少林寺拳法競技の普及発展について 少林寺拳法専門部 山形県立酒田光陵高等学校 堀 彰 太 1 はじめに 少林寺拳法が創始されて67年がたち、平成26年度からインターハイ種目になった。今後は高等学校の 少林寺拳法が活発化していくと期待している。しかし、山形県においては部活動として存在している高等学 校は2校だけであり、また部員数も近年減少しており団体での出場ができない状況にある。そのため、部員 数を増やし部活動として活性化させることが課題となっている。 山形県における少林寺拳法の修練拠点は15箇所存在している。今回は各道場の拳士から少林寺拳法に対 するアンケート調査を行い、その結果からどのようにすれば高等学校の少林寺拳法が今後活発化していける か、またどのようにすれば少林寺拳法の魅力が伝わり、競技者を増やすことが出来るか等を考察して今後の 活動に反映していきたいと考えている。 2 少林寺拳法の概要 少林寺拳法は1947年香川県多度津町において、開祖「宗 道臣」が教えと技法、教育システムを兼ね 備えた「人づくりの行」として創始された独自の武道である。少林寺拳法はあくまで「人づくりの行」であ るため、相手を倒すことが目的ではなく、また大会で入賞することが目的ではない。しかし、大会は拳士の 技術向上や少林寺拳法の普及においても有効な活動であるため、各県で大会が開催されており、全国大会や 世界大会も開催されている。 少林寺拳法の技は突きや蹴り、かわしなどの「剛法(ごうほう) 」と抜きや逆技などの「柔法(じゅうほう) 」 に大別され、それらを合わせると600種類以上存在している。少林寺拳法は正しい教えを守るため、自分 の身を守るためだけに使うという考え方から「受けから始まり、完全に防いだ後に反撃する」という組み立 てになっている。 少林寺拳法の大会においては、2人で組んで攻者と守者を決めて形を見せる「組演武」と呼ばれるものを 披露し、それを見て審判が技の正確さや気迫、スピードなどを判断し採点を行い、その点数で競う。組演武 の他にも一人で行う「単独演武」や6人または8人で演武を行う「団体演武」というのもある。 県内での高校生大会が初めて開催されたのは1989年であり、その後2004年に高体連に加盟し、そ の年の6月に山形県高等学校総合体育大会として開催し、現在に至っている。 3 研究の方法 (1)調査方法:アンケートの実施 (2)調査対象:県内で活動している拳士(高校生を除く 回答率23 %) (3)調査内容:少林寺拳法に関する意識調査 4 結果 アンケート結果の年齢層は以下のとおりである 社会人 大学生 中学生 小学生 合計 23人 11人 10人 19人 63人 -1- (1)少林寺拳法をどのように知りましたか クラブや 部活 16% テレビや 雑誌 8% その他 21% その他の内容 ・県武道館に行って知った ・インターネットで知った ・近くに道場があった ・市報を見て(体験教室のお知らせ) 家族や知 人の紹介 で 47% 道場の 宣伝活動 8% (2)少林寺拳法を始めた理由は何ですか その他の内容 ・体力増強、健康維持の為 その他 強くなり 24% たいから 36% ・自分の子供と一緒に始めた ・知り合いをつくりたかった 友達や知 人がやっ ていたか ら 8% 面白そう と思った から 32% (3)始めた時期はいつですか 社会人 (大学 生) 20% 小学校 55% 高校 4% -2- ・昔やっていたから (4)少林寺拳法は楽しいですか 楽しく ない 3% どちら ともい えない 16% 楽しい 81% (5)①小学生、中学生にお聞きします。中学校、高等学校になっても続けますか 小学生(18名) 中学生(10名) はい 8人 はい 6人 いいえ 2人 いいえ 0人 わからない 8人 わからない 4人 ②( 「いいえ」 、 「わからない」と答えた方へ)理由を教えてください 小学生 中学生 ・授業に専念したいから(2人) ・高等学校に部が存在しないから ・部活に専念したいから ・時間をとるのが難しいから ・親がゆるしてくれるかわからない(2人) ・高等学校に入学してから決める(2人) ・忙しくなるから ・今後どうなるかよくわからない(4人) (6)①少林寺拳法がインターハイ種目になったのはご存知ですか いい え 19% はい 81% -3- ②(はいと答えた方へ)どこで知りましたか その他 20% テレビ や雑誌 13% その他の内容 ・少林寺拳法の会議にて 学校関 係者か ら聞い た 11% 知人や 道場の 人から 60% (7)社会人の方へお聞きします。少林寺拳法を続けることが出来た理由は何ですか(自由記述) ・体力に応じて練習が出来て、無理なく通えるから ・少林寺拳法の教えや考えがすばらしいから ・たくさんの人との出会いがあり、仲間からの励ましもあったから ・子供と一緒に通っているから ・体力維持や健康増進につながっているから ・とにかく練習が楽しいから (8)少林寺拳法の良いところを教えてください(自由記述) ・肉体的にも精神的な面においても大きな力がつく ・礼儀が身につく ・年齢や体力に応じて修練が出来る ・老若男女問わず、楽しめる ・合掌礼一つで世界どこでも挨拶ができる ・力が無くてもできる ・色んな年齢の人たちとの交流が出来る ・流派が存在しないのでどこでも出来る 4 考察 アンケート結果により少林寺拳法を知るきっかけは少林寺拳法を知っている人(もしくは実際にやって いる) からの紹介が多くを占めていた。 少林寺拳法があまり新聞やテレビで放映されることが少ないので、 当然の結果だといえる。また小学生が知るきっかけとなった理由として体験教室を通してというのが多か った。まだまだ、山形県内においてはPRする余地が大きいと感じた。 インターハイ種目になり、全国的には高校生の競技者が増えてきている都道府県専門部もあり、様々な アイディアを出し合いさらに部発展に努力していきたい。 少林寺拳法を始めた時期を見ると、小学生と社会人からというのが一番多かった。小学生から始め た人が多い理由としてスポーツ少年団としての活動や知人・友人の影響が多いことがあげられる。今回の アンケートの回答者の内訳をみると、中学生より小学生の方が圧倒的に多い。もちろんこれが全てを語っ ているわけではないが、酒田地区では、社会人の次に多いのは小学生の拳士である。これは中学校には部 活動が設置してある学校がほとんど存在していないため、他の部活動との掛け持ちとなってしまい、大半 は小学生でやめてしまう人が多いのが現状である。このことは結果(5)の中学校に行っても続けるかと -4- いう質問に対しての答えにも出ている。また中学生においても続けない理由として「部が存在しない」や 「通う時間がないから」という回答が出ている。中学生、高校生になっても少林寺拳法を継続していくに は、少林寺拳法の魅力をさらに伝えていく努力が必要であると考えている。高等学校においては経験者で はなく少林寺拳法を経験した事がない生徒に対してアピールする事が重要である。 では、少林寺拳法のどのようなことをPRしたら良いのか。結果(8)の少林寺拳法の良いところはと いう質問に対し、 「老若男女問わずできる」や「様々な人と交流が出来る」が多かった。小学生では女子児 童の拳士が多数活動をしているが、高校生では男子生徒がほとんどである。そのため、高校においても、 男女の区別なく練習ができる点をもっと積極的に周知していく必要がある。団体種目だけではなく、2人 もしくは1人でも、活動が可能であり大会にも参加できる点も周知していくことが大切であると考えてい る。 少林寺拳法には流派がなく、全世界において技などの指導内容に関しても統一されているため、どこの国 や地域の道場に行っても練習ができるという良さがある。日本以外でも活動が盛んであり、世界大会も開 催されているもあまり知られていないと感じる事がある。高校生でも日本代表として出場できる事も魅力 であり、生涯スポーツとして海外でも活躍できる点も宣伝していきたい。 また少林寺拳法は急所や各種理法に基づく合理的な術や技を駆使するため少ない力で攻めることができる。 このような様々な面をもっとPRしていく地道な活動を継続していきたい。 4 まとめ アンケートの結果により、 少林寺拳法の良さをもっとPRしていくことが重要だということがわかった。 社会人が少林寺拳法を続けることができた理由の多くが少林寺拳法は老若男女問わず、そして体力に応じ て、練習が出来ること。さらに少林寺拳法の教えがすばらしいからという回答であった。 「少林寺拳法はど んな人でも出来る」ということをもっと積極的にアピールし、小学生から社会人にいたる幅広い年代に生 涯スポーツとして取り組んでいけるような体制をさらに整えていくことが、今後競技の発展につながると 考えられる。また少林寺拳法の技術だけをアピールするのではなく、道院の練習や行事に参加することに より様々な人と交流する機会を得る事ができ、人間としての幅も広がることも強調していきたい。 道院の先生からあげられた要望として学校を卒業した後も続けてもらえるように声をかけてほしいという のがあった。部員を増やすという目先の課題解決だけではなく、生涯少林寺拳法を続けてもらうにはどう したら良いかという、先を見据えた活動を続ける事により、県内の高校生拳士を増やしていきたい。 少林寺拳法専門部が現在あげられる課題としてはとにかく一校でも多くの少林寺拳法部を増やすという のがあげられる。しかし、部を増やすためには指導者の育成をしなければならない。高校の教員で少林寺 拳法の有段者というのは数えるほどしかいない。実際、酒田光陵高校においても昨年度までは外部コーチ の方に頼っていた状況である。また少林寺拳法連盟独自の規約として、部を設置する時は外部コーチまた は部顧問が四段以上の現役拳士でなければならないというのがある。その為にも一人でも多くの教員の拳 士を増やし、また外部コーチ委嘱が出来るように山形県少林寺拳法連盟と今以上に緊密に連携をしていき たい。校内の練習だけでなく、修練場での練習にも積極的に参加できる体制を整える等、専門部として出 来る限りのバックアップ体制をとる必要がある。1校でも部が増えれば、競技人口が増え、それが県内の 大会レベル向上にもつながる。その為、1校でも部を増やすということは県内の少林寺拳法の技術力強化 にもつながっていくのではないかと思われる。また、学校に部活動が無くても大会に参加できる事を周知 すると共に、環境整備を整えていきたい。 最後にアンケートに協力してくださった県内の少林寺拳法の拳士の方々に心から感謝申し上げます。 -5-
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