11853.1KB

子どもと先生
小学校生活科教授用資料
みんなで創る
たのしい せいかつ
これからの生活科授業と
教科書の活用編
生活科_大好きブック3.indd 1
14/03/27 18:06
座談会
教員 2 年目。昨年,
初めて生活科を担
当しました。
山川花子
これからの生活科授業と
教科書の活用を考える
昨年は,生活
科主任を任さ
れました。
木築高男
生活科創設期から現在まで
最近の生活科を見て,変化を感じ
ますか。
諸岡浩
加納誠司
生活科編集長
加納 編集長はよく現場に行っていますよね。
10年を振り返って, 何か感じるこ
とはありますか。
諸岡 以前の生活科は,体験させることだけ
編集 授業の前に教科書を見た子どもが,
に焦点をあてた授業が多かったように思う
「あれをやりたい」「これをしてみたい」と
のですが,ここ数年は子どもの思いや願い
話している場によく出会います。そこから
を実現することでつくる授業,つまり,た
授業が始まっていくと,子どもたちは楽し
だ単に体験させることだけをねらいとして
そうです。最近強く感じるようになったの
いない授業が多く見られるようになったと
は,授業における先生の役割がとても大き
思います。
いことです。先生が子どもと一緒に楽しん
生活科が始まったばかりの頃は,メイン
でいる授業ですと,子どもは一層楽しそう
になる体験や題材だけを決め,それに出会
で,先生の見守りがうまくいっているのか
わせたあとは子どもの反応を集めながら授
なと思います。
業をつくっていました。最近は,授業の仕
加納 先生が子どもを見守る姿勢は大切です。
組みをある程度意識して,単元や実践を組
でも,先生は楽しんでいるだけではなくて,
み立てているように思います。
いろいろなことを願いながら実践にあたっ
なるほど。最初は子どもに思う存
分遊ばせていた生活科の授業が,最
近は構造化されてきたということで
すね。
加納 編集長は大日本図書に入社されて,
ずっと生活科の編集担当ですね。
編集 はい,10年になりました。
生活科_大好きブック3.indd 2
ていると思います。
私が初めて生活科に取り組んだのは教員
生活 4 年目,いまからもう十数年前です。
生活科がよくわからない状況で,子どもた
ちを存分に遊ばせながら,学校に隣接する
森で葉っぱや段ボールを利用して家をつ
くったり,コンサート会場をつくってコン
14/03/27 18:06
サートをしたり,虫ランドをつくったり。
構造化は全くされていなかったけれど楽し
かった。いま振り返ると大変思い出に残っ
た実践です。
生活科のキーワード「気付き」は,
変化していますか。
諸岡 以前は,知的な気付きを意識しすぎる
教科書は,こう変わる
加納 新しい教科書のあり方を,編集部では
どのように考えていますか。
編集 教科書は,子どもが主体的に目的を見
つけて活動に入るきっかけになるものであ
ると同時に,子どもが楽しく学ぶため,先
生にとっても楽しいもの,使いやすいもの
であることが必要と思っています。
と,生活科をつくった意味が薄れるのでは
平成23年度版の教科書は,現行の学習指
ないかという認識が現場に多かったように
導要領で大事にされている「気付きの質を
思うのです。ですが,前回の学習指導要領
高める」部分を意識してつくりました。新
に「知的な気付き」が明記されたことで,気
しい教科書でもその部分は大切にしつつ,
付きがさらに整理され,理解しやすくなっ
先生方にとって使いやすいところを選んで
たと思います。
活用していただけるプラス要素をさらに盛
これまでは「させる気付き」のように受
り込みました。
け止められがちでしたが,現行の学習指導
要領では,子どもは気付いているから,そ
加納 諸岡先生が新しい教科書で強調したい
ことは,どのようなことですか。
の表現・表出を通して意識させ,発展させ
諸岡 体験させるためだけの学習ではなくて,
る学習をつくっていこう,となってきてい
子どもの思いや願いを実現していく学習に
るように思うのです。現在は,やはり生活
していくため,単元の連続性や展開の仕方
科充実の 1 つのキーワードとして,
「気付
に意を払いました。また,現場で使える教
き」があるのではないかと思います。
科書にするため,題材や素材の見直しをし
「させる気付き」 から, 子どもた
ち自身で気付けるようになるところ
が,さらに深まったのですね。
ました。そのあたりを先生方に見て,活用
していただけるといいなと思いますね。
プロフィール
加納誠司 中部学院大学准教授/日本生活科・総合的学習教育学会 常任理事(第 6 期〜)
平成 8 年度より,愛知県において小中学校の教員を11年間勤める。平成19年度から現職。日々,現場の子ども
の姿,子どもに直面する教師の姿に学ぶという姿勢で実践的な授業研究に取り組んでいる。最近の主な研究テー
マは生活科・総合的学習を核とした教科等との活用場面を生かしたカリキュラム開発や幼小中の一貫教育など。
日本生活科・総合的学習教育学会第 9 回研究奨励賞受賞。
【主な著書】「子どもが生きる 授業が生きる 新しい生活科がめざす道」
(2010年 大日本図書)
諸岡 浩 東京都西東京市立谷戸第二小学校長/日本生活科・総合的学習教育学会 常任理事(第 8 期)
/
東京都小学校生活科・総合的な学習教育研究会 顧問
東京学芸大学附属大泉小学校教諭として,生活科の創設期から生活科授業づくりに取り組む。大豆の栽培など
を行い,子どもの知恵をもとに野鳥の食害にも対応して栽培を続けた。そして,できた大豆で豆腐をつくった実
践は,当時の楽しい生活科実践の記憶である。また,平成23・24年度には,西東京市立碧山小学校長として,生
活科学習を通して「思考・表現する言語能力の向上」を目指す校内研究に取り組む。
1
生活科_大好きブック3.indd 1
14/03/27 18:03
新しい教科書は,こう使うと効果的
編集 先生方からは,丁寧で誰でも使える教
名前なのか,人にわかりやすく伝えるには
どんな方法があるのかなど, 知りたいと
科書にしてほしいという意見もありますが,
思ったときに参考にできるさまざまな資料
先生によって選んで使える素材のある教科
があります。
書にしたいとも思っています。若手の先生
が見たときには,親切なヒントがあって一
定の授業をつくれる保証がある。また,自
分の生活科の指導計画をしっかりもってい
る先生にとっては,より活動を深めるため
加納 木築先生,生き物を見つける学習では,
何をとり上げましたか。
トンボをとり上げました。春にや
ごをとり,羽化させる実践をしまし
た。
に利用できる素材がある。さらに,生活科
に熱心に取り組んでいるベテランの先生へ
加納 新しい教科書にはダンゴムシを載せて
は,例えば,こんな素材を使ったらどうで
いますが,活用の仕方のイメージは膨らみ
しょうと,生活科をもっと楽しくするため
そうですか。
の新たな提案がある。こんな教科書であり
たいと思っています。
それらの素材は,教科書のどの部
分に用意されていますか。
編集 若手の先生には,紙面右上の木の葉
マークに書かれた内容で,ここで何を学習
すればいいのか端的にわかるようになって
います。また,本文には,子どもの発言を
想定し,その活動を通して子どもからこん
な言葉を引き出したいという言葉を載せて
います。子どもにとっても先生にとっても
教科書を開いて目に飛び込んできた写真や
イラストから,何をすればいいのか,やっ
はい。子どもたちはダンゴムシを
見つけるとすぐ教室に持ってきます。
ただ,それをどうしたらいいのかが
わからない。教師がお世話してあげ
ることは簡単なのですが,教科書で
日常的に資料に触れていれば,すぐ
に「あ,こうすればいいんだな」と
調べることができます。ですから,
このような具体的な資料が子どもに
わかりやすい形で載っているのは,
すごくありがたいことです。
また,教科書で,ダンゴムシが脱
皮をした瞬間の資料を見ると,この
瞬間をぜひ自分の目でも見てみたい
なという期待感につながっていくの
で,とても助かります。
てみたいこと,やることの見通しをもてる
編集 ベテランの先生にも使っていただきた
ような写真やイラストをとり入れ,ビジュ
い素材があります。上巻の「あきと なかよ
アルにイメージでき
し」の単元内に,モノクロ写真をあえて載
るようにしました。
せました。子どもに秋の色を想像してもら
さらに,資料もた
いたくて。色に焦点をあてるときのきっか
くさん盛り込んでい
けの 1 つとして,モノクロ写真から秋の鮮
ます。巻末の「がく
やかな紅葉の写真へ視点を向ける仕掛けを
しゅうどうぐばこ」
施しました。
では,例えば,探し
てきた虫が何という
加納 木築先生,モノクロの秋のイメージは
使えそうですか。
2
生活科_大好きブック3.indd 2
14/03/27 18:06
はい。先日,実際に公園に行った
のですが,子どもたちが「これを見
つけよう」という視点をもっていな
かったためか,活動に見通しをもて
ず,気付きを深めることができませ
んでした。
秋のページのモノクロを生かして,
探検前に「どんな色をしているか
な」と一声かけておけば,葉の色の
変化などにも気付けたのではないか
なと思います。
諸岡 私自身はずいぶん面白い示し方だなと
思っています。従来,低学年では空間認識
をどのように広げられるかという実践知が,
あまりなかったのではないかと思うのです。
新しい教科書では,現場での実践をもとに
した「道カード」が空間認識を広げる学習
方法として示されています。新たな展開と
して,ぜひチャレンジしていただけるとい
いのではないかと思います。
加納 そうですね。自分が道カードに表現し
加納 モノクロの写真を見ることによって,
たいこと,あるいは探検を繰り返して歩い
子どもたちの思考は深まりそうですか。
たところやそこで大好きになった人などを
はい。ただの活動で終わってしま
わず,そこから気付きを深めさせた
いと思ったとき,どういうところに
気付かせたいかを教科書でしっかり
と押さえて,活動に入ることも 1 つ
の方法だなと感じています。
編集 下巻の町探検の単元
には,新たに「道カード」
をとり入れました。これ
は活動中に見つけたもの
をかくだけでなく,見つ
道カードに表現しながら,空間認識の力な
ども養っていければ,新しい教科書の使い
方がさらに広がっていくのではないかと思
います。
これからの生活科実践で大切にしたいこと
教科書が新しくなって,45分の授
業を構成する力も,さらに求められ
るように思います。これから,授業
をどのようにつくっていけばいいの
でしょうか。
けたものを自分の中で位
諸岡 生活科は活動主体ですから,限られた
置付けるカードになって
時間の中で,活動には時間をかけなければ
いて,表現の一例として
いけない。だから,導入にあまり時間をか
提案しています。
けずに,前の時間の課題を確認してすぐに
加納 現行の学習指導要領
活動に入っていくようにしたいですね。
では, 科学的見方・ 考
また,教師はどうしてもまとめをしたく
え方の基礎を養うということが明記され,
なってしまうのですが,授業の流れによっ
この点については教科書にも反映されてわ
ては,そこにあまり意を払わなくてもいい
かりやすくなっていると思います。
授業もたくさんあると思うのです。従来の
一方で,社会的な見方・考え方につなが
教科の枠にはまらずに授業をすることが,
るものの提案として,子どもの空間認識の
45分の授業を充実させることにつながるの
育成がとても大事になっていると思います。
ではないかと思います。
そのあたりの教科書の示し方,
「道カード」
と関連してどのように考えますか。
加納 そのあたりの柔軟性や単元のつながり,
2 年間のつながりは,とても大事になって
3
生活科_大好きブック3.indd 3
14/03/27 18:07
きますよね。編集長,教科書にはそのあた
りの工夫もなされていますか。
編集 はい。これまでは活動中の場面を,写
真やイラストで示すことが多かったのです
編集 今回の改訂では, 1 つの活動の中での
つながりを意識しつつ, 2 年間の生活科の
中で子どもたちをどう伸ばしていくかとい
うことにも着目しました。
が,今回は活動と活動の途中,つまり,つ
なぐ場面を板書例とともに示しました。こ
具体的にはどのようなことですか。
れは,先生方の意見を受けて実現したもの
で,活動したあと,次の活動へのつなげ方
の一例として提案しました。
編集 まず,交流活動を効果的に位置付ける
ことで,気付きの質を高めることを保証し
ています。 2 年間の生活科の中で,国語な
どとの関連も考慮し,話し合いをする子ど
もの人数形態や内容が,どのように質の高
いものに変わっていくのかをあえて教科書
の紙面上に載せました。
次に,先ほど話題に上った空間認識の力
を育むことです。道カードはその第一歩と
諸岡 板書の工夫はとても大事なことで,板
して,見つけたものと見つけたところをつ
書はこの20年で大きく変わってきたことの
なぐような表現の仕方をとり上げています。
1 つではないかと思うのです。20年前は,
さらに,自分自身への気付きです。子ど
「黒板の前に立つな」 ということが生活科
もたちが活動を経て,このようなことに気
の授業づくりの 1 つの方向性で,大事にさ
付けるのではないかという目あてを示すた
れてきました。しかし,20年たって,思考
めに,学習カードの文例を吟味して載せて
から表現力の育成・情報の交流の中で気付
います。
きの質を高めることを考えると,板書機能
加納 学校は子どもたちがかかわって学ぶと
の活用が大事ということが,実践研究を通
ころですから,交流活動の工夫も教科書に
して意識されてきています。それを教科書
示したほうが効果的ですよね。
の中に意図的に位置付けたわけです。
諸岡 そうですね。教科書では,場面によっ
加納 私のゼミの卒業生も,初任でいきなり
ては話し合い活動を具体化していますが,
1 年生や 2 年生を受け持つというケースが
実際にはこれらは非常に多様ですよね。毎
増えてきています。このような若い教師に
時間のカードにある,「ぼくはこんなこと
とっても学びの具体的なイメージがわく素
を発見したよ」「わたしはこうしたよ」 と
材や環境構成のもち方を例示することは,
いう情報の交流の中で,「いいね」「すごい
大変価値のあることだと思います。
ね」「いいことを発見したね」 というよう
一方で,自分自身への気付き,自己理解
なやりとりもあるわけです。単元を通した
への深まりについては,教科書の中で段階
もっと長い学習活動についてのやりとりも
的に示される必要があると思います。この
あるので,教科書を参考にして,子どもの
点についてはいかがでしょうか。
素敵な生の声や気付きをぜひ拾っていただ
4
生活科_大好きブック3.indd 4
14/03/27 18:27
きたいですね。
す。ぜひ若手は若手なりにしっかりと見て
加納 先生方には,さらに交流活動や話し合
ほしいし,またベテランもかつての自己実
い活動にかかわっている人数やかかわり方
践をなぞるだけの実践ではなく,教科書を
まで,読み取っていただきたいですね。
参考にして学習のイメージをぜひ広げて更
新し,実践していただきたいですね。
先生方へのメッセージ
編集 先生方からは,教科書は使わないとい
諸岡 ベテランの先生と若手の先生が一緒の
う意見もかなり多くて,先ほど諸岡先生も
学年を組むと,ベテランの先生が 5 年前,
おっしゃったように,学習活動が決まって
10年前にやった学習活動をそこでもやろう
いると, 単に活動しただけで終わってし
とすることがあります。素敵な学習活動な
まっているというお話も聞いています。そ
らいいのですが,体験させることだけに主
の活動からどんなことに気付かせようとか,
眼を置いたショートな単元構成で,授業を
そこにどんなことをプラスすればよりよく
「これでやってごらんなさい。 こうやるの
なるのかという役立つ情報が教科書にはた
よ」と示されると,若手の先生は素直にそ
くさん盛り込まれています。「これなら使
れを受けて,生活科をやったような気分に
えそう」など,プラスできるよい要素を教
なってしまうのです。そうではなくて,教
科書から拾い出していただきたいと思って
科書を少し開いてもらうと,そこには生活
います。子どもにこんな表情をさせたいと
科が始まってから約20年の生活科学習の成
か,この活動だったらもっとこうしたらい
果が,上手に盛り込まれているのではない
いのではないかという部分が,読み取れる
かと思うのです。だから先輩の言葉も受け
教科書になっていると思います。
つつ,教科書を見て生活科の授業について
加納 教師という仕事はずっと学び続けてい
の教師の夢や願いを広げていただくといい
くし,自分の授業を振り返り成長していく
なと思います。周りの先生方には,
「ぜひ教
大変いい仕事だと思うのです。自分の固定
科書を開いてね」「読んで楽しんでね」
,そ
概念で授業を完成させてしまうのではなく,
して,
「授業づくりのイメージを広げよう
昨日の授業より今日の授業,昨年の授業よ
よ」と言っています。
り今年の授業,また来年につなげる授業を
加納 そうですね。やはり授業をつくってい
意識していただくために,教科書はとても
くのは先生ですものね。もちろん子どもを
活用できるものだと思います。編集長が
見ながら,授業をつくっていくのですけれ
おっしゃったように,ぜひ開いて見ていた
ども,そのときに自分の枠を広げるために,
だきたいと思います。
教科書は大変活用できるものだと思うので
子どもと直面している担任の先生方が一
す。実際に授業のときだけでなく,子ども
番尊く,大事な存在だと思います。ですか
と対面していないときに開く回数や時間を
ら,そのような先生方に頑張っていただい
増やしていただきたいと思います。
て,子どもの目が輝くような授業をたくさ
諸岡 子どもの活動の何をどこで褒めればい
ん現場で実践していただきたいと思います。
いか,認めてあげればいいかというサンプ
ルや参考になるものは教科書だと思うので
5
生活科_大好きブック3.indd 5
14/03/27 18:07
学習指導要領が改訂され,本 格実
新しくなった生活科のポイン トっ
気付きの質を“さらに”高めるために,
“思考を深めた気付き”に導くことです。
気付きに新しいエッセンスを
新しくなった学習指導要領,本格実施から 3 年が経過しました。これを「まだ 3 年」と捉えるか,
「もう 3 年」と捉えるか。確かに改訂の周期を10年と考えると,新しい時代の生活科を模索してい
く段階に入ったといえます。見失ってはいけない視点は,何かを急激に変えることではなく,生活
科創設以来大切にしてきた「気付き」に,何か新しいエッセンスを加え,そこに積み上げていくこ
とではないでしょうか。
生活科における今次改訂の最も大きなポイントは「気付きの質を高める」ことです。この言葉を
スローガンとして,全国各地域で優れた実践が開発されてきました。交流活動を効果的に位置付け
た単元づくり,自分自身への気付きに導く成長の振り返り場面など,気付きの質を高める指導の在
り方は,確実に生活科授業に定着されつつあります。
そこに一歩踏み込んで,新しいエッセンスを加えるとしたら何か? それは「思考を深めた気付
きに導く」ことではないでしょうか。生活科における思考とは,まさしく子どもの主体的な思いや
考えです。つまり思考を深めることで,より自分ごとの学びを実現するのです。体験を通して学ぶ
生活科ですから,思考を深めるために活動・体験の充実は不可欠です。子どもが十分に感じ,考え,
気付きを醸成できるような質の高
い活動・体験を仕組むことで,自
ずと思考が深まり,気付きの質を
さらにもう一段階上へと高めてい
きます。そこには,思考が深まっ
た子どもの姿を教師が見取り,価
気付く
思考を深める
値づけていくことが求められるで
しょう。また,思考したことを目
に見える形にする表現活動も意識
しなければいけません。
あくまで教師主導にならず,子
ども主体の学びを遂行したいもの
です。
感じる・考える
充実した活動・体験
充実した活動・体験の中で子どもは感じ・考え・気付くのです
6
生活科_大好きブック3.indd 6
14/03/27 18:07
,本 格実施から 3 年!
イン トって何?
思考を深め,
「実感を伴った気付き」
「交流して高まった気付き」
「自分自身への気付き」に導くことです。
「実感を伴った気付き」へ
充実した活動・体験を前提に,いかに思考を深めた気
付きに導くのか,具体的な学びの姿で見ていきましょう。
まずは「実感を伴った気付き」に導くことです。例え
ばゴムの力で動くおもちゃで夢中になって遊ぶ子どもは,
何度も何度も対象とかかわる中で,思いや願いを実現さ
せようと思考を深めていきます。すると「ゴムの数を増
やしたら遠くまで進む」「 2 重にしたら速くなった」など,遊びながら「○○すればいつでも◇◇
になる」という一定の法則性を見つけていくのです。納得するまで遊びきることで,体験知として
つながり,実感を伴った気付きへと導けるのです。
「交流して高まった気付き」へ
町探検のあとの発表の授業で,友だちが行った魚屋さんの様子を聞きます。「魚のことにとても
くわしかった」「町の人に喜んでもらいたいから,少しでも安く魚を売りたい」などの情報を知り
得たとします。すると子どもは,「僕が行った花屋さんだって,花の種類をたくさん教えてくれた
ぞ」
「お客さんに花を売るとき,とてもいい笑顔になっていた」と,自分がかかわった対象と関連
づけて考え,対象への思考が膨らんでいくのです。気付きの交流は,それぞれ固有の気付きの質を
高め,お互いの気付きの相乗効果を生み出します。体験の連続の中に,効果的に交流場面を仕組む
ことが大切です。
「自分自身への気付き」へ
子どもは,自分に取り入れて学ぶことの天才です。繰り返しかかわることで思考を巡らせ,対象
との距離を縮めていきます。 すると対象だけでなく, 新しい自分に気付いていくのです。「おも
ちゃを作りあきらめずに最後まで完成させた自分」「緊張せずに町の人にインタビューできた自分」
「最初よりもアサガオのことが大好きになっている自分」など,自分自身への気付きまで高めるこ
とで,生活科でねらう「自立への基礎を養う」につながっていくのです。要するに,思考を深める
ことで,新たな自分のよさや可能性に気付くことができるのです。
こうして具体例を挙げて考えてみると,思考を深めることと,気付きの質を高めることは一体で
あることがわかります。
思考を深める=気付きの質を高める
7
生活科_大好きブック3.indd 7
14/03/27 18:07
「充実した活動」 を支援し, 気付
教科書にはどんな工夫がある の?
子どもが主体的に取り組む,充実した活動の様子が
イメージできます。
生活科の何よりの魅力は,子どもたちがいきいきと活動する姿,目を輝かせて没頭する姿,声を
弾ませて「きいてきいて」と話している姿に出会うことができることです。教科書には,主体的に
活動に取り組む,子どもたちの素敵な姿がたくさん紹介されています。「こんな姿に出会いたいな」,
「自分のクラスの子が,こんなふうになったらいいな」,そう感じられるダイナミックな写真が工夫
の 1 つです。子どもも教師も,活動への意欲が高まることまちがいなしです。
栽培活動のページでは,子どもたちが育ててみたくなる魅力的な野菜の例が,きれいな写真とと
もにたくさん紹介されています。また,それらが育っていく経過も調べることができ,見通しを
もって栽培活動に取り組むことができます。このような豊富な資料を活用すれば,子どもたちが主
体的に取り組む,充実した栽培活動が期待できます。
また,教科書右上部分には,その時間のめあてとなる言葉が,「木の葉マーク」に端的に紹介さ
れています。扱いたい単元の「木の葉マーク」を読めば,その単元の大まかな見通しをもつことが
できます。子どもたちにとっても学習の方向性がわかる指針となり,見通しをもち主体的に取り組
むことにつながります。
教科書は,意欲的で主体的な活動を促し,そのような充実した活動の様子が,教師も子どももイ
メージできるよう工夫されています。
ダイナミックな写真に,思わず心が動きだします
8
生活科_大好きブック3.indd 8
14/03/27 18:07
し, 気付きの質を高めるために,
ある の?
豊富な資料をもとに,授業の展開や,支援の仕方が
イメージできます。
授業を進めていく上で,何を教え,何を考えさせたらいいか。どのように活動を充実させ,気付
きの質を高めていくか。イメージできるような工夫が,教科書にはたくさんあります。
まずは,教科書の子どもたちのセリフや,学習カードに注目してみてください。例えば,「たの
しいね あきのあそび」のページでは,秋の公園探検に行く際に,子どもたちに体験してほしい活動,
引き出したい言葉,まとめのカードが一覧でき,授業の展開や支援のヒントとなります。
さらに,ヒントを受けて,「何回できるか競争しよう」「大きくてお面みたいだね」「ルールを工
夫して遊ぼう」「工夫するとこんなに楽しい遊びができるんだね」というように,子どもたちのつ
ぶやきを順に追っていくと,「思考」 の過程がよく見えてきます。 それをもとに, 子どもたちの
「思考」を促し,深められるよう,展開していけるといいですね。
また,学習カードをもとに意見を交わしている場面,クラス全体で意見を交換する授業の様子な
ども取り上げられています。気付きを表現する場を設け,交流することが,気付きの質を高めるこ
とにつながっていきます。
さらに,活動が次につながるように,「教室を飾ってきれいにしよう」と,生け花のような活動
を紹介したり,「幼稚園や保育園の友だちもよびたいね」と,異年齢交流へと広げていく展開も例
示したりしています。このような活動を広げる,プラスαの資料をヒントに,より充実した活動を
展開し,気付きの質を高めていくことに役立てましょう。
こんな姿や言葉を引き出したい。
それが展開や支援のヒントになります
9
生活科_大好きブック3.indd 9
14/03/27 18:07
子どもの「思考」の過程をイ メー
教科書にはどんな工夫がある の?
生活科が初めての先生でも安心! 思考の深まりが単元を通してつながるよう工夫しました。
教師になって 1 年目の先生にとっては,「生活科の授業,何から手をつければいいのだろうか?」
という悩みがあると思います。でも,大丈夫です。教科書には,ダイナミックな写真や,「木の葉
マーク」の課題文から,教師も子どもも,活動内容がイメージできる工夫があります。生活科の授
業を初めてもつ先生も,教科書を活用することで,目の前の子どもたちの実態に合わせながら,活
動を充実させてほしいと思います。
そこからもう一歩進んで,活動の発展的なつながりや,子どもの「思考」のつながりも意識して
読んでほしいと思います。子どもたちのつぶやき,学習カード,作品など,豊富な資料を参考に,
子どもたちの「思考」を引き出し,価値付け,つなげていきましょう。例えば,町探検に出かける
前に,床地図を使った交流で思考を引き出したり,探検後に,よりくわしく調べる方法を相談させ
たり,探検したことを,誰に,何をどのように発表するか考えさせたり,教科書では,子どもの
「思考」を促す場の設定やさまざまな表現活動も工夫されています。
また, 1 年生の学校探検では,先生と 1 対 1 で話していたり,となりの子とペアで話したりして
いた子どもたちが, 2 年生の町探検では, 4 人以上のグループでの話し合いができるようになると
いうように,子どもの学びがどのようにつながり,積み重なっていくかもわかるように工夫されて
います。子どもたちの学びの場も,通学路,自分の教室から,町全体へと,認識が段階的に広がっ
ていくように表現されています。さらに,生活科では「自分自身への気付き」へと導いていくこと
が求められますが,つぶやきや学習カードの質が,段階的に高まっていくことにも意識して,「自
分のいいところ」や「できるようになった自分」へとつながっていく子どもたちの姿を,イメージ
して授業づくりに取り組んでほ
しいと思います。
このように,子どもたちの思
考や学びの「つながり」を意識
することで,活動するだけで終
わってしまう生活科ではない,
「思考」 を深める生活科が実現
できると思います。
こんなことができるようになったらいいな。
活動も,学びも,つながっていく教科書です
10
生活科_大好きブック3.indd 10
14/03/27 18:07
をイ メージし,思考を深めるために,
ある の?
新しい提案が,生活科の可能性をさらに広げます。
生活科の魅力に出会い,子どもたちともっと楽しみたい,こんなこと
にも出会わせたい,こんな力を育てたい。そう思われる中堅以上の先生
方にも,新たな提案でさらに面白い生活科を感じていただきたいと思い
ます。
2 年の春の町探検では,導入時に「自分の通学路を紹介する」活動を
とり入れています。通学路に「花がたくさんさいている」,「あいさつ運
動の人がいる」ことなどを,自分で簡単な「道カード」に表すことで,
考えを深めるきっかけをつくっています。作った「道カード」を見せ合
うことで,
「○○さんの家のほうもおもしろそう」と,探検の意欲が湧い
てきます。おもちゃ作りでも,新たに「とばすおもちゃ」を提案してい
ます。 3 年以上の社会科,理科へとつながり,思考を深められる教材の
新提案をお楽しみください。
従来通り,教科書右すみには,「ユーティリティースペース」という,
活動する上でのヒントや,関連する情報があります。学年の初めであれ
ば,
「はなしかためいじん」,「ききかためいじん」を活用して,しっか
り話す,聞く習慣を身に付けさせることが,思考を深める土台をつくり
ます。他にも,生活の中で子どもたちの語彙を広げていきたい先生には
「せいかつことば」のコーナーもおすすめです。また,「がくしゅうどう
ぐばこ」にも,草花,虫,生き物図鑑のようなページや,道具の使い方,
安全指導のポイント,地図の作り方など,豊富な資料があります。
新たな展開の提案,豊富な資料をもとに,先生方と子どもたちが一緒
になって,生活科の可能性を広げ,思考を深めた気付きに導いてほしい
と思います。
こんなこともできたらいいな。
工夫の幅が広がっていく教科書です
11
生活科_大好きブック3.indd 11
14/03/27 18:07
教科書に載っている内容・教 材の
「おもちゃ大会をひらこう」という単元,こんな指導法が考え
られます。すぐには教科書を使わずに,まずは,子どもたちを
とことん遊ばせます。
身 近 な 材 料 を
使って作った,世
界でたった 1 つの
自分だけのおも
ちゃ。何度も試し
て,ようやく完成
させたときの子ど
もたちの喜びは格
別でしょう。そう
すると,子どもた
ちは,完成させた
仲間を自分たちで
見つけ,自然発生
的 に「ミ ニ お も
ちゃ大会」を開い
ていきます。教師側が,ミニおもちゃ大会を開く場の設定さえすれば,あちらこちらで,いくつも
のミニおもちゃ大会が開かれていくのです。
しばらくすると,こんな声が聞こえてきます。
「Aくんに勝ちたい。どうしたらいいのかな?」A
くんに直接聞きに行く子どももいれば,Aくんには内緒でさらに改造し,試す子どもたちもいるで
しょう。子どもたちは,まるで「おもちゃ研究所」の研究員のようです。なかには,教師に尋ねて
くる子どもたちもいるでしょう。そんなときに,「教科書を見てみたら?」なんていうひと言があ
れば,子どもたちは探し出して,「そっか。こうやればいいんだ」「Aくんの報告書を見るといいの
か」などと気付いていくのです。
子どもは,気付きの天才です。自分たちで,「どうすれば速く走るかな?」など思考を深めるこ
とができる子もいれば,難しい子もいます。そこで,教師がその場を設定してみたり,教科書を活
用してみたりすることで,そういった子どもたちを同じ土俵に乗せてあげるのです。
教科書は,子どもたちが思考を深めていくための手立て・
同じ土俵に乗せる手立て
12
生活科_大好きブック3.indd 12
14/03/27 18:29
・教 材の指導法を教えてください。
板書をヒントに,話し合い活動を進めていきましょう。
先述の「ミニおもちゃ大会」は,いくつも合体していき,最終的にはクラス規模の「おもちゃ大
会」になっていくでしょう。なかには,「 1 年生とやってみたいな」というつぶやきも出てくるで
しょう。ぜひ,そのようなつぶやきを大切にしてあげてください。
さてそうなると,子どもたちは「どんなお
もちゃ大会にしようかな?」と考えるでしょ
う。その思いや考えを,どんどん発言してい
く場をつくります。出てきた思いや考えは,
できるだけ板書に残しておくといいでしょう。
そうすると子どもたちは,「この約束は,
ほかけ車にもゴムロケットにも当てはまる
よ」と仲間探しを始めます。その仲間探しも,
色違いのチョークを用いて,つなげていくと
いいかもしれませんね。「みんなに関係する
約束は,大きな看板に書いておこうよ」「そのおもちゃにだけ関係する約束を,そのお店だけの看
板に書いたり, 1 年生に直接教えたりすればいいんじゃない?」こうすることで,たくさん出てき
た約束が,話し合いの中で絞られていくわけです。話し合いが終われば,その板書を,写真などで
記録しておくといいでしょう。子どもたちが,のちに看板を作るときのヒントになります。
子どもたちの思いや考えを,どのように黒板に書いていくか。板書計画は,とても大切なことで
す。しかし,きれいに書くだけで終わっていませんか? 実は,この板書こそが,子どもたちの思
考を整理し,さらに深めていく大事な道具になるのです。板書を見て,いま,何について話し合わ
れているのかが明確になっているときほど,その場の話し合い活動が活発になるのです。「さっき
Bくんが言っていたことにつけ足しなんですけど」「Cさんが言っていたこととは,ちょっとちが
うなあ」そんなひと言も出てくるかもしれません。
この話し合いをすることで,何を準備すればいいのかが明確になり, 1 年生にとっても 2 年生に
とっても,わかりやすい「おもちゃ大会」になるのです。
教科書から,子どもたちが思考を深める
話し合い活動の方法が見えてくる!
13
生活科_大好きブック3.indd 13
14/03/27 18:29
段階的に話し合いのスキルを 高め
どのような指導をすればいい でし
まずは“伝えたい”という思い,それから発達段階を考慮して,
徐々に交流する人の数を増やしていきましょう。
子どもの思いを“伝えたい”まで高める
「話せないのか」「話すことがないのか」,言語能力を意識する際によく話題になることです。生活
科では,後者を十分に育てることから始めなければいけません。そのためには,子どもが話すのに
値する,あるいは自分から思わず書きたくなるような,活動・体験にすることが大切です。先生や
友だちに,どうしても伝えたいことがある。ここまで子どもの意欲を高めてこそ,初めて話し合い
のステージに立ったといえます。
話し合いの原動力は子どもの“伝えたい”という思いから
ペアからグループ,そして学級全体へ
低学年で話し合いのスキルを身に付けさせたいときに
留意したいことは,即効的な成果を求めず,現状や発達
の様子を捉え,段階を踏まえて実践することです。特に
入学したての 1 年生は,それまでは学級全体で話すとい
う経験は少ないでしょう。まずは, 1 対 1 のペア交流か
ら始めてはどうでしょう。それもお互い向き合ってそれ
ぞれ交代で発表していては,話型や順番などが気になっ
て,話したいことも話せません。ましてや約束事がたく
さんあっては,友だちの話を落ち着いて聞けません。最
初は発表よりも「お話」のような感覚がいいかもしれま
せん。となり同士で座って話したいことを話す。十分話
し合ったらペアを交代する。お話の際に,活動の振り返
りカードや写真などがあると,活動が想起され話題も事
欠かないかもしれません。
ペアでの交流が浸透したら徐々に伝える人数を増やしていきましょう。共通の体験があることや,
同じ目的意識をもったグループ構成をすれば, 4 ∼ 5 人でも十分に話し合うことが可能です。 2 年
生なら,付箋に自分の考えを書き入れながら,グループでの話し合いもできるようになるでしょう。
同じ意見の子同士で固めたり,似ているところにマークを付けたりして,思考を整理できるような
ツールを利用するのもいいでしょう。
14
生活科_大好きブック3.indd 14
14/03/27 18:29
ルを 高め,思考を深めた気付きに導くためには,
いい でしょうか?
こうして話し合いのスキルを積み,教室全体で話し合いができるようにします。気付いたこと,
考えたことを順番に発信する「発表会」もいいでしょう。しかし,これからの生活科では,自分の
意見を確実に伝え,相手の意見をしっかりと受け止め,自分の意見と比べながら,これからの学び
に生かしていけるような「伝え合い」「高め合い」の話し合いにすることが大切です。そこで試さ
れるのが教師の授業力。話し合う前に子どもの考えや意識の流れを把握し,座席表に落としたり,
対立場面や支援場面を想定し板書計画を立てたりして,話し合いを構成できる力を身に付けたいも
のです。
やりがいあり! 今こそ問われる授業力
学習の振り返りを意識して子どもたちの言葉をつなげましょう。
子どもの学びの足跡を目に見える形で表す
単元を進めるにつれ表現されていく言葉や作品は,子どもたちの学んできた証です。カードを書
き溜めたファイル,学びの時系列を記録した掲示物などは,できるだけ子どもの目の届くところに
置いたり,示したりしておきましょう。
それらの成果物には 2 つのねらいがあります。 1
つは子どもの意識をつなげることです。毎時間の充
実した生活科の授業は,多くの価値ある学びを子ど
もたちにもたらします。それを次時の学びに生かす
ために,前時までの自分の学びを振り返り,今まで
得てきた学びを積み重ねていくことが大切です。そ
んなときに,自分の言葉や教師が価値付けた朱書き
などが効果的に働きます。
教室掲示の例
もう 1 つのねらいは,これから新たな一歩を踏み出すための土台となることです。学びの蓄積は,
そのまま自分が学んできたことの自信や,学ぶことへの有用感になります。その蓄積が大きなもの
であればあるほど,子どもは安心して次への一歩を踏み出すことができるのです。学習の振り返り
は,さらなる学びのチャレンジ精神を刺激し,学びの好循環を生み出すのです。
学んだ事実を残す,つなげる,そして前に進む
15
生活科_大好きブック3.indd 15
14/03/27 18:30
教室からの声
「だから生活科はやめられない」
∼私もたのしい生活科∼
生活科が,幼児期から児童期への懸橋に
高橋良明
前 中部学院大学・中部学院大学短期大学部附属桐が丘幼稚園 園長
(シドニーオリンピックマラソン金メダリスト 高橋尚子さんの父)
岐阜県関市教育研究会小学校生活科部会の先生方と桐が丘幼稚園を会場
に,合同研究会を行いました。幼稚園では,教育要領と園の教育目標をふ
まえ,公開保育を行いました。まず,保育参観をしていただきました。
小学校の先生方のご都合のよい日が,夏季休業中でした。丁度その日は,園では縦割り保育
でしたので,年中児31名と年長児28名の保育を参観いただきました。日頃クラスごとの保育で
よく行っている数珠玉,どんぐりなどの自然物や空缶,紙コップ,プリンやヨーグルトのカッ
プなどの廃材を活用しての製作活動に取り組みました。
マラカス,紙飛行機,ぴょんぴょんガエルを作る 3 つのグループに分かれて製作活動をし,
できた作品を交流し合い遊びました。その後,小学校の先生方と合同研究会を行いました。
小学校の先生方から「生活科の目標である『自立への基礎を育む』につながるものを感じた」
「年長児が年中児をよくリードし,コミュニケーション能力がよく育っている」といった感想
をいただき,嬉しく思いました。幼稚園と小学校では,生活カリキュラムと教科カリキュラム
の違いによる段差がありますが,その段差をうめる懸橋となるのが生活科ではないでしょうか。
16
生活科_大好きブック3.indd 16
14/03/27 18:30
い」
わくわく 子どもの力 無限大
加峰和子
福岡県筑紫郡那珂川町立安徳北小学校
「先生,明日,大きな段ボール持ってきていいですか?」
日頃,なかなか忘れ物ゼロにならないA君が,目を輝かせています。明日
の生活科の時間が待ち遠しくてたまらない様子です。
「明日,学校に来ること」を楽しみにできる教科,それが生活科です。
子どもが主役になれる。自分のしたいことを選択できる。次の時間が待ち遠しい。生活科は,
まさに,わくわくする教科なのです。
2 年「わくわくランドをつくってあそぼう」の単元では,段ボールやペットボトル等を使っ
て,グループで知恵を出し合いながら,段ボール迷路,輪投げ,ボ―リング等を作っては試し,
「もっと長くつなげよう」「ルールを 1 年生用にかんたんにしよう」自分
改良していきました。
たちが考えた「わくわくランド」が完成したときの嬉しそうな顔。自分たちの「わくわくラン
ド」に招待した 1 年生や上級生が楽しむ姿を見た 2 年生の子どもたちの晴れやかな顔。どの子
も自信に満ちていました。
子どもの力は無限大です。子ども自身の出番を教師が上手に導いてあげることで,大人が思
う以上に力を発揮してくれます。さあ,教師も楽しみましょう‼
子どもが気付きを深めるとき「もっとなかよし町探検」
松井純子
静岡県三島市立山田小学校
2 年「もっとなかよし町探検」の単元で,地域の人にインタビューをす
る活動を行いました。子どもたちは 1 年「学校で働く人」の単元で,初め
てインタビューを体験しました。校長先生,教頭先生,事務室の先生,用
務員さん,図書室の先生,保健室の先生,栄養士さんなど自分たちが生活
する学校で働いている人に「どのような仕事をしているか」「ぼくたち,私たちができること
は何か」をインタビューしました。学校の人との対話からたくさんのことを感じたり,学んだ
りして今まで知らなかったことに気付くことができました。 2 年生になり,学校から地域へと
学習を広げていきました。パン屋さん,駄菓子屋さん,酒屋さん,おだし屋さん,スーパー,
郵便局,保育園,ケーキ屋さん,車販売店等を訪問し,お店の様子を見せていただいたり,イ
ンタビューに答えていただいたりしました。自分たちの生活が地域の人々とかかわっているこ
とがわかり,これらに親しみや愛着が深まっていく様子が見られました。地域の方とのふれあ
いから感じたドキドキ,わくわくする気持ちがとても大切な経験であること,そして,インタ
ビューを通してたくさんの人と繰り返しかかわることで,自分と地域のつながりについて気付
きを深めていくことができることを実感した学習でした。
生活科_大好きブック3.indd 3
14/03/27 18:43
秋の自然を使って,
絵を描こう!
お互いの様 子 を 見 合 い な が ら 誰
もが取り組 め る よ う 、 少 人 数 の
グループで 活 動 し ま し た 。
作品紹介
自分が見つけたお気に入りの
秋 バッグ︵紙 皿 を 重 ね て つ
くったもの︶から秋の自然物
を取り出して、じっくりと向
き合いました。
東京都新宿区立大久保小学校
1 年生が,学校のまわりで見つけたお気に
入りの秋を使って,絵を描く活動を行いまし
た。教師が秋の自然物の色や形に注目できる
ような声かけをすることで, 子どもたちは
じっくりと秋の自然に向き合って表現するこ
とができました。
ロボットを作
りました。み
んなに見せた
いです。
イチョウの葉を手に見立てたところが
すごいですね。
ウサギを作りました。
あまり上手にできな
かったです。
葉の茎を輪郭にしていますね。
金魚とちょうちょを作り
ました。 しっぽは, い
ちょうを使いました。
葉の形をよく考えていますね。
大きいはっぱと小さいはっ
ぱとどんぐりとたねみたい
なものを使いました。
何かの動物? 実の大きさを考えていますね。
カエルを作りました。手を工夫
して作りました。カエルがはね
ているところです。
どんぐりを使って動きを表現して
いますね。
クマを作りまし
た。しっぽもつ
けました。
しっぽがかわいらしいですね。
01140496
生活科_大好きブック3.indd 4
14/03/27 18:43