東京都立多摩総合医療センター(Vol.97)

薬剤部・薬局訪問 第
安全で良質な急性期医療を目指し
入院前からチームでサポート
東京都立多摩総合医療センター(旧都立府中病院)は、
「救急」
「がん」
「周産期」
回 東京都立多摩総合医療センター
98
の3つの医療を柱に、高度急性期病院として地域に貢献しています。薬剤科は、
病院の理念である
“安全で良質な医療の提供”
を目指し、急性期医療を支える
チームの一員として活動しています。その一環である「薬剤師外来」や「入院サ
ポートセンター」での取組みについて、薬剤科長の田中三枝子先生、薬剤科長
補佐の山口智先生、主任の村松裕子先生に伺いました。
安全で良質な医療の提供を目指し
向上心を持って日々精励
薬剤科の方針や現在のテーマを
を置き、使用期限を定期的にチェック
田中 病院の理念である「患者さん
要の多い部署に配置するなど、経済
に安全で良質な医療を提供する」に
性を考えた管理を心がけています。
加え、
「 向上心を持って楽しく仕事を
*SPD:Supply Processing and Distribution
行う」を方針に掲げています。仕事に
薬剤師外来や、入院サポート
センターでの業務に注力
おける
“楽しさ”
とは、自ら目標を見つ
け、それに向かって努力し、達成する
ことで得られるものだと思います。自
己研鑽を積める環境を整え、教育に
特に力を入れられている業務に
ついてお教えください。
も力を入れています。
田中 『薬剤師外来』
と、
また、当院は急性期病
2014年7月に開設した
院としてがん医療と救急
『入院サポートセンター』
医 療を柱としており、使
での業務は薬剤師の専
用薬剤数は膨大です。安
門性を活かせると考え、
全で良 質な医 療 の 実 現
特に注力しています。
のために、医薬品の管理・
薬剤師外来は、外来化
供 給 などにお い ても 安
全性には十分留意してい
薬剤科長
田中 三枝子 先生
学療法を受ける患者さん
の服薬コンプライアンス
ます。
とQOL向上を目指し、2013年8月に
山口 近年は抗がん薬の種類・数とも
開始しました。
に増加傾向にあり、取扱いには十分
がん関連の認定資格を持つ4名が
注意しています。
週2日、交代で担当しています。医師
当院ではSPD を導入しており、
18
の診察前に約30分かけて患者さん
名のSPDスタッフが医薬品供給や在
と面談し、手足症候群など抗がん薬の
庫管理などを担当しています。調製し
副作用と疑われる症状をチェックしま
た抗がん薬
す。障害部位があれば撮影して写真
の搬送時や
をカルテに貼付するなど、詳細な状況
医薬品管理
を医師へ伝えます。
室の清掃時
また、医師の指示、プロトコールに
には、
手袋や
基づき外用薬の処方提案も行ってい
マスク、
エプ
ます。
ロンなどの
薬剤師外来の対象は、現在のとこ
装着を徹底
ろ一部の診療科に限られるので、更な
しています。
る拡充を目指しています。
● 病 院 長:近藤
〈平成26年10月現在〉
山口 効率的な医薬品管理にも重点
して、期限が近い医薬品は早めに需
[東京都立多摩総合医療センター]
東京都府中市武蔵台2-8-29
置いている取組みはありますか。
お聞かせください。
*
泰児
● 病 床 数:789床
● 外来患者数:1日平均約1518人
● 外来患者への処方箋発行枚数:1カ月平均18396枚
院外処方箋発行率:75.4%
● 薬 剤 師 数:常勤29名・非常勤8名
その他に、医薬品管理で重点を
薬剤科長補佐
山口 智 先生
図表 入院サポートセンターでの面談の流れ
入院サポートセンター
診察
外科医または
内科医による
入院での手術・
検査の決定
入院サポート
センターへ案内
面談2回目 <約90∼120分> 予約枠:約10名/日 面談の時間帯:午後
初回面談
サポート外来
看護師
禁煙指導等の
患者指導
入院パスの説明
薬剤師
医療秘書
〈約15分〉
入院時持参薬の
鑑別準備
内服薬のチェック
薬剤アレルギーの
チェック
入院時持参薬の
鑑別・指導
医療秘書
各種検査予約
麻酔科医
手術室看護師
麻酔に関する
説明
耐術能チェック
手術中の
注意点説明
ラテックス
アレルギー
チェック
サポート外来
看護師
入院準備に
関する説明
★ 必要に応じて、別途、歯科医・歯科衛生士によるチェック・ケア、栄養士による栄養指導を実施
入院サポートセンターの設立目
に活かすかが大切です。
交代で担当しています。術前中止薬
的と業務内容をお教えください。
の服薬状況の確認や薬剤アレルギー
また、
都立病院や東京都保健医療公
田中 入院サポートセンターの目的は、
の有無などを聞き取り、続いて面談を
社の病院は薬剤師間の交流や勉強会
入院前から多職種がチームでサポート
行う麻酔科医に伝えます。
も活発ですので、
他施設の好事例など
することで、患者さんの不安を軽減す
面談では、限られた時間で患者さん
を参考に、業務の幅を広げています。
ることにあります。
から多くの情報を得る必要がありま
また検査や、患者さんの栄養状態
す。そこで初回面談時に、
「2回目の面
及び内服薬の服薬状況、アレルギー
談には薬、お薬手帳、
お薬説明書など、
の確認などを入院前に行うことで、入
手元にある全てを持参してください」
院期間短縮を図ることも目的の一つ
と、看護師から患者さんにお願いして
です。
います。
知識や自身の経験を後輩
急性期病院として、一人でも多くの
また、担当薬剤師は病
に伝えるとともに、
若手の
患者さんを受け入れるために必要な
棟業務などの経験を活か
発想も取り入れ、薬剤科
取組みと捉えています。
し、持参薬の残数も参考
の更なる活性化に貢献し
村松 対象は、
外科などの入院パス適
に、
会話の中から服薬状況
たいと思います。
用の短期入院患者さんで、入院前に2
などを聞き出すよう努め
山 口 当 院は地 域 の 災
回の面談・指導を実施します
(図表)
。
ています。
害拠点病院でもあり、私
初回は看護師が入院パスなどを説
患者さんの情報を麻酔
明し、2回目は午後の時間帯に予約を
科医に提供する際は、服
受け、入院1週間前までに薬剤師や麻
薬状況を詳細に伝えるために、持参
選定や供給方法などの策定を進めて
酔科医、手術室看護師などが十分に
薬鑑別報告書(写真)などのツールも
います。当院には地域災害医療コー
時間をかけて詳しい説明や指導を行
活用しています。
ディネーターの医師もいますので、
アド
います。
薬剤師による面談は、
どのように
行われていますか。
村松 面談時間は約15分で、8名が
“ 医師とディスカッション
できる薬剤師 ”
が理想
今後の抱負をお聞かせください。
村松 これまで諸先輩方から学んだ
主任
村松 裕子 先生
認定資格取得で得た知識や技術を
日常業務で発揮することが重要
は災害対策室のメンバー
として、
備蓄する医薬品の
バイスをいただきながら、災害時の医
薬品管理体制を構築していきたいと
考えています。
薬剤師教育については、
どのよう
田中 薬剤科では
“医師とディスカッ
に取り組まれていますか。
ションできる薬剤師”
の育成も目指し
山口 各自が興味のあるテー
ています。医療の高度化・専門化が進
マを掘り下げ、専門性を追求
むと、医師だけで全てを行うことは困
できるよう、認定資格の取得
難です。これからの急性期医療には
を後押ししています。
チームでの取組みが必須であり、そ
田中 都立病院では学会へ
の中で薬剤師の専門性を発揮してい
の参加や論文発表を積極的
きたいと思います。
に支援しており、多くの薬剤
チーム医療にはコミュニケーション
師が専門資格を取得していま
能力も求められます。薬剤に関する
す。ただし、資格取得が最終
知識のみならず、
ノンテクニカルスキル
目標ではありません。専門知
の教育にも注力していきたいと考え
識や技術を、いかに日常業務
ています。
写真
麻酔科医への情報提供に使用する
「持参薬鑑別報告書」には、
薬剤の写真や薬効分類などを掲載。
提供:東京都立多摩総合医療センター薬剤科