(BSO)を用い,BSO併用

学 位 論 文 の 要 旨
氏
整 理番 号
り が
な
名
た 市
四
ふ
※
なか
中
ゆき え
幸
枝
BIMELiS a key e∬ector molecule in oxidative stress― med髭 Ⅲed apOptosis in
acute myeloid leuke■ ■a cells when combined 、
vith arsenic ttioxide and
学位 論 文題 目
buuionine sullbxilninё
(急 性 前骨髄性 白血 病細胞 にお いて 亜 ヒ酸 んuthionine‐ sulfo重 mine併 用療法
で増強 され る酸化 ス トレス応答性 アポ トー シス は BIMELが 重要 なエ フェク
ター 分子 である)
研究 の 目的】
【
急性前骨髄性 白血病 (APL)で は,オ ール トランス型 レチノイ ン酸 (ATRA)に よ
る分化誘導療法 が有効 であるが,抵 抗性や再発 の問題 がある。近年 ,こ の よ うな難治
性 APLに は,亜 ヒ酸 (ATO)が 有効 であることがわか り,治 療成績 も向上 してい る
しか し一方で,ATOの 副作用 の問題や他 の腫瘍へ の応用な ど,そ の治療法 には更なる
改良が必要 とされてい る
ATOの 抗腫瘍効果 は細胞死 の誘導 に起 因 し,そ の細胞死は,細 胞内の酸化還元 ホメ
ス
オ タシスタ とりわけ活性酸 素種 (ROS)の 誘導量 に依存す る。このこ とは,ATO非
感受性 の腫瘍で ROSの 誘導量が低 いこ とか らも支持 され る。これ らの研究 か ら,ATO
抗腫瘍療法 の改良お よび抗腫瘍 スペ ク トラムの拡大 のためには,酸 化 ス トレス促進剤
の併用 が有効 であると考 えられている。
本研究 では,ATO抗 腫瘍効果を増強す る強力な酸化 ス トレス促進剤 として,グ ル タ
チ オ ン合 成 阻害剤 で あ るブチオ ニ ンスル ホ キシ ミン (BSO)を 用 い ,BSO併 用
(ATO/BSO)に よる ATO細 胞死 の増強 メカニズム を解析 し,よ り有効 かつ副作用 の
少ない ATO抗 腫瘍療法 の基盤 となる研究を 目的 とした。
.
.
方法 】
【
急性前骨髄性 白血病培養細胞株 HL60を 用いて,BSO併 用 (ATO/BSO)で 増強 さ
れ る細胞死 の メカニズム を ATO単 独 と比較 して解析 した。
1.ROS誘 導 の必要性 は,抗 酸化剤処理 による細胞死へ の影響を解析 し,蛍 光 プ ロー
ブ を用 い た細胞内 ROS量 測定 によ り評価 した。
2.細 胞死 の メカニズムは,シ トクローム じの漏 出,カ スパーゼの活性化 ,カ スパー
ゼ基質 の切断をウェス タ ンブロ ッテ ィング (WB)法 で解析 した。ミ トコン ドリア
膜 の障害は,NIRdye染 色後 ,共 焦点 レーザー顕微鏡 で解析 した。
3.ア ポ トー シスの シグナル伝達を制御する BCL2フ ァ ミリー蛋 白質 ,お よび MAPK
ファ ミリー蛋 白質 の発現 と活性 化 は,WB法 にて評価 した。構造変換により活性化
され る分子 ,相 互作用 により活性化 される分子につい ては,免 疫沈降後 に WBを
行 った。
4.BSO併 用 (ATO/BSO)で 活性化 されるシグナル伝達分子 の重要性は,siRNAに
よるノ ンクダ ウンあるい は特異的阻害剤 を用 いた活性化阻害 によつて確認 した。
結果】
【
1
ATO単 独で約 30%,BSO併 用 (ATO/BSO)で 約 80%の 細胞死 が誘導 され ,顕
な
著 増強効果 が確認 された。BSO併 用で,細 胞内 ROS量 の増加が認 め られ ,抗 酸
化剤処理で細胞 死 が抑制 され たことか ら,BSO併 用 の細胞死増強効果は ROS量 に
依存す るこ とがわかつた。
2. BSO併
用
)で 誘導 された細胞死は,ミ トコン ドリア膜障害 ,シ トク
ローム θの漏出,カ ヌパーゼ 3,カ スパ ーゼ 9の 活性化 ,お よびカスパーゼ基質 PARP
の切断が増強 してい ることか ら, ミ トコン ドリア経由のアポ トーシス と考えられ
た。更に,こ れ らのアポ トー シスシグナル もまた抗酸化剤で抑制 された。
3
ミ トコン ドリア経由のアポ トーシス を実行す る一連 の BCL2フ ァミリー蛋 白質
を調べ た ところ, ミ ト童ン ドリア膜透過性克進に直接関わる BAXの 活性化 が認 め
られた。更に,ア ポ トー シス促進蛋 白質 BIMELと アポ ト シ ス抑制蛋 白質 MCLl
複合体 の リン酸化 が認 められた。この複合体 の リン酸化 が引き金 とな り,BIMELが
MCLlか ら解離 し,BAXと 相 互作角 していることが明 らか となった。次 に,ROS
応答性 に BIMELの 活性化 を誘導す る可能性 のある MΔ PKフ ァミリー蛋 白質を調べ
た ところ,MΔ P3K蛋 白質 ASKlと ふ
江
APK蛋 白質 JNKの リン酸化 が認 められた。
これ らのシグナル伝達分子 の リン酸化 もまた抗酸化剤によつて抑制 された。
4
BIMELを ノックダウンす ると下流 のアポ トーシスシグナルがすべ て抑制 される
ことか ら,こ のアポ トー シスにおけるBIMELの 重要性 が確認 された。さらに,ASKl,
JNKも それぞれ特異的阻害剤 で活性化 を阻害す ると,BIMELの 活性化お よび下流
のアポ トー シスシグナルが抑制 され ることか ら,ASKl,JNKが このシグナル伝達
江
APKフ ァミリー蛋 白質 であることが確 かめられた。
に必要な ふ
考察】
【
酸化 ス トレス促進剤 BSO併 用で増強 され る ATO誘 導性 の細胞死は,ROS応 答性 の
ミ トコン ドリア経由アポ トーシスであることが明らかになった。その実行因子 として
BCL2フ ァ ミリー蛋 白質 である BIMEL,MCLl,BAXが 同定 された。BIMELは ,平 時
はアポ トー シス抑制蛋 白質 MCLlと 複合体 を形成 して不活性状態であるが,ATO/BSO
刺激 によって リン酸化 を受けると,BIMELが MCLlか ら解離す る。解離 した リン酸化
BIMELは ,BAXと 相 互作用 して BAXを 活性化 し,ア ポ トーシスシグナル を伝達す る
ことが示唆 された。 さらに,こ の BIMELの 活性化には,細 胞内に誘導 された ROSに
応答 し活性化 され る MAP3K蛋 白質 ASKlと それによつて活性化 され る MAPK蛋 白
質 JNKが 重要 であることが示唆 された。
結論 】
【
本研 究 で は ,急 性 前骨髄性 白血 病培養 細胞株 HL60,酸 化 ス トレス促 進剤 BSOを 用
い て ,酸 化 ス トレス促 進剤 併 用 で増 強 され る ATO誘 導性 の 細胞 死 の メカ ニ ズ ム を初 め
て 明 らか に した。そ して ,そ の 実行 に関わ る BCL2フ ァ ミ リー 蛋 白質 の メ ンバ ー , さ
らに BCL2フ ァ ミ リー 蛋 白質 の活性 化 に 関 わ る MAPKフ ァ ミリー 蛋 白質 の メ ンバ ー を
明 らか に した こ とか ら,ATOを よ り有 効 な治療 法 に展 開す るた めの 情報 を得 る こ とが
で きた と考 え られ る。
備考
1
2
※ 印 の欄 は 、記入 しない こ と。
学位論 文 の要 旨は、和文 に よ り研 究 の 目的、方法、結果 、考察、結論等 の順 に記 載 し、
2,000字 程度 でタイ プ等で印字す る こ と。
3
図表 は 、挿入 しない こ と。