個数の計算課題における 大きさの均等性と対称性の効果 酒井 浩二 ・ 藤井 愛弓 京都光華女子大学 人間関係学部 1.1 はじめに • 複数の要素数を把握する処理過程 (Trick & Pylyshyn, 1993) – 即時の把握(subitizing) • 瞬時に複数の要素数を計算 • おおよそ4個程度の範囲 • 前注意過程と注意過程の中間の処理過程 – 数え上げ(counting) • 少数の要素を系列的に処理して個数を加算 • 5個以上の要素数の場合 1.2 本実験の目的 • 実験1(要素の大きさが不均等) – 注意の配分が不均等になり,グルーピングしにく くなり処理速度が低下? – 大きい要素を中心にグルーピングされて,処理速 度が上昇? • 実験2(要素の布置パターンが対称) – 即時の把握の容量が4個より多くなるか? – 数え上げの速度が1/2程度に上昇するか? 2.1 実験手続き • 1試行の流れ ①刺激が持続提示 ②正確さを重視し,できるだけ速くドット数を口頭報告 ③その直後に刺激は消失 ④ドット数をキーボードで入力 • 備考 – 被験者の口頭報告はマイクで集音 – 反応時間は,刺激提示からマイク集音までの時間 2.2 実験1の刺激 • ドットの大きさ • 均等条件:0.39deg • 不均等条件:最大0.53deg,最小0.26deg • ドット数: 9種(2,3,4,5,6,7,8,9,10個) • ドットの布置:ランダム (a) 均等条件 (b) 不均等条件 2.3 実験2の刺激 • ドットの大きさ:0.39deg • ドット数: 7種(2,4,6,8,10,12,14個) • ドットの布置:ランダム/左右対称 (a) ランダム条件 (b) 対称条件 2.4 実験計画 • 実験1 – ドットの大きさ2種(均等,不均等) – ドット数9種×繰り返し10回.計180試行 • 実験2 – ドットの布置2種(ランダム,対称) – ドット数7種×繰り返し10回.計140試行 • 誤反応の試行は追加でやり直し • 繰り返し10回のドットの配置は異なる • 被験者:9名(21歳-34歳) 3.1 実験1の結果 均等条件 不均等条件 反応時間(秒) 3.0 2.0 1.0 0.0 2 3 4 5 6 7 ドット数 8 9 10 • 分散分析 – 大きさの主効果:F(1, 8)=1.8, ns – ドット数の主効果:F(8, 64)= 189.2, p<0.001 • ドット数4で反応時間の傾きに急峻な変化 – 2-4個の範囲 • 均等条件:72.9ms/dot • 不均等条件:85.0ms/dot 有意差なし(t6=-0.85, ns ) – 5-10個の範囲 • 均等条件:330.0ms/dot • 不均等条件:310.9ms/dot 有意差なし(t6=1.39, ns ) • 均等・不均等でほぼ同じ結果 3.2 実験2の結果 6.00 ランダム条件 対称条件 反応時間 (秒) 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0.00 2 4 6 8 ドット数 10 12 14 • 分散分析 – 配置の主効果:F(1, 8)= 16.3, p<0.01 – ドット数の主効果:F(6, 48)= 46.3, p<0.001 • ドット数4で反応時間の傾きに急峻な変化 – 2-4個の範囲 • ランダム条件:77.9ms/dot • 対称条件:63.3ms/dot 有意差なし(t7=1.94, ns) – 6-14個の範囲 • ランダム条件:367.8ms/dot • 対称条件:232.7ms/dot 有意差あり(t7=2.43, p<0.05 ) • 即時の把握:両条件で差なし • 数え上げの処理:対称条件で有意に速い 4.考察 • 即時の把握 – 処理速度は70-80ms/dot程度 – 要素の大きさが不均等、対称パターンでも、容量 は4個程度 • 数え上げ – 処理速度は300-350ms/dot程度 – 注意配分の均等性:系列処理速度に影響しない – 対称軸を境に,一方の要素数の2倍で完全には 計算困難 →軸にまたがって近傍の要素をグルーピング?
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