んその内部に踏み入ればハイテ を開発していたが,VMX ― 2100 ク研究室が拡がる(写真1)。 は約7倍の感度を達成した。従 ■画像処理装置,自動検査装 置の開発では豊富な実績 ビ ジ ョ ン サ イ テ ッ ク を 追 求 す る 画 像 工 房 見 る と い う 原 点 来,既成部品で構成したものを, 特性に合わせてレンズ,ファイ バを設計し,それを特注し組み ビジョンサイテックは,2000 込むことで性能を大幅に向上さ 年7月に水谷誠二社長(写真2) せた。平面基板の研磨傷を可視 が設立した。同氏は,画像処理 化するのが目的の機能であった 装置,自動検査装置の開発では が,ハードディスク基板向け検 豊富な実績を有した技術者とし 査で「カスタマーが(欠陥が) て知られている。同氏が開発し 見えなくて困っていた状況」で た製品の一覧を見せてもらった あったので,その分野のソリュ が,血液分析装置データ収集装 ーションとなった。発足して半 置,マイコン制御ピッチングマ 年で軌道にのり,右肩上がりの シン,タバコ葉専用赤外線水分 成長を続けることができた。 測定管理システム,スタンドア 同社の社名(Vision Psytec) ロン超高速 FA 画像処理ユニッ ,Psycho は,Vision(視覚・視力) ナノレベルの現象をダイレク トなど,その幅の広さと種類の (心理学)+ technology(技術) トに見ることができる。実際, 多さには圧倒される。水谷社長 を組み合わせた造語であり,水 その画像を見た瞬間に“鳥肌が は,「いろいろな応用製品の開 谷社長の開発方針が反映されて 立った”と感想をもらす人もい 発を手掛けたおかげで,アナロ いる。つまり,「“人”が持つ検 る。 グ,デジタル,ソフト,ハード 査に必要な視覚認識や感応心理 (有)ビジョンサイテックが開 の幅広い技術を得ることができ プロセスを最大限に引き出し, 発した超微細欠陥・可視化マイ た」と自らのスキルアップの経 映像を想像する」という考えだ。 クロ検査装置がそのように言わ 験を振り返る。 ■ハードディスク基板検査の 標準評価ツール せた。同社は,長野県伊那市に 同氏が独立して,最初に製品 拠点を構えるナノレベルの特殊 化したのは,暗視野方式表面外 光学検査機器を開発製造する企 観マクロ検査装置「Micro ― 業である。本社建物は,白壁作 MAX VMX ― 2100」のプロトタ りの古民家風で落ち着いた雰囲 イプに当たる製品である。以前 「Micro ―MAX シリーズ」である。 気を醸し出しているが,いった の会社においても,同様の装置 独自の数学理論による光学,照 同社の主力製品は,超微細欠 陥・可視化マクロ検査装置 明技術,画像処理技術により, ナノレベルの現象を広大なマク ロ視野にて可視化できる。その 欠陥可視化能力はきわめて高く, 0.1nm 程度の加工精度が要求さ れるハードディスク基板検査で は,標準的な評価ツールとして 活用されている。すでにハード ディスク基板向けを中心にシリ コンウェハ,サファイアウェハ 向けなどで 200 台以上の実績を 写真1 ビジョンサイテックの本社外観 82 積んでいる。 電 子 材 料 Micro ― MAX の発想の起点は, 人が持つ欠陥検査における視覚 細胞の機能や大脳の認識プロセ スから大きなヒントを得ている。 人は本来,肉眼上であるモノの 欠陥を認識する際,ミクロでな く必ずマクロの判断で行うとい った特徴があり,また微細な欠 陥を見る時は,眼球をわずかに 微動(トレモア)させ脳内でイ メージの縦横の分解能を向上さ せている。 独自の数学理論による非原則 写真2 ビジョンサイテックの水谷誠二社長(同氏の右横にあるのは,8/12 インチウェハ対応端面部可視化・検査装置) 的な光学デザイン,効率的な光 リーにモニタリングされるので でしか得られない現象を,実際 の情報を得るための照明デザイ 現象や傾向の把握・原因追求・ に人の目で“見る”という原点 ン,さらには対数的な補正と 解決のサイクルが非常に早いた を追求する」というこだわりを 実・虚数成分の可変,この3つ め,各工程間における品質向上 持っている。まさに職人気質を のエレメントから構成されるこ が容易で歩留りが飛躍的に向上 備えた技術者である。 とできわめて人に近い検出能力 する。 を得ることが可能となった。 ■ナノレベルの現象を広大な マクロ視野にて可視化 同社は,開発製造に特化して 同社が新製品として注力して いる。検査・評価装置は,対象 いるのが,ナノインプリントで ワーク,欠陥の種類,ユーザー 使用されるモールド,スタンパ ニーズなどに合致した製品開発 ー,インプリント後のメディア が重要だ。その役割は,ビジョ 冒頭で「その画像を見た瞬間 表面に生じる欠陥を可視化する ンサイテック認定販売代理店の に“鳥肌が立った”」と記した 表面外観マクロ検査装置 (有)田中機販が担い,マーケテ が,取材していてその感じを持 「Micro―MAX VDM―5000」であ ィング活動と販売を手掛けてい ったのがウェハ端面の画像であ る。次世代記録技術として期待 る。両社とも,会社の規模は小 る。写真2に示した装置で, されている DTM(ディスクリ さいが,意志決定が遅れがちな 300mm ウェハの端面をハイビ ートトラックメディア)や 大手メーカーとは異なり,迅速 ジョンカメラによる圧倒的な高 BPM(ビットパターンドメデ かつ柔軟な対応力とリーズナブ 画質で映し出した。しかも,回 ィア)の製造には,ナノインプ ルなカスタム対応により,着実 転,角度を変えて見ることがで リント技術が用いられるが,開 にユーザーニーズに応えている。 きる。半導体リソグラフィ技術 発途上の技術であるため未知の 「木を見て森を見ず」という を飛躍させた液浸露光では,こ 欠陥が多く,その検査方法が分 諺は,「細かいことばかりに気 のウェハ端面への影響がポイン からない状況である。VDM ― を取られて,全体を見わたせな トとなっている。 5000 は,すでに大手メディア いこと」であるが,ナノレベル メーカーへ納入され,実績を築 の現象をマクロ視野で見ること きつつある。 で,定量測定に人の持つ経験や レーザ,SEM,AFM のよう な微小ピンスポット検査による 数値出力データやマップでは実 際の現象確認(プロファイル認 ■ユーザーニーズに応えた開発 識)が困難である。Micro ― ビジョンサイテックの社名を MAX は広大な視野により僅か 表示する看板には,「画像工房」 な時間で欠陥の全体像がタイム とある。水谷社長は,「数値化 2 0 0 9 年 12 月 ノウハウをダイレクトに生かす ことができる。見るという根源 的な要素の重要さがよく分かっ た取材であった。 (本誌編集長・大島雅志) 83
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