Lancet.2015;vol386:46-‐55 慈恵医大ICU勉強会 2015.9.15 集中ケア認定看護師 小俣 美紀 Introduc)on • 脳卒中後の早期リハビリテーションは、座位をとる こと、立位をとること、歩行することから成り、 stroke-‐unit careの強い効果に貢献している • 多くのガイドラインで早期リハビリテーションを推奨 しているが、定義が乏しく、強いエビデンスにより 実証されている訳ではない Introduc)on ・早期離床の生物学的根拠 1) 臥床安静は、筋骨格系、循環器系、呼吸系、 免疫システムに負の影響を与え、その回復に 時間を要する 2) 不動による合併症は、早期脳卒中後の活動 性のない患者に起こりやすい 3) 脳が修復しうる期間は短く、その時期は脳卒中後 早期かもしれない Introduc)on • 脳梗塞発症後24時間以内の早期リハビリテーションは 以下のような潜在的な有害性も持ち合わせている Ø 頭部挙上時の脳血流減少によるペナンブラの虚血 Ø 活動に伴う血圧上昇 Ø 転倒による外傷 • 脳出血やt-‐PA後の患者を早期に動かすと、出血の懸 念がある Introduc)on これらを受けてAVERT trialがスタート . AVERT Phase II 目的:早期リハビリテーションの安全性と実行性の検証 研究デザイン:prospective, open, randomized controlled trial, blinded-outcome assessment design 場所:オースラリア、メルボルンの2つの病院のSCU 介入:脳卒中発症後、48時間以内にリハビリ開始 研究期間:2004.3~2006.2 Primary outcome: 1) 安全性の評価ー3か月の死亡率 2) 実行性の評価ーリハビリテーション総実施時間 AVERT Phase II 症例数:71例 患者背景に大きな差無し (1)安全性の評価:3か月死亡 • 全体で11人(15.5%) • Very early mobilisation: 8/38人 • Standard care:3/33 • Absolute risk difference 12% • P=0.20 AVERT Phase II (2)実行性の評価 • リハビリテーション総実施時間 Very early mobilisation:167分 vs. Standard care:69分, P=0.003 • リハビリテーション介入開始までの時間 Very early mobilisation:18.1h vs. Standard care:30.8h, P<0.001 AVERT Phase II • 以上の結果から、早期リハビリテーションの安全性と 実行性を確認。 • 24以内に早期リハビリテーションを開始することは、 歩く機能の回復と経済効果があるという仮説をたて、 今回のphase Ⅲ studyが行われた。 Methods 研究デザイン:Parallel-group, single-blind, multicentre, international, randomized controlled trial 研究施設:オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シ ンガポール、イギリスの5か国の56 stroke unit 研究期間:2006.7.18~2014.10.16 対象患者: • 18歳以上 • 初発または再発の脳卒中で梗塞・出血の患者 • 発症から24時間以内にstroke unitに入室 • t-PA患者も含む Methods 除外基準: • 発症前の障害レベルがmodified Rankin Scale(mRS)で2未満 • 早期に悪化した患者 • 緩和療法を受けている • 体温38.5℃以上 • 他の重篤な疾患がある • 直接ICUに入院 • 不安定な冠動脈の状態 • 緊急手術 • 声に対する反応がない • くも膜下出血 • SBP 110mmHg以下 or 220mmHg以上 • 酸素投与下でSpO2 92%以下 • 安静時のHR 40回/分以下 or 110回/分以上 • 他の研究に参加している Methods 割り付け方法: • それぞれの施設でNIHSSを使用し重症度別に分類 (mild: 1-7, moderate: 8-16, severe: 17以上) • Very early mobilisation群とusual care群を 1:1割り付け 盲検化について: • 患者には割り付けは盲検化 • スタッフは、usual careへの影響を避けるため、 mobilisation protocolと割り付けを隠すよう訓練 • 結果の評価者、研究者、データ管理者には割り付けは 盲検化 Methods • 理学療法を含むusual careはそれぞれの施設で決定 Very early mobilisation 1) 脳梗塞発症後24時間以内に開始 2) 座位、立位、歩行=ベッドから出て離床する 3) Usual careより少なくとも3回/日多く離床する • 初回の離床時には、血圧が30mHg下がらないことを 確認しながら施行 • 介入期間は、14日間もしくはSCUを退出するまで • 介入スタッフは、3か月に1回、研究委員会からの フィードバックを受ける Methods Primary outcome:脳梗塞発症3か月後に評価 • 好ましい結果:mRS 0-2(障害がない、 軽度の障害) • 転帰不良:mRS 3-6(中等度から高度な障害、死亡) Secondary outcome:脳梗塞発症3か月後に評価 • mRSのすべてのレンジの評価 • 介助なしで50m以上歩行可能な割合 • 死亡者数 • 非致命的な重篤有害事象(不動に関連、神経学的) • サブグループ解析 Ø 年齢、脳卒中の重症度・タイプ(梗塞・出血)、t-PAの有無、 mobilisation開始までの時間 Methods 不動に関連した重篤有害事象: • PE、DVT、UTI、褥瘡、肺炎 神経学的な重篤有害事象: • 脳卒中の進行・再発 深刻な有害事象: • 脳卒中の進行・再発、転倒、狭心症、心筋梗塞、DVT、 PE、褥瘡、chest infection、UTI、うつ病 Methods 統計学的分析: • 以下の2つの理由から、absolute risk reductionを7.1% としてサンプルサイズを算出 1) 研究者の間で臨床的に有効な効果のサイズであると いうコンセンサスあり 2) 早期リハビリテーションを長年実施している施設におい て、他の施設に比べアウトカムの発生頻度が9.1%低く、 そのうち早期リハによる効果が78%と見積もられた • N=2104人で、p=0.05で80%の検出力あり • Intention-to-treatで分析 Results: Trial profile Results: Baseline characteris)cs 地域、年齢、性別、リスクファクター、発症前のmRS、入院時の 生活様式、歩行の状態は類似。ランダム化までの時間は共に 約18h、80歳以上の患者が共に26% Results: Baseline characteris)cs 80%以上が初発。 45%がmoderateからsevereに分類。 24%がt-‐PAの患者。 Results: Interven)on summary リハビリ開始までの時間 • Very early mobilisation群:18.5h • Usual care群:22.4h Very early mobilisaMonの定義 (1)24時間以内に開始 Usual care群の開始時期は毎年28分ず つ早まった VEM群 12h以内 241人(23%) UC群 148人(14%) 24h以内 965人(92%) 623人(59%) 48h以内 1038人(98%) 977人(93%) Results: Interven)on summary Very early mobilisationの定義 (2)座位、立位、歩行=ベッドから出て離床 1日の離床時間:Very early mobilisation群 31分 vs. Usual care群 10分 総離床時間:Very early mobilisation群 201.5分 vs. Usual care群 70分 (3)少なくとも3回/1日usual careより離床 離床回数:Very early mobilisation群 6.5回 vs. Usual care群 3回 Results: Outcomes at 3 months • 3か月後の好ましい結果としてmRS 0-2を評価 • 単変量解析では介入群のオッズ比が0.85だが、有意差無し(p=0.068) • 年齢と重症度で補正して分析すると、usual care群でより回復(p=0.004) • 介助なしで50m歩行できるようになるまでの期間は、6~7日と有意差なし Results: mRS score at 3 months mRSをすべてのレンジで評価してみたところ、有意な差は見られなかった Results: Time to walking unassisted 50 m 3か月の間に介助なしで50m歩行できた患者の割合にも有意差はない Results: Deaths and serious complica)ons 3か月間の死亡率 • Very early mobilisaMon群 8% • Usual care群 7% • P=0.113 主な死因 • 脳梗塞の悪化 VEM群n=31 UC群n=19 • 肺炎 VEM群n=19 UC群n=15 • 脳梗塞の再発 VEM群n=11 UC群n=7 非致命的な有害事象 不動に関連した重篤有害事象 神経学的な重篤有害事象 のすべてで有意差なし Results: Prespecified subgroup analyses サブグループ解析 Severe stokeと脳出血において、 very early mobilisation群より usual care群の方が有意に良い 結果がでている。 Discussion • Very early mobilisaMonは実現可能、中央値で5時 間早く、頻度も高かった。 • しかし3か月後の好ましい結果(mRS 0-2)はusual care群よりも有意に頻度が少なかった。 • 死亡率もvery early mobilisaMon群で高い傾向が認 められたが、有意ではなかった。 • サブ解析において重症例および脳出血例での very early mobilisaMonの有害性が示唆されるが、 症例数が少なく、信頼区間も広い。 Discussion • Phase IIでは有効性が示され、イギリスで行われた 同様の研究を対象としたメタ解析(合計103例)に おいてもvery early mobilisaMonは有効だった。 • ただし、56例を対象とした別のRCT(リハ開始時期 を24時間以前か以後かで比較)では予後の悪化 傾向が認められていた。 • 今回の研究はNが2000以上と大きく、primary outcomeのデータ欠損も1%以下と小さいなど、研究 の質は高く、この研究結果は新しい重要な情報を 提供すると考える。 Limita)ons • リハビリによる生理学的指標の変化や、各症例で のスタッフと患者のやりとりなどの情報は収集でき ていない=より詳細な検討は困難。 • Usual care群での治療内容は指定しなかった。結 果として明らかに開始時期が早期になった。これ がプロトコルによるコンタミなのか、最近のガイドラ インからの影響なのかは不明。 Discussion • 30のガイドラインをレビューしたところ、22において 早期リハビリが推奨されていたが、具体的なプロト コルの記載はほとんどなかった。 • Very early mobilisaMonを推奨するべきでないこと は明白だが、usual care自体も早期リハを含む複 雑な介入であり、usual careを推奨することは単純 すぎる。 • この研究データをより詳細に解析することにより、 具体的にどの介入が予後に影響するかについて 検討することが可能(dose-response)。 Conclusion • Very early mobilisationは3ヶ月後の良好な予後 (mRS2未満)を有意に減らした。 • 早期リハビリは世界中の多くのガイドラインで推奨 されているが、今回の結果により改定される必要 がある。 • 改定のためには今後のdose–responseについての 解析結果が重要になる。 感想 • 早期リハビリテーションの開始時期や基準が明確 にされていないため、いつ離床するのか、どの程 度進めてよいのか、迷うことが多い • 患者のQOLを低下させないようにICUナースとして 何ができるのか考えて実践していきたい • ICU退室後の患者はどうなっているのか、ICUの看 護の評価をしていきたい
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