五感で語感を楽しむ 五感で語感を楽しむ

国際文化フォーラム通信 no.42 1999年3月
文化理解のための
さまざまな科目の
授業実践例を
視聴覚教材に
焦点を当てて
紹介しています
見る聞く考える授業───── r
五感で語感を楽しむ
東京都立日比谷高等学校講師(韓国語)
増田忠幸
日比谷高校のハングル講座は1997年に開講し、2
字」
「ハングルマップ」
「ハングルカレンダー」
「ハングル
年生を対象とする自由選択科目として週1回2時間の
時計」
など、身近なものをハングルで書いて慣れさ
授業を行っている。語学教育である以上、限られた
せ、文字に対する違和感を取り去ることに主眼を置
時間内でいかに教えるかという語学面がだいじなこと
いている。
ハングルは記号のようでわかりにくいと思われている
は言うまでもないが、授業を通してなにを伝えるかと
が、実は子音と母音が規則的に組み合わされていて、
いう教育面も大切である。
ハングル講座では、教室の授業だけでなく、韓国
覚えやすい文字である。ただし、慣れるまでは似た
料理や伝統音楽、伝統遊戯、さらには日本語学校
字形が多く間違えることもしばしばある。まずは文字
の韓国人学生との懇談会、韓国で日本語を学んで
をよく見て、書き写しながら体得するようにしている。
いる高校生とのビデオレター交流など、ものや人に触
ハングルは表音文字だが、音の変化も多様で、日本
れる体験学習も取り入れている。単に知識として韓国
語ではあまり意識しない激音や母音がある。最初か
語を学ぶのではなく、ハングルはもちろん韓国の文化
ら正確な発音にこだわりすぎると生徒が学習意欲を
についてもほとんど知識がなく、関心をもっていなか
失うこともあるので、見て考えさせてから説明し、必
った生徒が、異文化に接するおもしろさを知り、それ
要に応じて発音を教えていく。
そして、導入後の次の授業は、韓国語で挨拶す
ぞれ関心事を見つけられるようにするためである。
感性を刺激し、五感(見る・聞く・嗅ぐ・触る・味わう)で
ることから始まる。挨拶や自己紹介などは教室で練
韓国語の語感を楽しみながら、学年末には各自興
習するだけでなく、習ったことを体験学習で実際に
味のあることをレポートにまとめて提出することになっ
使ってみることで、目的意識と達成感を持たせるよう
ている。授業では、
「ハングル五十音」
「ハングル数
にしている。
科目:ハングル講座
韓国の
新聞記事から
ハングルとはなにか:導入部の授業1
韓国の新聞記事のコピーを準備し、生徒に配布する。
ハングルの特徴について、あらかじめ説明していないの
で、当然ながら読むことはできないが、見ることはできる。
よく見て、どんな特徴があるかを考えさせ、
とりあえず、
思ったことを述べさせる。
記事のコピーを見ると、q縦書きと横書きがある、w分
かち書きをしている、e漢字が少なく、しかも旧字体を使
っていることに気づくはずである。
写真:北川幸治
対象:高校2年生約10名
8:00 a.m.
(A)
(B)
写真:山口直樹
授業例
4:00 p.m.
(A)
(B)
韓国語の挨拶:導入部の授業2
韓国語で挨拶をしているふたりの写真(実際の授業
では漫画と朝・昼・晩の時間を示す時計のコピーを用い
たが、ここでは写真を用いた)を配布し、新聞記事と
同様によく見るように指示する。ハングルの意味は分
からなくても、すべて同じ表現であることは分かる。
日本語なら時間によって挨拶のことばが違うのに、韓
国語ではどうやら同じらしいと推測するはずである。
11