新たなUIで生まれ変わった NTTドコモの『dTV』

Special Inter view
新たなUIで生まれ変わった
NTTドコモの『dTV』
多彩なコンテンツと視聴スタイルで
動画配信サービス市場をリード
2015 年 4月22日、SVOD( Subscription Video on Demand:定額制動画配信)
として国内最大の会員数を持つ『 dビデオ』を『 dTV 』へとリブランドしたNTTドコ
モ。新サービスではテレビ視聴のようなザッピングを実現した新しい UI( ユー
ザー・インターフェース)に加え、専用アダプター『 dTVターミナル』でテレビにつ
黒船上陸は脅威かチャンスか
「通信と放送の融合」。この言葉を聞く
すが、オンラインショップでの販売もリブ
ランド発表以降予想以上に伸び、それま
での約1.7倍となりました。また、dTVター
ミナルの販売についてもオンラインでの良
いスタートダッシュが切れています。店頭
販売はスタッフが新商品に慣れるまでの
期間が必要なこともあり、これからだと
思っています。
ファーウェイが提供した
『 dTVターミナル』。docomo ID自動設定により、
自宅でWi - Fiにつなぐだけで簡単にセット
アップが完了、
テレビをつけるとすぐに動画を再生できる。dTVに加え、dアニメストアのコンテンツも視聴可能
大元:dターミナルの店頭販売も、店舗
側の準備が整えばさらに期待できるとい
ようになって久しいが、米国ではまさに業
うことでしょうか。
界の垣根を超えた再編が進んでいる。米
大 島 氏:そう考えています。全 体のボ
通信大手ベライゾン・コミュニケーション
も身に付け始めている。
エクスペリエンス)
が大きく変更されたの
リュームとしては店頭の方が大きいです
ズがネットメディア大手 AOLを44 億米
そのNetflixが日本に上陸するとあっ
で、開始直後はそこに戸惑われたお客様
から、今後伸びていくでしょう。
ドル(約 5 , 280 億円 )で買収したほか、
て、国内ではVODに注目が集まっている。
からネガティブな反応もありましたが、最
AT&Tによる衛星テレビ大手 DirecTVの
しかし、有料放送契約が当たり前の米国
近では「おもしろい」
「 簡単」
「 使いやす
大元:dTVターミナルで動画をテレビで
買収が規制当局の承認待ちとなってお
に対し、日本では無料で楽しめるテレビ
い」
といったご意見や、
『 新宿スワン』
『進
視聴したいというユーザーは、オンライン
※
なぎ、付属のリモコンを使えば、
さらにテレビと同様の楽しみ方が可能になります。
り、衛星テレビのディッシュ・ネットワー
放送があり、有料放送契約世帯の数は2
撃の巨人』などのオリジナル・コンテンツ
で申し込みをするようなリテラシーの高
海外勢の進出でますます競争が激化するSVOD市場で、生まれ変わったdTVはどん
クとTモバイルの合併交渉が進行中とも
割に過ぎず、状況が大きく異なる。国内
が楽しみだという声が多く聞かれるよう
い層ではなく、店頭購入のほうが親和性
な強みを発揮するのでしょうか。ITビジネスアナリストの大元隆志氏が、NTTドコモ
報じられている。こういった交渉の背景
有料動画配信最大手であるdTVでも会
になってきました。
が高いように思えますが、実際はオンラ
スマートライフビジネス本部マーケットビジネス推進部デジタルコンテンツサー
には、スマート・デバイスの普及や広告ビ
員数は 450 万人、Huluも国内サービス
ビス担当部長の大島直樹氏にお話をうかがい、市場動向とdTVの優位性について
ジネスの転換など、さまざまな要因が複
開 始から 4 年をかけてようやく会員数
大元:UI / UXの変更については、以前、
すね。
雑にからむが、そのひとつに有料動画配
100万人を突破した。両者の数を合計し
同サービスを運営されているエイベック
大島氏:ドコモの
『 dstick 』やグーグルの
信最大手のNetflixの躍進がある。
ても、レンタルDVD 利用者やテレビ視聴
ス通信放送の村本理恵子取締役にお話
『 Chromecast 』など、これまでにもテレ
Netflixは1997 年に宅配 DVDサービ
者の数と比較すればまだまだ小さい市場
をうかがった時に、SVODの課題はユー
ビで動画を視聴する手段はありました
スとして創業し、2007 年からネット配信
だ。業界関係者の間では、Netflix 上陸
ザーが大量にあるコンテンツから自分が
が、従来のデバイスはコンテンツを選択
を開始した。米国では世帯の 8 割超が
は脅威ではなく、国内でのVOD市場拡大
見たいものを選べないことであり、テレビ
するにはスマホをリモコン代わりにする
ケーブルテレビや衛星放送などの有料
のためのチャンスと捉えられている。
のように流しっぱなしのUXを提供するこ
必要があり、これを不便と感じていた方
契約でテレビを視聴しており、月額利用
黒船上陸を前にリブランドを果たした
とで、ユーザーの視聴時間を増加させる
も少なくありませんでした。dTVターミナ
料金は約 1 万円前後。対してNetflixは
dTV 。拡大するVOD 市場において、国内
狙いがあるとおっしゃっていました。そう
ルでは付属のリモコンで操作性が良くな
という価格
月額 7 . 99 米ドル(約 959円 )
最大の同サービスはどのような戦略で攻
した面では変化は見られるのでしょうか。
りましたので、その点に興味を持たれた
で全コンテンツが見 放 題 。ケーブルを
めていくのだろうか。
大島氏:はい、視聴時間やユーザーのア
方が大勢いらっしゃったのではないかと
クティブ率が増加するといった効果は出
見ています。
解説します。
※
「コードカッ
カットしてNetflixへ移行する
だ。現在では会員数約 6 , 200 万人、50か
UI 変更で視聴時間増加、
新規獲得にも効果
国でサービスを展開するグローバル企業
大元:4月22日に新たな動画配信サービ
大元:リブランド後の販売状況はいかが
へと成長している。さらに2013 年にはオ
ス・ブランドとしてdTVをスタートされま
ですか。
大 元:d T V の競 合はどこだと見ていま
リジナルドラマ
『ハウス・オブ・カード』を
したが、既存ユーザーからの反応はいか
大島氏: dTV の主な販売チャネルには
すか。
製作し、テレビ界のアカデミー賞である
がでしょうか。
オンラインでの申し込みとドコモショップ
大島氏:国内では最近プロモーションを
エミー賞を獲得するなど、単なる動画配
大島氏: dビデオからdTV へのリブラン
等の店頭での販売の2つがあり、これまで
強化されているHuluや、今秋の日本上
信事業者の枠を超えたコンテンツ制作力
ディングによって U I / U X(ユーザー・
と同様に店頭でのサービス販売は順調で
陸が話題となっているNetflixといった
ティング」
という言葉まで生まれたほど
NTTドコモ スマートライフビジネス本部マーケットビジネス推進部
デジタルコンテンツサービス担当部長 大島直樹氏
インからの加入が多いというのは意外で
てきていますね。
月額500円で12万作品見放題、
ダウンロードも可能
※1米ドル120円換算
12
/ JUL. 2015
/ JUL. 2015
13
サービスですね。
〈 dビデオのユーザーインターフェース 〉
〈 dTVのユーザーインターフェース 〉
大元:競合に対する優位性について、ど
①
のようにお考えですか。
大島氏:まずは12万作品という圧倒的な
きるよう準備している段階です。
だ。日本のテレビ放送の視聴スタイルに
することでMNOのサービスを選択しても
大 元:今 後の展 開を楽しみにしていま
なじんだユーザーをよく研究されてつく
らうというのも重要な戦略ではないかと思
す。本日はありがとうございました。
られたデザインであり、米国流のNetflix
いますが、dTVにもそうした狙いがあるの
コンテンツ数と、数だけではなく他では見
②
られない良質なオリジナル・コンテンツが
でしょうか。
大島氏:まず、dTVはドコモ回線ユーザー
やHuluにはない視点だろう。これらに加
競合サービスを一歩リード、
インフラとの連携が課題
るのもdTVの優位な点だ。
えてドコモの顧客基盤と販売網を生かせ
揃っていることです。その中からザッピン
に限らない、いわゆるキャリアフリー・
Netflixの上陸後、dTV、Huluとどのよ
VODとして見れば他社より優位な位
グUIと高度なレコメンド機能により、観た
サービスとして、MVNOを含め他社回線
うに競い合うのかが注目の的だが、筆者
置にあるdTVだが、懸念がないわけでは
い作品に出会うことができます。これを
ユーザーの方にもご利用いただくことを
はdTVが一歩先を進んでいると見ている。
ない。dTVをNTTドコモのサービスとして
月々わずか500円で好きなだけ楽しめると
目指しています。一方、ドコモの契約で
この3社が提供するSVODは、価格とコン
見た場合には、方向性が見えづらい点が
いうコスト・パフォーマンスは、どこにも負
は高品質なネットワークを使いやすい料
テンツと視聴デバイスが主な差別化要素
ある。格安スマホの普及が進む現状にお
けないと考えています。dビデオの頃から
金プランで提供していますので、より快
となる。価格はdTVが500円で提供してい
いて、携帯通信事業者としては帯域を消
エイベックスが培ってきたコンテンツの制
適にdTVを楽しんでいただけますし、今
るため、競争の下限は限られている。コン
費するリッチ・コンテンツで顧客をつなぎ
作力や調達力と、
ドコモの顧客基盤が相
後はドコモ・ユーザー限定の特典も検討
テンツについてはライセンスとオリジナル
とめることは重要だ。dTV はまさにこの
していきたいと考えています。
の2 種類に大別できるが、すでに飽和状
リッチ・コンテンツであり、LTEで視聴す
態となっているライセンス・コンテンツで
ると2 時間映画 1 本で1 . 5 GBほどのデー
差別化できなくなるのは時間の問題だ。
タ量が発生する。しかし、NTTドコモの
オリジナル・コンテンツは現状では数が少
データM パックの利用可能データ量は
乗効果となって、この価格が実現できて
います。また、他のVODにはない機能とし
UI 変更によりザッピング視聴が可能に。画面上部のチャンネルバー(①)を左右にフリックするだけでジャンルの
切り替えができ、
アプリ起動時に映画・ドラマの予告編が自動再生される
(②)
てコンテンツのダウンロードに対応してい
ることも強みです。
ライブ配信も強化、
4 K 対応はこれから
むdサービス全体のコンセプトとして、ド
ないかと想起されますが、dTVはそういっ
大元:海外の通信事業者の動向を見て
なすぎて、無料試聴期間で観ることがで
5 GB 。つまり、dTVで映画を月に3 本も見
大元:VODでコンテンツがダウンロード
コモのサービスを外出先でも自宅でも利
たドコモの加 入 者 促 進 戦 略の一 役を
いると、LTEブロードキャストの技術を
きる程度なので、まだ差別化要素と言え
れば、簡単に上限に達してしまうのだ。
できるのはすごいですね。そもそもコン
用していただくことで、新たなライフスタ
担っているのでしょうか?
使ってスポーツを中継し、スマートフォン
るほどにはなっていない。視聴デバイス
dTV 単独での競争力に加え、インフラ側
テンツ提供を交渉する時に、著作権者
イルを提案するという狙いがあります。
大島氏:ドコモ光をお勧めする際には、
でライブで楽しむという事例も出てきて
についても主要なデバイスには3 社いず
もその魅力を最大限に発揮できる状態に
TVサービスとVODサービスをリーズナブ
います。dTVは多数のアーティストが所
れも対応しているため差別化は難しい
なっていることが望ましいのではないか。
は違法コピーを恐れてダウンロードがあ
るサービスには供給したがらないのが一
大元:dTVターミナルはファーウェイ製品
ルにお使いいただけるよう、ひかりTVと
属するエイベックスとの共同事 業なの
が、dTVターミナルでテレビ機器と接続
Netflix 上陸によってVOD 市場がさら
般的かと思います。
を採用されていますが、どのような点が
dTVをセットでお勧めしています。その意
で、コンサートのライブ配信などにも力を
し、専用リモコンで操作できるのは dTV
に拡大すると仮定するなら、MNO 事業
大島氏:そういった交渉を実現できたのも
決め手となったのでしょうか。
味では加入者促進戦略に寄与している
入れていかれるのでしょうか。
の利点だ。
者は「 VODを生かすためのデータ通信プ
エイベックスとドコモのタッグがあってこ
大島氏:こちらが望む機能と価格とのバ
と言えますね。
大島氏:エイベックスが毎年開催してい
現状の競争だけでもdTVは他社の先
ラン」を準備することで、回線契約獲得
そだと思います。dTVのサービスはモバイ
ランスが良かったということがひとつで
というイベントのライブ配
る
『 a-nation 』
を行っているが、さらにUI / UXを日本人
の機会につながるかもしれない。
ルでの視聴を前提としているので、ダウン
す。また、新しいUXの提供を実現するた
大元:NTTグループの映像サービスとし
信を、昨年トライアルとして実施しました。
の視聴スタイルに
「最適化」
している点が
ロードは譲れない点でした。移動中にも
めにわれわれと一緒にトライしようという
ては、ひかりTVもあれば、NOTTVもある、
今後はエイベックスさんの強みを生かす
最大のポイントだ。NetflixとHuluはユー
安定してコンテンツを楽しんでいただくた
姿勢と、短期間で迅速に対応してくれた
さらにdTVもあるわけですが、グループ
という意味でも、音楽イベントなどのライ
ザーが見たいコンテンツを選択して動画
めには、通信環境に依存しない視聴スタ
点も重要でした。
間での競争はないのでしょうか。
ブ配信には積極的に取り組んでいきたい
が再生される。これは一見便利なようだ
大島氏:ひかりTVとNOTTVは放送事業
と考えています。
が、数万点ものコンテンツの中からひとつ
イルを提供する必要があります。自宅で
取材・文
大元隆志(ITビジネスアナリスト)
大手システム・インテグレーターで通信
事業者のインフラ構築、設計、企画など
ドコモの
サービス戦略におけるdTV
であり、dTVのVODサービスとは事業領
域が異なります。競争というより、それぞ
大元:Netflixは4K対応をアピールするこ
この点をdTVはSVODの弱点と捉え、テレ
いった視聴スタイルは、ストリーミングの
「ドコモ
大元:NTTドコモは今年 3月から
れのサービスを組み合わせて動画の視聴
ともあります。通信事業者の視点では、
ビと同じ
「流しっぱなし」のUIを再現し、
ム)
アワードの審査員も務める。
『ビッグ
みの他社のVODでは実現できません。
光」
のサービスを開始しました。これまで
形態や視聴できるコンテンツの幅を広げ
画質も当然ながら、通信インフラという点
コンテンツを選ばなくてもリラックスして
データ・アナリティクス時代の日本企業
移動体通信が中心だったドコモが、ドコ
ることで、より快適な映像ライフをお届け
にも配慮する必要があると思いますが、
テレビの前に座っていれば編成された映
大元:dTVには単なるVODにとどまらず、
モ光で固定通信を提供し、dTVターミナ
できると考えていますので、相乗効果や
dTVでの4K配信はどうお考えですか。
像コンテンツが次々に再生されるという
新たな視聴スタイルの提案という要素も
ルでテレビを通じて家庭の中に入り込む
補完効果を期待しています。
大島氏:現在はまだ4K対応はできていま
テレビの UXを再現している。もちろん、
あるように感じます。
となると、いわゆるクアッド・プレイのよう
せんが、8 Kまで含めた市場動向を見極
他のVODと同じようにユーザー自らが視
大島氏:はい、そのとおりです。dTVを含
なセット割を強化する狙いがあるのでは
めながら、必要な時期には即座に対応で
聴するコンテンツを選択することも可能
コンテンツをダウンロードして通勤・通学
の電車内や出張時に新幹線の中で観ると
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事業者としてはリッチなコンテンツを提供
/ JUL. 2015
大元:格安スマホが注目を集める中、通信
を選び出すのは実はとても難しいことだ。
に14 年従事。
モバイルを軸としたITのビ
ジネス企画を得意とし、MCPC(モバイ
ルコンピューティング推進コンソーシア
の挑戦』など著書多数。Yahoo!ニュー
ス、Impress IT Leaders 、ZDNet 、
CNETなどIT 系メディアで多くの記事を
執筆。米国 PMI 認定 PMP 、MCPC 認定
シニアモバイルシステムコンサルタント
の資格を持つ。
/ JUL. 2015
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