パワーポイント

兵庫県立大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程
仲井 翔
目次
1.イントロダクション
2.モデルの説明
3.比較静学分析
4.結論の今後の展開
2015/7/9
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
2
1.はじめに
1.ツーリズムは先進国と開発途上国の両者にとって重要な産業である。
(タイの場合、GDPの内、観光産業が約7%も占めている)
2 . ツ ー リ ズ ム を Harris=Todaro(1970) の 中 に 上 手 く 導 入 し た モ デ ル に
Hazari=Sgro(2000)がある。
3.彼らはツーリストは小国において観光財しか消費しない者であると仮定し、
ツーリズムブームがどちらで起こる方が一国の厚生水準に関して望ましいかを
理論的に調べている。
4.本稿は彼らのモデルを用いて観光産業における技術進歩がどのように一国
の厚生水準に影響を与えるかを調べるものである。
3
ツーリズムと途上国経済
 タイにおいては観光財産業がGDPのうち約7%も占めている
 観光財産業を経済モデルの中に導入するのは十分現実的である
Harris=Todaro(1970)とHazari=Sgro(2000)
Hazari=Sgro(2000)はツーリストの概念をHarris=Todaro(1970)
の中に上手く導入している
2015/7/9
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
5
ツーリストの定義
• 自国に赴いて自国の非貿易財(観光財)しか消費しない存在
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
6
前述のモデルにツーリズムを導入して開発
経済分析を行う
本稿ではHazari=Sgro(2000)のモデルを少し簡略化
非貿易財(観光財)を消費するのはツーリストのみ
自国の人は貿易財しか消費しないと仮定する
非貿易財産業における技術進歩が自国の厚生水準にどのような影
響を及ぼすのかを考察する
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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先行研究に関して
Hazari=Sgro(2000)はツーリズムブームのことに関してしか調べてい
ない
本稿の貢献は上のモデルに技術進歩を導入して簡単な比較静学を
行い、技術進歩が一国の厚生水準にどのような影響を及ぼすのか
を調べていることである
2015/7/9
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
8
・技術進歩を導入する背景
1.通常のヘクシャー・オリーンでは生産技術は両国で同じであると仮定さ
れている。
↓
これは生産技術の普及率がその進歩率より速い場合か、あるいは世界各
国または地域ごとで生産技術が同一になるような長期の側面を考えている
ことを意味する。
2.しかし生産技術は絶えず進歩しており、またパテントその他の制度的な
理由のために、新技術の伝播と普及には時間がかかるのである。
3.従って、ある特定の技術は特定の国もしくは特定の地域でしか用いられ
ないと想定することは、十分現実的な意味を持っている。
9
モデル(生産要素に関して)
都市の貿易財
産業
都市の資本の
移動
都市の非貿易
財産業
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農村の貿易財
産業
労働
農村の資本の
移動
農村の非貿易財
産業
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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消費の動き
都市
の人
農村
の人
都市の貿
易財
都市の非
貿易財
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農村の貿
易財
都市の
ツーリ
スト
農村の
ツーリ
スト
農村の非
貿易財
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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集約度の仮定
 都市と農村のどちらにおいても、貿易財産業は非貿易財産業に比べ資本集約
的であると仮定する。
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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厚生水準の測定方法
 このモデルにおいては厚生水準は実質所得で測るものとする
技術進歩の導入の仕方
ジョーンズ型の投入係数の中に技術パラメータ―を入れる
wU
aij  aij ( , tU )  aij (U , tU )
r
wR
aij  aij ( , t R )  aij ( R , t R )

比較静学分析
 技術パラメーターの上昇が内生変数にどのような影響を与えていく
かを均衡条件式を全微分して分析をしていく
均衡条件式(都市における)
aLU X U  aLNU X NU  EU
(都市の労働の雇用条件式)
aKU X U  aKNU X NU  KU
(都市の資本の完全雇用条件式)
aLU wU  aKU r  PU
aLNU wU  aKNU r  PNU
X NU  DTNU (  , PNU )
(都市の貿易財産業のゼロ利潤条件式)
(都市の非貿易財産業のゼロ利潤条件式)
(非貿易財産業の需給均衡式)
PU DUU  DUR  PU X U  PNU X NU  wU EU  r KU (都市の収支式(予算制約))
上の6個の均衡条件式を全微分して行列表示すると以下の行列が得られる。
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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 LU

 KU
 0

 0
 0
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LNU
KNU
1
0
0
0
0
0
1
1
0
 TNU
0
  EU
0
0  Xˆ U   LNU
 ˆ  

0  X NU 
KNU
0  EˆU    1
 ˆ  
0  PNU   0
1  IˆU   0
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析



bˆLNU



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符号判定
 符号判定はツーリストの需要の価格弾力性によって左右される
 ツーリストの需要の価格弾力性が弾力的か非弾力的かに分けて場
合分けを行う
 先ず都市の非貿易財産業で技術進歩が起こった場合についての表
を作成する
 次に農村の非貿易財産業で技術進歩が起こった場合についての表
を作成する
(1)KNU (1  TNU ) ˆ
ˆ
XU 
bLNU
U

(33)
KUTNU ˆ
ˆ
X NU 
bLNU
U

(34)
>0

KU LNU  LU KNU (1  TNU ) ˆ
ˆ
EU 
bLNU
U

KU ˆ
ˆ
PNU  U bLNU

<0
(35)
(36)
ˆI    EU LU KNU  KU LNU 1  TNU  bˆ
U
LNU
U
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
(37)
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均衡条件式(農村における)
aLR X R  aLNR X NR  ER
(農村の労働の完全雇用条件式)
aKR X R  aKNR X NR  K R
(農村の資本の完全雇用条件式)
EU (1   )  ER  L
(経済全体の労働の賦存量の条件式)
aLR wR  aKR   1 (農村の貿易財産業のゼロ利潤条件式)
aLNR wR  aKNR   PNR (農村の非貿易財産業のゼロ利潤条件式)
X NR  DTNR ( , PNR ) (農村の非貿易財の需給一致式)
PU DRU  DRR  X R  PNR X NR  wR ER   K R
wU
wR 
1 
(農村の収支式(予算制約))
(ハリス=トダロの人口移動均衡条件式)
 左上の均衡条件式を全微分して
行列表示すれば以下の行列が得
られる
 LR

 KR
 0

 0
 0

 0
 0

 0
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LNR
KNR
1
0
  LR
0
1
 KR
 LR
 LNR
 LR
  KR
 KR
 KNR
0
0
0
0
0
0
0
1
0
 TNR
0
0
0
0
ER
0
0
0
0
0
0
wU
0
EU
wR
0
 ER
0
 ER
 KR
0
0
0
0
0   Xˆ R   0 
 LNR 
ˆ  

 
0   X NR   0 
 KNR 
 0 
0   Eˆ R   0 
 ˆ  



0   PNR   0  ˆ  1  ˆ

EU 
bLNR


 0 
 0 
0  wˆ R
 




ˆ   H 
0  
 0 
 0 
0   ˆ   0 
 




 1  IˆR   0 
 0 
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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都市の非貿易
財産業における
技術進歩が農
村に与える影響
Xˆ R


 HwR  KNRTNR LR
 LNR


R
Xˆ NR 
 HwR KRTNR
 LR
 LNR

 HwR KR
 LR
 LNR

R
ˆ
E
U
 KR
 KNR
ˆ
E
U
ˆ
ˆ   HwR KR LR E

U
R

(55)
 HKR KR wU ˆ
EU
R
(51)

(54)
ˆ 
(50)

 KR
KR LNR  LR KNR   LR  KR  KR  LR 
 KNR
E
ˆ (52)
U
R
HwR  KR  KR ˆ
EU
R
ˆR 
w
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 KR
 KNR
R


 HwR TNR LR
 LNR

ˆ 
E
R
ˆ 
P
NR

 KR
  KR 
 KNR
E
ˆ
U
(53)
(56)
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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

 LR
 KR
  KR LR  ER 
 ER (KR LNR  LR KNR )(TNR )
 LNR  KNR

 ˆ
HwR 
EU



 LR  KR


 KR ( 1)
  ER  LR 
 ER  KR






ˆ
IR 
R
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
(57)
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都市のツーリストの需要の価格弾力性が
都市のツーリストの需要の価格弾力性が非
弾力的なケース( TNU  1)
弾力的なケース(0< TNU <1)
都市への影響
農村への影響
都市への影響
農村への影響
IˆU  0
IˆR ?
IˆU <0
IˆR ?
(都市の厚生水準)
(農村の厚生水準)
(都市の厚生水準)
(農村の厚生水準)
X̂ U <0
X̂ R ?
X̂ U >0
X̂ R ?
(都市の貿易財産業)
(農村の貿易財産業)
(都市の貿易財産業)
(農村の貿易財産業)
X̂ NU >0
X̂ NR <0
X̂ NU >0
X̂ NR >0
(都市の非貿易財産業)
(農村の非貿易財産業)
(都市の非貿易財産業)
(農村の非貿易財産業)
ÊU >0
ÊR <0
ÊU <0
ÊR >0
(都市の雇用者数)
(農村の雇用者数)
(都市の雇用者数)
(農村の雇用者数)
P̂NU <0
P̂NR >0
P̂NU <0
P̂NR <0
(都市の非貿易財の価格)
(農村の非貿易財の価格)
(都市の非貿易財の価格)
(農村の非貿易財の価格)
̂ <0
ŵR >0
̂ >0
ŵR <0
(都市の失業率)
(農村の賃金率)
(都市の失業率)
̂ <0
(農村の資本のレンタルレート)
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
(農村の賃金率)
̂ >0
(農村の資本のレンタルレート)
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都市の非貿易財産業で技
術進歩(都市のツーリストの
需要の価格弾力性が弾力
的なケース)
ˆ  0
EˆU  0
Xˆ NR  0
wˆ R  0
Xˆ NR  0
Eˆ R  0
PˆNR  0
ˆ  0
Xˆ R ?
PˆNR  0
Xˆ U  0
IˆU  0
IˆR ?
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
25
農村の非貿易財産業
における技術進歩が
農村に与える影響

 LR
 ER wR
 ER
ˆI  
R

 KR
  ER EU KR wU  1  TNR KR LNR  LR KNR 
 KR

ˆ
bLNR

R


( 1)(1  TNR )  EU wU KR KNR  wR ER LNR  KR  KNR  LR  ˆ
ˆ
XR 
bLNR
R

Xˆ NR

  LR

(TNR )EU wU KR KR  wR ER 

  LNR


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(58)
(59)

 KR
LR KNR  KR LNR   LR  KR  KR  LR  
 KNR


R
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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 EU wU KR KR LNR  LR KNR 1  TNR  ˆ
ˆ
ER 
bLNR
R

(61)
 LR  KR
KR LNR  LR KNR   LR ERwR  KR  KR EU wU KR  KR ERwR  LR
ER wR
 LNR  KNR
ˆ
ˆP 
b
NR
LNR
R

<0
wR KR ER LR KNR  KR LNR (1  TNR ) ˆ
wˆ R 
bLNR
R

(63)
  LR wR ER LR KNR  KR LNR 1  TNR  ˆ
ˆ

bLNR
R

(64)
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
(62)
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農村のツーリストの需要の価格弾力性が弾力的な
農村のツーリストの需要の価格弾力性が非
ケース( TNR  1 )
弾力的なケース(0< TNR  1 )
都市への影響
農村への影響
都市への影響
農村への影響
IˆU =0
IˆR >0
IˆU =0
IˆR <0
(都市の厚生水準)
(農村の厚生水準)
(都市の厚生水準)
(農村の厚生水準)
X̂ U =0
X̂ R <0
X̂ U =0
X̂ R >0
(都市の貿易財産業)
(農村の貿易財産業)
(都市の貿易財産業)
(農村の貿易財産業)
X̂ NU =0
X̂ NR >0
X̂ NU =0
X̂ NR >0
(都市の非貿易財産業)
(農村の非貿易財産業)
(都市の非貿易財産業)
(農村の非貿易財産業)
ÊU =0
ÊR >0
ÊU =0
ÊR <0
(都市の雇用者数)
(農村の雇用者数)
(都市の雇用者数)
(農村の雇用者数)
P̂NU =0
P̂NR <0
P̂NU =0
P̂NR <0
(都市の非貿易財の価格)
(農村の非貿易財の価格)
(都市の非貿易財の価格)
(農村の非貿易財の価格)
̂ <0
ŵR >0
̂ >0
ŵR <0
(都市の失業率)
(農村の賃金率)
(都市の失業率)
(農村の賃金率)
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̂ <0
̂ >0
(農村の資本のレンタルレート)
(農村の資本のレンタルレート)
ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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農村の非貿易財産業で
技術進歩が発生(農村
のツーリスト需要の価格
弾力性が弾力的)
Xˆ R  0
Eˆ R  0
Xˆ NR  0
wˆ R  0
ˆ  0
IˆR  0
ˆ  0
PˆNR  0
Xˆ U  0, Xˆ NU  0, EˆU  0, PˆNU  0, IˆU  0
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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4個のケースの内で確実に国
内の厚生水準を上昇させるの
はどのケースか?
<結論>農村の非貿易財産業で起こる技術進歩
(ただし農村のツーリストの需要の価格弾力性が
弾力的なケースに限る)
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ツーリズムと途上国経済 技術進歩に関する開発経済分析
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非貿易財産業の技術進歩
に関する注意点
 都市で技術進歩を起こしても必ずパレート改善的に厚生
水準が上昇するかは分からない
 農村の非貿易財産業で技術進歩を起こす時に必ずパ
レート改善的な技術進歩となるのは農村のツーリストの需
要の価格弾力性が弾力的な場合である
 農村の非貿易財産業で技術進歩が発生した時に、ツーリ
ストの需要の価格弾力性が非弾力的なケースにおいては
国内の厚生水準は必ず低下してしまう
<今後の展開>
貿易財産業における技術進歩は一国の厚生水準にど
のような影響を与えるか?
今回は小国モデルを扱ったが大国モデルにおいてどの
ような結果が得られるのかを調べる必要がある
 本稿は簡単化のためにヒックス中立的な技術進歩を
扱ったが、ソロー中立的、ハロッド中立的な技術進歩の
場合はどのような結果が得られるのかを調べる必要が
ある