松村謙臣

第53回日本癌治療学会学術集会 2015.10.29 国立京都国際会館 バイオインフォマティクス実践講座 「子宮内膜がんのTCGAデータの概要」
京都大学 器官外科学 婦人科学産科学 松村謙臣
第53回日本癌治療学会学術集会 筆頭演者 松村謙臣
本講演に関して利益相反はありません。
本講演の目的
本教育講座で教材として用いる論文について前もって解説
し、理解を助けること。
(Nature, 2013)
子宮内膜がん(子宮体がん)について
Type IとTypeII
近年著しく増加
年齢階級別罹患率
2010
2005
1995
1985
1975
(国立がん研究センター)
Type I
年齢
閉経期
Unopposed estrogen あり 内膜増殖症の共存 あり 組織型 類内膜
Type II 閉経後 なし なし 漿液性
(Modif. from Bokhman JV., 2007)
類内膜G1
高分化
G2
中分化
G3
低分化
漿液性
予後の違い
漿液性
(Kharma B, Cancer Res 2014)
DNAミスマッチ修復(MMR)異常とマイクロサテライト不安定性(MSI)
hMLH1はMMR
において重要
MMR異常 →マイクロサテライト反復
回数の変化 マイクロサテライト不安定
性(MSI)陽性 (7種類のマーカー; BAT25、BAT26、
BAT40, TGFBRII, D5S346、D2S123、
D17S250) 3カ所以上;MSI-­‐H 1-­‐2カ所;MSI-­‐L
マイクロサテライト (short tandem repeat)
DNA複製
時の異常
DNA合成と修復
DNAポリメラーゼは、DNA合成をしながら修復を行う DNA Polymerase epsilon (POLE);リーディング鎖のDNA合成 一塩基変異; SNV (Single NucleoRde Variant) ミスセンス変異 (missense mutaRon) 塩基の変化または置換により、本来入るべきものとは別の
アミノ酸が合成されて、異常タンパク質が作られる変異。
ナンセンス変異 (nonsense mutaRon) アミノ酸のコドンを終止コドンにする変異。
フレームシフト変異 (frameshiT mutaRon) 塩基の挿入、欠失によってオープンリーディングフレームが
ずれてしまう変異。
truncaRng mutaRon
Figure 1
DNAコピー数変化による分類
363個の腫瘍サンプル
染色体領域
増幅
SNPアレイによるコピー数解析
Unsupervised hierarchical clustering (類似した腫瘍が隣に並ぶ)
欠失
予後が異なる4群
Figure 2a
MSI high
SNV頻度
MSI low
POLE変異
MLH1メチル化
MSI CNクラスター
1
4
ナンセンス変異
フレームシフト変異
漿液性 類内膜
組織型
分化度
・POLE遺伝子変異
あり ・ゲノムの遺伝子
変異が非常に多
い ・類内膜G3が多い
3
ミスセンス変異
PTEN変異
TP53変異
POLE 2
G3
MSI ・MSI high ・MLH1遺伝子
メチル化がほ
とんど ・ゲノムの遺
伝子変異が
多い
Copy-­‐number low ・ゲノムの遺伝子変
異、コピー数異常と
も少ない ・類内膜G1、G2が多
い
G2
Copy-­‐number high ・コピー数異常が多い ・PTEN変異は少なく、
TP53変異は多い ・漿液性が多い
G1
Figure 2c 4サブタイプの予後解析
MSI
her
DNA methylation
MSI high
MSI low
MS stable
NA
MLH1 silent
CN cluster
1
2
Mutations
3
4
Miss
Nonsense
Progression-­‐free survival (%)
予後が異なる
80
60
60
Log-rank P = 0.02
POLE (ultramutated)
MSI (hypermutated)
Copy-number low (endometrioid)
Copy-number high (serous-like)
Months
80
100
120
months
3R
1
60
PIK
40
A
20
* **** ****
3C
0
****
PIK
0
類内膜腺癌G3であっ
20
ても、POLE群は再発し
ない 0
53
20
40
TP
40
*
AR
I
Removed
Copy-­‐number high
EN
Progression-free survival (%)
80
PT
high
60)
100
d4サブタイプの間で
POLE
100
Mutated samples (% per subtype)
c
Mutated samples (% per subtypes)
Figure 2d
Removed
類内膜
漿液性
変異を認める遺伝子は4サブタイプの間で異なる
Figure S4.1 遺伝子発現に基づく分類
)
unsupervised k-­‐meansク
ラスタリング
漿液性
類内膜G3
TP53変異
)
Figure)S4.1,Gene)expression)subtypes)in)endomet
PTEN変異
Three, gene, expression, subtypes, were,
identified, v
endometrial, tumors, and, significantly, correlated
grade),and,molecular,(TP53,/,PTEN,mutations),feat
4サブタイプ
)
POLE MSI Copy-­‐number low Copy-­‐number high
情報なし
まとめ
・373症例の子宮内膜癌について、ゲノム、トランスクリプトームなど
の解析を行った。 ・ゲノムの変異によって、子宮内膜癌は4群に分類された。 (1) POLE ultramutated, (2) microsatellite instability hypermutated, (3) copy-­‐number low, (4) copy-­‐number high. (遺伝子発現では3群に分類) ・類内膜腺癌ではコピー数異常やTP53遺伝子変異ははほとんどな
く、PTEN, CTNNB1, PIK3CA, ARID1A, KRASおよびARID5Bの遺伝子変
異を多く認めた。また一部では、DNA polymerase Epsilon (POLE) に
変異があり、ゲノムに多数の遺伝子変異を認めた。 ・漿液性腺癌と一部のhigh-­‐gradeな類内膜腺癌では、コピー数異常
が広範囲で、TP53遺伝子変異を頻繁に認めた。