司 平面構造多機能型 バ ダイ ー シチア ンテナの研究 新井 宏 之 横浜目立大学 工 学部 電子情報工学科 助 教授 1.は じめに 移動休通信用 ア ンテナ として、小型平面型構造 のアンテナが求 め られて い る。 一方、干渉波対策 としてのダイバ ー シチ方式 には空 間ダイバ ー シチの他 に電力密度受信、指向 性、偏波を利用するダイバ ー シチ方式がある。地形や時間 とともに変化す る電波環境 に対 して こ れ らのダイバ ー シチ方式を任意 に選択で きれば安定 した通信を実現で きる。 しか し複数 のダイバ ー シチ方式 は、複数のアンテナ と複雑な給電回路が必要であり、移動体通信のめざす小型化、軽 量化には相反す るもので あ った。 本研究 では平面構造 の リングパ ッチア ンテナを改良 し、動作原理 の異なるノッチア ンテナを同 一 円盤上 に構成する ことによって、 4種 類の ダイバ ー シチ方式が実現可能 な平面構造多機能型 ダ イバ ー シチア ンテナを提案 し、それ らが簡単な給電回路で実現で きることを示 し、実験的に検証 した。 2.平 面構造多機能型 ダイバ ー シチアンテナの構成法 2.1 リ ングパ ッチ アンテナとノ ッチ アンテナの一体化 平面構造多機能型 ダイバ ー シチアンテナを実現するために、1つ の平面型ア ンテナに動作原 理 の異なる 2つ のア ンテナを一体化 して組み込む必要がある。本研究では、 モノポールア ンテナ モー ドで動作す る リングパ ッチア ンテナ とIla流 ア ンテナで あるノッチア ンテナを一体化す る手法 を検討 した。 整合 ピン 電流 給電 ピン 整合 ピン ― 図 1 リ ン グパ ッチア ンテナ リングパ ッチア ンテナは容量装荷型 モ ノポールア ンテナの一 種 で、 図 1 に 示す よ うに中央 の給 電 ピンで 励振 し、軸対称性 を保 つ ため 4 本 または複数 の ピンを外側 に設け る構造で、広 い周波数 帯域 を有す るア ンテナであ る。 リングパ ッチア ンテナ は軸対称 モ ー ドの T M 0 1 モ ー ドで励振 され るので、 図 1 の 円盤を流れ る電流 は軸方 向成分 のみで あ る。 円盤上を流れ る電流 は軸方 向成分 の みなので、 図 2 の 実線 の よ うに ス リッ トを切 って もリングパ ッチア ンテナの 動作 には影響を与え - 1 - 図2 ノ ッチ ア ンテナの構成法 ー ない。 また、 リングパ ッチア ンテナは容 量装荷型 モ ノポ ルア ンテナであ るの に対 して、 ス リッ トは磁流 ア ンテナなので、1つ の平面 ア ンテナ内に 2つ の異 なるア ンテナを組 み込む ことが可能 とな る。 しか し、 ノ ッチを切 る円盤が地板 か ら近 いので 図 2の ス リッ ト形 の ノ ッチア ンテナの帯 域 は非常 に狭 くな る。そ こで、円盤 の 高 さが低 い ときで も十分 な帯域 を とれ るよ うに、破線 で 示 す ノッチの幅を広 くして帯域 を増加 させた。 次 に ノ ッチア ンテナを励振す るために、 ここで はマイ クロス トリップ線路 によ る励振 を考え る。 多機能 型 ア ンテナ と して動作 させ るた めに、 ノッチア ンテナをそれぞれ独立 に給電す る必要が あ る。 一方 、 リングパ ッチ ア ンテナには 4本 の整合 ピンがあ り、 これを 同軸線路 とすれば、 ノ ッチ パ ア ンテナ用 の給電 ピンとして も機能 させ られ る。すなわ ち、整合 ピンの 外側 を リング ッチア ン テナの励振 に用 い、 その内部 に設 けた同軸線路 によ り 4つ の ノ ッチ ア ンテナを独立 に励振す る。 2.2 ノ ッチ ア ンテナの給電法 ン パヽ 向 か い合 う ノッチア ンテナは約半波長 の距離 があるので 、 ノ ッチア ンテナの 励振 と リ グ ノ チア ンテナの励振 を組み合わせ ることに よ つて 、電力密度受信 、空間、指向性 、偏波 の 4種 類 の ダイバ ー シチ方式 が 1つ の ア ンテナで 実現 で きる。 一 般的 に複数 の ア ンテナを用 いて ダイバ ー シチ方式 を実現す るア ンテナには複雑 な給電回路 が い 必要 とな り、 ア ンテナの 小型化 の障害 となる。 ここで、本研究で取 り組む平面型 ア ンテナにお て は、対向す る ノッチア ンテナ間 の距離 が約半波長であ る ことを利用 して、複雑 な電気的回路 を ー 必要 とせず に単 に位相 の加減算 のみで 4つ の ダイバ シチ方式 を実現す る。 リングパッチアンテナ用 治■点 ′ッチアンテナ ノ ッチ ア ンテ ナ 用 「 糖 電点 ノ ッチ ア ンテ ナ 用 一 給■ 点 パ ッチア ンテナ用 リング 給 電点 ー 図 3 平 面構 造 多機能 型 ダイバ シチ ア ンテナの 構 成 a=60, b=50, d=0.65, e=3, f=23, g=2, h=8, ) s=7,t=0.8,u=32.5,v=40,w=17(rm)(1.5GHz帯 - 2 - 平面構造多機能型 ダイバ ー シチア ンテナの構造を図 3に 示す。 4つ の ノ ッチア ンテナ を独立 に 励振す るために、 4本 の 整合 ピン全部を加工 し、 それぞれが リングパ ッチア ンテナ に対 して は整 合 ピンと して、 ノ ッチア ンテナに対 して は給電 ピンと して機能す るよ うに した。基板 は両面 の誘 電体基板 を用 い、 ア ンテナの上 面 には、 4つ の ノッチア ンテナを励振す るためのマイ ク ロス トリ ップ線路 を、 また、基板の裏面 は リングパ ッチア ンテナ と 4つ の ノ ッチア ンテナ を配 置す る。 3.各 ダイバ ー シチ方式 の動作原理 空 間 ダイバ ー シチ方式 は、複数の等 価 なア ンテナを 1/4波 長以上 の 間隔を隔てて配置す る方 式で あ る。本 ア ンテナで は、 4本 の ノ ッチア ンテナは独立 に励振で き、 しか も隣接す るノ ッチア ンテナ間 の 距離 は約 λ/4で あ るので、任意の ノ ッチア ンテナ対 で空 間 ダイバ ー シチ方式を実現 で きる。 また、現在用 い られて い る空 間ダイバ ー シチア ンテナの ほとん どは、垂直 または水平方 向 の 1次 元配列であ るが、本 ア ンテナで は 4つ の ノッチア ンテナが水平面 に配 置 されて い るので、 2次 元構造 の空間 ダイバ ー シチア ンテナ となる。 指 向性 ダイバ ー シチ方式 は、 特定方向 か らの到来波を選択的 に受信、 または除去す るため の方 式で あ るG同 一 周波数 において複数方 向 か らの到来波や妨害電波が到達 した場合、妨害波 の 影響 を除去、または、軽減す るために受信波を選択す る必要がある。 このよ うな指 向性 ダイバ ー シチ 方式を実現 す るためには、 現在 で はア レイア ンテナの よ うな多素子 ア ンテナが用 い られて い るが、 その給電 は複雑で移動 体通信 には不適 当であ った。 ー / ―カ ジオイド PA ■NOTCH 図 4 指 向性 ダイバ ー シチア ンテナの構成法 本 ア ンテナにお いて、図 4に 示す よ うに向か い合 うノ ッチア ンテナー組 を逆相で 励振す ると、 ノ ッチア ンテナ間 に矢 印 の よ うな磁流 を仮定で きる。 この場合、水平面内におけ る垂直偏波成分 “ "型 の指向性 となる。 この放射電界 は磁流 に対 して、片 方 で は鉛 直方向上 向 き、他方 は 8の 字 で 下向 きとな る。 一方、 リングパ ッチア ンテナの水平面内の放射電界成分 は同相 で、その 向 きは 鉛直方 向上 向 きであ る。 したが って、 この 2つ のア ンテナの放射電界 の加算を行 うことによ って カー ジオ イ ド特性 が 得 られ る。 この結果、 カ ー ジオイ ドのナル点方向か らの妨害電波 を除去す る ことがで きる。 同様 に、電界成分 の減算を行 うと、 カー ジオ イ ド特性 のナル点が反転す る。 した - 3 - が って、 このよ うな ノ ッチア ンテナは 2組 あ るので 、該 当す るノ ッチア ンテナ対 の選択 と加減算 ー によ って水平面 内の 4方 向 に対 して指向性 ダイバ シチ方式 を実現で きる。 電力密度受信方式 で は、 リングパ ッチ ア ンテナ と 4つ の ノ ッチア ンテナを用 い る。向か い合 う ノ ッチア ンテナー 組 を逆相で励振 した ときは、図 4に 示す磁流 か らの 放射 と して考え られ る。 こ こで、 リングパ ッチア ンテナはア ンテナの 中心 で最大 とな る電界 に感応す るの に対 して、向か い パ 合 う一 組 の ノ ッチア ンテナはその 中心 でナルの電界 に感応す る。従 って リング ッチア ンテナ と ノ ッチ ア ンテナを組み合わせ ることによ って 電力密度受信 と して動作す る。 ノッチア ンテナの水 平面 内指 向性 を 一 様 にす るため、 2組 の ノ ッチア ンテナ対 をそれぞれ ハ イブ リッ ト結合器 な どに ー よ り90°の 位相 差を つ けて励振すれば、 タ ンスタイル型の ノ ッチ ア ンテナが得 られ る。 ー 偏波 ダイバ シチ方式 とは、複数 の到来波 に対 して垂直偏波 あ るいは水平偏波 な ど、 あ る特定 の偏波 を もつ信号 のみを選 択的 に受信す る方式である。向か い合 う ノ ッチア ンテナ間 の距離 は約 半波長 であ るので、 この ノ ッチア ンテナ対 を同相で励振す ると、 それぞれ の ノ ッチア ンテナか ら =\f‐ … ー 図 5 偏 波 ダイバ シチア ンテナの構成法 いて 相 放射 され た垂直偏波 は合成 され る際に位相が反転 し、図 5に 示す よ うに図中 b一 b'に お 一 殺 し弱 めあ う。 方、水 平偏波 は図中 a一 a'に 示す よ うに、合成 され る際にお いて 同相 とな り ー 放射 され る。 したが って 、電力密度受信 と同様 にタ ンスタイル型 とす ることによ り、水平偏波 を放射 し、 リングパ ッチ ア ンテナが垂 直偏波 を放射す るので 、 この 2つ の組 み合わせ によ り偏波 ダイバ ー シチア ンテナが実現 で きる。 4.各 種 ダイバ ー シチ方式 の実験的確認 4.1 周 波数特性 と指 向性特性 一 枚 の 円盤上 に リングパ ッチア ンテナ とノ ッチア ンテナの 2種 類 のア ンテナを配置す るた めに、 ここで は両面 の誘電体基板 (テフロ ン、誘電率 =2.5)を 用 いた。基板裏面 には銅箔部分 によ る 離 して作成 した 4つ の ノ ッチア ンテナを作成 し、基板上面 に リングパ ッチア ンテナ と、銅箔を宗」 は、図 3に 示す よ うに基板裏面 の ノ ッチア ンテナ励振用 にマイ クロス トリップ線路 を配 置す る。 ー パ 試作 したア ンテナの リタ ンロス 10dB以下の周波数帯域 は、 リング ッチア ンテナが22%、 ノ - 4 - ッチア ンテナが 1 1 6 % であ るを また、各ア ンテナ間 のアイソレー シ ョンは 1 0 d B であ り、実用上十 分 な特性 で あ る. 図 6 リ ングパ ッチア ンテナの水平面 内指向性 実線 は垂直偏波、破線 は水平偏波 一 リングパ ヽ ノチア ンテナの水 平面内指向性 は、図 6 の よ うにほぼ 様 な垂 直偏波 の指 向性 が得 ら 一 れ、水平偏波 成分 は無視で きる レベルである。 方、単体 の ノッチア ンテナの水平面 内の指 向性 "型 “ の指向性 が得 られ、水 ( 図 7 ) は 、垂直偏波成分 に対 して9 0 °と2 7 0 C に 最大 となる まゆ ッチア ンテナの水平面内指向性 実線 は垂 直偏波、破線 は水平偏波 図 7 ノ 平偏波成分 は 0 ° 方向が主 方 向 とな った。 この非対称性 は、 ス トリップ線路 の 配置 の非対称 が原 因 と考え られ るc 9 図 8 逆 相励振 した ノッチア ンテナ対の水平面内指向性 実線 は垂直偏波、破線 は水平偏波 一 電力密度受信 方式 の 有効性 を、向か い合 う 組 の ノ ッチア ンテナ対を逆相 で励振 した場合 の水 - 5 - “ 平面 内 の指 向性 と して図 8 に 示す。 垂直偏波 の最大放射方 向が約9 0 C と 2 7 0 C 方 向 を示す 8 の "型 指向性 が得 られて い るc ま た、測定 された位相分布 よ り、 9 0 3 と 2 7 0 °方向 におけ る垂直 字 一 パ 偏波 の位相 差が約 πで あ り、理論 とよ く 致す る。 この位相差 が ″あ ることか ら、 リング ッチ ー ー ア ンテナ と逆相励振 された ノ ッチア ンテナ 組 によ って指向性 ダイバ シチア ンテナが 実現 で き る。 180 図 9 同 相励振 した ノッチア ンテナ対 の水平面内指向性 実線 は垂直偏波、破線 は水平偏波 偏波 ダイバ ー シチ方式 で は、向か い合 うノッチア ンテナを 同相 で励振す ることによ って機能 さ ー せ る。図 9は 向 か い合 う ノッチア ンテナ 組 を同相で励振 した場合 の水平面 内の指向性 であ る。 一 って お り、 水平偏波成 分 は ノ ッチア ンテナ単体 の場合 よ りも強 くな るが、 ほぼ 様 な指 向性 とな 理論 と一 致 して いない。 また、垂直偏波成分 が十分抑制 されて いない。 これ は、 ア ンテナの 位相 バ ー シチ方式 の実現 に対 して はさ らに 中心 が正確 に求 め られて いないため と考え られ、偏波 ダ イ 検討 が必要で あ る. 5.結 論 バ ー シチア ンテナを提案 した。本 ア ンテ 移動体通信用 ア ンテナ と して、平面構造多機能 型 ダイ ナは一 枚 の 円盤上 に 2種 類 のア ンテナを総計 5つ 配置す る ことによ つて 、ア ンテナの小型化、平 ー ンテナの励振 の 板化 を実現 した。平面構造多機 能型 ダイバ シチア ンテナ と して、 4つ ノッチア バ ー シチ方式 を を独立 に行 う ことによ つて 、電力密度受信 、空 間、指向性 、偏波 の 4種 類 の ダイ 可能 にす るア ンテナを提案 し、実験 によ ってその有効性 を確認 した。今後 含 めた一 体化す ることで あ るc の課題 と して給電系 も 謝辞 本研究 をすす め るにあた り、多大 な御支援 を いただいた働高柳記念電子科学 技術振興財団 び財団 の 関係者 の皆様 に深 く感謝 申 し上げます。 参考文献 ( 1 ) 新 井、後藤 、信学技法 、A P 8 9 1 2 , 1 9 8 9 (2) K. ito, R. Watanabe, T, Matsumoto, IEEE Trans. AP-27, no.4, ul. 」 (3)伊 藤、佐 々木、信学論 、J718,11,1988 (4)新 井、 金田、後藤、信学 技法、AP88 80,1988 - 6 - 1979. およ
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