Akita University 氏 名 ・(本籍) 近藤 英明(長崎県) 専攻分野の名称 博士(医学) 学 位 記 番 号 医博乙第 596 号 学位授与の日付 平成 27 年 3 月 31 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学系研究科医学専攻 学 位 論 文 題 名 Association between Heart Rate Variability, Blood Pressure and Autonomic Activity in Cyclic Alternating Pattern during Sleep. (睡眠中の Cyclic Alternating Pattern における心拍変動,血圧と自律神経活 動との関連性) 論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 長谷川 仁志 (副査) 教授 尾野 恭一 教授 清水 宏明 Akita University 研 学 位 論 文 内 容 要 旨 究 成 績 心 拍 数 は CAP の phase A 開 始 と と も に 上 昇 し た . 心 拍 数 上 昇 の 中 央 値 は phase A1, A2, お よ び ,A3 で そ れ ぞ れ 0.64( -0.30~ 1.69),1.44( 0.02~ 3.79),6.24( 2.53~ 10.76)bpm と Association between Heart Rate Variability, Blood Pressure and Autonomic Activity in Cyclic Alternating Pattern during Sleep. ( 睡 眠 中 の Cyclic Alternating Pattern に お ける 心 拍 変 動 , 血 圧 と 自律 神 経 活 動 との関連性) 3 群 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た ( H = 516.9, df = 2, P < 0.001). 心 拍 数 の ピ ー ク は phase A 開 始 4.2( 3.5~ 5.4) 秒 後 に 認 め ら れ た . 血 圧 は phase A 開 始 後 一 過 性 に 低 下 し た の ち に 次 第 に 上 昇 し た .血 圧 上 昇 の 中 央 値 は phase A1, A2, お よ び , A3 で そ れ ぞ れ 1.23( -2.04~ 5.75), 1.76( -1.46~ 9.32), 12.51( 4.75~ 19.94)mmHg と A3 で は A1,A2 と 比 較 し て 有 意 に 高 値 で あ っ た( H = 201.7,df = 2, P < 0.001). 申請者氏名 近藤 英明 血 圧 の ピ ー ク は phase A 開 始 8.4( 7.0~ 10.3) 秒 後 に 認 め ら れ た . LF と HF の 振 幅 の area under the curve( AUC) は phase A 開 始 前 と 比 較 し て 開 始 後 に は い ず れ の subtype に お い て も 有 意 に 高 ま っ て い た ( P < 0.001). Phase A 開 始 後 の LF と HF の 振 幅 の AUC は 3 群 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ A3 が 最 も 高 値 で あ っ た ( LF:H = 548.3, df = 2, P < 研 究 目 的 0.001, HF: H = 398.9, df = 2, P < 0.001) . 睡眠中の覚醒反応は睡眠脳波における非同期性の低振幅混合波の出現で特徴付けられる. 多くの場合,この覚醒反応は高振幅徐波を含めた同期性の脳波変化を伴う.この脳波上の変 結 論 化 は 周 期 的 に 観 察 さ れ る こ と が あ り cyclic alternating pattern( CAP) と 称 さ れ て い る . CAP に お い て phase A は 同 期 性 成 分 の 割 合 に よ り 3 つ の subtype に 分 類 さ れ る . 健 常 者 で は 同 期 性 の 成 分 が 主 体 で あ る subtype A1 は 睡 眠 前 半 の 特 に 深 睡 眠 へ の 移 行 期 か ら 深 睡 眠 に か け 本 研 究 は CAP に お け る 心 拍 ・ 血 圧 変 動 と 自 律 神 経 活 動 評 価 の た め の 心 拍 変 動 解 析 を 行 っ た 初めての報告である.心拍・血圧変動は覚醒反応とスコアリングされる低振幅の速波成分を て 頻 発 す る . Subtype A2, A3 の 順 に 非 同 期 性 成 分 が 多 く な る が ,こ の 2 つ の subtype は 深 睡 含む混合波の出現に先立つ同期性の高振幅徐波成分の出現とともに出現していた.血圧上昇 眠 か ら REM 睡 眠 へ の 移 行 期 に 多 く 認 め ら れ る . CAP は 睡 眠 の 安 定 性 , 不 安 定 性 を も 含 む 指 標 は 心 拍 上 昇 に 遅 れ て 認 め ら れ た .心 拍 変 動 解 析 で は 低 振 幅 混 合 波 成 分 が 多 く な る に つ れ て LF と し て そ の 生 理 的 意 義 が 明 ら か に さ れ 各 種 疾 患 で の 睡 眠 評 価 に 用 い ら れ て き て い る .し か し , CAP に お け る 心 拍 ・ 血 圧 変 動 や 自 律 神 経 活 動 は こ れ ま で 報 告 さ れ て い な い . 本 研 究 で は CAP の み な ら ず HF の 振 幅 は 増 大 し て い た .今 回 の 結 果 は 睡 眠 中 の 同 期 性 徐 波 の 発 生 に 関 わ る 視 床 -大脳皮質ネットワークと中枢性の自律神経ネットワークの関連性を示唆する.今後,両者 における自律神経活動を明らかにするためにポリソムノグラフィーの際に心電図だけでなく の関連性が明らかとされ睡眠の生理的な意味づけや自律神経系からみた睡眠障害の病態生理 血 圧 も 非 侵 襲 的 に 測 定 し , 自 律 神 経 活 動 を 評 価 す る た め 高 い 時 間 分 解 能 を 有 す る complex demodulation( CD) 法 を 用 い て 心 拍 変 動 解 析 を 行 っ た . が明らかとなることに期待したい. 研 究 方 法 対 象 は 健 常 男 性 大 学 生 10 名 ( 年 齢 平 均 21.6±1.1 歳 ) と し た . 本 研 究 は , 秋 田 大 学 医 学 部倫理委員会の承認を得て,被験者へは口頭および文書にて説明を行い,同意を得た上で行 っ た . 脳 波 は 睡 眠 覚 醒 段 階 を 判 定 す る た め の 単 極 誘 導 に 加 え て CAP 判 定 の た め の 双 極 誘 導 で の 記 録 も 行 っ た .サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は 1000Hz と し た .血 圧 は 容 積 脈 波 法 に よ り 連 続 測 定 し た . 心 拍 数 , 収 縮 期 血 圧 の 変 動 は CAP phase A の 始 ま り を 基 準 と し て 各 phase A 開 始 15 秒 前 か ら 60 秒 後 ま で を 解 析 対 象 と し た .心 電 図 RR 間 隔 を CD 法 で 解 析 し Low Frequency( LF:0.04 ~ 0.15Hz)、High Freqeuncy( HF:0.15~ 0.4Hz)成 分 の 変 動 を 連 続 的 に 評 価 し た .統 計 処 理 は ,PASW Statistics 17.02 を 用 い た .デ ー タ は 中 央 値( 四 分 位 範 囲 ,も し く は 25% 値 ~ 75% 値 ) で 示 し た . 有 意 水 準 は p< 0.05 と し た . Akita University 学位(博士-乙)論文審査結果の要旨 主査 : 申請者: 長谷川 近藤 仁志 英明 論文題名: Association between Heart Rate Variability, Blood Pressure and Autonomic Activity in Cyclic Alternating Pattern during Sleep (睡眠中の Cyclic Alternating Pattern における心拍変動、血圧と自律神経活 動との関連性) 要旨: 著者の研究は論文内容要旨に示すように、健常男性大学生 10 名(年齢平均 21.6 歳±1.1 歳)に対し、睡眠中の覚醒反応として観察される周期性の脳波変化 cyclic alternating pattern(CAP)と、心拍数・血圧の変化および心拍変動との 関連を解析したものである。脳波は睡眠覚醒段階を判定するための単極誘導に 加えて CAP 判定のための双極誘導にて、血圧は容積脈波法により測定した。心 拍数、収縮期血圧の変化は CAP phase A の始まりを基準として各 phase A 開始 15 秒前から 60 秒後までを解析、心拍変動は心電図 RR 間隔を complex demodulation(CD)法で解析している。 本論文の斬新さ、重要性、実験方法の正確性、表現の明確さは以下の通りで ある。 1)斬新さ CAP において phase A は同期性成分の割合により 3 つの subtype に分類される。 健常者では同期性の成分が主体である subtype A1 は睡眠前半の特に深睡眠への 移行期から深睡眠にかけて頻発する。 subtype A2、A3 の順に非同期性成分が多 Akita University くなるが、この 2 つの subtype は深睡眠から REM 睡眠への移行期に多く認めら れる。CAP は睡眠の安定性,不安定性をも含む指標としてその生理的意義が明ら かにされ各種疾患での睡眠評価に用いられてきているが、 CAP における心拍・ 血圧変動や自律神経活動はこれまで報告されていない。本研究の斬新さは、心 拍・血圧変動は覚醒反応とスコアリングされる低振幅の速波成分を含む混合波 の出現に先立つ同期性の高振幅除波成分の出現に伴うこと、血圧上昇は心拍上 昇に遅れて認められたこと、さらに心拍変動解析では低振幅混合波成分が多く なるにつれて Low Frequency (LF:0.04〜0.15Hz)のみならず High Frequency (HF:0.150.4Hz)の振幅が増大するといった CAP における心拍・血圧の変化や心 拍変動(自律神経活動)をはじめて見出したことにある。 2)重要性 前述の結果は、睡眠中の同期性除波の発生に関わる視床—大脳皮質ネットワー クと中枢性の自律神経ネットワークの関連性を示唆している。今後、両者の関 連性や睡眠の生理的な意味づけ、自律神経系からみた睡眠障害の病態生理解明 の基盤となる重要な研究であると考えられる。 3)研究方法の正確性 被験者の大学生の背景に有意な病態等はなく、適切な設定となっている。脳 波、血圧、心拍変動解析、統計処理法とも確立されたものであり、正確性があ る。 4)表現の明確さ 課題の背景、研究目的、方法、実験結果、考察を簡潔、明瞭に記載している と考える。 以上述べたように、本論文は、学位を授与するに十分値すると判定された。
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