 0.3 E0:地盤の変形係数 (kN/m2), α:補正係数 (= 1) B:胸壁の幅 (m), H :胸壁の高さ (m) 変形係数は E0 = 2800 N として推定 (N は N 値) 2) せん断地盤反力係数 ks (kN/m3) ks = 0.3kh [13/12]
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